人口の多い都道府県の一つに兵庫県があります。兵庫で薬剤師を考えている人は多く、兵庫で働くことで地域に貢献しようと考えるのです。

ただ、兵庫で働く薬剤師の状況を理解していないと、転職時に提示された求人募集の内容が適切なのかどうか判断することができません。

さらには、兵庫では地域性があります。兵庫県内で働くにしても神戸市・尼崎市などで勤務するのと、姫路市・明石市などで薬剤師をするのでは、勤務条件の内容が違ってくるように思います。これについては、どうなのでしょか。

ここでは、兵庫県で働くときに考えるべきことについて解説していきます。

薬剤師では非常に平均年収が低い兵庫県

さまざまな都道府県の中でも、平均年収が非常に低い県として兵庫県があります。関西の中で最も給料水準が低く、提示される収入が少ないと考えるようにしましょう。

薬剤師の平均年収は厚生労働省が統計データを発表しています。これについては、以下のようになっています。

都道府県平均年収平均月収平均賞与
兵庫472万円32.5万円82.0万円
全国526.1万円37.6万円74.9万円

出典:厚生労働省「2018年賃金構造基本統計調査」

人口の多い都市圏の中でも異常なほど低い収入になっていますが、これは単純に兵庫県での薬剤師数が多いからです。

兵庫にある薬科大学(薬学部のある大学)としては、以下のような教育機関があります。

  • 神戸薬科大学:神戸市東灘区
  • 武庫川女子大学:西宮市
  • 神戸学院大学:神戸市中央区
  • 兵庫医療大学:神戸市中央区
  • 姫路獨協大学:姫路市

このように、一つの県に薬学部を保有する大学が5つもあります。そのため、いくら人口が多いとはいってもそれ以上に薬剤師が供給されます。

薬剤師が多ければ、高い給料を提示しなくても募集をかければ薬剤師を雇うことができます。そのため、全国的にも兵庫県での薬剤師は結果として非常に低い年収で働かなければいけなくなっているのです。これが、兵庫で薬剤師をするときの特徴であり現実です。

神戸市(三宮)を中心に尼崎市、西宮市、姫路市、明石市、加古川市で求人が多い

それでは、兵庫県内のどこで求人が出されるのでしょうか。これについては、神戸市が当然ながら最も多いです。神戸には以下の9つの区があり、三宮や元町のある中央区に限らず全ての区で、広く中途採用の求人募集が出されるようになっているのです。

垂水区、須磨区、長田区、兵庫区、中央区、灘区、東灘区、北区、西区

ただ、兵庫の場合は神戸以外にも人口の多い市があり、求人はそれぞれの都市でまんべんなく出されています。実際、神戸市であっても兵庫県全体の3割ほどの求人になります。その他は別の市から求人が出されています。

尼崎市や西宮市、明石市、加古川市、姫路市で募集が多いです。兵庫県は瀬戸内海沿いの平野部が栄えていますが、こうした場所で薬剤師の求人が出されるようになります。

このとき、兵庫県内には神戸市や西宮市に限らず、姫路市にも薬科大学が存在するため、基本的にどの地域であっても薬剤師がたくさんいる状況に陥っており、高い給料で働くことが難しくなっていると考えましょう。

兵庫県内でも北部の薬局は収入が高い

ただ、田舎の地域に行けば高い給与相場になるのは全国共通です。そのため、同じ兵庫県内で勤務するとはいっても北部にある薬局や病院で働く場合は高い収入を実現できるようになります。

大手チェーン薬局だと田舎でも低い給料のままなので意味ないですが、中小薬局であれば未経験の薬剤師であっても最初から年収600万円が可能です。

例えば、以下は兵庫県北部に位置する豊岡市の求人募集です。

大手チェーン薬局になると年収450万円ほどと田舎にも関わらず異常なほど低い給料になりますが、中小薬局やドラッグストアであればこうした年収が可能です。

もちろん兵庫北部でなくても、淡路島(淡路市)などでも給料は高めになります。淡路市の場合、年収500~530万円ほどが一般的な収入となります。

調剤薬局やドラッグストアで勤務するときの考え方

ただ、実際のところ田舎の地域で薬剤師をする人は少数です。多くは都市部で働くことを考えますが、兵庫ではどのように考えて就職すればいいのでしょうか。転職に限らず、新卒薬剤師にとっても考え方は同じですが、兵庫では「良い条件で転職しにくい」ことを理解したうえで戦略を練らなければいけません。

まず、兵庫県内で何も考えずに就職先を探す場合、年収400~430万円ほどが一般的です。ただ、探せば年収450万円ほどを提示してくれる調剤薬局を見つけることは可能です。例えば、以下は神戸市北区の調剤薬局から出された求人です。

しかし、一般的には高くても年収430万円ほどの提示をする薬局が非常に多いです。そのため、収入の額についてはそこまで期待しない方がいいです。なお、大手チェーン薬局では年収400万円未満になるため、基本は中小薬局を考えるといいです。

それでは、ドラッグストアではどうなのでしょうか。ドラッグストアといえば一般的に高年収求人です。しかし、関西の社長はケチな人が多いのか不明ですが、兵庫ではドラッグストアで働いたとしても収入レベルは低いです。転職サイトへ登録して実際に求人を検索すれば分かりますが、ほとんどが年収420~430万円ほどです。

つまり、中小薬局で勤務してもドラッグストアで働いても年収はほとんど変わらないと考えて問題ありません。

唯一の例外として、関東を拠点に展開するドラッグストアであれば高年収が可能です。有名なドラッグストアチェーンとしてはウエルシアがあり、こうしたドラッグストアなら高い収入を実現できます。例えば、以下は兵庫県姫路市にあるウエルシア薬局の求人です。

このように、年収516万円以上でのスタートです。兵庫では薬局でもドラッグストアでも高い収入は難しいですが、会社によって方針はバラバラだと考えましょう。

兵庫で高い給料を得るやり方

それでは、兵庫県内の人口の多い地域で優れた条件で働くのが絶対に無理なのかというと、必ずしもそういうわけではありません。探せば良い条件の募集は存在します。

もちろん、一般的な薬局ではなくそれなりに理由のある職場となります。そのため、理由に納得できるのであれば応募して高めの給料を実現できるようになります。

・訳ありの求人へ申し込む

「帰宅時間が遅い」「一人薬剤師」「新規オープン」など、中には特殊な求人があります。こうした中途採用の場合、他と同じ年収だと申し込む人がいないので高めの給料が提示されるようになります。

ただ、訳ありの募集とはいってもその内容に納得できる場合、その人にとっては優れた求人だといえます。そのため、事前に求人詳細の中身を吟味したうえで応募すれば何も問題ありません。例えば、以下は神戸市兵庫区の調剤薬局での募集です。

最初から年収550万円ですが、開局時間が非常に長い薬局になっています。透析クリニックからの処方せんを受けているために遅くまで開局することになっています。21:00まで開いているため、薬局を出るのが22:00などになることもあります。その代わり、高年収になっているのです。

・管理薬剤師で年収550万円以上を目指す

また、調剤薬局や調剤併設ドラッグストアで管理薬剤師の経験があるなら、年収550万円以上の管理薬剤師求人で転職しても問題ありません。

管理薬剤師であれば、たとえ平均年収の低い兵庫であったとしても年収550万円以上は普通です。低い給料で働いているのであれば、転職によって簡単に年収アップを実現できるのが管理薬剤師になります。

例えば、以下は神戸市灘区の薬局からの管理薬剤師求人です。

年収600万円以上であり、高年収を実現できます。この薬局も開局時間が長めなので労働時間は多く、管理薬剤師の中でも高めの収入となっています。

パート・アルバイトでは時給1,800円を避けるべき

ただ、中には正社員ではなくパートやアルバイトとして薬局勤務を考えている人もいます。このときはどのような点に気を付けるべきなのでしょうか。これについては、注意点は一つだけです。それは、「時給1,800円の求人を避ける」ことです。

兵庫県のように異常なほど給与相場の低い地域の場合、パート・アルバイトについても時給が低くなる傾向にあります。そのため、調剤薬局の求人であっても時給1,800円ほどの募集が非常にたくさん出されます。

例えば、以下は西宮市の調剤薬局から出たパート募集です。

ここにある通り、時給1,800円です。他の都道府県ではあり得ませんが、兵庫県内ではこうした低い時給の求人がたくさん存在するのです。

ただ、一般的に薬剤師のパート勤務は最低でも時給2,000円が基本です。そのため、時給2,000円は必ず確保するようにしましょう。安い時給で薬剤師を働かせようと考えている薬局はブラックな可能性が非常に高く、当然ながら昇給も期待できません。そのため、時給2,000円以上は必須となります。

なお、数は少ないものの時給2,300円や時給2,500円を最初から提示してくれる調剤薬局やドラッグストアも存在します。こうした店舗を目指しても問題ありません。

派遣は時給3,000円を目指すべき

それでは、薬剤師としての働き方の中でも派遣ではどうなのでしょうか。派遣薬剤師として勤務すれば、一般的に高時給を実現できることは有名です。

兵庫県内で派遣薬剤師をするとき、やはり時給相場は低めになってしまいます。一般的に派遣薬剤師ではどれだけ低い時給でも、時給2,800円以上が普通です。また、可能なら時給3,000円を目指すのが基本となります。

しかし、兵庫では時給2,500円や時給2,700円など相場よりも低い給料の派遣求人がたくさん存在します。

ただ、先ほどのパート・アルバイトと同じようにこうした低すぎる求人を選ぶのはやめましょう。どれだけ安くても、時給2,800円以上は基本です。また、兵庫であっても時給3,000円を提示してくれる求人は存在するため、こうした募集を頑張って探すといいです。

例えば、以下は神戸市長田区の薬局からの募集です。

病院前にある門前薬局から出された求人ですが、時給3,000円です。薬剤師の在籍人数の多い薬局ですが、このように薬剤師の高時給求人が出されるのです。

病院薬剤師として兵庫で働くには

一方で病院薬剤師という勤務方法もあります。兵庫県の病院で勤務するときはどうなのでしょうか。

兵庫だと調剤薬局やドラッグストアを含めて低い給料になります。これが病院薬剤師になると、さらに収入は低くなると考えましょう。大手チェーン薬局だと年収は370万円前後になって非常に待遇は悪いですが、病院だとそれ以下になります。

兵庫で病院薬剤師をする場合、年収350万円ほどが妥当です。そのため、かなり少ない給料で我慢しなければいけません。薬剤師が多い兵庫県の場合、病院についても同様に優れた条件では勤務できないと考えましょう。

例えば、以下は神戸市西区にある病院薬剤師の募集です。

精神科病院での募集になりますが、年収350万円です。精神科病院は不人気なので高めの給料になりがちですが、そうした病院からの募集であっても兵庫県だとこのように年収は低めです。兵庫で病院薬剤師を目指す場合、低い給料であっても我慢して患者さんへ奉仕する精神がなければいけません。それだけ、低収入で働く必要があるからです。

なお、病院でパート勤務をする場合は薬局と同様に時給2,000円を考えましょう。兵庫県では時給1,800円の病院パート求人が多数を占めるものの、そうした募集を避けて応募するといいです。

一般企業の求人はほぼ存在しない

それでは、兵庫で働く企業の求人についてはどうなのでしょうか。一般企業で働きたいと考える薬剤師も存在します。

これについては、残念ながら兵庫県内で一般企業の求人を見つけるのは諦めた方がいいほどハードルが高いです。単純に求人が出されないからです。

関西の場合、企業の求人のほとんどが大阪です。神戸を含め、兵庫県で企業求人は出されないのです。実際、以下は求人数5万件以上の転職サイトを活用し、兵庫県での企業求人を調べたときの結果です。

このように、全体の求人数は2件しかありません。ここから、神戸市や尼崎市、姫路市を含め兵庫県内で企業薬剤師をするのは非常に難しいことが分かります。

もちろん、確率はゼロではありません。実際、このように2件と非常に少ないながらも中途採用の募集は存在します。どのような会社から出されているかというと、企業での管理薬剤師として働いてほしい求人となっています。

医薬品卸や品質管理など、薬剤師免許がなければ法令違反になる会社はいくつも存在します。そうしたとき、管理薬剤師の募集が出されるのです。例えば、以下は神戸市須磨区で出された一般企業の求人です。

このように稀ではありますが企業の薬剤師として働くことのできる募集が出されます。CRA(開発職)や薬事職などの求人ではなく、管理薬剤師であれば一般企業で勤務できます。

転職サイト経由で兵庫県内の求人を探すといい

兵庫での薬剤師の転職事情を見ると、このように待遇面だけを考えると悪いです。兵庫で高い給料を実現するのは非常に難しいのが現状です。中小薬局だけでなく、ドラッグストアであっても低い収入になってしまうのです。

これが大手チェーン薬局や病院になると、さらに待遇は悪くなります。また、一般企業を目指すにしても求人がほとんどありません。

こうした状況のため、自分で求人を探したとしても数件ほどの募集しか発掘することができず、募集を見つれられたとしてもダメな条件である確率が非常に高いです。さらには、勤務条件の交渉を自分で行うのは大変です。そこで、転職サイトを利用することで多くの求人から選ぶようにしましょう。

このときは転職サイトの担当者によっても勧めてくる求人が異なりますし、転職サイトごとに保有している募集案件も違います。兵庫で良い条件で働ける職場は少ないため、一社だけの転職サイト利用では失敗する確率が高くなります。そのため、2~3社以上の転職エージェントを活用して転職活動をするようにしましょう。

なお、たとえ複数の転職エージェントを活用したとしても、何も考えずに兵庫県で転職活動をするとダメな条件の薬局や病院で働くことになってしまいます。そのため、以下のように希望条件を明確にするといいです。

  • 姫路市内の薬局で、年収450万円で新卒就職する
  • 管理薬剤師で転職し、加古川市で年収600万円を達成する
  • 関西圏で一般企業へ就職する
  • 家の近くにある神戸の病院募集で週3日のパート勤務をしたい

人によって求めている条件や要望は異なります。そこで、こうした要望を転職サイトの担当者に伝えたうえで転職活動をするようにしましょう。

多くの中途採用の募集から求人を選ぶと成功しやすい

兵庫は人口の多い都道府県の一つであるため、多くの人が兵庫県内での薬剤師転職を考えます。しかし、ここまで述べた通り、兵庫県内で薬剤師をする場合はかなり求人を比較したうえで転職活動をしなければいけません。

兵庫には多くの薬科大学があるため、需給バランスにより正社員やパート・アルバイトを含めて給料(時給)が低くなりがちです。待遇の良い薬局や病院を探すためには、多くの選択肢の中から募集を吟味しなければいけないのです。

さらには、これに加えて「土日休みがいい」「残業は多くない方がいい」など、あなたの要望があると思います。こうしたことを叶えてくれる職場を探すようにしましょう。

そのためには複数の転職サイトを利用しなければいけませんし、提示されてきた求人を比較検討する作業も必要になります。兵庫では優れた条件を提示してくれる職場が少ないからこそ、就職先の会社を見つけるときは根気強く活動するといいです。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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