これから薬剤師が転職しようとするとき、特定の会社を決めたうえで転職するのではなく、まずは転職フォーラムに参加できないかと考えることはよくあります。
新卒薬学生の就職活動であれば、合同説明会などのフェア・イベントがいろんな場所で開催されています。一方で既に社会で働いている薬剤師についてはどうなのでしょうか。
当然ながら、新卒向けの合同説明会イベントとは異なり、薬剤師向けのセミナーフォーラムはほとんど存在しません。稀に開催されることはありますが、参加したとしても規模としては非常に小さいものになってしまいます。
そこで、薬剤師が転職セミナーなどの説明会に参加することを考えたとき、実際のところ「参加する価値はどうなのか」について、その実情を解説していきます。
もくじ
転職サイトが開催する薬剤師向けのフェア・フォーラム
まず、薬剤師向けの転職セミナーとはどういうものなのでしょうか。これについては、転職エージェントが開催するイベントだと考えるようにしましょう。
就職活動でも、リクナビやマイナビなどが大規模の合同説明会を開催しています。これと同じように、マイナビ薬剤師などの転職サイトが薬剤師向けのフェア・イベントを実施するのです。
世間一般人向けの転職セミナーであれば、あらゆる時期に開催されています。一般人で転職を考えている人は非常に多く、以下のように多くの人がセミナーフォーラムへ足を運びます。
また、そこには非常に多くの企業が参加しています。業種はバラバラであり、転職の合同説明会へ参加することで一気にいろんな会社を見て回ることができます。各社ごとにブースがあり、特別講演のセミナーだけでなく、採用担当者から企業説明を受けて生の情報を仕入れることが可能です。
就活学生向けの合同説明会を社会人向けにしたのが転職フェアだと考えれば問題ありません。
薬剤師のセミナーイベントに人が来ない理由
それでは、こうした説明会などのフォーラムが薬剤師向けに頻繁に開催されているかというと、そこまで活発ではありません。むしろ、年間を通してほぼ転職セミナーは存在しないと考えた方がいいです。ゼロではないものの、非常に少ないのです。
これには、薬剤師ならではの理由があります。主な理由としては以下のようなものがあります。
- 大手薬局の参加がメインなので意味がない
- 説明会イベントが小規模でセミナー内容がつまらない
- 選考過程は簡単であり、対象人数も少ない
それぞれについて解説していきます。
大手薬局の参加がメインなので意味がない
薬剤師が転職関係の合同説明会に参加してもいいですが、実際のところあまり意味がありません。その理由としては「イベント内容がショボい」ことが挙げられます。
まず、参加企業をみても大手の調剤薬局チェーンがほとんどです。中小薬局は参加しません。
一般的に薬剤師の転職では、大手ではなく中小薬局を目指す人が多いです。大手だと提示される年収が非常に低く、未経験だと年収400万円未満が普通です。一方で中小薬局では東京や大阪などの都市部でも年収450万円以上であり、大手から中小薬局へ転職するだけで年収アップできます。
また、大手になるほど無駄な報告書類業務があってサービス残業が多くなり、さらにはいろんな場所への転勤があります。そのため、中小薬局が選ばれやすいのです。
しかし、薬剤師の転職フォーラムでは大手薬局しか来ません。中小薬局が参加することはないのです。それだけでなく、病院や一般企業も参加していないケースがたくさんあります。大手チェーン薬局の話を聞いたところで、正直意味がありません。つまり、セミナー参加の意義がないのです。
説明会イベントが小規模でセミナー内容がつまらない
このとき、転職セミナーの内容が面白いのであればいいですが、残念ながらフォーラムの内容も大したことがありません。さらには小規模であり、1~2社ほどしか参加企業がないです。よくある就活の合同説明会のように、何十社も話を聞けることはありません。
例えば、以下はマイナビ薬剤師が開催した転職セミナーになります。
具体的にどのような内容になっているかというと、大手チェーン薬局として知られる総合メディカルがゲストスピーカーとしてセミナー講演を実施するだけです。
実際の日程は以下のようになります。
大手チェーン薬局の採用担当者に「必要とされる薬剤師は?」という内容でセミナー講演をされても、内容が面白くないことは目に見えています。また、その後にあるマイナビからの「転職活動の進め方」についても、聞いてみたいと思えるような内容ではありません。
薬剤師向けの転職イベントの開催があるとき、そこには何十人もの薬剤師が参加しており、さらには合同説明会として多くの企業が参加し、それぞれのブースがあることを想像しているかもしれません。
しかし、薬剤師の転職フォーラムでそうしたことはありません。1~2社ほどの大手薬局が参加しているだけの、非常に小規模で内容もショボい転職フェアであることが多いです。
選考過程は簡単であり、対象人数も少ない
それだけでなく、そもそも転職のためにイベントへ参加する意味自体、薄いです。薬剤師の場合は医薬品業界への転職が基本であり、業種としても「調剤薬局、ドラッグストア、病院、企業(医療関連会社)」しかありません。
一般人のように、あらゆる業界から選ぶわけではありません。自分の方法性がある程度、定まっている状態で転職活動をすることになります。
しかも、薬剤師だと選考過程が簡単です。一般人の転職では、採用する人をかなり吟味します。誰でもいいわけではなく、履歴書や面接を含めて慎重に審査され、不採用になるケースは非常に多いです。
一方で薬剤師の場合、このように選考過程が大変になることはありません。もちろん大病院や一般企業の面接を受ける場合はそれなりに戦略を練る必要があります。ただ、調剤薬局やドラッグストアであれば薬剤師資格があれば誰でも選考に通過してしまいます。
もちろん面接に遅刻してきたり、転職回数が多かったりする場合は薬剤師でも面接で落とされることがあります。ただ、普通に社会で活躍しているのであれば、薬剤師免許さえあれば誰でも簡単に内定をもらえるようになってしまうのです。
私もこれまで、薬剤師として何回か転職をしました。このときは正社員で勤務したことがあれば、アルバイト・派遣として働いたこともあります。
このうち正社員としての最初の転職では、面接を受けた次の日には内定が出されて薬局での就職先が決まりました。転職サイトを利用して転職したわけですが、面接の翌日に内定承諾して以下のような入社メールが届きました。
選考が難しいのであれば、どのような会社なのか事前に理解したうえで応募することで審査に通りやすくなります。ただ、薬剤師だと「選考過程が難しくないため、相手企業の研究が厳密でなくてもいい」ようになります。
これに加え、薬剤師は全国に30万人ほどしかいません。この中で転職に興味のある人となると、さらに人数は限定されます。対象人数が少ない以上、転職フェアの規模は小さくなるしかありません。
しかも、「そもそも、どの薬局で勤務しても仕事内容は大きく変わらない」「病院が参加することがない」などの理由まで重なり、フォーラム参加の意味がなくなっているのです。
説明会参加での直接応募はメリットゼロ
なお、こうした薬剤師向けの転職説明会に参加するとき、「転職エージェントを介さずに、イベントで知り合った会社へ直接応募できるのはメリットではないか」と考える人もいます。ただ、薬剤師の転職においてイベントなどで知り合った企業に対して直接応募するメリットはゼロであり、むしろデメリットしかありません。
よくあるトラブルは勤務地の問題です。薬剤師の転職で直接応募する場合、勤務地が明確に決まっているのは病院しかありません。調剤薬局やドラッグストア、一般企業では働く店舗を含め勤務地は決まっていません。そのため、直接応募ではどこで働くようになるのか不明です。
特に薬局の場合、店舗によって開局時間が違うのは当然です。隣のクリニックの開院時間に依存するからです。また、取り扱う科目や1日の処方せん枚数も異なります。そのため、直接応募では勤務条件の交渉すらできません。
一方で転職サイトを通しての応募であれば、薬局でも一般企業でも「どの店舗で働くのか」が明確に決まった状態で応募することになります。さらにいうと、単なる転職ではなく難しい希望条件での就職も可能です。
例えば薬局へ転職するのであれば、「管理薬剤師やエリアマネージャーとして転職する」「一人薬剤師の店舗で働き、人間関係の問題を少なくしたい」「子供が小学校高学年になるまで時短勤務をしたい」などの要望は、転職サイトを介するからこそ可能になるのです。
例えば、以下は東京の調剤薬局から出された実際のエリアマネージャー募集です。
自ら応募する場合、こうした勤務条件で働くのは困難です。また、残業時間の有無や勤務時間を自分で交渉しなければいけません。
さらにいうと、薬剤師で年収交渉に長けている人はほぼ存在しません。優れた給料や時給を実現できるのは、転職エージェントの担当者が間に入って交渉してくれるからになのです。
転職フェアで採用担当者と直接つながれるというと、メリットに感じるかもしれません。ただ、薬剤師に関していえば柔軟に条件交渉することができ、さらには勤務店舗まで明確に決めた状態で転職するのが一般的であることから、これらが無理な直接応募の場合だとデメリットしかありません。
職場見学できないのもデメリット
また、会社の採用担当者と顔を合わせることはあったとしても、実際の店舗に出向いて見学することはできません。そのため、会社の優れている点や取り組みを聞くことはできたとしても、実際のところ「現場ではどうなのか」については不明なのです。
薬剤師の転職で失敗しないコツの一つとして、職場見学があります。面接後に実際に勤務する店舗へ出向き、一緒に働く人や調剤設備を見学させてもらうことにより、どのような環境で勤務するのか把握できるのです。
職場見学ですべてを把握できるわけではありませんが、それでも中で働く人の人間性を確認することができます。どのような機器類が揃えられているのかも分かります。大まかな職場の忙しさも理解できます。そのため、転職での失敗を大幅に減らせるのです。
また、現場で働いている人に対して「実際のところ有給休暇はどれくらい取得しているのか」「ヘルプ体制はどうなっているのか」などを含めて気になる点を聞くことができます。
しかし、あくまでもイベント・フェアではその場で話を聞くだけになります。店舗見学をすることはできず、「現場の実情はどうなのか」までは把握できません。しかも、直接応募だと前述の通り「どの場所で働くのか」ですら、不明です。
こうしたことから、「どのような会社なのか、ザックリとして概要を知りたい」のであれば問題ないものの、詳細についてまでは分からないと考えるようにしましょう。
興味ある企業が合同説明会に参加するなら多少は意味ある
なお、薬剤師にとってメリットの少ない転職説明会ですが、合同説明会にあなたの興味がある会社が来るのであれば、多少は参加する意味があります。どのような仕事内容になるのかについて、概要を理解できるからです。
薬局については、どの会社も業務内容がそこまで変わらないので聞く意味はありません。ただ、薬局以外の一般企業が参加しており、さらには興味ある会社なら転職フェアに参加してもいいのではと思います。
例えば、以下はマイナビ薬剤師が開催した別の転職フォーラムになります。
合同説明会にはなりますが、このときの参加企業は2社です。一つは大手チェーン薬局であり、もう一つはCRO(製薬会社へ開発職を送る企業)です。実際の参加企業は以下になります。
当日のスケジュール表を見ても、企業の採用担当者と話せるのは2社だけになっています。ここから、この合同説明会では2社だけが対象になっていると分かります。
医薬品の臨床開発に関わる仕事内容を詳細に理解している薬剤師はいません。そのため、CROへの転職を考えているのであれば、こうした合同説明会に参加する価値があります。実際の転職では転職エージェントを活用するにしても、どのような業界なのか事前に知っておく意味は大きいです。
このように薬剤師向けの転職セミナーでは1~2社ほどしか参加せず非常に小規模であるものの、興味のある会社がピンポイントで参加しているのであれば出向いても問題ないのではと思います。
大手薬局の話を聞くために転職イベントに参加する意味は正直ありません。大手薬局は待遇が悪いため、多くの薬剤師が希望しないからです。ただ、薬局ではなく一般企業が参加するのであれば行ってみても大丈夫です。
転職イベントのメインはキャリア相談会になる
なお、実際のところこうした転職イベントはどのような内容になるのかというと、多くは転職エージェントの担当者とのキャリア相談会になると考えればいいです。
転職セミナーに参加するとはいっても、多くは「大手薬局が求める薬剤師」という全く興味を惹かれない内容を聞くことになるだけです。しかも、前述の通り参加企業は1~2社しかありません。
そのため、薬剤師向けの合同説明会へ参加するときの目的は主に転職エージェントが開催しているキャリア相談会になります。
薬剤師の転職とはいっても、当然ながら人によって要望が異なります。「薬局から病院へ転職したいが大丈夫か」「週3回の午前だけパートが可能な会社はあるか」「土日休みの薬剤師は実際のところ実現できるか」などです。
薬剤師では特殊な要望を考える人が多いため、転職前にこうした疑問を解決しておくことは重要です。
ただ、これらのフォーラムは東京や大阪などの都市部でしか開催されていません。また、指定の場所へ出向く必要があります。
しかし転職サイトに登録すれば、担当者が付くのでいつでも同じような相談をすることができます。あなたが住んでいる地域にまで出向いて面談してくれる転職サイトも存在するため、わざわざフォーラム参加のため都市部まで出向く必要もありません。仕事終わりに気軽に転職サイトの担当者と会って相談できます。
そのためキャリア相談ができるとはいっても、転職サイトに登録すれば日程を転職セミナーに合わせる必要がなく、さらには「こちらから遠くにある会場まで出向かなくてもいい」などのメリットがあります。そのため、キャリア相談をしたいのであれば合同説明会に行く必要はなく、転職サイトに登録すれば十分だといえます。
薬剤師向けの転職説明会は意味がない
世間一般向けには、転職の合同説明会が広く開催されています。そこへ出向けば非常に多くの人が参加していて、さらには1日で何社も見て回ることができます。
それでは、薬剤師でも同じような転職フォーラムが存在するのかというと、稀にではありますがイベント・フェアが開催されています。
ただ、薬剤師向けの転職セミナーの内容が優れているかというと、ここまで解説した通り大したことはありません。合同説明会とはいっても1~2社ほどの参加であり、しかも大手薬局がメインです。セミナー内容もありふれており面白みに欠けます。
興味のある一般企業が参加するなら出向いてもいいですが、それ以外は意味がないと考えましょう。一般人とは大きく異なり、薬剤師だと転職フェアに参加する意義はありません。
薬剤師で転職を検討しているのであれば、フォーラム参加ではなく転職エージェントに登録し、実際に活用してみて求人を発掘するのが基本です。転職説明会はサブとして考え、ここまでのことを理解したうえで転職活動を進めるようにしましょう。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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