正社員ではなく、パート・アルバイトや派遣として薬剤師勤務をする人は多いです。むしろ調剤薬局であれば、正社員よりもパート・アルバイトの方がたくさん人数がいるのは普通です。

そうしたパート・アルバイトや派遣として働くとき、気になるものとして社会保険があります。パートや派遣であると、こうした社会保険に入れるのかどうか心配になってしまいます。

医療のスペシャリストであるものの、薬剤師でこうした雇用関係の制度について理解している人は少ないです。正社員であれば社保完備であることは理解しているものの、パート・アルバイトや派遣だとどのようになるのか分からないのです。

そこで、「薬剤師がどのように社会保険について考えていけばいいのか」について解説していきます。

社保完備の条件は健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険

まず、社会保険とは何なのでしょうか。社会保険には4つあり、それぞれ以下のようになります。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 労働者災害補償保険(労災保険)
  • 雇用保険

これら4つがまとまって社会保険です。社会保険とはいっても、このように種類があることを理解しなければいけません。社会保険の基準を満たしている人の場合、これら4つに加入することになります。

社保完備というのは、「国が定める4つの保険(健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険)に入れる」ことを意味しています。ただ、特別な理由がない限りはどの企業も社保完備であるのが基本です。

例えば以下は神奈川にある調剤薬局の中途採用求人であり、求人票によっては以下のように社保完備と記載されています。

こうした記載がなくても、どこも社保完備であると考えたらいいです。

しかし会社によっては、稀に労災保険や雇用保険に加入していないことがあります。薬局であれば、中小や個人薬局でたまにこうした会社が存在します。ただ、これは法律上の加入義務を無視している状態だといえます。

社保完備であるのは基本ですが、そうでない会社で働いてはいけません。そのため心配な場合、転職前に転職サイトの担当者に社保完備であるかどうか聞いても問題ありません。

薬剤師の加入条件に週20時間は関係なく、年収130万円が基準

それでは、どのような薬剤師だと社会保険に加入することができるのでしょうか。社会保険に入るには加入条件があるため、これを満たさなければいけません。

パート・アルバイトで働くとき、「〇〇万円の壁」という言葉を聞いたことがあると思います。派遣でも同様に存在するものですが、こうした壁には以下のようなものがあります。

  • 103万円の壁:所得税の扶養控除の適応外
  • 130万円の壁:社会保険への加入
  • 141万円の壁:配偶者特別控除の適用外

このうち重要になるのが年収130万円のボーダーラインです。年収130万円を超えると扶養から抜けて社会保険に加入しなければならず、負担額が増えるので年収130~150万円であれば働き損になります。そのため、パート・アルバイトや派遣で働く多くの人が年収130万円を気にします。

要は、年収130万円を超えると社会保険に入らなければいけないと考えましょう。

・週20時間、年収106万円は無視して問題ない

ちなみに、より詳しく説明すると「年収130万円に到達していない人であっても、年収106万円以上で以下の5条件に当てはまっていれば社会保険に加入しなければいけない」という制度があります。

  1. 週20時間以上の勤務
  2. 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  3. 勤務期間を1年以上見込んでいる
  4. 学生でない
  5. 従業員 501人以上の企業

ただ、薬剤師の場合は時給が高いため、こうした基準を無視して問題ありません。例えば薬剤師が時給2,000円で週20時間働く場合、年収は以下のようになります。

  • 時給2,000円 × 週20時間 × 4週間 × 12ヵ月 = 192万円

このように、年収130万円を大幅に超えてしまいます。そのため、薬剤師が「週20時間をクリアしているか」などを気にする必要はなく、年収130万円を基準に考えるようにしましょう。年収130万円以上であれば、先に述べた通り自動的に社会保険へ加入することになります。

薬剤師は社会保険に入るのが基本

パート・アルバイトや派遣で働く薬剤師にとって、年収130万円以下に抑えるのは難しいです。少し働くだけで年収130万円を超えてしまいます。

ママ薬剤師だと扶養範囲内で働くことを考える人は多いですが、実際のところ薬剤師では扶養範囲内で働く方が難しいです。週1回勤務くらいでしか、年収130万円未満に抑えることができないからです。

例えば、時給2,000円で週2回、1日8時間を働くと年収150万円以上になります。

  • 時給2,000円 × 1日8時間 × 月8日(週2日) × 12ヵ月 = 153万6,000円

こうしたことから、勤務時間が非常に短い場合を除いて、薬剤師が働くことを考えるときは基本的に社会保険に入ることになると考えましょう。

なお扶養の観点からいえば、社会保険に入るとなると負担額が大きくなることが着目されがちです。ただ、国の制度なので社会保険へ加入しておくことのメリットもあります。そこで、それぞれの制度についてより詳しく確認していきます。

国保(国民健康保険)と社会保険の健康保険の違い

配偶者の扶養である場合、配偶者がサラリーマンであれば健康保険料の支払いは免れます。ただ、そうではなく配偶者が自営業であったり、あなた自身が独身であったりする場合は国民健康保険(国保)に加入する義務があります。

自分で国民健康保険に加入する場合、全額自費です。それなりに大きい金額を毎月払わなければいけないのが国保です。

それに対して、社会保険の健康保険へ加入する場合は半額を会社が負担してくれます。そのため、年収が同じなら国民健康保険よりも社会保険の健康保険の方が負担額は少なくなります。

健康保険は年収によって負担額がバラバラなので計算がかなりややこしいです。ただ、一般的に国保(国民健康保険)よりも、社保(社会保険)の健康保険のほうが、都合がいいと考えるようにしましょう。

ちなみに、会社の社会保険に入った場合は以下のように会社名が記載された健康保険証を使用することになります(協会けんぽの例)。

扶養に入っている場合、扶養から外れると新たな社会保険の金額だけ負担が増えます。ただそうではなく、いま国民健康保険の場合なら社会保険への加入を考えた方が得です。

薬剤師国保と社会保険の違いを理解する

なお、薬剤師の場合は少し特殊な国民健康保険が存在し、薬剤師国保(薬剤師国民健康保険)というものがあります。薬剤師国保とは、薬剤師が加入できる国保だと考えてください。国民健康保険の一種であるため、薬剤師国保は市町村単位で運営されています。

基本的な考え方は国保と同じだと考えてください。全額自費負担であり、月に約23,000円の負担になります。それなりに額が大きく、毎月の負担額については社会保険に加入した方が圧倒的に安くなります。

また、従業員が5人未満の会社(ほぼ個人薬局)でなければ薬剤師国保に加入できず、社員5人以上の場合は必ず社会保険に入らなければいけません。そのため、対象となる薬剤師は非常に少ないです。

唯一の例外として、薬剤師国保は定額であるものの、社会保険料は年収が高くなるにしたがって負担額が大きくなります。そのため、年収600万円以上の人なら薬剤師国保に加入する方が負担額は少なくなります。ただ、パートでそうした人はいないため社会保険の方がいいのです。

経営者にとってみれば、社会保険料の半額負担がないので社員に薬剤師国保へ加入させるメリットは大きいです。ただ、パート・アルバイトとして働く側にすれば無駄に負担額が大きくなってデメリットしかありません。こうした違いを理解したうえで、薬剤師国保ではなく社会保険の健康保険に加入しましょう。

※派遣の場合は派遣会社(転職サイト)に所属することになり、100%の確率で従業員5人以上なので薬剤師国保には加入しないので安心です。

・家族の人数が増えると薬剤師国保の負担額は大きくなる

なお、一人だけで薬剤師国保に加入するなら負担額は2万円代ですが、家族が増えるとそれに伴って薬剤師国保の負担金額は増額していきます。

社会保険の場合、扶養の範囲内で家族の数が増えても負担金額は増えません。ただ、薬剤師国保は人数分に応じてかなりの金額が加わっていきます。こうした観点からも、薬剤師国保は好ましくありません。

厚生年金へ加入するメリットは大きい

他にも、社会保険として厚生年金も存在します。こうした社会保険もメリットが大きいです。

普通のパートや派遣として働くことで国民年金に加入しているよりも、年収130万円以上にして厚生年金に加入したほうが将来に受け取れる年金額は圧倒的に大きくなります。

例えば年金掛金を40年間収めて65歳から受け取る場合、国民年金だけなら月5万円ほどになります。一方で厚生年金であれば、月15万円ほどの受取額です(厚生年金保険・国民年金事業の概況より)。このように、月10万円も年金額に違いが出るようになります。

国民年金に比べて、厚生年金では会社が半分を負担してくれながら将来の受け取り年金額が増えるようになります。そのため年金で考えれば、社会保険に加入して厚生年金にした方がかなり得です。

・薬剤師国保だと複雑になる

社会保険に加入する場合、自動的に厚生年金にも入ることになるので問題ありません。ただ、薬剤師国保の場合だと内容は複雑になります。薬剤師国保では、以下の2パターンがあります。

  • 薬剤師国保のみ
  • 薬剤師国保 + 厚生年金

薬剤師国保だけであると、国民年金になります。この場合、将来の年金額は非常に低くなります。また、「薬剤師国保 + 厚生年金」も可能ですが、この場合は薬剤師国保の自費負担に加えて、さらに厚生年金の費用も加わるのでさらに手取り額は少なくなります。

それなら、最初から健康保険や厚生年金を含めすべてが含まれる社会保険に入れば問題ありません。ここからも、薬剤師国保に入るべきではないといえます。

労災保険、雇用保険もメリットが大きい

また、他にも社会保険には労災保険や雇用保険も含まれています。

労災保険については、業務中に生じたケガや病気に対して補償されます。業務中だけでなく、通勤途中でも対象になる保険です。

また雇用保険に加入していれば、産休・育休による給付金を受け取ることができます。退職後の失業手当も受け取れます。

特にパート勤務することを考えるのは女性薬剤師に多いです。そうしたとき、妊娠・出産を考えているのであれば雇用保険のメリットは大きいです。また、何かの理由で退職することになったとしても、すぐに無収入になることはなく失業保険を活用できるのも大きいです。

中小企業への就職では、転職サイト経由で薬剤師国保を避ける

一般的な転職では、ほとんどのケースで社保完備です。社会保険に加入することで、国の制度を利用しながら最低限の福利厚生を受け取れるようになります。パート・アルバイトや派遣を含め、年収130万円以上であれば社会保険に入れるのです。

ただ、薬剤師では独自の制度を設けていることがあります。その一つが薬剤師国保であり、正直なところ金銭的なメリットがかなり少ない制度になっています。

もちろん完全にメリットがないわけではありません。経営者にとってみれば、社長自身が薬剤師国保に加入したり、社員に自費で薬剤師国保に入ってもらったりすることは大きな意味があります。その方が出費を抑えることができるからです。

しかし私たち働く側からしてみれば、薬剤師国保はデメリットばかりだと考えるようにしましょう。そのため、薬剤師国保の薬局は避けるのが基本です。以下のように、稀に社会保険ではなく薬剤師国保を採用している会社が存在します。

こうした会社は避けましょう。無駄に手取り額が減るため、転職サイトを活用するときは「薬剤師国保ではなく、社会保険に加入できる薬局・病院の求人を紹介してほしい」と伝えるといいです。

自ら求人を調べるとき、薬剤師国保を採用しているかどうかを見極めるのは難しいです。ただ、転職サイトの担当者に聞けば問題なく教えてくれます。

保険制度が整った中途採用求人へ転職する

正社員であれば、一般的にすべての保険が整っています。ただ、薬剤師としてパート・アルバイトや派遣として働くとき、社会保険について気にしなければいけません。健康保険や厚生年金を含め、どのような現状になっているのか理解する必要があるのです。

そして、薬剤師については時給が高いので少し働けば年収130万円以上になり、簡単に社会保険に加入できるようになります。このとき、規模の小さい中小薬局や個人薬局でない限りは社保完備となります。

稀に薬剤師国保を採用している薬局は存在しますが、そうした調剤薬局やドラッグストアは避けるのが基本です。特に個人薬局や2~3店舗運営の薬局へ転職することを考える場合、薬剤師国保の可能性があるので事前に転職サイトの担当者に問い合わせるといいです。

社会保険については分からないことが多いです。そこで事前に理解したうえで、パート・アルバイトや派遣で活躍するようにしましょう。


薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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