薬事衛生・公衆衛生に関わる仕事として、保健所の薬剤師があります。薬剤師の中では珍しい仕事の一つであり、公務員でもあります。

日本全国に保健所が存在し、その数は400以上にのぼります。すべての保健所に薬剤師が在籍しており、保健所の職員として活躍しています。

それでは、こうした公衆衛生に関与する保健所の薬剤師に転職するとき、どのような仕事内容になるのでしょうか。また、採用のステップはどのようになるのでしょうか。調剤薬局とは異なる仕事になり、公務員なので転職方法も大幅に違ってきます。

そこで、薬事衛生を担う保健所職員へ中途採用で転職する方法について解説していきます。

薬事衛生・公衆衛生に関わる保健所の仕事内容

まず、保健所で働くときはどのような仕事内容になるのでしょうか。これについては、主に以下の2つに分かれます。

  • 薬事衛生:薬局への立ち入りや指導など
  • 公衆衛生:飲食店や各店舗の衛生指導など

それぞれについて確認していきます。

薬事衛生業務は責任の大きい役割になる

調剤薬局やドラッグストア、病院、企業で働く薬剤師は保健所の薬剤師のお世話になります。私も調剤薬局や一般企業(医薬品卸)の薬剤師として働いていたとき、保健所の薬剤師と連絡する機会が何度もありました。

例えば薬局であれば、劇薬や毒薬を含めて適切な保管方法が決められています。また、麻薬の受け取りをするためには麻薬譲受証を医薬品卸に渡し、書類を保管しなければいけません。このとき、「必要書類を保管しているか」「薬の位置は正しいか」など法令を守っているかどうか一緒にチェックを受けました。

以下は白紙の麻薬譲受証になります。

また、麻薬は一般的に製造から5年が経過したら廃棄しなければいけません。しかし、麻薬である以上は好きなようにゴミ箱に捨ててはいけません。第三者の立ち合いの元で廃棄する必要があります。このときの第三者は保健所の薬剤師のことであり、私も麻薬を破棄する場面では保健所薬剤師へ連絡して一緒に廃棄しました。

他には、薬局の開設や廃業の申請を受け付けることもします。薬事衛生とは、要は「法律に従って、薬局業務が運営されているかどうか」を指します。そのため、保健所の薬剤師であれば法律に詳しくなると考えましょう。

食品衛生、環境衛生など、公衆衛生のやりがいは大きい

保健所薬剤師の役割はそれだけではありません。飲食店を含め、その他の施設にまで業務範囲が及ぶようになります。こうした店を管理することにより、食中毒への対応など公衆衛生を守れるようになります。

また、ホテルなどの宿泊施設や温泉などの公衆浴場、美容室、クリーニング店などへの開設許可や届出も保健所の管轄になります。

他にも環境衛生部門であれば、工場の水質検査や環境大気、騒音などの検査を実施することも多いです。

最も分かりやすいのは調剤薬局やドラッグストア、病院を含めた薬事衛生になります。ただ、こうした薬事衛生とは離れた公衆衛生を管理する仕事内容についても役割は大きく、やりがいのある業務だといえます。

保健所にいる一般職員は薬機法について理解していません。そのため、法律を守っているかどうかを保健所の薬剤師が判断するのです。

公務員試験が必要になり、中途採用の日程が一律の保健所職員

ただ薬剤師が公務員になるとき、簡単になることはできません。公務員の採用試験を課せられることになります。市や県によっては、病院薬剤師で公務員試験を免除していることはあるものの、保健所職員として採用されるには地方公務員試験にパスするのが一般的です。

当然、試験日程は決まっているのでそのために勉強する必要があります。以下のように職員採用試験に向けて、勉強していくのです。

薬剤師が保健所の職員を目指すとき、最大のデメリットがこれら公務員試験になります。公務員試験のために必死に勉強しなければいけません。転職するとき、日々の仕事ですら大変なのに公務員試験の対策をする必要があるのです。

これは新卒就職でも同様であり、薬剤師資格の勉強だけでなく公務員試験の対策までしなければいけません。二重での勉強が必要であり、結果として新卒就職で保健所職員を目指す人は少なくなります。

また、公務員は入社日が4月1日と決まっています。民間企業のようにいつでも中途採用で入社できるわけではないというデメリットもあります。

就職後の年収・給料は新卒公務員程度で不人気

また、新たに公務員の職員として採用されることになるため、どれだけ調剤経験があったとしても新卒薬剤師の就職と同じ給与形態となります。つまり、非常に低い給料になると考えましょう。

調剤薬局やドラッグストアに比べると、公務員の収入は非常に低いです。薬局であれば、東京や大阪などの都市部であっても、中小薬局であれば年収450万円以上が普通です。一方で公務員となると、新卒だと月の給料(初任給)は20万円未満になるのが一般的です。

月の手取りが16万円ほどになっても驚いてはいけません。つまり、大病院の薬剤師よりも低い収入で我慢する必要があります。薬剤師という専門資格を保有しているにも関わらず、非常に悪い待遇になるのが保健所などの公務員薬剤師です。

一般的に保健所の職員を含め、公務員の薬剤師は不人気です。これには理由があり、調剤経験を積めないだけでなく、他の薬剤師に比べて圧倒的に年収が低いという問題もあるのです。

参考までに、保健所の場合は「一般事務職よりも薬剤師のほうが、年収が悪くなる」ことが頻繁に起こります。

・3年ごとの転勤も不人気の理由

また、公務員ではほぼ確実に転勤があります。基本的には、3年などの短期間で次々と転勤すると考えなければいけません。

同じ市であれば影響は少ないですが、保健所の場合は同じ県内で広範囲の異動を命じられることは珍しくありません。そのため、引越しを含めてわりと大変になりやすいです。こうした転勤があるのも、保健所を含め公務員薬剤師が不人気となる理由です。

しかも、転勤時は同じように保健所とは限りません。まったく違う部署へ配属されることもあります。そのときはゼロから覚え直す必要があり、特定の部署に長く在籍することで専門知識を磨くことはできません。

  • 本庁(県庁など)
  • 病院
  • 企業局(水道、下水道等の水質管理など)
  • 研究所
  • 中小企業総合センター
  • 消費生活科学センター

このように、あらゆる部署への配属が存在することは理解しなければいけません。

「公務員試験が必要」「年収・給料が非常に低い」「転勤で住む場所が数年おきに変わる」「必ずしも保健所勤務とは限らない」など、あらゆる不人気の条件が揃っている職場として公務員があります。仕事のやりがいや役割は大きいものの、新卒就職でさえ保健所を避ける人が多いのは待遇の悪さが理由としてあるのです。

土日休みで残業がなく、福利厚生の充実はメリット

もちろん、デメリットばかりではありません。公務員ならではのメリットも存在します。

公務員なので雇用が安定しているのは誰でも想像できますが、保健所職員であると土日休みになります。調剤薬局やドラッグストア、病院の薬剤師だと土日出勤が普通に存在します。日曜日や祝日に出勤することもあります。

一方で保健所職員であれば、確実に土日祝日休みを確保できるようになります。

また、残業がほぼ存在しないのもメリットです。同じ公務員であっても、病院薬剤師であればサービス残業が常態化します。ただ、保健所であればそうしたことがないのです。

・育児環境に優れている公務員

さらには公務員だと福利厚生が充実する傾向にあります。特に女性にとっては待遇が非常に良いです。

例えば公務員の場合、育休を子供が3歳になるまで取得できます。法律での育休は子供が1歳になるまでとなります。ただ、公務員ではそれよりもはるかに長く休みを取れます。

また、保育園送迎のために1日の勤務時間を短くできる時短勤務は当然として、子供の急な発熱などの病気にも対応できる看護休暇も取得できます。

調剤薬局であっても、ここまで育児に理解を示してくれる職場は珍しいです。ただ、公務員であれば特に深く考えずに求人に応募して転職したとしても、育児面では非常に優れた環境になるのです。

稀に転職サイトで試験なし求人が存在する

ここまで、一般的な保健所薬剤師の採用募集について記してきました。公務員試験を受ける必要があるため、薬剤師であっても新たな勉強が必要になります。

そのため、保健所で採用されるためには自治体の公式サイトを確認することで、どのように中途採用の募集に応募すればいいのかチェックする必要があります。

しかし、稀にではありますが転職サイトに「公務員試験なしでも保健所職員になれる薬剤師の募集」が出されていることがあります。

例えば、以下は茅ケ崎市から転職サイトに出された保健所求人です。

ここにある通り、「公務員試験用の特別な対策や勉強は必要ありません」とあります。薬剤師の採用で公務員試験を課すかどうかは自治体ごとに異なり、ほとんどで試験が必要になるものの、そうではない自治体だとこのように転職サイトへ保健所の薬剤師求人が掲載されるようになります。

一般的には、保健所を目指すにしても本当に保健所職員として配属されるか不明です。ただ、転職サイトを通じてこうした求人募集へ応募する場合、確実に保健所で勤務できるようになります。

パートはフルタイム勤務となる

なお、正社員ではなくパート・アルバイトの保健所求人が出されることがあります。正社員ではなく、パート勤務によって保健所の薬剤師として働くという方法もあるのです。公務員であっても、パート求人が出されるのは普通です。

ただ、保健所でのパート薬剤師をするときはフルタイム勤務になると考えましょう。

大きな保健所でない限り、一般的には保健所に在籍している薬剤師は一人だけです。一人ですべての業務をこなさなければならず、薬局のように特定の日だけヘルプ勤務することはできません。働くにしても、正社員と同じようにフルタイムで勤務しなければ保健所の業務をこなすことはできないのです。

保健所のパート求人は稀ですが、ハローワークで出されることがあります。自治体の公式サイトを確認しても募集を見つけられないことは多いため、転職サイトやハローワークを含めてチェックしましょう。

あいまいな志望動機になるが仕方ない

そうして実際に保健所の職員を目指す場合、志望動機を考えなければいけません。薬剤師であっても公務員では履歴書の提出が必要になりますし、面接もあります。そのため、事前に志望動機を考えておかなければいけません。

このとき、転職サイト経由で申し込むために保健所へ就職することが確実なのであれば問題ありません。ただ、公務員試験を受ける一般的な転職の場合、どこの部署に配属されるか不明です。そのため、公務員を受けるための曖昧な自己PRになってしまうのは仕方ないと考えるようにしましょう。

保健所を含め、公務員を目指す人の場合は「薬剤師としての専門知識を活かし、市民を守るために仕事をしたい」というザックリとした志望動機になりがちです。ただ、こうした志望動機以外に方法はないのです。

そのため、実際に公務員として試験を受ける場合は以下のような志望動機になります。

これまで薬剤師の専門知識を活かし、市民のために活動したいと考えて志望しました。

調剤薬局に勤務していますが、どうしても一つの職場で完結してしまいます。一方で保健所を含め公務員の薬剤師であれば、薬局や病院に限らず飲食店や工場への指導を含め、多くの市民に貢献することができます。

そうした薬剤師として活躍することを考えました。転職後、公務員として地域活動を積極的に行いたいと思います。

刺さる志望動機というのは、その会社でしか実現できないことを述べることにあります。しかし、保健所を含め公務員なので希望分野や勤務場所を聞き入れてくれる確率は低く、働く場所を絞れません。そのため、このようなぼんやりとして志望動機になってしまうのです。

保健所の薬剤師として活躍する

公務員の薬剤師の中でも、広く薬事衛生や公衆衛生に関わる仕事として保健所があります。その役割は大きく、やりがいのある仕事を任されることになります。

ただ、公務員なので薬剤師の中では最低レベルの給料になってしまうことは事前に理解しましょう。年収は低く、収入という意味では大病院の薬剤師よりも低くなるのは普通です。

さらには数年おきに転勤があります。調剤スキルが身に付かないだけでなく、部署変更によって仕事内容は大きく変わります。当然、保健所を希望していたとしても配属されるかどうかは不明です。そのため、公務員の薬剤師は圧倒的に不人気です。

ただ、公務員なので安定していることは間違いありませんし、土日休みを実現できます。女性であれば、子供が3歳になるまで育休を認めてくれるのは魅力です。こうしたメリットとデメリットを理解したうえで保健所の薬剤師を目指すようにしましょう。

なお、基本的には公務員試験が課せられますが、転職サイトへ登録すれば「公務員試験なしで応募できる保健所の求人募集」が存在することがあります。また転職サイトに登録することで、公務員のデスクワークを他にも発見できることもあります。そのため、転職エージェントを利用しながらも保健所の職員を目指すとスムーズです。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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・派遣登録し、高時給で働く

派遣薬剤師は給料が正社員よりも高く、時給3,000円以上も普通です。さらには3ヵ月や半年だけでなく、1日などスポット派遣も可能です。「自由に働きたい」「多くの職場を経験したい」「今月、もう少し稼ぎたい」などのときにお勧めです。

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