薬剤師が調剤薬局やドラッグストアへ転職するとき、特定科目の求人を狙って応募することは多いです。

そうした特定科目の一つに眼科があります。薬剤師として眼科門前の薬局へ就職¥し、目薬をメインで取り扱うようになるのです。

一般的に眼科の薬局で働くのは楽だといわれています。そのため、ゆったりと仕事をしたい薬剤師にとって、眼科門前の調剤薬局で働くのは大きな意味があります。ただ、デメリットも踏まえたうえで転職しなければいけません。

そこで、どのように考えて薬剤師が眼科の求人募集へ応募すればいいのかについて解説していきます。

眼科門前の薬局が楽だといわれる理由

あらゆる調剤薬局・ドラッグストアの中でも、仕事内容が最も楽だといわれているのが眼科門前の薬局です。なぜ、こうした眼科門前薬局で働く薬剤師の業務は楽だといわれているのでしょうか。

一般的なクリニックであれば、受診した患者さんのほとんどに処方せんが発行されます。つまり、「クリニックへの来院患者数≒薬局に来る患者数」となるのです。隣にある病院やクリニックの患者数が多いほど、それだけ薬局も忙しくなります。

一方で眼科であればどうでしょうか。コンタクトレンズを薬局が販売する機会が増えたとはいえ、眼科を受診する人の全員に処方せんが発行されるわけではありません。むしろ、処方せんが出されない患者さんの方が多いです。

  • 目の定期検診に訪れた
  • メガネを作るために眼科へ来た
  • 受診したが異常がなく、薬は出されなかった

こうした患者さんは非常に多いです。そのため、隣の眼科クリニックは非常に繁盛していて患者数は多かったとしても、隣の調剤薬局にはそこまで患者さんの数が多くないことはよくあります。眼科の場合、クリニックへの来院患者数と薬局を訪れる患者数に大きな違いがあるのです。

すべての患者さんが訪れるわけではないため、眼科門前の薬局に来る患者さんの数はまばらです。一気に患者さんが押し寄せることはなく、間隔を空けて患者さんが来院するようになります。それでいて患者数は少なめなので、残業なしの定時退社を実現することも可能です。

眼科医が処方する薬の種類は少なく、目薬がメイン

また、眼科医が処方する薬は限られています。何種類もの内服薬を処方することはなく、目薬の処方せんがメインになります。

しかもメインとなるのはドライアイや抗アレルギー薬、緑内障治療薬など決まりきった薬ばかりです。薬の種類は少なく、特に調剤に時間がかかるわけではありません。大変な作業があるとしても、以下のように「袋へ点眼薬を詰める作業」くらいになります。

さらには新患というよりも、既に目薬を何度も取り扱ったことのある人が多くなります。目薬の使用に慣れている人が多いことも、仕事内容が楽になりやすい要因となります。

点眼薬の服薬指導で勉強するべきことは少ない

また、眼科では内服薬のように特殊な使い方をする点眼薬は少なく、使用方法を説明するときに特に注意するべきポイントがありません。

あるとすれば、以下のような注意点くらいです。

  • 2剤以上の目薬の使用方法
  • コンタクトレンズ装着時の点眼
  • 薬の保管方法

それぞれについて確認していきます。

・2剤以上の目薬の使用方法

2剤以上の点眼薬が処方されたときに「5分以上の間隔を空けて点眼薬を使用する」ことを説明する必要があります。

点眼薬が角膜に吸収されるまで5分かかるといわれています。5分以上を空ければ薬物相互の影響がなくなるため、5分が基準となっているのです。

また、薬の成分が異なるときは以下のような順番で投与していきます。

  • 水性点眼剤 → 懸濁性点眼剤 → 油性点眼剤 → 眼軟膏

どの薬が水性で油性なのか患者さんが把握していることはないため、薬剤師が薬の投与する順番を教える必要があります。目薬の場合はこうした投与の原則があるものの、一度でも覚えてしまえば投薬時にすぐ対応することができます。

・コンタクトレンズ装着の点眼

コンタクトレンズを活用している人は多く、そうしたときにどう点眼すればいいのか悩みます。これについては、原則的には「防腐剤含有の点眼薬はコンタクトレンズを取り外して点眼する」となります。

これは、防腐剤と目の接触時間が長くなるほど角膜障害を引き起こす可能性が高くなるからです。また、コンタクトレンズの変形や変色の可能性もあります。

ただ、ハードコンタクトレンズや一日使い捨てのソフトコンタクトレンズであれば、そのまま点眼薬を使用できます。しかし、2週間や1ヵ月などでの使い捨てソフトコンタクトレンズを着用する場合、コンタクトレンズを外して点眼しなければいけません。

・薬の保管方法

薬の保管方法も患者さんから頻繁に質問されることの一つです。一般的には、点眼薬は冷蔵庫の中で保管します。その方が細菌の繁殖を防ぐことができるからです。

ただ、場合によっては旅行に出かけるなど、ずっと室温状態での保管になってしまうこともあります。この場合であっても特に心配する必要はなく、1~2週間ほどの旅行でずっと室温保存であったとしても品質は問題ないことを患者さんに説明すれば大丈夫です。

業務内容はゆったり仕事でも、年収・給料は他と変わらない

こうした基本的なことを理解すればいいだけなので、眼科の薬局で働く場合は勉強するべきことが少ないです。薬の種類は少数であり、新薬はほとんど出ないのですぐに仕事に慣れることができます。

それでは、こうしたゆったりと仕事ができる職場へ勤務するとき、提示される収入は低くなるのでしょうか。これについては、眼科だからといって特に薬剤師の給料が低くなるわけではありません。一般的な内科の薬局で勤務する薬剤師と比べて、収入は大きく変わらないと考えて問題ありません。

内科でも眼科でも、処方せん枚数の少ない薬局は世の中に腐るほど存在します。そうした薬局でも問題なく薬剤師には給料が出されていますが、1日20枚ほどの処方せんを受け付ける薬局であっても、非常に大きな収益を出せるようになっているのが調剤薬局なのです。

また、眼科であっても長期処方で出されるのは普通であり、そうなると一枚の処方せん単価は高くなります。こうした事情があるため、眼科で働くからといって給料の額が特別に低くなることはなく、むしろ他の科目で働くときと比べてそこまで変わらないと考えましょう。

例えば、以下は東京にある眼科メインの調剤薬局から出された求人募集です。

ここにある通り、最初から年収450万円です。当然、調剤経験がある場合はより高い年収になります。一般的な内科の薬局で働く場合と比べて提示される収入は変わらないのです。

当然、管理薬剤師として転職する場合はより高年収になります。例えば、以下は大阪の眼科メインの調剤薬局から出された中途採用求人です。

管理薬剤師であることもあり、眼科クリニックの前にある薬局ですが年収600万円です。患者さんがまばらに訪れる眼科門前の薬局であっても、こうした高年収案件は存在するのです。

パート・アルバイトで眼科を目指す人も多い

たくさんの勉強を期待して勤務することを考えている薬剤師に眼科は向いていません。ただ、落ち着いて仕事をできる環境が整っているため、忙しすぎない職場で働きつつも収入額を確保したいと考えている薬剤師にとって、眼科の門前薬局は非常に優れているといえます。

そのため、正社員だけでなくパート・アルバイトで働く人にとっても人気のあるのが眼科です。そこまで大変な仕事をしたくないと考えている女性薬剤師がパート勤務を希望する場合、眼科を検討しても問題ありません。

例えば、以下は横浜(神奈川)にある眼科メインの薬局から出された求人募集です。

眼科でも問題なく時給2,000円以上であり、経験年数が多くなればそれに従って時給相場は上がっていきます。薬剤師資格を活かす場合、眼科を考える人は多いのです。

・ブランク明けの復帰で眼科を目指す人はたくさんいる

眼科では症状の重い患者さんが来ない軽量科目でもあるため、ブランク明けの復帰を含めママ薬剤師が薬剤師として再就職する場面でも広く活用されています。

薬剤師として復帰をしたいものの、薬の知識には自信がない場合、「こうした眼科門前の薬局でのパート就職から慣らしていく」という作戦でも問題ありません。

派遣で眼科へ転職し、高年収を目指す

さらには、ゆったり求人でありながら一般薬剤師としてゆったりと働き、高年収を目指すことも可能です。

転職サイトの中には派遣求人を取り扱っている転職エージェントがあります。そうした転職サイトを利用すれば、派遣社員として眼科の調剤薬局やドラッグストアで勤務できます。派遣だと東京や大阪などの都市部でも時給3,000円以上が可能なので、高い給料をもらいながら落ち着いて仕事をすることができるのです。

特に派遣の場合、投薬ばかりになります。このときは点眼薬の服薬指導ばかりをすればいいため、仕事内容は非常に楽です。それでも、高い時給が可能になるのです。

例えば、以下は千葉にある眼科メインの薬局から出された派遣薬剤師の募集です。

この薬局の場合、時給相場が高く時給3,500円となっています。例えばこの眼科門前の薬局でフルタイム勤務する場合、月の収入は以下のようになります。

  • 時給3,500円 × 1日8時間(休憩60分) × 月20日勤務 = 月56万円(年収だと672万円)

年収672万円であり、非常に落ち着いた環境で勤務することになるにも関わらず、こうした収入を実現できるのが眼科での派遣薬剤師です。

眼科への履歴書・面接の志望動機を考える

それでは、実際に眼科の門前薬局へ転職するときはどのような志望動機が適切なのでしょうか。これについては、自分の希望条件を明確にした後、それを述べるといいです。

「眼科医療に携わりたい」という理由を述べたとしても、どう考えてもウソだと分かります。それよりは、率直な意見を述べたほうがいいのです。

しかし、「できるだけ楽な職場への就職を考えたため」という志望動機だと微妙なので表現方法を変えましょう。例えば、以下のようになります。

自分のペースに合わせた職場での勤務を希望し、貴社を志望しました。

前職は毎日サービス残業が3時間以上あり、患者数が多く早く処方せんをさばくことがメインでした。そうなると、どうしてもミスが増えます。

そこで、そうした環境ではなく落ち着いて仕事が可能な薬局への転職を考えました。貴社の薬局では薬剤師一人の処方せん枚数が1日20枚ほどと聞いているため、薬剤師として慌てることなく余裕をもって活躍できると考えています。

このように、「前職は忙しすぎる職場だったので、そうした状況を回避したい」という理由にしています。

眼科の薬局はそれなりにたくさん存在します。また薬剤師の場合は比較的簡単に面接にパスするため、特別に高い年収を要求したり、転職回数が非常に多かったりする人でなければ、こうした志望理由でも問題ありません。

眼科の薬局への転職を希望している時点で、採用担当者(または社長)は「薬剤師としてバリバリ働きたい人ではなく、どちらかというと落ち着いた環境での仕事を好む人」であることを認識しています。そのため下手に前向きな志望動機で着飾るよりも、こうした率直な意見を述べるほうが適切です。

転職サイト経由で中途採用の眼科薬局へ就職する

なお、ゆったりと仕事をしたい薬剤師にとって魅力的な眼科門前の薬局ですが、こうした薬局に対して自らアプローチするのはさすがに無理といえます。そのため、ほとんどの薬剤師が転職サイトへ登録した後に眼科の薬局を目指します。

転職エージェントであれば、眼科門前薬局の求人募集がたくさん寄せられています。そうした中から、求人を選ぶようにするのが一般的なのです。

ただ、眼科とはいっても以下のように違いがあります。

  • 眼科メインの薬局
  • 眼科だけでなく、内科も取り扱う薬局
  • コンタクトレンズの取り扱いがあるかどうか
  • 1日の処方せん枚数
  • 薬剤師の在籍人数

こうしたことを理解したうえで求人に応募しましょう。特に眼科以外にも科目を受け付けている薬局の場合、眼科特有の落ち着いた雰囲気はなく、多くの処方せんを受け付けるようになるので慌ただしく仕事をするケースが多くなります。

また、コンタクトレンズの処方せんまで取り扱う薬局の場合、当然ながらその分だけ患者さんの数は多くなります。

1日の処方せん枚数や薬剤師の在籍人数を確認するだけでなく、こうした求人内容まで含めてチェックするようにしましょう。

薬剤師として眼科で落ち着いた仕事を行う

仕事内容の中でも、落ち着いてゆったりと仕事することを考えたとき、その代表的な科目が眼科になります。もちろん他にもゆったり求人は存在しますが、一般的に眼科だと患者さんの数がまばらになりがちであり、忙しい状況を避けながら仕事をすることができるのです。

普通の薬局であれば、「クリニックの来院患者数≒薬局の患者数」となります。ただ、そうならないのが眼科です。

また眼科医が処方する点眼薬の種類は少なく、目薬を使用するときの注意点も多くありません。そのためすぐに仕事に慣れることができるという特徴があります。それでいて、特に年収が低いわけではありません。新薬もほぼなくて覚えることは少なく、一包化などの面倒な作業はありません。

勉強したいと考えている薬剤師であれば眼科の薬局は向いていません。ただ、落ち着いた環境での定時退社を目指すのであれば、眼科クリニックの前にある薬局で働くことを考えてみましょう。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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