数は少ないですが、薬剤師として調剤薬局やドラッグストア、病院などで勤務しているとヘッドハンティングの電話がかかってくることがあります。他の会社で働かないかとスカウトの依頼が来るのです。

こうした電話については、薬剤師として学会発表などを含めて精力的に活躍している人に限らず、普通の一般薬剤師でもヘッドハンティングの連絡が来ることがあります。このとき、これらスカウト会社からの連絡は怪しいのでしょうか。

医療の専門家ではありますが、薬剤師でこうした引き抜きの場面に自分が遭遇すると、どのように対処すればいいのか分からない人が大多数になります。

そこで、実際のところ薬剤師のヘッドハンティングがどのようになっているのかについて解説していきます。

一般的なヘッドハンティングの流れを知る

まず、一般的にどのようなヘッドハンティングがあるのかを理解する必要があります。引き抜きにも種類があり、良い引き抜きとダメな引き抜きがあります。

スカウトの連絡がきたからといって舞い上がっていると、転職によって大きな失敗をすることになります。そのため、ヘッドハンティングのことを事前に理解していないといけません。

このときスカウトによる引き抜きには、主に2つの方法があります。以下の通りです。

  • 指名スカウト形式
  • ロングリスト形式

それぞれを確認していきます。

・指名スカウト形式

多くの人が想像するヘッドハンティングの方法が指名スカウト形式です。企業から「あなたを採用したい」と熱烈なアピールをされるのが指名スカウト形式になります。

経営者や企業幹部などが「この人を採用したい」と思ったとしても、その人へ直接声をかけるわけにはいきません。ライバル会社に勤めていることがほとんどであり、企業幹部がライバル会社の社員に声をかけたことが判明した場合、当然ながらライバル会社は怒ってクレームを入れるようになります。下手をしたら裁判にまで発展するかもしれません。

こうした問題を防ぐため、間にヘッドハンティング会社を入れます。このとき、当然ながらヘッドハンティングの対象となる人物の連絡先や役職、仕事内容などはスカウト会社の担当者へ詳しく伝わっています。

そのため指名スカウト形式では個人携帯に連絡が入り、実際にヘッドハンターに会ったときも「なぜそこまで自分のことを詳細に知っているのか」というほど、情報が伝わっています。また、提示できる年収額や就職後の仕事内容、条件面まで含めて詳しく聞くことができます。

・ロングリスト形式

それに対して、ロングリスト形式という方法もあります。このやり方だと、実際のところ内容はかなり微妙になります。ロングリスト形式の場合、特にあなたを欲しているわけではないからです。

ロングリスト形式では、相手企業が「こういうスキルをもった人を採用したい」とスカウト会社に伝えます。その後、ヘッドハンティング会社はそれに見合う人に対してランダムに電話をして声をかけるのが基本になります。

ランダムに声掛けをするため、当然ながらあなたの性格や仕事内容、趣味を含めて情報はほとんど知っていません。また、多くは個人携帯ではなく、会社の電話にかかってきます。特定の知人を通してヘッドハンティングの依頼があったわけではないからです。

この場合の転職では、特に熱烈なラブコールを受け取っているわけではないため、一般転職者と同じ採用ステップをたどることになります。

最前線のトップで活躍しているなら本当のヘッドハンティングがある

こうしたことを理解したうえで、引き抜きの話があったときにあなたの薬剤師としてのスキルはどれくらいでしょうか。また、外部での活躍はどうだったでしょうか。

当然ながら、調剤薬局やドラッグストア(調剤併設ドラッグストア)の薬剤師であるなら、5年以上の経験があって管理薬剤師として活躍していなければいけません。病院薬剤師であっても、同様の経験は必要です。

ただ、会社内で調剤をしているだけではダメです。指名スカウト形式による本当のヘッドハンティングでは、外部の会社にいる経営者・役員の目に留まる必要があります。そのため、薬剤師会での活動を含めて精力的に活躍している必要があります。

それに加えて、薬剤師として特殊なスキルを保有していなければいけません。管理薬剤師の経験者など世の中にいくらでもいます。病院薬剤師についても、同様のスキルをもつ人はたくさん存在します。そのため、以下のような特殊な技能がなければ指名スカウト形式による引き抜きの話はありません。

  • 在宅医療に精通しており、学会でも名前が知られている
  • 統計学を熟知しており、病院薬剤師でありながらも医師の論文研究サポートまで行える
  • 薬局の幹部として活躍しており、雑誌の発表や書籍出版を含めメディアまで活用している

単に「認定薬剤師や専門薬剤師の資格がある」「薬剤師としての経験が長い」というだけで指名スカウトされることはありません。ヘットハンティング会社を通してでも、内密に採用したいと思える人物でなければ話は来ないのです。

あなたが医療の最前線でトップの活躍をしている人物であるなら、本当のヘッドハンティングが来る可能性はあります。ただ、それ以外はロングリスト形式によってランダムに声掛けをしているダメな引き抜きだと考えて問題ありません。

薬剤師の引き抜きは単なる転職斡旋が多い

当たり前ですが、処方せんを素早く調剤したり、患者さんへ投薬するスキルを磨いたりしたところで、指名スカウト形式での引き抜きはありません。そのような技能が可能な薬剤師はいくらでもいますし、わざわざヘッドハンティング会社を通してあなたを採用するメリットはないです。

しかし、薬剤師はどの調剤薬局やドラッグストアでも慢性的に人材不足です。そのため、あなたのスキルとは関係なく、「薬剤師資格を保有している」というだけで採用したい会社はたくさんあります。

そのためヘッドハンティング会社の多くは、あなたのことを調べることなくランダムに声をかけようとします。ロングリスト形式でのスカウトを実施して、薬剤師と面談した後でそれに見合う薬局を紹介しようとするのです。

こうした形式によるスカウトだと、当然ですが優れた求人先に転職できることはありません。就職後に「実際に聞いていた内容と違う!」という事態に陥ることは頻繁に起こります。またヘッドハンティング会社は、真剣に薬剤師のキャリア形成を考えて転職斡旋しているわけではありません。

一つの判断基準として、「あなた自身のスキルや活躍度合いはどうか?」を冷静に考えるようにしましょう。トップ薬剤師としての自覚がある場合、ヘッドハンティング会社の話を聞く価値はあります。ただ、そうでないのなら断った方が無難です。

・会ってもいいが詳細は聞くべき

なお、それでも引き抜きの話に興味があるのならヘッドハンターと実際に会って面談を受け、話を聞いてみるのは問題ありません。ただ、このときは「相手先があなたのことをどれだけ細かく知っているのか」を確認しなければいけません。

前述の通り、指名スカウト形式であれば知人の経営者・役員からの内密な依頼であるため、あなたの性格や家族構成、仕事内容、成功体験、知り合いの薬剤師との関係、これからどういう活躍をしたいのかを含めて詳細に内容を知っています。

「私のことをどれだけ知っていますか?」という質問を投げかけたとき、友人でしか絶対に知らない情報をヘッドハンターがたくさん保有していた場合、本物の引き抜きだと判断して問題ありません。

一方で面談したとき、相手先があなたの情報をほとんど知らない場合、残念ながらロングリスト形式のダメな引き抜きだといえます。これに応じると微妙な転職になってしまうため、必ず断るようにしましょう。

管理薬剤師には怪しい電話が多い

なお、特に調剤薬局やドラッグストアで管理薬剤師をしていると、不動産や保険、そして「スカウトという名目での転職斡旋」の電話がかかってきます。

なぜ薬局にこうした電話がかかってくるようになり、さらには管理薬剤師の個人名が分かるかというと、地方厚生局に薬局リストと管理薬剤師の名前が公表されているからです。例えば、以下は厚生局で公開されている東京にある調剤薬局の一部です。

こうした一覧表は誰でも閲覧することができます。そのため管理薬剤師については、勤務先の店舗名(電話番号を含む)や名前が分かるようになっており、ランダムでの声掛けできるようになっています。

あなたが管理薬剤師として薬局勤務している場合、こうした名簿をもとにスカウト会社から電話がかかってくるようになります。決して、「管理薬剤師としてのスキルが高いために引き抜きの検討対象となっているわけではない」ことを理解しましょう。

スキルのない勤務薬剤師でもスカウトはある

なお、特に管理薬剤師ではなく一般薬剤師として勤務していたとしても、関係なく指名でスカウトの電話が来ることはあります。管理薬剤師すら経験したこともないのに、「エリアマネージャー(ブロック長)を考えている」などの話を提示されることがあるのです。当然、これまで上司から高い評価を受けたことがなくても、電話口であなたは絶賛されます。

この理由は既に述べた通り、薬剤師に対して「誰でもいいのでランダムに声をかけ、転職先を斡旋することにより、薬局や病院から仲介料をもらいたい」と考えているからです。

特にスキルのない薬剤師であっても、「エリアマネージャーのポジションがある」と言われたら気になってしまいます。「なぜ私にそうした話が来るのだろう?」と考えながらも、他の同僚薬剤師に相談するわけにはいかないため、「話だけでもいいから聞いてみよう」と考えるのです。

こうした事情があるため、管理薬剤師に限らず調剤薬局やドラッグストア、病院で働いている薬剤師であれば、誰であってもこうした引き抜きの話が来る可能性があると考えましょう。

参考までに、実際に面談を受けて話を進めていくと「最初に話をしたブロック長の話は相手企業の予算の関係で話が流れました。その代わりとして、この勤務薬剤師の求人はどうでしょうか」という話になります。高いポジションではなく、あなたのスキルに見合った求人を紹介されるのです。

当たり前ですが、管理薬剤師としての経験すらないのに上のポジションへ就くことはできません。それまでのスキルに沿った求人に応募するのが基本となるのです。

辞めされるためのスカウト会社もある

なお、ここまでは一般的なヘッドハンティングについて解説してきました。本当のヘッドハンティングである指名スカウト形式があれば、誰でもいいのでランダムに薬剤師へ連絡を取るロングリスト形式もあります。

しかし場合によっては、経営者や上司が特定の薬剤師を辞めさせるためにスカウト会社を使うケースもあります。

日本では正社員を辞めさせることができません。リストラとはいっても、「自ら退職したいと願い出た人」が会社を辞めるのであり、会社が正社員を解雇することはできない法律になっています。そうしたとき、ヘッドハンティング会社は社員を辞めさせるときに都合がいいです。

特に薬剤師の場合、高いポジションや高年収など特殊な働き方を望まないのであれば転職成功しやすいです。そのため、ヘッドハンティング会社を利用して薬剤師が話に乗ってくれば、その薬剤師は自ら会社を辞めていきます。

また、リストラなら高額な退職金が必要になるものの、転職では自主退職になるので高い退職金が必要なく、スカウト会社を利用したほうが安くなります。

なお、「ロングリスト形式によるランダムなアプローチ」と「今いる会社の経営者や上司が裏で手を回し、辞めさせようとしているケース」の見分け方については、話を断っても諦めずに話が来る場合は後者の可能性が高いです。

ロングリスト形式では、あくまでもランダムにアプローチしてきます。あなたである必要はなく、断る薬剤師は放っておいて、次の人にアプローチしたほうが効率はいいです。ただ、上司が裏から手を回している場合、標的となる薬剤師は一人になるのでしつこく連絡が来るようになります。

上司が辞めさせようとしている場合、未練がないのであれば早めに会社を去った方が得策です。もちろんヘッドハンティング会社は使わず、自ら別の転職サイトへ登録して転職します。

スカウト会社より転職サイトが適切

薬剤師だと、特にスキルのない状態であっても引き抜きの連絡をもらうことがあります。このとき、有頂天になってもいいですが、そのまま話に乗ると高確率で騙されます。

もちろん、本当のヘッドハンティングなら話を聞いた方がいいです。ヘッドハンターと会ったとき、友人でなければ絶対に知らないあなたの詳細な個人情報を既に知っており、さらには提示される年収額や仕事内容が明確であるなら指名スカウト形式での引き抜きの可能性が高いです。

しかし、多くはそういう引き抜きではありません。ランダムに薬剤師へ声をかけていたり、上司が裏で手を回していたりします。

ただ、当然ながら「手持ちの薬剤師名簿(リスト)に対してランダムに電話してくる会社」が優れた求人を保有していることなどありません。薬剤師のキャリアを考えていることはなく、どこでもいいから転職させて紹介料をもらおうと考えています。

そのため、指名スカウト形式による本当のヘッドハンティング以外は話に乗らず、断るようにしましょう。

また、会社の経営者や上司と関係が上手くいっていない場合、リストラ対象としてスカウト会社から連絡が来ることもあります。そうした場合、既に解説した通り早めに会社を去った方が得策です。当然、スカウト会社を利用するのではなく自ら転職サイトを利用しての転職が適切です。

リストラによるヘッドハンティングの場合、適当な転職先を紹介されて100%の確率で騙されます。ただ、自ら登録した転職エージェントであれば当然ながらそうしたことはありません。

転職は信頼できる会社を活用し、優れた転職エージェントの担当者と巡り合わないと成功しません。得体のしれないヘッドハンティング会社を利用するのではなく、薬剤師専門の転職サイトを活用するのが転職で騙されないコツです。

薬剤師の引き抜きはほぼ存在しない

私たち薬剤師が最初に認識しなければいけないのは、一般企業とは違って薬剤師のヘッドハンティングはほぼ存在しないことです。薬剤師業務は誰がやっても同じことがほとんどなので、普通の薬剤師に対して高い給料を支払って雇うメリットがないからです。

もちろんスカウトがゼロというわけではなく、薬剤師会でも広く活動しており、外部にも名前が知られて相当にスキルの高い薬剤師なら、真っ当な引き抜きの依頼が来ることがあります。

しかし、単なる管理薬剤師や一般薬剤師であれば、そうしたヘッドハンティングの話は来ません。あったとしても、ランダムによるアプローチだったり、リストラさせるための根回しだったりします。

そのため薬剤師が中途採用で転職することを考えている場合、ヘッドハンティング会社ではなく、自ら転職エージェントに応募して求人を探すのが基本です。

下手にスカウト会社を使うと騙されるようになります。こうしたことを防ぐため、求人を探して転職するにしても、真っ当に活動している転職エージェントを利用するようにしましょう。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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派遣薬剤師は給料が正社員よりも高く、時給3,000円以上も普通です。さらには3ヵ月や半年だけでなく、1日などスポット派遣も可能です。「自由に働きたい」「多くの職場を経験したい」「今月、もう少し稼ぎたい」などのときにお勧めです。

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