薬剤師が転職するとき、科目を考えることは非常に重要です。薬局といっても、門前の科目によって取り扱う薬の種類はバラバラです。また、科目ごとに調剤薬局の忙しさが変わってくるのも普通です。
そうしたとき、薬剤師が勤める科目の中で大きなカテゴリーとして皮膚科があります。多くの皮膚科クリニックが存在するため、そうした皮膚科門前の調剤薬局で働くことになるケースはたくさんあります。
それでは、実際のところ皮膚科門前にある調剤薬局やドラッグストアで勤務するとき、仕事内容はどのようになるのでしょか。また、勤務形態や年収などはどうなのでしょうか。
ここでは、薬剤師が皮膚科の調剤薬局へ転職するときの注意点について解説していきます。
もくじ
取り扱う薬の種類は少ない皮膚科門前の薬局
薬局の中でも、取り扱う薬の種類が少なくなりがちな科目として、皮膚科があります。皮膚領域に特化することになるため、内服薬など一般的な薬はどうしても少なくなるのです。
もちろん、皮膚感染症のときに抗生物質や抗真菌薬、抗ウイルス薬が処方されることは頻繁にあります。内服薬によって皮膚症状を抑えようと考え、皮膚科医が飲み薬を処方するのです。また、アレルギー症状を抑えるために抗アレルギー薬が処方されることもあります。
ただ、実際のところ内服薬ではなく塗り薬がメインになります。以下のような薬を取り扱い、主な処方内容は軟膏やクリームになります。
皮膚科領域での塗り薬はそこまで種類が多いわけではありません。塗り薬ごとのステロイドの強さ(グレード)や使用範囲を覚える必要はあるものの、一度でも覚えてしまえば問題ありません。
薬の種類という意味では非常に少なく、業務にも慣れやすいです。大量の塗り薬が処方されるためにかさばることはあるものの、仕事内容自体はそこまで難しいわけではありません。
さらには、命に係わる重大な症状の患者さんが訪れるわけではありません。軽量科目であるため、もし調剤ミスをしたとしても大きな問題になることは少ないです。そのため、薬剤師の中でも気楽に働ける科目となります。
そのため、一般的に皮膚科領域の薬局で働くのは楽だといわれています。最も楽な科目は眼科ですが、皮膚科も仕事内容がそこまで大変になりにくいのです。
中途採用募集に練り作業の機器があるかどうかは重要
なお、そこまで大変ではない皮膚科の薬ですが、唯一面倒な作業として「2剤以上の軟膏を練り合わせる作業」があります。
私が転職して初めて調剤薬局へ転職したとき、内科と小児科の処方せんを受ける薬局だったのですが、練りの処方せんが飛んでくることがたまにありました。そのときは面倒ですが軟膏台を出し、重さを測りながら2剤や3剤の軟膏を混ぜ合わせていました。
ただ、当然ながらこうした作業は非常に面倒です。調剤では粉薬や水剤、一包化などで多くの時間を取られますが、練り作業も調剤時間が多くなる要因の一つです。そこで、皮膚科メインの調剤薬局の求人募集へ応募するとき、中途採用の求人先に練りの自動機器が存在するかどうかは非常に重要です。
練りの機器がない場合、10分以上の時間をかけ一つの処方せんに対して調剤しなければいけません。ただ、自動で軟膏・クリームを混合してくれる機器類が薬局内に存在すれば、そうした作業を自動化させることができます。
例えば、以下は実際の軟膏・クリームの全自動軟膏練り機になります。
軟膏・クリームを入れて容器をセットし、ボタンを押すだけで混合が完了します。軟膏台を取り出し、自ら練り作業をしなくても問題ないため、調剤の時間を大幅にカットできます。
薬局での面接を受けるとき、多くの人は店舗見学をします。このとき、調剤薬局の中にこうした全自動軟膏練り機が存在するかどうかを必ず確認しましょう。こうした機器類がない場合は調剤に非常に時間がかかるため、皮膚科で働くとはいっても仕事は大変になります。
服薬指導では気を使う必要がある皮膚科
なお、他の科目に比べて皮膚科では「患者さんにとってデリケートな悩みが多い」という特徴があります。単なる湿疹の治療であれば特に問題ないですが、以下のような疾患を抱える患者さんが訪れるようになります。
- 水虫
- いんきんたむし
- にきび
- AGA(薄毛)
例えば女性患者が訪れたとき、薬を説明するにしても「どういう症状ですか?」と聞くと怒られることはよくあります。
他の患者さんがいる中で「陰部にカビ症状が表れた」「足に重度の水虫がある」「お尻にブツブツがある」などと、薬剤師に説明するのを恥ずかしいと考えるのは当然です。患者さんに配慮をしなければ、患者さんは薬剤師に対して不信感を抱くようになります。
そこで、患者さんが恥ずかしいと考える症状名は口に出さないように配慮しましょう。例えば抗真菌薬のクリームを出すにしても、特に病名は聞かないようにします。また、「使用部位は背中ですか? 足ですか?」などのように聞きます。そうすれば、問題なく患者さんは答えてくれるようになります。
服薬指導のときに配慮が必要であり、患者さんが病名を答えてくれないことはよくあるため、皮膚科へ転職するときはこうしたポイントがあることを理解したうえで求人に応募するといいです。
皮膚科門前の薬局へ転職するときの年収・給料
それでは、実際に皮膚科の門前薬局へ転職するときの収入はどれくらいになるのでしょうか。
収入については、他の調剤薬局で勤務する場合と比べて特に変わらないと考えて問題ありません。例えば東京や大阪なら、中小薬局への勤務だと未経験で年収450万円ほどです。これについては、皮膚科の調剤薬局でも同様だと考えましょう。
例えば、以下は東京にある皮膚科メインの調剤薬局からの中途採用求人です。
勤務時間は普通ですが、そうした薬局でもこのように年収450万円以上は問題なく達成することができます。
処方内容が簡単だったとしても、皮膚病の治療で医師が長期処方するのは普通ですし、皮膚科だからといって処方せんの単価が低いわけではありません。そのため、皮膚科門前の薬局であったとしても、それなりの年収を確保することができます。
また、経験者なら年収500万円以上、管理薬剤師なら年収550万円以上となります。例えば、以下は横浜(神奈川)の皮膚科門前の薬局から出された求人です。
未経験でも応募可能な求人ですが、管理薬剤師であれば年収600万円です。このように、皮膚科でも高い収入となります。
パート・アルバイトで楽な仕事をしても問題ない
軽量科目でそこまで大変な仕事内容を任されたくないと考えているのであれば、パート・アルバイトで働くときに皮膚科はおすすめの科目の一つです。これまで説明した通り、重症患者は来ないですし覚える薬の数も少ないです。
また、新薬はほとんど発売されないので同じ薬を活用することになります。ステロイドのグレードを覚えるなど、最初は少し面倒ですが慣れれば問題ありません。
このとき、皮膚科でも薬剤師は時給2,000円以上となります。ゆったりした求人でパート勤務をすることを考えている人に最適です。
例えば、以下は埼玉の皮膚科門前の薬局から出されたパート求人です。
オープン直後ということもあり、時給2,300円と高めです。個人薬局なので多めの時給を設定されており、薬局自体はそこまで忙しくなく働ける募集となっています。
派遣だと時給がさらに高額になる
このとき、パートではなく派遣薬剤師として勤務すれば、より高額な給料を実現できます。派遣であれば、時給3,000円以上を実現できるのは普通だからです。
同じように派遣勤務するのであれば、楽な科目で働くことも考えても問題ありません。そうしたとき、皮膚科の薬局で働くことが選択肢の一つになります。
例えば、以下は千葉にある調剤併設ドラッグストアから出された派遣求人です。
この募集では、時給3,200円となっています。もちろん派遣であるため、「週3日だけ働きたい」などパート薬剤師と同じような勤務方法も可能です。投薬メインの仕事内容にはなりますが、軽量科目でゆったりと派遣の仕事をしたいと考えている人にとっては優れた求人だといえます。
参考までに、時給3,000円は年収600万円ほどに相当します。そのため、派遣薬剤師を選択するだけで正社員よりも高い収入を得られるようになります。
皮膚科で働くときの志望動機を考える
それでは、実際に皮膚科門前の調剤薬局やドラッグストアで働くときの志望動機はどのように考えればいいのでしょうか。履歴書や面接では志望動機を述べる必要があるため、これについて事前に考えておかなければいけません。
皮膚科での勤務を希望する薬剤師については、特に皮膚科のことに触れる必要はありません。「皮膚の病気に悩む患者さんのために……」と記載したとしても、ウソであることが簡単にバレます。そのように考えて志望する薬剤師などいないからです。
そのため、あなたの希望条件を志望動機として記載すれば問題ありません。例えば以下のようになります。
ブランク明けでのパート復帰をしたいと考えています。ただ、内科ではなく軽量科目の薬局に勤務することを考え、皮膚科メインの薬局を志望しました。 子育てできる環境を重視していますが、御社は正社員へも時短勤務の延長を認めているなど、育児に理解があると伺っています。育児をしやすい環境で薬剤師と両立させつつ、活躍していきたいと考えています。 |
皮膚科がそこまで大変ではない科目であることを採用担当者(または経営者)は理解しています。そのため、下手に優れた志望動機を並べるよりも率直な意見を大切にするといいです。
転職サイトを利用し、キャリア採用の求人を見つける
それでは、こうした皮膚科の門前薬局の求人募集はどこにあるのでしょうか。これについては、やはり自分で皮膚科の募集を見つけるのは大変です。
皮膚科の薬局求人自体はそれなりにたくさんあります。日本全国に皮膚科クリニックが存在し、あなたの住んでいる地域の周辺にも多くの皮膚科があると思います。それと同じ数だけ皮膚科の処方せんを受け付ける薬局が存在するのです。
ただ、皮膚科メインの薬局があれば、他の科目も含めて調剤しなければいけない薬局もあります。さらにいうと、勤務時間や年収などの条件は会社ごとにバラバラですし、店舗によって違ってきます。
こうした事情があるため、多くの人は転職サイトに登録します。転職エージェントには多くの求人が存在するため、皮膚科の薬局を選ぶにしても「あなたの家の周辺にある募集の中で最適な求人はどれか」を多くの選択肢の中からピックアップできるのです。
薬剤師が転職するとき、転職エージェントを利用するのは基本となります。皮膚科の門前薬局への勤務を考えるとき、転職サイトを有効に利用するといいです。
薬剤師で楽な科目を視野に入れて転職する
転職をするとき、やる気があって勉強したい人であれば「内科の処方せんを受け取る薬局」が最適です。特に大病院の前にある薬局であれば、非常に勉強になります。
ただ、中にはそうではなくできるだけ楽な働き方を実現したいと考える人もいます。そうしたとき、皮膚科門前の薬局は選択肢の一つに入ります。
もちろん楽とはいっても、患者さんへの服薬指導は神経を使う必要があります。特に皮膚科だと病名を聞いても答えてくれないことが多いため、投薬時は服薬指導の方法を工夫するようにしましょう。
しかし、皮膚科であれば取り扱う薬の種類が少なく新薬はほとんど出ません。内服薬が出たとしても種類は限られており、多くは軟膏・クリームなどの塗り薬です。軽量科目でもあり、命に係わる重症患者が来院することもほぼないです。
こうした環境で薬剤師をすることを考えている場合、皮膚科の処方せんを受け付ける薬局は最適です。皮膚科の門前薬局へ転職することも視野に入れて求人を確認してみましょう。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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