薬剤師の就職先はさまざまですが、そうした中でも特に特殊な仕事として「刑務所の薬剤師」があります。囚人が服役している刑務所で薬剤師業務を行い、医療に貢献する仕事が存在します。

それでは、こうした職場で働く薬剤師は囚人を相手に仕事をして危なくないのでしょうか。また、一般的な調剤薬局や病院で働く薬剤師と比べて仕事内容がどのようになっているのか想像できません。

さらにいうと、提示される年収なども不明です。どのようにして応募すればいいのかも理解していない人がほとんどです。

そこで、刑務所の薬剤師として働くときの業務内容や中途採用求人の中身について解説していきます。事前に求人内容を理解したうえで申し込めば転職はスムーズです。

医療刑務所に限らず、全国の刑務所で募集がある

薬を必要とする人は一般患者に限りません。服役中の囚人であっても医薬品が必要になります。刑務所とはいっても、大半は数年の服役期間を経て一般社会に出ていく人たちです。そのため、こうした人たちが健康で過ごすために薬が必要になるのです。

当然、医薬品の調剤を行うのは薬剤師になります。医師が調剤をするわけにはいきませんし、看護師には調剤権がありません。一般的なクリニックのように、看護師が調剤をする(本来は違法行為だが黙認されている)のを国の機関である刑務所がすることはないのです。

そのため、全国の刑務所で薬剤師の募集が出されます。あなたが住んでいる都道府県には必ず刑務所が存在し、そのすべてで薬剤師が働いていると考えてください。

刑務所での薬剤師というと、医療刑務所を考えがちです。医療刑務所とは「一般的な刑務所では服役に耐えられない精神障害者や病弱者が服役する施設」であり、以下のような医療刑務所が存在します。

  • 八王子医療刑務所(東京都)
  • 岡崎医療刑務所(愛知県)
  • 大阪医療刑務所(大阪府)
  • 北九州医療刑務所(福岡県)

しかし、実際にはこうした医療刑務所以外にも求人が存在すると考えましょう。北海道(札幌など)から沖縄まで、あらゆる刑務所で中途採用の募集があります。例えば、以下は長崎刑務所から出された薬剤師(法務技官)の求人募集です。

法務技官という名前が付いているので分かりにくいですが、要は薬剤師の中途採用求人だと考えればいいです。このように、医療刑務所に限らず全国の刑務所から薬剤師の中途採用が出されるのです。

刑務所や少年院で働く薬剤師の仕事内容

それでは、実際にこうした場所で薬剤師業務を担当するとなると、仕事内容はどのようになるのでしょうか。囚人に対して投薬(服薬指導)をするのでしょうか。

これについては、刑務所で働く薬剤師の仕事内容は調剤・監査だけになると考えてください。囚人と話をすることは100%の確率でありません。つまり、投薬はないのです。

囚人に対しては、刑務官が付き添う中で医師が診察をします。そうした診察をした後は処方せんが出されます。このときの処方せんの内容をもとに調剤するのが薬剤師の役割になります。基本的には囚人と会ったり話をしたりすることはなく、以下のような調剤室の中で淡々と調剤をするのが仕事内容だと考えましょう。

大人向けの刑務所であれば、糖尿病や高血圧、不眠症など一般的な内科で処方される医薬品の処方せんが来るようになります。少年院の場合、ぜんそくなど呼吸器系疾患が多くなります。こうした特徴はありますが、調剤内容で特別なことはなく普通の医薬品を取り扱うと考えましょう。

患者数は決まっていますし、処方せんが来るとはいってもDo処方(いつもと同じ内容の処方)ばかりです。さらには投薬がないため落ち着いて作業することができ、定時に仕事を終えるのが基本になっています。

仕事内容は大変ではないため、特殊な仕事ではありますが楽な作業をしたい薬剤師にとってみるとメリットの多い求人内容になります。

公務員試験に合格せず、年齢制限なしで採用される

また、こうした刑務所の求人は国家公務員での採用になります。刑務所は法務省の管轄になり、ここで働く場合は国家公務員なのです。

公務員なので身分が安定することになりますが、国家公務員であると一般的には「国家Ⅰ種(国Ⅰ)・国家Ⅱ種(国Ⅱ)」などの試験に合格する必要があるように思います。実際、一般職員として刑務所で働くためにはこうした試験が課せられます。

しかし、薬剤師の場合は一般職員とは異なり資格をもった職員になります。こうした職員については、医師や薬剤師を含め国家公務員試験に合格する必要なく採用されます。

国家公務員試験がないことから、一般的に存在する公務員の年齢制限は存在しません。もちろん定年はありますが、「30歳まででなければ採用試験を受けることはできない」などの制限を設けていないのです。

そのため定年に達していない年齢であれば、どのような人であっても応募することができます。年齢が高くても公務員になれるというメリットがあるのです。

・採用日は明確に決められている

しかし、採用日は明確に決められています。国の機関である以上は融通が利かず、内定が出たとしても4月1日からの就職になると考えましょう。例えば、以下は先ほどの長崎刑務所の求人の一部ですが、採用は4月1日からと明記されています。

民間企業へ転職するときのように、いつでも中途入社できるわけではありません。公務員試験にパスする必要はなくても、国家公務員である以上は入職日が一律になっているのです。

国家公務員なので年収・給料は低い

しかし、楽に仕事をすることができるとはいっても当然ながらメリットばかりではありません。刑務所で働く薬剤師だとデメリットもあります。

最も分かりやすいデメリットとしては収入があげられます。公務員の薬剤師は非常に低い年収で働かなければいけません。

薬剤師で働くとき、国家公務員に準ずる給料として分かりやすいのは国立病院(国立病院機構)で働く病院薬剤師です。彼らは非常に安い給料で働くことになりますが、国家公務員である刑務所の薬剤師も同じように収入は低いと考えましょう。

例えば、以下は高松刑務所(香川)から出された薬剤師の求人ですが、月の給料は20万円ほどとなっています。

もちろん地域差はありますが、刑務所の薬剤師として働くときは月20~24万円ほどの収入になると考えましょう。都市部へ行くほど、国家公務員として提示される年収は高くなります。国家公務員であるため、年収で考えると圧倒的に冷遇されているのが刑務所の薬剤師なのです。

全国転勤があり、スキルアップは望めない

また、国家公務員の宿命になりますが全国転勤があります。どの国家公務員も3年おきくらいに全国を転々とするようになりますが、これは薬剤師も同じだと考えるようにしましょう。

日本には全国各地に刑務所や少年院がそれなりにたくさんあります。そのため勤務場所は幅広く、どのような場所で働くことになっても受け入れなければいけません。

また、服薬指導がなく処方せんの内容をもとに調剤をするだけの仕事であるため、楽ではあるものの刺激がなく、スキルアップを図ることはできません。また、薬剤師会の勉強会へ出席するなどして他の薬剤師と交流することもほぼないため、勉強することもなく知識レベルは大学卒業でストップすることになります。

一般的に薬剤師にとって、公務員は非常に不人気です。これはいろんな場所への転勤があり、さらには年収が圧倒的に低いからです。これが病院薬剤師であれば勉強やスキルアップのために我慢できますが、服薬指導すらない刑務所の薬剤師では当然ながら人気がなくなるのです。

また、すべてではないものの一般的に刑務所は田舎にあります。都市部にある刑務所の方が珍しいです。

田舎に行くほど薬局薬剤師の給料は高くなりますが、転勤などによって刑務所薬剤師として田舎暮らしをしたとしても、国家公務員である以上は低い収入のまま働かなければいけないことを我慢する必要があります。

刑務所のパート薬剤師は時給がいい

なお、正社員(正職員)として働く場合は待遇が優れない刑務所の薬剤師ですが、パート・アルバイトとして勤務する場合はそれなりに優れた条件で働くことができます。

業務内容は正社員と同じであり、処方せんの内容をもとに調剤するだけになります。投薬はありません。そうした作業ですが、時給2,500円以上が基本となります。

刑務所の場所によっては時給3,000円となっていることがあり、薬局で働く派遣薬剤師並みの高い時給を提示されることもあります。そのため正社員で働く人よりも、パート・アルバイトとして刑務所勤務する薬剤師の方が多いです。

例えば、以下は山形刑務所から出された薬剤師のパート求人です。

ここにある通り、時給3,000円と条件が非常に優れています。こうした現状があるため、刑務所で正社員勤務をする人はほとんど存在せず、パート・アルバイトがどうしてもメインになってしまうのです。

ちなみに、正社員とは違いパート・アルバイトであれば4月1日に限らずいつでも就職できるようになっています。

ハローワークや転職サイトで刑務所求人を探す

それでは、こうした刑務所の求人はどこから出されるようになるのでしょうか。刑務所の薬剤師として転職を考えている場合、メインはハローワークになります。ハローワークに出向くことによって、刑務所の薬剤師求人を見つけられるようになります。

また、それと同時に転職エージェントでも同じような求人が出されることもあります。転職サイトでは独立行政法人や公立病院を含めた公務員職の求人が出されることがあるため、こうした転職サイトへ応募して求人を紹介してもらうのが基本になります。

特にハローワーク経由だと、「服薬指導」「取り扱い科目」などの言葉すら知らない素人職員が求人を案内することになり、さらにはアフターフォローもないので高確率で転職に失敗してしまいます。そのためほとんどの薬剤師が転職サイトを利用します。

刑務所の薬剤師を含めて検討するのであれば、ハローワークだけでなく必ず転職エージェントも活用するようにしましょう。

もちろん刑務所は稀な求人になるため募集は少ないです。そこで、3社以上の転職サイトを活用して求人を探すのが一般的なやり方になります。

人と接しない職場は他にもある

なお、刑務所の薬剤師として働く最大のメリットは「人と接しなくてもいい」ことです。そのため、投薬するときに緊張で声が震えてしまう薬剤師を含め、コミュ障の人であっても問題なく勤務することができます。

ただ、ここまで述べた通り公務員の薬剤師は不人気であり、さらには国家公務員なので年収が低いだけでなく全国転勤もあります。

そうしたことを考えたとき、刑務所でなくても調剤薬局や一般企業の薬剤師として「人と接することなく、淡々と仕事をこなすことのできる職場」は存在します。

コミュニケーションが苦手でも問題ない職場は刑務所以外もあり、さらには刑務所よりも高い収入を実現でき、転勤もありません。こうした求人まで含めて、転職サイトを利用して求人を確認するといいです。

薬剤師として特殊な仕事を担う

意外と多くの薬剤師が知らない特殊な仕事は存在します。そうした職種の一つが刑務所の薬剤師です。

刑務所で働く薬剤師については、一般的に表に出てきません。刑務所内に薬剤師会の案内が届くわけではないですし、一般的な薬局や病院のように人と接することもないからです。そのため、どのような仕事内容なのか把握している人は少ないです。

ただ、ここで述べた通り刑務所の薬剤師は調剤業務に専念すると考えてください。難しい処方せんはなく、患者数は決まっており、投薬もなく薬剤師の中でも楽な仕事となります。

しかしスキルアップはできず、勉強面では知識が止まってしまうことは事前に理解しましょう。パートでは時給がいいものの、正社員勤務だと薬剤師の中では非常に待遇が悪いことを認識しておかなければいけません。

そうはいっても、コミュ障の人でも問題なく働けるのはメリットです。そうした職場を希望する場合、ハローワークだけでなく、いくつもの転職サイトを活用して優れた求人を見つけるようにしましょう。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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派遣薬剤師は給料が正社員よりも高く、時給3,000円以上も普通です。さらには3ヵ月や半年だけでなく、1日などスポット派遣も可能です。「自由に働きたい」「多くの職場を経験したい」「今月、もう少し稼ぎたい」などのときにお勧めです。

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