薬剤師の転職サイト(転職エージェント)によっては「転職に成功すればお祝い金を渡します」と宣言しているサイトがあります。

転職サイトは、「転職したい薬剤師」と「薬剤師が欲しい企業(薬局や病院など)」を引き合わせた後に、手数料を貰うビジネスモデルです。そのため、まずは薬剤師の登録がないとビジネスが成り立ちません。そこで、「お祝い金」というエサを吊るすことで転職したい薬剤師を集めるのです。

ただ、お祝い金につられて転職サイトを利用しても良いですが、私は「お祝い金制度」を利用することをおすすめしません。

そもそも、お祝い金を吊るしている転職サイトは、集客が満足にできていないためにそのようなエサを吊るします。きちんと実力があって集客もでき、自信をもって薬剤師に転職先を紹介できる会社であればお祝い金を出す必要はありません。

実際、大手転職サイトを含め、私が自信をもって紹介している転職サイトはお祝い金で薬剤師を吊るようなことはしていません。

質の悪い転職サイトを利用することで、「転職お祝い金はもらったものの、労働環境の悪い職場へ転職してしまった」という状況では意味がありません。そこでお祝い金ではなく、どれだけ質の高い転職サービスを実施してくれるのかによって転職エージェントを選ばなければいけません。

お祝い金制度のある転職サイトの存在

薬剤師をターゲットにして活動している転職エージェントは多いです。薬キャリやマイナビ薬剤師、リクナビ薬剤師などの大手から、ファルマスタッフなどの中小エージェントまで幅広く存在します。

基本的には、多くの転職エージェントでお祝い金制度がありません。純粋に良い転職先を紹介することに特化しています。

一方で転職に成功することでお祝い金を支給する転職エージェントも、数は少ないですが存在します。有名な転職サイトとしては、ジョブデポ薬剤師があります。例えば以下はジョブデポ薬剤師の公式サイトになります。

このように、入職決定により最大40万円のお祝い金を支給するという大きな記載があります。ジョブデポ薬剤師は祝い金制度を前面に押し出していることが分かります。

他にも、ハッピネス薬剤師という転職サイトもあります。この転職サイトでは、さらに高額な最大70万円のお祝い金を用意しています。

このように、探せば転職成功による祝い金を出してくれる転職サイトが存在します。もちろん正社員に限らず、派遣やパート・アルバイトでも問題なく祝い金が支給されることがあります。これについては、転職サイトごとに金額や支給規定が違ってきます。

良い求人を見つけ、転職するのが最大の目的

しかし、まずは初心に戻る必要があります。冷静に考えて物事を判断するのです。そもそも、あなたの転職目的は何でしょうか。転職すること自体が目的でしょうか。

そうではなく、転職をすることで「あなたに合う職場で働くこと」が目的のはずです。お祝い金を貰うことや転職自体が目的になってはいけません。

結局のところ、「お祝い金が出るから」という理由で転職サイトを決めようとする人は目先の利益に捉われてしまっています。「今よりも良い職場で働く」という本来の目的が抜け落ちているのです。だからこそ、冷静になる必要があります。

ただ、現時点で「お祝い金が出る転職エージェントを活用したい」と迷っていたとしても、今から考え方を変えれば問題ありません。

目先の利益(お祝い金)を提示して、お金でしか薬剤師を集められない転職サイトではなく、質の高いサービスを提供することによって、自ら集客や紹介ビジネスを行っている転職サイトを利用するように考え方を変えるのです。

前述の通り、本当に優れた転職サイトにはこのようなお祝い金制度はありません。こうした転職エージェントは「薬剤師にどれだけピッタリの求人を紹介し、満足できる転職を実現できるか」の方に主眼を置いているため、お祝い金に関係なく薬剤師の登録があるからです。

こうした転職サイトを活用すれば、「多くの求人案件の中から、あなたにピッタリの求人を探してくれる」という、お祝い金以上の価値を受け取ることができます。

お祝い金ではなくて、最高の転職・求人支援サービスを提供してくれる転職サイトを利用し、満足のいく転職活動を実現させなければいけません。

モラルに反した祝い金支給の転職サイト

また、こうしたお祝い金を支給する転職サイトはモラルに反する行動を頻繁に行います。最も分かりやすいのは、「他の会社から紹介された求人であっても、私たちの転職サイトを通せば問題なく祝い金を支給できます」とアピールしていることがあります。

薬キャリやマイナビ薬剤師、リクナビ薬剤師、ファルマスタッフなどの転職サイトはお祝い金がありません。

このとき、例えばマイナビ薬剤師から「求人A」を紹介してもらい、あなたが気に入ったとします。しかし、そのままマイナビ薬剤師を経由して求人Aに決定し、面接のセッティングを行ってもらった場合、当然ですがお祝い金は支給されません。マイナビ薬剤師にお祝い金の制度は存在しないからです。

そこで、マイナビ薬剤師から紹介された求人Aについて、ジョブデポ薬剤師などお祝い金が支給される転職サイトへ連絡し、「そちらの転職サイト経由で求人Aに応募したい。転職成功したらお祝い金を支給してもらいたい」というようにするのです。

こうしたモラルに反する行動を、お祝い金を支給する転職サイト側が推奨しているのです。例えば、以下はジョブデポ薬剤師の公式サイトにある映像の一部になります。

映像の中では、他の転職サイトから紹介された求人であっても、面接をセッティングする前であれば問題ないことをアピールしています。

出典:ジョブデポ薬剤師

しかし、転職の場面で重要なのは求人先選びだけではありません。条件交渉も含まれています。転職エージェントが求人先の企業(調剤薬局やドラッグストア、病院、企業など)の担当者と交渉することで、あなたの勤務条件が決定するようになります。

この中には年収が含まれますし、勤務時間・残業手当などの案件も入ってきます。こうした面を含めて交渉行う必要があるため、お祝い金でしか薬剤師を引っ張ってくることのできないような、実力のない転職サイトに依頼してはいけません。ほぼ確実に条件面で失敗してしまいます。

たとえお祝い金によって目先のお金を手にすることができたとしても、給料などの条件交渉に失敗すれば意味がありません。転職サイトのコンサルタント次第で最終的な年収が30~50万円以上も違うのは普通なので、モラルに反する実力のない転職エージェントの利用は微妙です。

厚生労働省から祝い金は望ましくないと通達が出ている

また、適正な競争を促している国の機関の一つに厚生労働省があります。2018年1月に職業安定法の改正があり、厚生労働省から通達が出されています。

出典:厚生労働省(職業安定法 平成29年改正)

これには、以下のような記載があります。

  • 求職者等を勧誘するに当たっては、お祝い金等の金銭を支給することは望ましくありません

出典:厚生労働省(職業安定法 平成29年改正)

こうした通達を受け、それまでお祝い金を支給していた大手の転職サイトは、転職に成功した薬剤師へのお金の提供を自粛するようになりました。

しかし、モラルのない会社は厚生労働省の通達を無視して現在でもお祝い金の提供を継続しています。もちろん明確に祝い金が禁止されているわけではないですが、「望ましくない」とされている中でもお祝い金制度を継続している転職エージェントであることを理解しなければいけません。

なぜ、厚生労働省がこうした通知を出しているかというと、お祝い金目的で短期の転職を繰り返す人が出てきたからです。そうなると、会社(調剤薬局やドラッグストア、病院など)は積極的に薬剤師を採用することができなくなります。転職サイトへ大金だけ支払い、すぐに辞められるからです。

また転職サイトについても、お祝い金をエサに薬剤師をたくさん集め、労働環境の悪い職場であってもいいので紹介して、入職させるケースが多発するようになりました。

つまり、転職エージェントを利用する本来の目的である「良い求人先を紹介してもらい、双方が条件面で納得した状態で就職する」ことが忘れ去られるようになったのです。これを受け、お祝い金制度が望ましくないとされました。

薬剤師にお祝い金を出せる理由

それでは、お祝い金を提示している転職サイトはなぜそうした多額のお金を出すことができるのでしょうか。これは、転職サイトが高額の紹介料を求人先(薬局やドラッグストア、病院など)からもらうことができるからです。

薬剤師を一人紹介して入社が決まったとき、転職エージェントは年収の25~30%を成功報酬としてもらいます。例えば「成功報酬が30%で年収500万円」で決まった場合、「年収500万円 × 30% = 150万円」という報酬を転職サイトは受け取ります。

転職サイトをあなたが無料で利用できるのは、こうした事情があるからです。求人先の企業はあなたを雇うことで大金を支払わなければいけません。そのため、求人先の会社はあなたに長く勤めてもらいたいと考えるのです。

転職ビジネスではこうした高額のお金が動くわけですが、薬剤師のお祝い金はこのときの成功報酬の中から出されます。例えば「年収500万円で転職をさせたとき、お祝い金が10万円」の場合、転職サイトは「150万円(成功報酬:年収の30%と仮定) - 10万円(お祝い金) = 140万円」が利益となります。

正社員や派遣、パート・アルバイトなどで転職成功した薬剤師に高額なお祝い金を支払っても問題ないのは、こうしたカラクリがあるからなのです。

お祝い金の支給には規定がある

ただ、お祝い金が支給されるためには支給に関する規定をクリアする必要があります。転職サイトが薬剤師を求人先に紹介したときの紹介料(成功報酬)の中からお祝い金が出されるため、当然ながら規定に合致するケースである必要があります。

例えば、ハッピネス薬剤師の場合は以下のようなお祝い金の支給金額になっています。

  • 正社員:最大50~70万円
  • 派遣社員:最大30万円
  • パート・アルバイト:最大8万円

ただ、転職サイトによっては「正社員のみがお祝い金の支給対象であり、パート薬剤師や派遣社員など成功報酬の額が少ない勤務形態の転職ではお祝い金を支給しない」としているケースもあります。

例えば、ファゲット薬剤師という転職エージェントは最大20万円のお祝い金が支給されます。ただ、ファゲット薬剤師は正社員だけがお祝い金の支給対象です。パート薬剤師として働くことを希望する薬剤師が、お祝い金目当てで転職サイトを利用したとしても、支給されないので注意しなければいけません。

・早めの退職ではお祝い金が出ない

また、早期退職してしまった場合もお祝い金は出されません。

薬局や病院など、求人先の企業は前述の通り薬剤師を受け入れることで高額のお金を転職サイトに支払います。このとき、薬剤師が早期退職してしまったら「高いお金だけ支払って、後に何も残らなかった」ことになります。

こうした事態を防ぐため、転職サイトは紹介した薬剤師が早期退職した場合は受け取ったお金(成功報酬)を返金しなければいけません。

お祝い金が成功報酬の中から出されることを考えると、当然ながらあなたが早期退職してしまった場合はお祝い金が支給されることはありません。実際、お祝い金の支給は「転職完了して入職後、3ヵ月や6ヵ月が経過した時点で手続きを行う」などのようになっています。

なぜ、お祝い金の支給に3ヵ月や6ヵ月などの時間が必要なのかというと、薬剤師を転職させたことによる成功報酬が支払われ、早期退職による求人先への返金リスクもなくなる時期だからです。

こうした裏事情があるため、転職サイトによるお祝い金の支給には上述の規定が設けられています。

年収によって変わるお祝い金の支給額

また、どれだけの年収で転職完了するのかによってお祝い金の支給額も変わってきます。前述の通り、高年収で転職するほど、転職エージェントは高額の成功報酬を受け取ることができます。成功報酬30%であれば、年収が100万円増えるごとに成功報酬は30万円も増加します。

そのため、あなたがどれだけの年収で転職するのかによってお祝い金の支給額は違ってきます。

例えば、ファゲット薬剤師(お祝い金は最大20万円)では以下のようなお祝い金の支給額になっています。

転職後の年収 支給額 支給時期
550万円以上 20万円(10万円×2回) 入職日から3ヶ月後、6ヶ月後の2分割支給
450万円以上550万円未満 15万円(7万5千円×2回)
350万円以上450万円未満 10万円(5万円×2回)
350万円未満 対象外 対象外

転職後の年収が高ければそれだけ多くの成功報酬を受け取ることができるため、お祝い金の額も大きくなります。

お祝い金制度のある転職サイトでは、「最大〇万円を支給!」とありますが、実際のところ満額が出ることはありません。実際の支給額はそれよりもかなり少ないと認識しましょう。

祝い金を出すとアフターフォローが手薄になる理由

なお、転職に成功した薬剤師へお祝い金を支給するとどうなるでしょうか。当然ですが、その分だけ転職サイト側は得られる利益額が少なくなります。そうなると、アフターフォローを含め手厚いサービスができなくなります。

本気で薬剤師に対して良い求人を紹介しようと思えば、以下のようなことが必要になります。

  • 事前に面談を行い、要望をしっかりと聞く
  • 求人先のリサーチをしっかり行う
  • 面接同行により、その場で条件交渉をする
  • アフターフォローにも気に掛ける

もちろん、薬キャリやマイナビ薬剤師、リクナビ薬剤師、ファルマスタッフを含め、すべての転職エージェントがこれらのサービスを実施しているわけではありません。ただ、基本的なフォローは実施してくれます。

しかし、お祝い金を支給する転職サイトになると、こうしたサービスがなくなります。求人先だけ紹介され、自ら企業など求人先に出向いて面談を行い、条件交渉も自分でするようになります。その結果、転職で失敗してしまうのです。転職エージェントが間に入って親身に条件交渉してくれるわけではないからです。

薬剤師が転職を考えるとき、こうした現実があることを理解したうえで求人を探さなければいけません。お祝い金を出す以上、利益額が減るのでそれ以上の手厚いフォローができなくなるのです。

質の高い転職エージェントを活用すべき

ここまで、薬剤師の転職に伴うお祝い金について述べてきました。ただ、お祝い金の支給に規定(条件)があったり、お金で吊って薬剤師を集客したりしていることを考えると、こうした転職サイトは正直あまりお勧めできません。

あなたが利用すべきは、質の高い転職サービスを提供してくれる転職エージェントです。目の前のお祝い金に飛びつくことによって、良い求人を逃してはいけないのです。

転職サイトはそれぞれ違いがあります。電話だけの対応で終わる転職サイトがあれば、必ず事前に薬剤師と面談したり、面接同行してくれたりする転職エージェントもあります。

お祝い金を支給していたら、このときの「事前に薬剤師と面談する」「面接同行を行う」「アフターフォローをしっかりする」などの本来行うべき手厚いサービスを実施できなくなる可能性があります。そのためお祝い金ではなくサービス内容によって、活用する転職サイトを選ぶようにしましょう。

お金がもらえる(お祝い金が支給される)となると、そのこと自体はとても魅力的です。ただ、それよりも重要なのは「満足のいく、働きやすい求人を紹介してもらうこと」だといえます。この事実に気づけば、どのような転職エージェントを活用すればいいのかが見えてくるはずです。


薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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