薬剤師として転職するとき、転職先として病院や調剤薬局、ドラッグストアなど多くの選択肢があります。その中でも、調剤薬局やドラッグストアでは新規店舗の求人が出されていることがあります。
新しい店であると、最新の監査システムや処方管理システムが導入されています。店も新しいため、フレッシュな気持ちで業務に従事することができます。
また、新規オープンの調剤薬局やドラッグストアであると一般的に高年収になりやすいです。さらには、ゼロからのスタートなので自ら薬局内のルールを決め、新たな店舗を構築していけるという面白さもあります。
ただ、新規オープンの薬剤師求人では、当然ながらメリットがあればデメリットもあります。そこで新規出店による調剤薬局やドラッグストアへ転職して働き始めるとき、どのような点に注意しなければいけないのかについて述べていきます。
もくじ
オープニング予定の店舗からも求人募集が出る
コンビニの数よりも薬局の方が多く、さらには調剤薬局やドラッグストアはいろんな場所に乱立しています。そのため、当然ながら新規でのオープニング予定の薬局はそれなりにたくさん存在することになります。
しかし新規オープンさせるということは、それだけ薬剤師が必要になります。ただでさえ薬剤師不足なのに、新規店舗を構えるとなるとより薬剤師の人数が足りなくなります。
そこで、新規オープン予定の求人が出されるようになります。例えば、以下は東京の調剤薬局から出された新規オープン予定の求人募集です。
年収500万円からであり、条件としては悪くありません。当然、既存店舗から出される中途採用の求人数よりは圧倒的に少なくなりますが、こうした新規店舗の求人も存在するのです。また、新規オープン予定の求人へ応募して働くことについて、既存の店舗とは異なるメリットがあります。
年収・給料は高くなり、条件交渉もしやすい
既に述べた通り、新規オープンの店舗だと「そこで働く薬剤師だけが足りていない」という状況が発生しやすいです。そのため、求人票に記載される年収の額は高くなりやすいです。
一般的に東京や大阪、名古屋、福岡、横浜などの都市部になると、調剤薬局でも年収は低くなりがちです。中小薬局だと未経験の状態で良くて年収450万円です。大手チェーン薬局だとさらに収入は低くなります。
しかし、薬剤師が足りていない新規店舗の中途採用では、最初から高い給料を実現できるようになります。例えば、以下は神奈川県横浜市の調剤薬局から出た求人です。
ここにある通り、年収520万円からの開始です。給料の高い求人では、それなりの理由があるものの、こうした店舗は「新規オープンなので大きな収入を得られる」という誰もが納得できる理由があります。もちろん求人によって提示される年収額は求人ごとに異なりますが、「新店舗の求人で年収450万円ほどの給料は低い」と考えてください。
新規店舗だと、ルールを含めて店舗での決め事が何も決まっていません。また、薬剤師数が少ない状況でスタートすることになります。その分だけ最初が大変であるため、多くの給料を得られて当然と言えるのです。
また、こうした店舗だと勤務条件や福利厚生などの条件についても交渉しやすくなります。すべてのルールが決まっていないため、働き方について自由に交渉するといいです。
最新の機器類の中で仕事ができる
歴史の長い薬局であると、その分だけ古い機器を活用して調剤しなければいけないことがあります。ただ、新規オープン予定であると電子薬歴や散剤・錠剤分包機など、調剤・監査・薬歴管理を実施するときに必要な機器類がすべて新しいため、最新の状態で薬剤師としての仕事をスタートできます。
機器の使い方を自ら理解しなければいけないものの、古臭い機器の中で調剤することはありません。
ただ、最低限の機器類については揃えられているものの、調剤を行いやすくする高度な機器まで含めて設置されているわけではありません。例えば、以下は自動監査システムの機器になります。
調剤薬局でこうした高度な機器を取り揃えている店舗は少なく、当然ながら患者数を予測できない新規オープン予定の店舗に備え付けられているわけではありません。
また転職後に働き始めると、既存店舗であれば機器類でトラブルがあったとしても、薬局内に対処法を知っている人が必ずいます。ただ、新たな店舗だとすべての機械が新しいため、トラブル時にどのように対応すればいいのか全員が分からず、最初は慌てるようになることは理解しましょう。
管理薬剤師として転職することができる
さらにいえば、管理薬剤師として転職するのも容易です。
既存の薬局であると、既に勤務薬剤師やパート薬剤師、事務として働いている人がいます。こうした中、転職によって新たに管理薬剤師として着任するのは実際のところ大変です。既存社員にとってみれば、外部から新たな上司が来ることになるので不安に思うからです。
社内から管理薬剤師として他の人が来るのと、転職によって新たな人が来るのでは意味が大きく異なるのです。
一方で新規オープン予定の店舗であれば、たとえあなたが転職によって管理薬剤師として着任したとしても、ゼロからのスタートなので「新しい管理薬剤師は大丈夫なのだろうか」という疑念を持たれることはありません。管理薬剤師として転職するにしても非常にやりやすいのです。
例えば、以下の求人は新規オープンの薬局であるものの、管理薬剤師の募集をしています。
大阪での中途採用求人であるものの、年収600万円からとなっています。新しい薬局なので、収入面については非常に優れた条件を提示してくれます。
当然ながら、「前職よりも年収アップしたい」「勤務条件を調整してほしい」などを含めて柔軟に労働条件を交渉することができます。管理職として転職が容易なことに、新規オープンの店のメリットがあります。
管理薬剤師として新規店舗の求人に申し込む場合であれば、自分の意見を積極的に反映させ、自ら店舗のルールを作りやすいです。ただ、当然ながら他の薬剤師の意見を取りいれつつ、質の高い店舗を作り上げるように意識しなければいけません。
キャリアアップ、スキルアップが可能
調剤薬局や調剤併設ドラッグストアで働く薬剤師である以上、調剤や監査などの技術をもっているのは普通です。
ただ、新規オープンの店を経験すると、これら調剤や投薬以外の知識・スキルまで学ぶことができます。すべてゼロからの立ち上げになるため、「新たな店舗を構築する」という普通では経験できないことを実現できるのです。新店舗でしか学べないことを体験するため、大きなスキルアップを狙うことができます。
さらに、そうした経験をしている薬剤師であれば、昇進を含めたキャリアアップを実現しやすいです。新たな薬局ができる過程を見る体験はとても貴重なのです。
他にも将来、調剤薬局を立ち上げて独立起業を目指す薬剤師であれば、こうした新規店舗を経験することは非常に貴重な体験になります。自分の店をもったとき、どのように薬局を構築していけばいいのか理解できるようになるからです。
比較的あなたの意見を聞き入れてもらいやすい
また、これまで述べた通り積極的に自らの意見を述べることで、そうした要望が通りやすくなります。
薬剤師として楽に働きたい人にとって、新規店舗は向いていません。一方で高年収を実現させたり、自らの意思で薬局を作り上げたいと考えたりしている人にとってみれば、非常に優れた求人になります。
ただ、「新規オープンの店であれば、すべて自分のルールで行える」というわけではないので注意しましょう。「既に調剤薬局やドラッグストアを運営している会社が新たな店を出す場合」というケースがほとんどだからです。
このようなとき、管理薬剤師には既に薬剤師として豊富な経験をもった人が就任します。
基本的には管理薬剤師の指示のもと、薬局のルールが作られます。そのため、新規オープンの店では「すべて自分の考えのもとで新たなルールを作り、業務にあたることができる」とは思わない方がいいです。
※管理薬剤師として転職する場合、店長なのでより自分のルールで薬局を作れるようになります。
ただ、既存店舗で働くときよりは自由度が高いため、自らの意見を言うことで要望を取りいれてもらえる可能性は非常に高いです。完全に自分オリジナルのアイディアだけで店を作り上げるほどの自由度はないものの、既存店舗に比べるとかなり意見が反映されやすいのです。
そうはいっても、普通では聞き入れてもらえないあなたの意見が取り入れられ、他の同僚と一緒に店舗をゼロから作れることは大きなメリットです。
薬局の実情が分からないのはデメリット
ただ、当然ながらメリットばかりではありません。デメリットも存在します。このとき、一番のデメリットは「転職時に薬局内がどのようになっているのか、その実情が分からない」ことがあります。
新規店舗である以上、実際に稼働して1年以上経たないと内情が分かりません。季節によって患者数は変動しますし、どの時期や時間が忙しいのかは薬局によって異なります。そのため新規オープンの店で提示される勤務時間などの条件は、大幅に変動する可能性が高いです。
新規出店の店舗で働くとき、提示される労働時間や忙しさなど環境面での条件については、参考程度までに捉えておくようにしましょう。
例えば忙しい店舗に成長することで、残業が多く発生するようになるかもしれません。ただ、忙しいということは「ゼロから立ち上げて儲かる薬局(収益性の高い店舗)を作り上げた」ことでもあるため、実は喜ばしいことです。
ほとんど患者さんが訪れず、収益性も低いために会社の荷物になるような新店舗よりは、「忙しいけれども誰からも認められる薬局を構築した人」と思われる方がはるかに素晴らしいです。もちろん、それだけ成績が良ければ、年収など給与面の条件を再度交渉することも可能です。
・店舗見学はできない
当然、新規店舗だと薬局はまだ建築中ですし、中に入ることはできません。一般的に転職をするときは店舗見学を実施します。ただ、こうした職場見学を実施することはできないと考えてください。
ただ、それ以外の項目については転職前に把握するようにしましょう。例えば店舗の場所を理解することにより、家からの通勤手段や距離、時間が分かるようになります。薬局内をこの目で見ることはできなくても、それ以外のことは把握しておくといいです。
・人間関係などを把握しにくい
また、数年ほど運営されている既存店舗であれば、薬局やドラッグストアで既に人間関係が構築されています。このとき人間関係が良いかどうかは、職場見学を実施すればある程度は把握できます。
一方で新規店舗の求人であれば、前述のとおり職場見学は不可であり、人間関係についてもゼロの状態からスタートになります。店舗の状況だけでなく、新規店舗である以上は中で働く薬剤師や事務の人間関係まで事前に把握するのは無理です。
調剤薬局やドラッグストアへすぐ入社できるわけではない
一般的に薬剤師の転職では、いまの職場を辞めて新たに転職するときにすぐ働けるようになります。特に入社時期を決められることはなく、転職によって内定が決まった後は「早めに薬局で働いてほしい」といわれます。
もちろん退職関係の事情がある人だと、2~3ヵ月ほど入社を待ってくれます。ただ、いずれにしても入社時期を決められることはなく、早めに来てもらうように要請されます。
一方で新規オープン予定の店舗だと「〇年〇月からのスタートになります」などのように求人が出されます。実際のオープニングが半年以上も先になることは普通なので、実際に働くようになるのは先になることを理解しましょう。
ただ、その分だけいま働いている職場とは円満退職を実現しやすくなります。急な退職ではなく何ヵ月もの余裕をもっての転職であるため、その間に引き継ぎをするなど時間的なゆとりをもって新たな職場へ転職できるのです。
在宅薬局での新規オープンも可能
なお、新規のオープニングは調剤薬局やドラッグストアだけではありません。在宅薬局に関する新規オープンも存在します。
当然、多くの調剤薬局で行われているような「薬を調剤して老人施設にもっていき、薬を渡すだけの在宅(施設在宅)」ではありません。医師や看護師を含め、他職種の人と連携して患者さんの自宅で指導を行う在宅業務のことを指します。
こうした薬局の求人についても存在します。例えば、以下は神奈川県横浜市の在宅特化の薬局求人であり、新規開局の案件です。
勤務薬剤師で在宅未経験であっても年収600万円からスタートであり、収入面での条件は非常に優れています。当然、在宅の経験者であるとさらなる高い給料を実現できます。
また、在宅薬局の新規オープンの場合、あなたに在宅経験がある場合は本当の意味で「ゼロからあなたのルールで薬局を作り上げることができる」という可能性が高いです。在宅薬局であると、他の薬剤師も在宅経験がないことが多いため、自分のルールで行いやすいのです。
実際のところ、本格的な在宅を実施したことのない薬局がほとんどです。そのため、在宅経験ありの人はそれだけで重宝されます。
当然、在宅を経験したことがなくても新規店舗では重宝されますし、ルール作りが可能になります。やる気がある人であるほど、新規出店の在宅薬局へ転職するメリットは大きいです。
パートは微妙だが、派遣は条件がいい
なお、調剤薬局やドラッグストアで働くことを考えるとき、パート・アルバイトを検討する人も多いです。このとき、新規オープン予定の店舗でパート・アルバイトをするのは、そこまでメリットはありません。時給2,000円からのスタートになるのが一般的だからです。
正社員であれば、最初からそれなりに高い収入を実現できるようになります。しかし、パートだと普通の時給になり、さらには新店舗でルールが決まっておらず、忙しいわりには時給が他の薬局で働くときと同じになります。
一方で派遣薬剤師の場合、オープニング店舗で働くことは大きな意味があります。非常に時給が高いからです。薬剤師が足りていない分、派遣薬剤師についてもそれなりに高い給料を実現できるのです。特別な理由がない限り、時給3,000円以上は確保できると考えればいいです。
例えば、以下は調剤薬局から出された新規店舗での派遣求人になります。
「即日から」とあるため、既にオープンはしているが薬剤師の数が足りていないので緊急での募集であることが分かります。
時給は3,800円であり、正社員よりも高い給料を実現できます。仮にこの薬局で週4日ほど勤務した場合、月の収入は以下のようになります。
- 時給3,800円 × 月16日勤務(週4日) × 1日8時間 = 486,400円
9:00~18:00の勤務だと、休憩1時間で1日8時間の勤務になります。ただ、週4日しか働いていなくても月収が約50万円と高額です。参考までに、週5日のフルタイムだと月の給料は608,000円となります。派遣薬剤師により、新店舗で効率的に稼ぐという方法でも問題ありません。
転職サイト経由で新規店舗の求人へ応募する
ただ、いくら新規オープン予定の店舗で高年収を実現できたり、ゼロから薬局を作り上げることができたりするとはいっても、そうした店舗の求人がどこにあるのか分かりません。
まず、こうした特殊な案件を自らの力で探すのは非常に難しいです。新規店舗の求人が表に出てくることはほぼないからです。既存の店舗であってもどこに良い薬局の求人があるのか分からないのに、新規オープンの求人を頑張って探すのは現実的ではありません。
そこで、必ず薬剤師専門の転職サイト(転職エージェント)を活用しましょう。こうした会社は調剤薬局やドラッグストアとのつながりが強いため、どの地域で店が新規オープンし、どのような求人が出されているのかを把握しています。
ただ、それでも全体の数としては少ないのが現状です。例えば、以下は5万件以上の求人募集を保有している転職サイトですが、「新規オープン」で検索すると167件しかヒットしませんでした。
当然、あなたの家の近くにある店舗となると数がより限られます。さらには年収や勤務条件、会社規模を含めて多くの求人の中から選ばなければいけません。しかも、求人票はすぐに消されるわけではないため、先ほどの求人結果には「既にオープンしてしまった店舗」も含まれるようになります。
そのため1社だけの転職エージェントを利用する人はほぼ存在しません。新規店舗の求人のような非常に珍しい案件の場合、2~3社以上の転職サイトを利用するのが基本です。そうしなければ、そもそも条件に合った求人を発掘できないからです。
給料や勤務条件の面でいえば、オープニングの店舗で働くことは非常に優れています。ただ、全体の求人数が少ないことから、できるだけ求人数を確保できるように複数の転職サイトを利用しなければいけません。
新店舗のオープニングとして働く
薬剤師として転職するとき、ほとんどの求人は既存店舗に対する募集です。ただ、中には新店舗のオープニングとして働ける職場も存在します。実際、そうした求人が転職サイト経由で出されています。
新規出店の場合、当然ながら調剤薬局やドラッグストアとしては薬剤師の数が足りなくなります。そのため、新店舗の求人だと高い年収を提示されやすくなります。まったく同じ会社で働くにしても、収入の面では大きな違いがあるのです。
ただ、建物は工事中なので職場見学は物理的に不可能であり、薬局の内情がどのようになっているのか確認することはできません。また一緒に働く人との人間関係が、どのようになるのか事前に推測することも不可能です。こうしたデメリットがあることは理解しておきましょう。
しかし、新店舗のオープニングスタッフとして勤務するだけで自由度の高い働き方を実現でき、さらには高年収となります。そうしたことを実現したい場合、早めにいくつもの転職サイトへ登録しておき、求人が出されたときにすぐ求人へ応募するようにしましょう。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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