病院薬剤師をしている人の中には、病院から薬局へ転職したいと考える人がいます。病院薬剤師は年収が低く、サービス残業も多い業種として知られています。そのため、結婚などのイベントがあったり、地元へのUターン転職を考えたりするとき、病院ではなく薬局へ就職するのです。

そうしたとき、どのような点に注意して求人を探せばいいのでしょうか。また、他の人はどのように考えて転職を達成しているのでしょうか。

しかし調剤薬局やドラッグストアへ転職するとはいっても、その種類は非常に多いです。そのため、具体的にどのような薬局を目指すのか事前に考えなければいけません。

そこで、薬剤師が病院から薬局へ転職するときのポイントについて確認していきます。

病院から薬局へ薬剤師が転職する理由

大きな総合病院や大学病院を含め、急性期病院は若い薬剤師を中心に人気です。夜勤があってサービス残業が多いものの、勉強できることが多いです。そのため、大病院で勤務することを考える薬剤師はたくさんいるのです。

ただ、病院勤務を頑張っていたとしても、あるとき病院から薬局へ就職したいと考えるようになる薬剤師は多いです。これには、以下のような理由があります。

  • 給料が低すぎるため、年収アップしたい
  • 福利厚生の優れた職場で働きたい
  • 激務でサービス残業が多く、落ち着いて仕事をしたい
  • 結婚・出産で子育てしやすい環境がいい
  • 地元へUターン転職したい

もちろん、他にも転職理由はあります。ただ、病院薬剤師が薬局を目指す主な理由がこうしたものになるのです。

重視するべきことによって行うべき対策は異なります。以下では、病院から薬局へ転職するときに注意すべき点をより詳しく見ていきます。

年収・給料の優れた薬局やドラッグストアで勤務する

病院薬剤師の給与水準が低いことは有名です。病院の規模が大きくなるほど収入が低くなるため、薬局へ転職することで簡単に年収アップを実現できます。

子供が生まれたなどの理由によってお金が必要になる人は多いです。確かに病院薬剤師として勉強し、スキルアップすることは重要です。

ただ、世の中きれいごとだけでは済まされません。お金がないと生活できないため、どうしてもお金が必要になって薬局へ転職する人は多いです。金銭的な理由で病院から薬局へ転職すること自体は恥ずかしいことではありません。

ただ、病院から薬局へ転職することで年収アップを検討する場合、注意するべき点があります。それは、大手調剤薬局チェーンを避けることです。薬局では会社の規模が大きくなると、病院薬剤師並みの安い給料となってしまうからです。

例えば、以下は全国展開している大手チェーン薬局の求人です。

東京での勤務ですが、このように年収360万円からと病院薬剤師と同程度の低い年収となっています。

同じように調剤薬局やドラッグストアへ転職するにしても、こうした薬局は避けるようにしましょう。そうではなく、中小薬局またはドラッグストア(調剤あり)の店舗へ転職するといいです。例えば、以下は東京にある10店舗以下の中小薬局求人です。

このように、最初から年収500万円です。調剤未経験の薬剤師で年収500万円のため、病院経験があるのであればより高い収入を得られるようになります。

未経験で薬局やドラッグストアへ転職する場合、東京や大阪、名古屋、福岡、横浜などの都市部だと、中小薬局では年収450万円以上が一般的です。そのため、病院薬剤師として勉強してきたのであれば一般薬剤師として薬局へ転職するにしても、年収500万円以上になると考えましょう。

福利厚生の優れた薬局で手取りの収入を増やす

また、同時に福利厚生についても確認するといいです。病院はどこでも基本的に福利厚生が微妙です。ただ、調剤薬局やドラッグストアであるとトップの職種になるのが薬剤師であるため、福利厚生が充実するようになるのです。

例えば、多くの薬局で行われている福利厚生として、薬代の無料があります。実際に私は薬局薬剤師として勤務しており、このときの薬代はすべて無料です。私は便秘があるのと、胃腸が弱いのでマグミットやパリエット(ジェネリック)などの薬を無料でもらっています。

もちろん、隣にあるクリニックの受診代はかかります。ただ、隣にあるクリニックを受診するときは医師から「どの薬が欲しい?」と聞かれて自由に薬をもらうことができるので、非常に重宝している福利厚生です。

また薬局によっては、昼の一時帰宅を認めてくれたり、子供が急な発熱を出したときに休暇を認めてくれたりすることがあります。調剤薬局やドラッグストアによって福利厚生の中身が異なるため、こうしたことも十分に確認しましょう。

・住宅手当は特に重要

その中でも、特に需要なのが住宅手当です。持ち家の場合は関係ないですが、一般的には多くの人が賃貸物件に住んでいます。このとき、住宅手当が例えば月5万円ほど出る薬局の場合、何もない職場に比べると年間60万円も手取り額が違ってきます。

年収の額面だけで転職先を決めてはいけません。こうした福利厚生まで考えて転職先を決めるのが適切です。

楽な職場で落ち着いて仕事するのも可能

また、忙しい病院で勤務していたのであれば、調剤薬局ではある程度は落ち着いて仕事を行える環境を選んでも問題ありません。

もちろん忙しいとはいっても、人によって求める環境が異なります。これについては、どれくらいの忙しさの職場が適切なのか事前に決めておくようにしましょう。取り扱う科目によって特徴が大きく異なるからです。例えば、科目の違いにより以下のようになります。

  • 小児科:粉薬や水剤が多く、処方せん1枚の労力が大きい
  • 整形:貼り薬をメインとして、わりと簡単な処方せんが多い
  • 眼科:処方せんが少なく、ゆったりした職場が多い

また、内科の前にある薬局で勤務するにしても、非常に規模が大きく常に薬剤師が動き回っている職場があれば、2人くらいの薬剤師でわりと落ち着いた状態で調剤できる薬局もあります。薬局といっても職場によって規模や忙しさ、取り扱う薬の種類はまったく異なるのです。

なお、忙しい薬局で勤務すれば薬剤師として高い給料をもらえるわけではなく、ある程度は会社内で給料が統一されています。そのため、どれくらいの年収を提示してくれるのかを確認しつつも、薬局の規模や1日の処方せん枚数まで確認するといいです。

病院から育児に理解のある職場へ転職する

特に女性薬剤師だと、結婚・出産によって病院から薬局へ転職する人が非常に多いです。これまでと同じように夜勤を行い、サービス残業ありのフルタイム勤務をして、土日出勤まである状態で勤務するのが難しくなるからです。

そこで、調剤薬局やドラッグストアへの転職を考える女性薬剤師はたくさんいます。

ただ、たとえ薬局であっても子育てしにくい環境の調剤薬局はたくさんあります。そうした薬局は絶対に避けなければいけません。このとき、以下の点を重視するといいです。

・育休の例外を認めてくれるか

日本の法律では、子供が1歳になるまで育休が認められています。ただ、場合によってはそれ以上の育休を取得したいケースもあります。そうしたとき、何歳まで育休が可能か確認しましょう。

・時短勤務を何年まで延長可能か

他には、子供が3歳になるまで、時短勤務を認めなければいけないと法律で定められています。ただ、子供が3歳になったと同時に親の手が離れるわけではないため、実際にはもっと時短が必要になります。

そこで、子供が何歳になるまで時短勤務できるのか転職前に知っておく必要があります。

・看護休暇は認めてくれるか

子供が急に病気になり、看病が必要になることはよくあります。そのとき、看護休暇を認めてくれる薬局でなければ働きづらくなってしまいます。病院では無理ですが、薬局の中には看護休暇を認めてくれる職場があります。

例えば、以下の薬局は「子供が2歳になるまで育休あり」「子供が小学校2年生になるまで時短可能」「看護休暇も認めてくれる」という制度を整えています。

病院から薬局へ転職するとき、何でもいいから決めればいいわけではありません。ここまで確認したうえで中途採用の募集を見るようにしましょう。

地元へUターン転職したい

場合によっては、地元へUターンして就職することを考える人もいます。同じように病院への就職を考えてもいいですが、地元にある新たな病院で働くことを考えるよりも、実際のところ調剤薬局やドラッグストアへ転職する薬剤師の方が多いです。

新卒ではなくある程度の年齢を重ねた状態で転職することになるため、病院では採用が難しくなります。また、同じように忙しい状況で働かなければいけないため、地元へ帰ると同時に薬局薬剤師を目指すのです。

このとき、特に理由がない限りは地元に根付いた中小薬局やドラッグストアへ転職するようにしましょう。その方が収入は高いですし、何より転勤がありません。もし、転勤があったとしても非常に近い地域内だけとなります。

大手チェーン薬局の場合、広範囲で転勤辞令が出ます。地域限定社員での採用も可能ですが、大手チェーン薬局の場合ただでさえ給料が低いのに、地域限定社員の採用だとより悪い待遇となります。それなら、最初から地域密着で活動している薬局へ転職したほうがいいです。

地元就職を考える場合、将来の転勤がない職場が適切です。

職場見学で調剤設備を観察する

なお、病院から薬局への転職活動で意外と重要になるものとして、職場見学があります。調剤薬局やドラッグストアの面接では、本社で実施することがほとんどです。病院のように、面接場所が職場ではありません。

そのため、人によっては面倒に考えて「実際に働くことになる調剤薬局やドラッグストアの現場見学をしない人」がいます。ただ、これだと転職で失敗する確率が高くなります。どのような調剤設備なのか分かりませんし、一緒に働く薬剤師も不明だからです。

病院とは違い、調剤薬局では設備がそこまで整えられていないことが多いです。特に環境の悪い職場だと、社長が設備投資に積極的でないために異常に古い機器類をいまでも活用していることがあります。例えば、以下のような分包機です。

こうしたことについては、実際に薬局を見学しなければ内情が分かりません。病院のようにいろんな機器類が揃えられた状態で調剤するわけではないため、実際に働く薬局ではどのような環境に身を置くようになるのか見学によって確認するようにしましょう。

在宅メインの調剤薬局でも問題ない

なお、病院薬剤師であるなら注射剤の混注作業については問題なく行えると思います。そうしたとき、在宅メインで調剤を行う薬局へ転職しても問題ありません。

病院薬剤師であるなら、無菌室で注射剤の調整まで実施するような本格的な在宅薬局へ転職したとしても、即戦力として迎え入れてくれます。

例えば、以下は埼玉にある在宅メインの調剤薬局から出された求人募集です。

このように未経験でも年収470万円以上であるため、それ以上の給料を期待できます。そのため条件面としては悪くありません。

こうした在宅薬局へ転職し、病院薬剤師の経験を活かすことも視野に入れるといいです。普通の薬局で勤務する場合、当然ながら病院薬剤師で働くときに比べると刺激が少なくなります。ただ、在宅メインの薬局であると病院薬剤師と同じよう刺激のある仕事を行えるようになります。

正社員やパートだけでなく、派遣も可能

なお、薬局薬剤師へ転職することを考えるとき、一般的には正社員やパート・アルバイトを考えます。ただ、同じように転職するのであれば派遣薬剤師を検討してみても問題ありません。病院での調剤経験があれば、薬局でも即戦力として派遣で迎え入れてくれるようになります。

派遣薬剤師の場合、主な仕事内容は服薬指導です。患者さんへの投薬については、病棟で経験があるはずです。これと同じことを実施すれば問題ありません。

薬局内でどの棚にどの薬があるのかについては、薬局ごとにルールが異なります。そのため派遣であれば、どの薬剤師であっても薬の棚配置ルールについては把握できません。そこで、監査や患者さんへの投薬がメインになるのです。

派遣薬剤師の特徴は時給が非常に高いことです。東京や大阪などであっても時給3,000円以上になるのは普通です。例えば、以下は東京都港区にある薬局から出された派遣求人です。

参考までに、時給3,000円だと年収600万円に相当します。病院から薬局への転職を考えるとき、敢えて派遣薬剤師を考えてみても問題ありません。自由な働き方を実現しながら、病院勤務していたときのスキルを活かして働くことができます。

他職種まで考慮し、薬剤師としての可能性を探る

薬剤師として働くとき、若いときに病院を目指す人は非常に多いです。たくさんのことを勉強でき、カルテを見たりチーム医療を経験したりと、いろんな知識を学び取れるようになります。

ただ、勉強という意味では非常に優れているものの、待遇面では圧倒的に条件が悪くなってしまうのが病院薬剤師です。収入は非常に低いですし、サービス残業は当たり前です。夜勤手当も少ないので、労力に見合っていません。

そうしたとき、何かをきっかけに病院から薬局の薬剤師を目指す人は非常にたくさんいます。年収の問題や結婚・出産など、人によって転職の理由は異なります。ただ、薬局薬剤師の中途採用求人へ転職すること自体は恥ずかしいことではないですし、多くの病院薬剤師が経験しています。

しかし、調剤薬局やドラッグストアとはいっても非常に多くの種類があります。当然、薬局ごとに勤務形態や福利厚生も違ってきます。そこで、「どのようなポイントを踏まえて求人を確認すればいいのか」について解説してきました。

これらの注意点を踏まえたうえで、転職サイトを通じて求人へ応募するようにしましょう。多くの求人から選び、優れた薬局を見つけるといいです。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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