一言で薬局といっても、その薬局の形態にはさまざまな種類があります。薬剤師として転職したり求人を探したりするときなど、どの種類の薬局で働けばいいのかしっかりと吟味する必要があります。

薬局は大きく「門前薬局」「マンツーマン薬局」「面分業薬局」「医療モール型薬局」の4つに分けることができます。その中でも、総合病院の前にある調剤薬局や調剤併設ドラッグストアを門前薬局といいます。

総合病院の前にある薬局であるため、特殊な薬を含めてあらゆる処方せんを受け取るようになります。そのため、勉強という意味では触れることのできる薬の種類は多いです。

それでは、こうした門前薬局の中途採用求人へ応募するときには、どのような注意点があるのでしょうか。事前に門前薬局で働くときのメリットやデメリットを理解したうえで転職すると、スムーズに勤務できます。ここでは、門前薬局への転職で注意すべき点について解説していきます。

総合病院の前にある調剤薬局・ドラッグストアが門前薬局

小さな病院や診療所(クリニック)の隣に構えている薬局をマンツーマン薬局と呼びます。広い意味でいうと、こうしたマンツーマン薬局も門前薬局と呼ぶことがあります。「内科門前の薬局」などのような表現で使われるのです。

ただ、狭い意味では病院の前にずらりと並んでいる薬局を門前薬局と呼びます。

院外処方せんを出している総合病院の周りには、複数の調剤薬局が点在していることがほとんどです。こうした薬局がいわゆる門前薬局です。大病院であれば、病院の周りに6店舗以上が密集しているのは普通です。総合病院の周辺では、それだけ処方せんを受け取ることができるからです。

そこで、門前薬局で働くときの特徴を確認していきます。

病院に合わせて土日休みが多い

薬剤師の転職先としては調剤薬局やドラッグストア、病院、企業がメインです。これらのうち、土日休みが可能な職場としては企業がメインです。現場で働く薬剤師で土日休みの案件は非常に少ないです。

ただ、門前薬局であれば土日休みの案件が比較的多いです。調剤薬局は隣接する医療機関の休みに合わせているケースがほとんどです。そのため土日に外来受付をしていない総合病院であれば、その隣にある門前薬局は土日休みになりやすいです。

もちろん土曜日に外来のある総合病院だと土曜日出勤があります。ただ、病院が土曜休みの場合はその前にある薬局についても土日休みを実現することができるのです。

例えば、以下は病院門前にある調剤薬局から出された求人募集です。

ここにある通り、勤務は月曜から金曜日までであり土日出勤はありません。クリニックは土曜日営業が多いものの、総合病院では土曜日外来をなしにしていることがあるため、結果的に土日休みを実現しやすくなっているのです。

パート・アルバイトや派遣であれば、どの職場であっても希望をいえば土日休み可能です。ただ、正社員で土日休みの求人は少ないため、非常に貴重な募集だといえます。

営業時間が比較的早いのはメリットだが、大変さや残業は薬局次第

総合病院の外来が何時までなのかによりますが、小さな病院やクリニックなどに比べて、総合病院では外来診療の受付時間が早く終わりやすいです。

16:00などにすべての外来診療を打ち切る病院は多く、その場合はそれ以降に処方せんをもってくる患者さんがいなくなります。こうした総合病院の門前薬局であると、同じように調剤薬局での営業時間は17:00や18:00と早い場合が多くなります。

一般的なマンツーマン薬局では19:00などに閉めることが多いものの、それよりも早く閉めることになります。例えば、以下は東京にある総合病院前の門前薬局から出された求人募集です。

ここにある通り、勤務時間は17:30までとなっています。これは、それだけ早めに病院が外来診療を終わるからです。

もちろん、患者さんが来なくなるまでは店舗を閉めることはできません。また、大量の処方せんが持ち込まれる薬局であると、毎日1時間以上もオーバーして薬局を閉めなければいけないこともあります。当然、患者さんがいなくなった後は薬歴管理をするため、服薬指導の内容を書き込まなければいけません。

こうした後処理まで含めると、営業時間が早かったとしても必ずしも素早く帰れるわけではありません。非常に患者数が多くて大変な門前薬局だと、残業時間が長くなってしまうこともあるのです。

もちろん同じ病院の前にある薬局であっても、薬局の立地が違えば患者さんの数が異なります。総合病院の門前薬局で患者数も比較的落ち着いている調剤薬局・ドラッグストアなのであれば、わりと早い時間に帰宅できるというメリットがあります。

残業なしの定時退社が可能かどうかは薬局の状況次第なので、これについては転職前に確認しましょう。

総合病院の門前であると、薬剤師数が多い

処方せんを受ける量が多くなると、その分だけ薬剤師の在籍人数は多くなります。それだけマンパワーが必要になるため、これはある意味当然のことです。

基本的には薬局に在籍する薬剤師の人数が少なくなるほど、休みを取りづらくなります。例えば一人薬剤師の店舗であれば、自分一人しかいないため、多少の病気であっても頑張って店を開けなければいけないことはよく起こります。

その一方で、門前薬局では薬剤師数の在籍人数が多くなりがちなので、急な休みが必要になったり、有給休暇を取得したりするなどを行いやすくなります。そのため有給休暇を含め休みを取れるかどうかを心配する薬剤師であれば、門前薬局は最適です。

特に子育て中のママ薬剤師であれば、薬剤師の在籍数が多い調剤薬局・ドラッグストアで勤務することのメリットは多いです。代わりの薬剤師がいるほど、子供に急な発熱などの病気が発生したときであっても対応しやすくなるからです。

総合病院の門前薬局で薬剤師数がたくさんいる場合、看護休暇(子供の看護をするため、急な休みを認めてくれること)を実施している薬局が多くなりやすいです。例えば、以下は17:00までが終業時間であり、看護休暇を認めている調剤薬局の求人です。

数は少ないものの、こうした求人は実際に存在します。薬剤師の人数が多い薬局ほど処方せん枚数は増える傾向になるので大変ですが、突然の休みや有給休暇という観点でいうと優れているのです。

効率重視になりがちなのはデメリット

なお、総合病院なのでさまざまな患者さんが訪れ、処方内容も多岐にわたっているので勉強になりますが、処方せんの数が多くなるため当然ながら忙しく働かなければいけません。

事務室の隣には、以下のように大量の処方せんが何枚も溜まり、薬局内で薬剤師が慌ただしく調剤・監査・投薬をするのが日常的になることもあります。

こうした処方せんの量が多い門前薬局であると、「患者さんへの丁寧な説明」というよりは、「できるだけ素早く調剤して、効率的に服薬指導を行う」ことに視点が行きがちになります。そのため、どうしても患者さんを素早くさばくことに集中してしまいます。

ただ、薬剤師としてこれはあまり良くない傾向です。本当の意味で優れた医療を提供しているとはいえません。しかし、これが一般的な総合病院の門前薬局の実態となります。

そうはいっても、すべての門前薬局がこういうわけではありません。私が知っている門前薬局の管理薬剤師の中には、「薬剤師会の活動に積極的に参加し、患者さんからの質問を24時間受け付けている」という人がいました。かかりつけ薬局の薬剤師(かかりつけ薬剤師)として、患者さんの対応をしっかり実践していたのです。

会社の経営方針によりますが、門前薬局であっても効率だけを重視するのではなく、地域医療への貢献を考えている薬局も存在します。そうした門前薬局であれば、たくさんの勉強をしながら薬剤師としても活躍できるようになります。

・薬局内の機器類が整備されている

ちなみに多くの処方せんを受け付けている門前薬局であれば、薬局のIT化や最新の調剤設備を含めて、職場の環境が整っている傾向にあります。

患者さんの待ち時間を短くするためには、それだけ効率を重視して調剤や監査を実施しなければいけません。IT化や機器類が不十分であれば業務効率が落ちますし、薬剤師が調剤ミスを犯せばその分だけ患者さんの待ち時間が長くなります。

こうしたことを解消するため、大量の処方せんを受ける門前薬局であるほど、薬局内の設備は完備される傾向にあります。例えば以下は自動監査システムであり、調剤薬局であってもこうした機器類を揃えていることがあります。

他にも一包化を自動で実現してくれる全自動分包機の導入など、薬局ごとにどれだけの設備が整っているのか異なりますが、いずれにしても設備面では一般的なマンツーマン薬局や面対応薬局(いろんな医療機関の処方せんを受け付ける薬局)よりも優れやすいです。

事前調剤や一包化の予想はできない

また多くの調剤薬局やドラッグストアでは、患者さんが来る前に処方せん内容をもとに調剤することが頻繁にあります。目の前のクリニックに処方せんをFAXしてもらい、それに従って調剤するのです。

他には、事前に一包化をしておくことで患者さんの来院に備えることもよく成されます。患者さんが処方せんを持ってきてから一包化をしていては多くの時間がかかります。そこで、本当はダメなのですが、空き時間に一包化をしておいて事前に調剤するのです。

ただ、総合病院の周辺には多くの調剤薬局が存在するため、毎回該当する患者さんが来てくれるとは限りません。調剤薬局内の混雑状況を見て、処方せんを持っていく薬局を毎回変える人もたくさんいます。そうなると、事前の調剤は意味がなくなります。

こうした事情があるため、必ず来てくれる患者さん以外は「実際に患者さんが来院した後に調剤をする」のが基本になります。他の薬局に比べて、前もっての調剤を実施しにくくなるデメリットが存在するのです。

門前薬局で働く薬剤師の年収・給料はどうか

それでは、こうした大病院(大学病院や総合病院)の門前薬局で働く薬剤師として転職する場合、収入はどのようになるのでしょうか。求人を確認するとき給料は重要であるため、門前薬局での募集がどうなっているのか理解しておく必要があります。

これについては、一般的な調剤薬局やドラッグストアへ転職するときと給料は変わらないと考えましょう。門前薬局だからといって、特に年収が高いわけではないのです。

門前薬局といってもさまざまです。前述の通り同じ病院の周りにある薬局であっても、患者さんが非常に多くて繁盛している薬局があれば、薬剤師1~2人で問題なく対応できる処方せん枚数の調剤薬局も存在します。

一般的に大病院の前だと、処方せんの単価は高くなる傾向にありますが、薬局の立地によって収益性は大きく異なります。そのため、提示される収入は薬局によってバラバラだと考えるようにしましょう。

また東京や大阪などの都市部であると、未経験で中小薬局へ転職すれば一般的に年収450万円からのスタートです。調剤経験者であれば500万円以上になるのが基本です。管理薬剤師であれば、さらに高い給料になります。

門前薬局へ転職するとき、これと同じような収入になると考えればいいです。例えば、以下は大阪の病院門前薬局から出された中途採用募集です。

年収450万円以上ですが、調剤経験者については年収500万円以上になると記されています。これが、門前薬局で働くときに提示される一般的な給料になると考えましょう。

もちろん、薬局によっては未経験でも都市部で年収500万円以上を提示してくれる門前薬局は存在します。ただ、こうした薬局だと非常に処方せん枚数が多く、残業もあって薬剤師業務は忙しくなると考えましょう。

パート・アルバイトや派遣で勤務するのも可能

なお、こうした門前薬局の求人については正社員に限らず、パート・アルバイトとして働くことも可能です。一般的な内科の前にある薬局よりも、こうした門前薬局の方がいろんな処方せんを学ぶことができ、普通の薬局では見慣れない薬も取り扱うようになります。

当然、その中には抗がん剤や麻薬などもあるため、服薬指導するときのスキルを磨くことができます。

薬局内には多くのパート薬剤師が活躍しており、正社員よりもパート・アルバイトの数の方が多いことはよくあります。そのため、当然ながら門前薬局でもパート薬剤師の求人も出されます。

例えば、以下は千葉にある総合病院前の調剤薬局から出された求人募集です。

時給2,000円以上と給料は普通ですが、このように総合病院門前にある薬局でも募集が存在します。この求人では「週2日以上、1日4時間以上」から応募可能ですが、求人によっては週1回だけなど柔軟な働き方も可能です。

また、同様に派遣求人も出されます。派遣だと時給3,000円以上でも普通ですが、門前薬局でいろんな処方せんを経験しながら高時給を実現することができます。例えば、以下は神奈川の調剤薬局から出された募集です。

総合病院の門前薬局ですが、派遣勤務での時給は3,050円と優れています。こうした派遣求人を活用し、薬剤師としてのスキルを磨いても問題ありません。

派遣の場合、正社員と違って残業なしになります。それでいて高い給料を実現できるというメリットがあります。

転職サイト経由で門前薬局の求人を見つける

なお、こうした門前薬局の薬剤師として活躍するためには、当然ながら求人を見つけなければいけません。ただ、どこに門前薬局の薬剤師募集が出されているのか見当が付きません。

また門前薬局とはいっても、その規模はまったく異なります。薬剤師が非常に多くてたくさんの処方せんを受け付ける門前薬局があれば、処方せん枚数は非常に少なく落ち着いている調剤薬局もあります。薬局の立地で患者数はまったく違うものになるのです。

そこでどのような転職を実現したのかを考えたうえで、転職サイトを活用することで求人を紹介してもらうようにしましょう。

薬局求人の中でも、門前薬局の募集はわりと多いです。ただ、以下のポイントに着目したうえで求人を選ぶようにしましょう。

  • 家からの距離はどうか
  • 忙しさはどくれいらいか
  • 薬剤師の人数はどうか
  • 調剤設備はどうなっているのか

薬剤師数が多ければいいわけではありません。薬剤師人数と忙しさ(処方せん枚数)は一般的に比例するため、忙しくない門前薬局を希望する場合、薬剤師人数の少ない薬局を選ぶほうが適切なケースもあります。

こうしたことを理解したうえで、複数の転職エージェントを活用しながら、できるだけたくさんの選択肢の中から中途採用求人を吟味するようにしましょう。

大病院(大学病院や総合病院)の前にある薬局へ就職する

個人病院ではなく、一般的に大学病院や総合病院など大病院の前にある薬局を門前薬局といいます。広い意味ではマンツーマン薬局も門前薬局に含まれますが、ここでは総合病院の前にある調剤薬局やドラッグストアで勤務するときの注意点について解説してきました。

大病院の前にある調剤薬局で働くのは、土日休みがあったり終業時間が早かったりなど、他の薬局にはないメリットがあります。

ただ、処方せん枚数が非常に多くて作業が大変な調剤薬局の場合、患者さんが多いために終業時間を過ぎても業務が終わりません。そのため薬歴入力などの仕事を含めると、労力が非常に大きくなってしまうことがあります。

また一般的な薬局のように事前の調剤を実施しにくく、「患者さんが実際に訪れた後に調剤を開始するケースが多い」というデメリットもあります。

こうしたことを理解したうえで、いくつもの転職サイトを活用して門前薬局の求人を探すといいです。抗がん剤や麻薬を含め、珍しい薬にも触れられるのが門前薬局です。より多くの薬に触れ、勉強したい薬剤師にとって門前薬局の募集は最適だといえます。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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