既に結婚していて旦那さんがいるママ薬剤師であれば、正社員としてバリバリ働くというよりもパート勤務などによって「生活の足しになるように働きたい」と考える人は多いです。
ただ、このときは「パート薬剤師としてガッツリ働く方法」と「勤務時間を少なくしてゆったりと働く方法」の2種類に分かれます。特に後者のゆったりと働きたい薬剤師の場合、「扶養に入れるかどうか」が重要になります。
扶養内パート薬剤師で働くということは、勤務日数を少なくしたり時短勤務をしたりして働くことを意味しています。ただ、薬剤師の場合は時給が高くなるため、扶養内ではなく扶養外の方が適切なケースもあります。そうしたとき、どのように求人を選んでパートや派遣として働けばいいのでしょうか。
ここでは、どのように考えて扶養内または扶養外で働き、求人募集を見つけて転職すればいいのかについて解説していきます。
もくじ
扶養家族になるための条件を知る
パート勤務をする場合、「○○万円の壁」という言葉を聞いたことがあると思います。これには、大きく分けて103万円と130万円などがあります。パート薬剤師として働くとき、ある一定ラインの年収を超えた時点で税金の額が上がるなど、多くのお金を払わないといけなくなります。
具体的には、以下のようなものがあります。
- 103万円の壁:所得税の扶養控除の適応外
- 130万円の壁:社会保険への加入
- 141万円の壁:配偶者特別控除の適用外
これらを図にすると以下のようになります。
これらはそれぞれまったくの別物なので、分けて考えなければいけません。それでは、どのように扶養をとらえなければいけないのかについて解説していきます。
年収103万円の壁:所得税の扶養
所得税の扶養であれば、「年収103万円」を超えたかどうかが基準になります。妻の1年間の収入が103万円以内であれば、旦那の扶養に入ることができます。所得税においての扶養内での勤務というのは、年収103万円かどうかで決まります。
この場合、配偶者控除という制度が適用され、旦那分の所得から「所得税算出の際:38万円、住民税算出の際:33万円」が控除されます。ザックリ考えると、年収500万円ほどの旦那の扶養に入っていると、所得税や住民税が年間7万円ほど安くなると考えてください。また、あなたも所得税の支払い義務がありません。
そのため、働きすぎて103万円よりもたくさん稼いでしまうと、扶養(配偶者控除)から外れることで税金が高くなってしまいます。
・年収103万円はすぐに到達する
年収103万円であると、月に約8.6万円になります。薬剤師の時給は安くて2000円であるため、扶養に入るためには「8万6000円 ÷ 時給2000円 = 月43時間」ほどしか働けません。5時間の勤務を週2回すれば、「1日5時間 × 2(週2回勤務) × 4週間 = 40時間」となってしまうため、意外と簡単に年103万円を超えてしまいます。
こうした現状があることから、扶養内でパート薬剤師をしたい場合は「忙しい時間や人員不足を補うヘルプ要因として、スポット的に勤務する」などが現実的です。
・年収140万円までは扶養家族の配偶者特別控除がある
ただ、103万円を超えて扶養内ではなくなった時点ですぐに夫の税金が高くなるのかというと、そういうわけではありません。後で説明しますが、あなたが年収140万円になるまでは段階的に「夫の所得税が安くなる制度(配偶者特別控除)」が適応されるようになります。
そのため、実は103万円を多少超えて扶養外(配偶者控除の外)になったとしても、そこまで影響はありません。つまり、完全なる扶養家族にこだわるあまり年収を103万円以下に抑える必要はありません。
しかしながら、141万円以上の場合は配偶者特別控除がなくなり、完全に扶養家族から外れるので旦那の所得税算出の際の控除はなくなります。
年収130万円の壁:社会保険の扶養
なお、扶養には所得税以外にも、社会保険も存在します。同じような「○○万円の壁」としては、130万円を聞いたことがあると思います。130万円は社会保険での扶養のことであり、1年間の収入が130万円を超えると自ら社会保険料を支払わなければいけません。
それでは、そもそも社会保険とは何なのでしょうか。社会保険とは、「健康保険+厚生年金」だと考えてください。
病気になったときの窓口負担が3割で済むのが健康保険です。健康保険があるからこそ、患者さんが安心して薬局へ処方せんをもってきて、薬を安い値段で受け取れるようになります。健康保険料を払ってくれる人がいるからこそ、病院や調剤薬局、調剤併設ドラッグストアで働く人は給料を受け取れるのです。
また、厚生年金保険料は会社に加入したら払うことになる年金保険料のことです。将来受け取る年金を自ら負担して保険料として支払うのです。社会保険にはもっと他の種類が存在するものの、基本的には「健康保険と厚生年金の掛け金を支払わなくてはいけなくなる」と考えるといいです。
年金や健康保険の掛け金を自ら払う必要があるため、負担額がかなり上がります。そのため、家計への負担が一気に重くなります。
年収130万円であると、月に10.8万円ほどの給料で130万円になります。時給2000円で計算すると、月54時間の勤務です。7時間の勤務を週2回すれば、「1日7時間 × 2(週2回勤務) × 4週間 = 56時間」となってすぐに超えてしまうため、同じように労働時間をかなり調節しなければいけません。
・106万円の壁は無視できる
なお、世の中には106万円の壁というのも存在します。本来なら年収130万円以上の人が社会保険に加入することになるものの、一部の人では年収106万円でも社会保険に加入しなければいけないようになっています。
106万円の壁については、以下の5つの条件を満たす必要があります。
- 週20時間以上の勤務
- 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
- 勤務期間を1年以上見込んでいる
- 学生でない
- 従業員 501人以上の企業
薬剤師が週20時間を働くと、時給2,000円であっても月の給料は16万円になり、簡単に「月額賃金8.8万円以上」の基準を超えてしまいます。週20時間働き、月の給料が16万円の場合、年収192万円です。この時点で完全に扶養外になるため、薬剤師の場合は106万円の壁を考える意味はありません。
世間一般的には106万円の壁が存在するものの、薬剤師にとってこのような壁は無意味なのです。
年収130~150万円だと働き損になる
どのような年収の壁が存在するのかについては理解できました。それでは、どの年収だと損をしてしまうのでしょうか。扶養内や扶養外で勤務するとき、以下の基準で考えるようにしましょう。
- 年収130万円以下:特に問題ない
- 年収130超え、160万円未満:働き損
- 年収160万円以上:特に問題ない
年収103万円の壁はあるものの、前述の通りこれを超えたからといってあなたや夫の所得税額が一気に増えるわけではありません。配偶者特別控除があるため、配偶者控除額(所得税算出の際の控除額)は少しずつ下げられるようになります。そのため、年収103万円を超えたとしても問題なく働いた分に応じて給料は上がっていきます。
※少額ですが、所得税は取られるようになります。
・社会保険料には注意が必要
ただ、年収130万円を超えてしまうと、自ら社会保険料を支払う必要があるので年間20万円ほど負担が増えてしまいます。つまり、年収130万円ちょうどであっても年収150万円であってもほぼ変わらないと考えてください。
また、下手に年収130万円を超えてしまい、例えば年収140万円ほどにしてしまうとかなり悲惨です。無駄に社会保険料がたくさんかかるようになり、手取り額が一気に減ってしまいます。そのため、年収130~150万円は避けるようにしましょう。
一方で年収150万円を超えた分には、高い給料を実現した分だけ手取り額が増えていくようになります。扶養外ではあっても、年収150万円以上になるのであれば、特に気にすることなくパートや派遣として働くようにしましょう。
税金の低い、扶養内勤務が可能なパートの求人募集
それでは、薬剤師はどのように求人を探せばいいのでしょうか。
既に述べた通り薬剤師は時給が高いため、かなり勤務日数や時間を絞らなければ扶養内で働くことができません。このとき、例えばパート・アルバイトであれば以下のような求人で扶養内勤務が可能です。
東京にある調剤薬局の求人になりますが、午前中で勤務できるパート薬剤師を募集しています。薬局は時間帯によって忙しさが異なるのは普通ですが、この薬局の場合は午前中に患者さんが多く忙しくなるため、このような短時間勤務の募集が出ているのです。
午前中の4時間ほど働ける人の募集であり、時給2,100円からです。そのため、週3回ほどであれば社会保険扶養内での勤務が可能です。
- 時給2,100円 × 1日4時間 × 週3回 × 4週間 × 12ヵ月 = 約121万円
東京や大阪に限らず、地方でもこうした薬局の求人は存在するので短時間勤務のパート薬剤師へ応募してみるといいです。特に午前中だけであれば、子供が小さかったとしてもママ薬剤師は問題なく働けます。
また、夜の勤務になっても問題ない場合、夜に短時間だけ働くパート・アルバイトの求人も存在します。例えば、以下のような感じです。
愛知県名古屋市の薬局求人ですが、勤務時間が17:00~20:00の3時間だけになっています。時給2,000円からなので、仮に時給2,000円だとすると週4日まで働けます。
- 時給2,000円 × 1日3時間 × 週4回 × 4週間 × 12ヵ月 = 約115万円
このようにすれば、社会保険扶養内での勤務になります。
扶養内での勤務をする場合、1日8時間などのフルタイムで働くことを考えると、週1回の勤務しか無理です(1日8時間、週1回の勤務の年収は約77万円)。週2回だと約154万円になり、社会保険扶養外になって社会保険負担が大幅にのしかかる金額になってしまいます。そのため、扶養内のパート勤務では短時間労働が可能な職場が最適です。
時給の高い派遣は勤務日数に注意
パート薬剤師であると、一般的に時給2,000円からのスタートになります。ママ薬剤師の中でも調剤経験がある場合は高い時給になりますが、通常の時給は2,000円です。ただ、派遣であると時給がかなり高くなります。最初から時給3,000円であることも珍しくありません。
派遣は即戦力を求めているため、調剤経験のあるママ薬剤師に限定されます。ただ、より少ない勤務日数で効率よく稼ぐことができます。
このとき高い時給であることから、扶養内を考えている場合、勤務日数が多くなりすぎないようにしましょう。例えば、以下のような求人があるとします。
東京の調剤薬局から出された派遣求人ですが、時給2,800円からです。午後のみ(15:00~19:00の4時間)の勤務が可能であり、週2日からです。実際に週2日で働く場合、以下のようになります。
- 時給2,800円 × 1日4時間 × 週2回 × 4週間 × 12ヵ月 = 約107万円
扶養内で働く場合、このように派遣だと勤務時間や日数を減らす必要があります。
ちなみに、同じ条件で週3回の場合は年収が約161万円になります。この場合、扶養外になるのでどうせなら高い時給でたくさん働き、給料を増やした方がいいといえます。
薬局・ドラッグストアだけでなく病院求人もある
なお、パート・アルバイトや派遣として扶養内の勤務をするとなると、調剤薬局やドラッグストアを思い浮かべる人が大半です。実際、薬局やドラッグストアには扶養内勤務OKの求人がたくさん存在します。
それでは、病院はどうなのでしょうか。残念ながら病院の扶養内勤務の求人募集は少ないです。ただ、問題なく出されていることもあります。
例えば、土曜日勤務が可能なパート薬剤師を探している病院だと扶養内勤務が可能です。例えば、以下のような病院求人です。
名古屋にある病院ですが、勤務時間9:00~13:00(4時間)の求人です。週2回からであり、土曜日に働ける人を募集しています。病院なので時給1,800円からと低めですが、こうした求人へ転職すれば問題なく扶養内での勤務が可能です。
急性期の大病院で募集が出ることはないものの、療養型病院や精神科病院を含め、そこまで忙しく走り回る感じの病院でなければ、扶養内OKのパート薬剤師の求人が出されます。
年収130万円超えの扶養外で働くメリット
それでは、扶養に入ることは考えずに年収130万円を超えて働くことにメリットはあるのでしょうか。デメリットばかりではないため、単純に「税金などの支払い額が大きくなる」という認識だけで考えてはいけません。
もちろん、年収130~150万円あたりの年収だと働き損になってデメリットは大きいです。ただ、150万円を大きく超えて働いたときを想定すると、デメリットばかりではありません。
まず、社会保険料を払うとなると、その分だけ将来の受け取り金額が増えます。例えば年金であれば、社会保険として自ら年金保険料を支払っているので将来の年金受給額は大きくなります。
他にも妊娠・出産して産休や育休に入るときは、さまざまな恩恵を受けることができます。例えば、健康保険に入っている人であれば、産休中は「出産手当金」が支給されます。出産手当金は「給料(社会保険の標準報酬日額) × 2/3 × 産休の日数」で計算されます。
社会保険に入っていると雇用保険にも加入することになります。社会保険に入っている女性薬剤師が育休に入った場合、育児休業給付金(月給の67%や月給の50%)を受け取ることができます。
この他にもあり、何かあったときの対応が手厚くなるのが社会保険なのです。ママ薬剤師にとって扶養内か扶養外かは重要ですが、150万円を大きく超えて働くという戦略もありなのです。
パートや派遣で扶養内か扶養外を検討する
扶養家族になるための条件を知ることは重要です。このとき、ママ薬剤師が旦那の扶養に入ることを考えるのであれば、社会保険への加入の境目になる130万円を基準に検討するといいです。年収130~150万円の間は非常に損であるため、130万円以下(社会保険扶養内)または150万円以上(扶養外)のどちらかを選択するようにしましょう。
そこまで忙しく働くことは考えておらず、一日4時間で週2~3回ほど働きたい場合、問題なく年収130万円以下に抑えることができます。時給の高い派遣薬剤師でも、一日4時間で週2回までの勤務なら扶養内です。
ただ、こうした基準を超えて1日8時間などのフルタイムで働くことを考えた場合、薬剤師だとすぐに扶養外になります。このとき年収150万円以上だと、稼いだ分だけ収入が増えるので、扶養のことなど考えず自分が好きなだけ働くようにするといいです。
薬剤師はパート・アルバイトや派遣での時給が高いからこそ、扶養内では給料を抑えるために勤務時間や日数を調節しなければいけません。こうしたことを理解したうえで、適切な職場へ転職するために転職サイトなどで求人募集を確認するようにしましょう。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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インタビュー記事:薬剤師の転職サイト
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薬剤師求人の中でも、「どこにも載っていない難しい案件」を探すことに特化した、オーダーメイド求人の発掘を行っているファーマキャリアさまへ取材しました。