薬剤師として働くとき、病院や企業、行政など多くの業態があります。その中で薬剤師が選ぶ転職先として最も多いのは薬局(調剤薬局、調剤併設ドラッグストア)です。

こうした薬局の中でも、24時間対応をしたり残薬を減らしたりなど、患者さんに対してより密に貢献する薬剤師として、かかりつけ薬剤師があります。制度化しているのがかかりつけ薬剤師であり、こうした薬剤師として転職すればより医療に貢献できるようになります。

ただ、かかりつけ薬局に在籍する、かかりつけ薬剤師とはいってもその中身は大きく異なります。そのため、本当の意味で地域貢献している薬局を探さなければいけません。また実際にかかりつけ薬剤師として貢献するには認定条件があるため、これらをクリアする必要があります。

しかし中には、かかりつけ薬剤師をやめたいと考える人もいます。ダメな薬局だと、かかりつけ薬剤師の制度を利用してノルマを課すなど、売り上げのことしか見なくなります。そこで、どのようにして地域医療に貢献できるかかりつけ薬局へ転職し、優れた求人を見つければいいのかについて解説していきます。

かかりつけ薬剤師になるには?認定条件を理解する

調剤報酬改定によって「かかりつけ薬剤師」が新設され、調剤報酬として点数も付いているほどかかりつけ薬剤師は注目を集めています。かかりつけ薬局として一つの調剤薬局に薬をまとめるだけではなく、お世話になる薬剤師も一人にするのです。

ただ、制度化されているので当然ながら誰でもかかりつけ薬剤師になれるわけではありません。これには、以下のような認定要件があります。

  • 3年以上の薬局経験があり、同じ薬局で週32時間以上、1年間以上勤務している
  • 地域医療に関わる活動に参加している
  • 認定薬剤師の資格を取得している

それぞれについて確認していきます。

3年以上の薬局経験があり、同一薬局で週32時間以上、1年間以上勤務している

かかりつけ薬剤師として活躍するためには、調剤薬局や調剤併設ドラッグストアでの経験が通算で3年以上なければいけません。同一薬局ではなく、別の薬局で勤務していてもいいので薬局薬剤師の経験が3年以上は必要になるのです。

正社員やパート・アルバイトとして薬局勤務している人であれば、割と簡単に要件を満たすことができます。当然、このときは保険調剤をしている薬局が対象なので調剤併設ドラッグストアも含まれます。

ただ、病院薬剤師は注意が必要です。病院から薬局へ転職した場合、病院経験は「薬局経験1年分」としてカウントされます。そのため、例えば病院経験が20年ほどある薬剤師が調剤薬局へ転職したとしても、薬局での経験は1年分となります。

正社員でもパート・アルバイトでもいいので、病院経験者はプラスで2年の薬局経験を積まないとかかりつけ薬剤師として活躍することはできません。

・同じ薬局で週32時間以上、1年間以上勤務している

3年以上の薬局経験があるのは必須条件です。ただ、他にも認定条件があります。

まず、同じ薬局で週32時間以上の勤務が必要になります。これについては、正社員であれば1日8時間を週5日勤務するのが基本なので、誰でも条件を満たすことになります。パート・アルバイトであっても週32時間以上の勤務があれば、かかりつけ薬剤師として活躍できます。

※育児による時短勤務をしているママ薬剤師の場合、「週24時間以上かつ週4日以上」でかかりつけ薬剤師になれます。

また、同じ薬局に1年以上は勤務していなければいけません。そのため、たとえ3年以上の薬局薬剤師の経験があったとしても、転職して間もない薬剤師では、かかりつけ薬剤師として認定してもらうことはできません。

地域医療に関わる活動に参加している

また、それだけではなく地域医療の活動に参加している必要があります。薬局内だけに留まって調剤や投薬だけをしているのでは不十分であり、かかりつけ薬剤師になるには薬局の外での活動が求められます。

これには、例えば以下のようなものがあります。

  • 医療団体が主催する研修会・地域活動への参加
  • 学校薬剤師としての活動
  • 休日夜間薬局への対応 など

基本的に薬剤師会の活動へ参加していれば、簡単に要件を満たせるようになります。薬剤師会は地域住民向けに健康フェアを開催したり、お薬相談会を企画したりするため、こうした催しものに参加して活動していれば問題ありません。

また、学校薬剤師として活躍することでも算定要件に入ることになります。学校での衛生環境に関わるのが学校薬剤師ですが、こうした活動も地域医療に貢献することになるのです。

大手チェーン薬局であれば、あまり地域活動に積極的ではないことが多いです。ただ、地域に根差した中小薬局であれば、これら地域医療の貢献については特に意識しなくても条件を満たせるようになります。

認定薬剤師の資格を取得している

さらに、認定薬剤師の資格を取得していることも、かかりつけ薬剤師として活動するための条件になります。認定薬剤師にはいくつもの種類があり、このうち薬剤師認定制度認証機構が認定している資格を取得する必要があります。

最も一般的なのは研修認定薬剤師(CPC認定薬剤師)があります。eラーニングを受けたり、研修会に参加したりして所定の単位を取得することで認定薬剤師となります。

通常の薬剤師業務とは別に、こうした認定薬剤師を取得しなければいけません。ただ、eラーニングによって自宅からでも単位を取ることは可能なので、単位を取得するために必ず外部の研修会に参加しなければいけないわけではありません。

地域活動に積極的な薬局であれば、特に意識しなくても研修会への参加によって勝手に取得単位が増えていくことになります。また、単位が足りなくてもeラーニングで補えると考えれば、そこまで難しい要件ではありません。

実際にかかりつけ薬剤師をするための手順

なお、こうしたかかりつけ薬剤師になるための要件を満たした後、実際に患者さんにとっての、かかりつけ薬剤師にならなければいけません。

このときの手順としては、患者さんの同意をもらう必要があります。日本薬剤師会は「かかりつけ薬剤師としての指導料をもらうための同意書」を公表しているため、そうした同意書を活用することで患者さんから同意をもらうのです。

このとき、かかりつけ薬剤師としての業務内容や意義、算定費用を含めて細かく説明します。そうして患者さんにとっての、かかりつけ薬剤師となります。

なお、患者さんとしては自由にかかりつけ薬剤師をやめることできますし、別の薬局に移り変えても問題ありません。そのときは新旧どちらの薬局にも連絡する必要があるため、やり方を教えてあげるのも薬剤師の役割です。

かかりつけ薬局の薬剤師で地域医療に貢献できるメリット

それでは、地域活動に積極的なかかりつけ薬局へ転職し、活動するメリットとしては何があるのでしょうか。これについては、ただ調剤や監査、投薬(服薬指導)ばかりをする薬剤師ではなく、地域住民に信頼される薬剤師として活躍できることがあげられます。

患者さんは医薬品に関して多くの問題点を抱えています。例えば家に残薬がたくさん残っているのは普通です。以下は実際に患者さんが薬局に持ってきた残薬の一部ですが、こうしたケースは多いです。

また、高齢者では多剤併用していることが多く、このような状態(ポリファーマシー)を改善することも、かかりつけ薬剤師に期待されることの一つになっています。

さらにかかりつけ薬剤師として活動する場合、薬局の外でも患者さんと接する機会をもつことになります。そのため、地域住民へ貢献できる幅が広がるので医療人として信頼される存在として見られるようになります。

薬剤師は患者さんから「薬局内で暇そうにしている人」と思われがちなので、そうではなく信頼できる薬剤師をアピールすることができます。

かかりつけ薬剤師の年収・給料は高めになる

また、こうしたかかりつけ薬剤師を目指して中途採用の求人へ応募する場合、収入は高めになります。これは、研究会への参加や資格取得を含め勤務時間外も働かなければいけなくなるからです。

一般的に「薬剤師はゆるい働き方を希望する」ことを想定して年収が提示されます。「時短勤務がいい」「定時退社は必須」「土日休みがいい」と考えている薬剤師は非常に多いため、最初に記されている給料の額は低めになっていると考えなければいけません。

その中でかかりつけ薬剤師としても活動することを考えている場合、残業や時間外労働を含めてやる気をもって取り組むことになるため、高い年収になるのは当然なのです。むしろ、そのような条件であっても転職時に給料の額が少ない場合、ブラック薬局なので転職先として適切ではありません。

例えば、以下は大阪にある調剤薬局から出された中途採用の求人です。

5店舗ほど運営する地域に根差した中小薬局であり、かかりつけ薬剤師として活躍できる求人になっています。年収は500万円からと高めですが、これはかかりつけ薬剤師として時間外労働まで含めた給料となるからです。

24時間の電話対応や在宅対応で辛いのはデメリット

ただ、かかりつけ薬剤師として厚生労働省からは「患者さんからの相談は24時間対応にする」「患者さんには、開局時間外でも連絡可能な電話番号を教えるべき」と発表されています。

しかし、業務時間外に24時間対応しなければいけないため、家にいるときでも患者さんから電話がかかってくるようになります。そのためプライベートな時間と勤務時間の区別はなく、出張中や旅行先でも患者さんに対応しなければいけません。

また、場合によっては患者さんの家に出向き、在宅訪問として指導する必要も出てきます。そのため、かかりつけ薬剤師として活動するとなると研修などが必要になるだけでなく、通常業務の負担も増えて辛くなります。これについては、かかりつけ薬剤師の大きなデメリットだといえます。

かかりつけ薬剤師として地域住民の要望に応えるというのは、それだけ業務負担が増えることにつながると考えなければいけません。

やりたくないのにノルマのある薬局はブラック

なお、場合によっては正社員やパート薬剤師を含め、かかりつけ薬剤師として指導する患者数を増やすようにノルマを課している薬局もあります。調剤報酬に反映されるため、かかりつけ薬剤師の対象となる患者数を増やせば、当然ながらそれだけ薬局の売り上げは増えます。

大手チェーン薬局に限らず、中小薬局であってもノルマにしているケースがあります。例えば、「一人あたり月に30件分をかかりつけ薬剤師として指導する」などが課せられることがあるのです。ただ、そうした薬局はかなりブラックだといえます。

自ら進んでかかりつけ薬剤師をやりたいのであれば問題ありません。ただ、現実には「かかりつけ薬剤師になりたくないのに、ノルマのある薬局が存在する」のが実情です。

なりたくないのに半強制的に認定薬剤師の勉強をさせられ、24時間体制で患者さんの相談を受け付け、ノルマを達成するために患者さんへ営業をしなければいけません。

ただ、これは本来の姿ではありません。患者さん自らが信頼できる薬剤師に対してかかりつけを希望し、薬剤師がそれに応えるのが正しいです。ノルマを課している薬局では、かかりつけ薬局として優れた業務をするのではなく、単に売上だけを見ています。

転職はできるだけ避けるべきですが、そうしたブラックな薬局で働いている薬剤師は転職を検討するようになることがほとんどです。パート薬剤師に限らず、正社員であっても無理なノルマを課している薬局をやめたいと考えるのは普通なのです。

薬剤師がかかりつけをやめたい場合、引き継ぎを行う

なお、中には既にかかりつけ薬剤師として働いているものの、やりたくないと考え、途中で転職する人もいます。このときは引き継ぎをきちんと行うようにしましょう。具体的には、患者さんへの説明をしっかりと行います。

薬剤師同士の引継ぎについては、そこまでやることがありません。お薬手帳を確認すればそれまでの服用薬を把握できますし、薬歴を見れば指導内容が分かります。たとえ転職するときであっても、同僚の薬剤師に対して特に気を使うことはありません。

しかし、患者さんへの説明は必要です。他の薬剤師には特に引き継ぎがなくてもいいですが、患者さんには「かかりつけ薬剤師を続けることができなくなったことを伝え、他の薬剤師が担当になる」ことを話す必要があります。

患者さんへの引継ぎ説明がないと、当然ながら後任薬剤師は困ることになります。かかりつけ薬剤師をやめる場合、こうしたことを事前に理解するといいです。

内情を転職サイト経由で把握するべき

かかりつけ薬剤師として活躍するにしても、調剤薬局や調剤併設ドラッグストアによって内情は大きく異なります。

本当の意味でかかりつけ薬剤師として活動できる薬局の場合、当然ですがノルマはありません。必要とする患者さんにのみ、かかりつけ薬剤師を担当することになります。

また薬剤師全員ではなく、希望する人のみかかりつけ薬剤師をするのが基本です。特に子育て中のパート薬剤師だと希望しない人の方が多く、かかりつけ薬剤師をするよりも育児に専念できる環境の方が重要です。

一方でブラックな薬局であると、金儲けのために薬剤師に対してノルマを課します。こうした薬局は「かかりつけ薬剤師を推進している」とはいっても、自社の売上だけを考えているので優れた会社とはいえません。こうした薬局に就職すると後で後悔します。

そのため、「かかりつけ薬剤師として活躍したい」と考えている人に限らず、「面倒な、かかりつけ薬剤師はやりたくない」と思っている人を含め、必ず転職先の薬局ではかかりつけ薬剤師に対する取り組み内容を聞く必要があります。

地域密着でかかりつけ薬剤師を推奨している薬局であっても、全員にかかりつけ薬剤師をすることを強要していない薬局であれば何も問題ありません。そうした職場なら、時短勤務や定時退社を希望するパート薬剤師でも就職できます。一方でかかりつけ薬剤師のノルマがある薬局には、すべての薬剤師が転職するべきではありません。

ただ、「かかりつけ薬剤師に対する薬局ごとの取り組み」がどのよう実情になっているのかを自ら把握することはできません。また、求人票にもそうしたことは書かれていません。

そのため、転職サイトを活用して求人を見るとき、同時に「かかりつけ薬剤師制度への取り組みがどうなっているのか」「ノルマはあるのか」なども含めて確認するようにしましょう。

このとき、転職時は職場見学を必ず実施して現場で働く薬剤師に「実際のところ、どうなのか」を聞くことも重要です。そうすれば、かかりつけ薬剤師で活躍したい人、かかりつけ薬剤師になりたくない人を含め、転職先の選定で失敗することを防げるようになります。

かかりつけ薬局の勤務形態を確認するべき

地域に貢献する薬剤師の制度として、かかりつけ薬剤師があります。特に地域に根差した中小薬局であるほど、かかりつけ薬剤師で活躍できるようになります。

ただ、かかりつけ薬剤師を推奨しているすべての薬局で優れた医療を提供しているわけではありません。場合によっては、売上だけを考えて薬剤師にノルマを課しているブラックな薬局もたくさん存在します。大手チェーン薬局に限らず、中小薬局でもそうした残念な会社があるのは事実です。

そのため、かかりつけ薬剤師として活躍したい人であっても、かかりつけ薬剤師をやりたくない人であっても、転職先の中途採用求人がどのような制度や実態になっているのか把握するようにしましょう。

当然、自分の希望を叶えられる場所で働かなければいけません。こうしたかかりつけ薬剤師に対する取り組みは求人票に載らないため、転職時は必ず事前に内容を確認しましょう。

転職時に見落としがちな、かかりつけ薬剤師の制度ですが、働きやすさを考える上では意外と重要です。ここまで認識したうえで求人募集を吟味し、転職先を決めるようにしましょう。


薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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