科目の中でも、大きなカテゴリーの一つに精神科があります。精神科病院であったり、精神科門前の調剤薬局で働いたりする薬剤師はそれなりにたくさんいます。

うつ病や統合失調症に限らず、認知症なども精神科の範囲に入ります。精神科領域は非常に大きく、そうした職場で働く薬剤師もたくさんいるのです。

当然、中には精神科病院や門前薬局へ転職して働くことを検討している薬剤師もいます。しかし、それまで精神科での勤務がなければどのような仕事内容や役割になるのか分かりません。精神科病院や薬局ならではの特徴があるため、これについては事前に理解しておく必要があります。

そこで、精神科の薬剤師としてどのように考えて求人募集に応募すればいいのかについて解説していきます。

不人気だが給料の高い精神科病院、精神科門前薬局

病院で働くことを考えるとき、多くの人は総合病院を目指します。そうした職場は年収が非常に低いものの、勉強することが多く薬剤師としてスキルアップできます。一方で精神科病院を希望する人はほとんどいません。

また、調剤薬局やドラッグストアで勤務するときについても、内科や呼吸器内科、小児科など一般的な科目を選択する人が多いです。精神科・心療内科の門前薬局を自ら希望する人は少ないのです。

こうした実情があるため、一般的に精神科に関わる病院や調剤薬局は薬剤師の転職先として不人気になりやすいです。

しかし、不人気で応募する薬剤師が少ないということは、それだけ高い給料を提示しなければ人が集まらないことを意味しています。そのため、精神科病院や精神科の門前薬局だと中途採用での年収額が高くなりやすいです。

例えば、以下は千葉にある精神科病院から求人募集です。

未経験でも申し込める求人であり、そうした状態でも年収450万円からとなっています。一般的に総合病院の薬剤師だと年収400万円未満が普通です。ただ、病院薬剤師にも関わらず中小薬局で働くときと同程度の給料となっているのです。

当然、調剤経験者であれば転職によって年収500万円以上が可能です。病院薬剤師であっても、精神科病院というだけで収入が増えるのです。

同様のことは調剤薬局でも起こります。精神科病院でも年収が高いため、薬局でも高めの収入になるのです。例えば、以下は神奈川の調剤薬局から出された求人募集です。

このように、低くても年収500万円です。もちろん東京や大阪の大都市圏だともう少し年収は落ちますが、それでも高い収入を実現できることには変わりありません。

精神科の仕事は大変できつい?やりがい・役割を学ぶ

それでは、なぜ精神科病院や精神科・心療内科門前の調剤薬局は不人気なのでしょうか。精神科での仕事が大変できついから高い給料になり、人気がなくなるのでしょうか。

これについては、特別に仕事内容が大変というわけではありません。むしろ精神科病院の場合、他の病院薬剤師に比べて仕事内容は楽です。忙しい職場ではなく、業務内容は病院薬剤師の中では少ないのです。調剤薬局で勤務する場合であっても、特別に大変というわけではありません。

もちろん、「患者さんへ気を使う」という意味では大変です。特殊な考え方をもった患者さんが多いので心のケアが必要ですし、睡眠薬による依存症に不安を持っている患者さんからいろいろ質問されることは多いです。

また精神科患者は生活保護の割合がどうしても高くなり、言葉は悪いですが見た目が汚かったり、考え方が変だったりします。

さらには統合失調症の粉薬を調剤する場面であっても、一般的な風邪薬なら分包機を少しだけ掃除するだけで問題ないものの、「精神科の粉薬を作った後、乳糖(ラクトース)を分包機に撒いてさらにきれいに掃除する」などの配慮が必要になります。

仕事内容が特別にきついというよりも、患者さんに対して細かい配慮が必要になるのが精神科で働く薬剤師になります。

うつ病を含め精神科領域では、患者さんの心の持ちよう次第で症状が悪化したり改善したりします。これは、薬剤師の服薬指導によって症状が悪化することがあれば、改善するケースもあることを意味しています。そういう意味では薬剤師の役割は非常に大きく、やりがいがあるといえます。

ただ、悪いように考えると「面倒な患者さんが多い」ことにもつながります。

病院薬剤師だとそうした患者さんを相手にする必要があり、さらには一般的な病院に比べると刺激は少なく、スキルを大幅に磨けるわけではありません。精神科門前の調剤薬局にしても、精神疾患を抱えた繊細な患者さんを相手にする必要があります。

業務内容自体は特別に難しくはなくても、「刺激が少ない」「面倒な患者さんが多くなりやすい」ことから人気がなく、その反動で給与水準が高くなっていると考えましょう。

認定資格、専門資格で専門性を磨くことは可能

総合病院の薬剤師であれば、どの病院でも通用します。また、内科など一般的な薬局で勤務している人なら、どの調剤薬局でも活躍できます。一方で精神科だと、うつ病や統合失調症、認知症など特定領域に知識が偏ることになります。

こうしたとき、例えば精神科病院から総合病院へ転職しようとしても、「精神科領域では、病院薬剤師としての経験が足りない」と判断されることは多いです。急患患者が運ばれてくることはなく、前述の通り精神科病院での仕事内容はそこまで大変ではないからです。

ただ、精神科病院や精神科門前の調剤薬局で働いているのであれば、専門性を高めるように頑張っても問題ありません。実際、精神科領域では以下のような資格が存在します。

  • 精神科薬物療法認定薬剤師:認定資格
  • 精神科専門薬剤師:専門資格

病院や薬局などで精神科薬物療法の経験が5年以上あり、所定の単位を取得して試験に合格すれば、認定資格である精神科薬物療法認定薬剤師を取得できるようになります。

また、これに加えて論文発表や学会発表などをして試験に合格すると精神科専門薬剤師となります。論文や学会などが加わるため、精神科専門薬剤師になるのは非常に大変です。

薬局薬剤師であれば、目指しても認定薬剤師までです。ただ、精神科病院の求人へ応募するのであれば、余った時間で勉強して精神科専門薬剤師を目指しても大丈夫です。精神科に関わる薬剤師を考えるのであれば、単に年収の高さだけを見るのではなく、こうした特定スキルの専門性を磨くことを検討しても問題ありません。

心配なら複数科目の調剤薬局の中途採用を狙う

なお、中には精神科だけの処方せんだと「知識が偏るのが心配だ」と思う人がいます。抗うつ薬や統合失調症治療薬、睡眠薬など以下のような薬には詳しくなりますが、その他の薬についてはそこまで知識が付きません。

そうしたとき精神科病院では無理ですが、調剤薬局であれば「他の科目の処方せんも受け取る薬局」への転職を考えることで、特定科目の知識に偏るのを防げるようになります。

例えば、以下の福岡にある調剤薬局であれば、「内科・精神科の処方せんがメインになる」との記載があります。

この場合、内科という一般的な処方せん調剤をしながらも、精神科のエキスパートとしても活躍できます。

パート・アルバイトの時給は普通

なお、不人気なために正社員では高めの給与体系になる精神科領域での勤務ですが、パート・アルバイトでの時給は普通の水準です。特別に時給が高く設定されているわけではありません。

正社員として働く人の場合、スキルアップや学べることを重視したり、仕事内容が面倒でなかったりすることを重視します。そうしたとき、「特定科目に知識が偏る」「面倒な患者さんが多い」という特徴のある精神科病院や門前薬局は対象外になりやすいです。

一方でパート・アルバイトの場合、「短い時間だけ働きたい」「残業なしの定時退社は必須」などのように、どれだけ楽な勤務が可能なのかを考える人が大多数です。そうしたとき、精神科はパート・アルバイトで働きたい薬剤師が望む条件に合致しているため、パート薬剤師については特に高い収入を実現できるわけではなく普通なのです。

パート・アルバイトは時給2,000円からが一般的ですが、これは精神科の薬剤師も同様だと考えるようにしましょう。例えば、以下は愛知にある精神科病院から出された病院薬剤師のパート募集です。

時給は2,200円からスタートとあり、わりと条件の優れている求人です。また、ここには「14時までの終業も可能」とあります。これは、精神科病院の仕事内容がそこまで忙しいわけではなく、こうした時間に仕事を終えても問題なく業務を片付けられるからです。

派遣での精神科経験もおすすめ

なお、こうした精神科・心療内科に関わる求人はパート・アルバイトに限りません。派遣という働き方もあります。

それまでに精神科領域を経験しているのであればいいですが、精神科・心療内科メインの職場で勤務したことがない場合、「精神科ではどのような投薬になるのか分からない」「難しい患者さんが多かったらどうしよう」と考えてしまうことは多いです。そうしたとき、派遣勤務をしてみて感触をつかんでみるのも問題ありません。

さらには、派遣なので非常に高い時給を実現することができます。高い給料を実現しながら経験を積むことが可能なのです。

例えば、以下は京都の調剤薬局から出された派遣求人であり、精神科・心療内科の処方せんがメインになります。

このように時給2,800円以上です。派遣の場合はパート薬剤師と同じように、働く曜日や勤務時間を含めて好きなように調整できます。必ずしもフルタイムである必要はありません。そうして、まずは派遣での精神科を試してみる方法もおすすめです。

精神科・心療内科への志望動機

なお、精神科・心療内科に関わる薬剤師として実際に転職するとき、志望動機はどのようにすればいいのでしょうか。さすがに「高い給料を実現できる職場へ転職したいと考えた」とはいえません。

また、「自分自身もうつ病を経験し、その実体験をもとに患者さんに優れた医療を提供できる」という志望動機にしてもいいですが、採用側としては「この薬剤師は精神疾患を過去に発症して大丈夫か?」と思われてしまいます。

ただ、幸いにも精神科の病院や薬局は不人気なのでそこまで深く志望動機を考える必要はありません。あなたが希望する勤務条件を履歴書や面接での志望動機にするといいです。例えば、以下のようになります。

特定領域を勉強し、専門的な医療を提供できる病院薬剤師になりたいと考えています。

前職は薬局勤務でしたが、以前から病院薬剤師に興味をもっていました。ただ、長く働くことを考えているので夜勤なしで定時退社可能な働き方を実現しつつも、専門性を磨ける精神科病院に魅力を感じしています。

貴院は薬物療法に限らず、精神療法や行動療法を含めて総合的に取り組んでいるため、より高度な知識を学びたいと考えています。

「給与体系が優れていて定時退社が可能」という理由だと微妙ですが、このように「長く働くために夜勤なし・定時退社が可能であり、さらには専門性を磨ける」という志望動機であれば、それなりの優れた理由になります。自己PRでは、自分の希望条件を含めた志望理由を述べて問題ありません。

転職サイトを活用して精神科の中途採用募集を探す

それでは、これら精神科に関する薬剤師として転職するにはどうすればいいのでしょうか。精神科病院や心療内科門前の薬局はどの地域でも存在するものの、どこに存在するのか理解していない人がほとんどです。

また、当然ながら求人ごとに募集内容は異なるため、それぞれを見極めなければいけません。そうしたとき、転職サイトを活用して精神科病院や門前薬局の求人を探すのが基本です。

精神科病院や門前薬局は一般的に給料が高めで残業は少ない傾向にあります。ただ、すべての職場がそういうわけではありません。中には年収の低い求人募集も存在します。また、場合によっては規模の大きい精神科病院の求人も出されます。

例えば、以下は精神科病院の求人募集ですが、年収350万円からスタートと低めです。

それでは、この病院の待遇が悪いのかというと必ずしもそういうわけではありません。この病院は700床ほどの大病院であり、精神科病院とはいってもかなり学べる環境にあります。

こうした病院であれば、専門薬剤師を目指したり学会発表が可能だったりします。規模の大きい病院だと年収は少なくなりますが、転職サイトであればこうした求人についても応募できるのです。

もちろん、ここまで解説した通り精神科では「夜勤なし・定時退社の精神科病院」「給料の高い心療内科の門前薬局」などの求人のほうがメインです。このときは求人の選択肢を増やすため、複数の転職エージェントを利用して求人に申し込めば優れた求人を見つけやすくなります。

なお、薬局や病院の薬剤師求人はたくさんありますが、精神科に絞るとどうしてもその数は少なくなります。例えば、以下は求人数5万件以上の転職サイトで精神科求人を検索したときの結果です。

このように日本全国で111件しかなく、精神科に絞ると希少になります。そこで転職サイトを利用するにしても、3社以上の転職エージェントを活用しましょう。選べる求人数を多くしたうえで、優れた求人を見つけるといいです。

精神科の薬剤師の求人へ応募し、転職を成功させる

薬剤師が転職するとき、どのような科目を目指すのかは重要です。このとき、最も一般的なのは病院なら総合病院、薬局なら内科です。ただ、精神科の薬剤師という考え方もあります。

病院薬剤師の中では、精神科病院で働く薬剤師の仕事内容はどちらかというと楽になります。業務内容はそこまで大変ではありません。調剤薬局についても特別に他の科目と比べて、つらくて忙しいわけではありません。

しかし、精神疾患は検査値で症状の度合いを測れるものではありません。そのため、どれだけ症状が改善されたのか分かりにくいです。また生活保護患者の割合が高く、さらに「特殊な人が患者さんとして多くなる」という特徴があります。

ただ薬剤師の服薬指導の説明によって症状が大きく改善することもあり、薬剤師の役割は大きくやりがいがあります。さらには、一般的に給料が優れていて残業が少ないのも精神科で働く薬剤師です。

こうした精神科の薬剤師を目指すとき、転職サイトの担当者と相談しながら求人を見極めるようにしましょう。精神科は求人数が多いわけではないですが、複数サイトを利用して根気よく探せばマイペースでゆったり働ける求人に巡り合えるようになります。


薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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