薬剤師が活躍できる場は意外と多いです。そうした中でも、介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)など、老人ホームに関わる薬剤師として活躍することも可能です。

一般的には、隣の病院やクリニックの処方せんを受けつける調剤薬局が基本です。ただ、中には老人施設で要介護の患者さんを相手にした仕事もできるのです。

しかし、薬剤師であっても老人施設の違いについて理解し、どのような中途採用の求人募集が出されるのか理解している人は少ないです。介護施設とはいっても、その種類はさまざまです。そうした違いを確認したうえで求人に応募しなければいけません。

そこで、薬剤師が老人施設に関わる求人へ応募するときにどのような点に注意すればいいのかを確認していきます。

老人施設の種類と薬剤師の配置基準

高齢化社会なこともあり、日本では老人施設の種類が多いです。老健や特養、有料老人ホーム、グループホーム、ケアハウスなどさまざまです。

こうした種類を覚える必要はありませんが、介護施設・老人ホームにはいろんな種類があることを理解するといいです。

このうち、老健や特養などの介護施設では薬剤師の配置基準(人員基準)はどうなっているのでしょうか。薬剤師の配置基準がある場合、薬剤師がこれらの老人施設に常駐しなければいけないので求人募集が出されるようになります。

実際の配置基準については、介護施設扱いか居宅扱いかによって変わってきます。

  • 老人保健施設(老健):介護施設扱い
  • 特別養護老人ホーム(特養):居宅扱い

特別養護老人ホーム(特養)も介護施設であることには変わりがありません。ただ、特養はその建物で一生を過ごすことができるため、居宅扱いになります。普通の家と同じ扱いであるため、薬剤師の配置基準はありません。

一方の老人保健施設(老健)は在宅復帰を目指す施設であり、3ヵ月ごとに審査があります。延長できても1年なので、介護施設として機能しています。こうした介護施設の場合、「300人ごとに薬剤師を一人設置しなければいけない」とされています。

そのため大きな老健施設だと薬剤師が常駐しなければいけません。ただ、300人規模の老健はほぼ存在しないため、薬剤師がいないことは多いです。

少ないながらも老人保健施設(老健)の求人は存在する

それでは、まったくこれら介護施設での求人が存在しないかというと、必ずしもそういうわけではありません。少数ながらも老健から求人が出されることがあります。

大規模の老人保健施設の場合、薬剤師を置かなければいけません。例えば、以下は神奈川にある老健での薬剤師募集です。

この老健の求人では、「人工透析を実施している」「有床クリニックも併設されている」とあります。こうしたことからそれなりに規模の大きい施設だと分かります。病院薬剤師ほどではなくても、クリニックで働く薬剤師と同じような仕事を担当することになります。

ただ、あくまでも老人保健施設(老健)での仕事になるため、病院薬剤師のように仕事内容が大変になるわけではありません。簡単な調剤や服薬指導がメインとなります。

なお、老健では看護師や介護士はそれなりに仕事が大変です。老人の介護をすることになるため、汚物の処理や入浴を含めてやることが多いです。

しかし、老健の薬剤師はこうした作業に関わることはありません。あくまでも調剤をすれば問題ないため、仕事が大変になることはありません。

施設在宅として、調剤薬局が委託されるケースがほとんど

ただ、前述の通り薬剤師が常駐していない施設がほとんどです。しかし、こうした老健や特養、有料老人ホームを含め、入所者のほぼ全員が薬を必要としています。自ら歩いて医療機関を受診し、薬局に処方せんを持っていくことは難しいです。

そのため、施設基準の関係で薬剤師を常駐させる必要がないとはいっても、薬を届けてもらわなければいけません。

そうしたとき、調剤薬局(または調剤併設ドラッグストア)に対して老人施設が在宅を委託します。こうした業務委託に基づいて、調剤薬局に在籍する薬剤師が訪問して在宅指導をするのです。

これら老人施設では、医師が常駐していないことも多いです。その場合、在宅として医師や薬剤師が出向いて施設在宅を実施するのです。

業務委託として調剤薬局に依頼するパターンであれば、老人施設側は薬剤師を雇う必要がなく、調剤設備を整える必要もありません。薬の在庫問題からも解放されます。

また、薬局にしてもいろんな施設と業務提携すればそれだけ在宅指導による売上が増えます。そのため、薬剤師として老人施設に関わりたいのであれば、調剤薬局の薬剤師として転職するのが一般的です。施設在宅を実施している調剤薬局であれば、それなりに求人募集が存在します。

例えば、以下は有料老人ホームをメインに施設在宅をしている薬局求人です。

横浜(神奈川)の調剤薬局ですが、施設在宅を行う薬局での求人です。一つの施設だけではなく、効率よくいろんな施設に出向いて服薬指導できるため薬局の売り上げは優れており、当然ながら年収・給料も高めに設定されています。

こうした施設在宅をメインにしている調剤薬局へ転職すれば、いろんな介護施設の人たちと関われるようになります。

老人施設に携わる薬剤師の仕事内容・役割

それでは、実際に老人施設の中に常駐したり、施設在宅をする調剤薬局の薬剤師として働いたりするときの仕事内容はどのようになるのでしょうか。

これについては、業務内容のほとんどが調剤になると考えましょう。薬のピッキングを行い、一包化をするのがメインの業務内容になります。当然、このときは監査業務も仕事内容に含まれます。

投薬(服薬指導)については、実際のところ健康な患者さんを相手にするときのように丁寧な説明をすることはありません。Do処方(いつもと同じ処方内容)ばかりですし、特養の要介護者などでは薬の説明をしても理解してもらえないことも多いです。

そのため、施設在宅では調剤・監査した薬を施設に持っていった後に看護師へ手渡すのがメインになります。もちろん、場合によってはきちんと服薬指導をしたり、医師と一緒に回診同行をしたりする熱心な薬局は存在します。ただ、現実的にそうした職場はほぼないと考えましょう。

例えば、以下は名古屋(愛知)にある施設在宅メインの調剤薬局です。

この求人票には、「施設の看護師に薬を渡すまで」と記されています。ここから、この薬局では調剤・監査までが主な仕事内容になることが分かります。

調剤・監査がメインになり、いつも同じ薬を調剤することになるため、刺激という意味では一般的な薬局よりも少ないです。

ただ、こうした施設在宅をする調剤薬局がなければ要介護者は薬を服用できません。確かに業務は単調になりがちですが、薬を届けるという意味では、こうした調剤薬局で活躍する薬剤師の役割は大きいです。

転職時は全自動錠剤分包機の有無を確認する

実際に介護施設に関わる薬剤師として中途採用で転職するとき、老健に常駐する薬剤師ではなく、施設在宅メインの調剤薬局へ転職するのが基本です。その方が、圧倒的に求人数が多くなるからです。

このとき、一般的な調剤薬局であれば以下のような分包機を活用して一包化の調剤を実施します。

ただ、一包化では薬を一つずつ分包機に入れなければならず非常に大変です。PTPシートから薬を出す作業で指先が痛くなりますし、目は疲れます。監査時にミスが見つかれば、一包化の袋を破って最初から作り直さなければいけません。90日分の一包化をするとなると、一人の患者さんの薬を作るだけで30分以上の時間を取られます。

こうした分包機を活用して施設在宅をするとなると、毎日が苦痛です。

ただ、いまは自動で一包化をしてくれる機器が存在します。普通の調剤薬局では存在しませんが、施設在宅が多くて一包化がメインになる調剤薬局であれば、こうした全自動錠剤分包機が存在することがあります。

そのため、老人施設の在宅に携わりたいと考えているのであれば、こうした一包化を自動化してくれる機器が薬局内に備わっているかどうかを重要視しましょう。そうしなければ目が疲れ、指先が痛くなり、すぐに仕事が嫌になります。

もちろん、全自動錠剤分包機とはいってもその種類はさまざまです。そのため、「一包化を自動化できる、どのように仕組みがあるのか」を確認するのが、在宅メインの薬局への転職で失敗しないコツになります。

転職時は面接後に職場見学を実施することができます。面接の後は実際に働く予定の調剤薬局まで出向き、どのような調剤環境で一包化できるのかを確認することが老人施設に関わる転職での最重要事項となります。一包化は大変ですが、調剤や監査の自動システムがあれば業務時間を大幅に短縮できます。

定時退社で楽な業務をしたい人に向いている

薬剤師としての役割は大きいものの、どうしても一般的な調剤薬局やドラッグストアで働く薬剤師に比べると業務内容が単調になってしまうのが、こうした介護施設に関わる薬剤師です。

老健の中で働くにしても、Do処方の調剤ばかりになります。特養や老人ホームなどの施設在宅メインの調剤薬局も同様であり、薬の一包化や監査をした後は看護師に薬を届けるのがメインの仕事内容です。

本来であれば、薬を届けるだけの在宅ではダメです。患者さんに服薬指導を行い、さらには記録を残さなければいけません。しかし、そうした仕事をするケースは少ないのが現状です。

もちろん、投薬する相手が元気な老人であれば服薬指導をする意味は大きいです。しかし、これが介護老人になると投薬指導の意味が薄れるので薬を渡すだけの在宅になってしまうのです。

ただ、通常の薬局のように患者さんが何人も訪れるわけではありませんし、施設在宅なので処方内容や患者数は前もって決まっています。イレギュラーがあるにしても、稀にいつもと異なる処方せんが来たときに一包化した薬を作り直すくらいです。

そのため、全自動分包機を置いている薬局であれば仕事内容自体は非常に落ち着いています。慌てて調剤をする必要はありませんし、やることは既に分かっているので定時退社を実現することができます。患者さんと密に接することもないため、コミュ障の薬剤師でも問題ありません。

薬剤師としての職能を発揮し、できるだけ多くの患者さんに優れた指導をしたいと考えている薬剤師であれば、こうした施設在宅の求人は向いていません。ただ、そうではなく「楽な職場で定時退社を実現したい」と考えている人であれば優れた求人になります。

在宅加算などもあり、年収は高めなので勤務条件としてはそこまで悪くない求人募集だといえます。

パート・アルバイトで活躍しても問題ない

このとき、薬剤師の募集は正社員に限りません。パート・アルバイトの求人もたくさんあります。

特に老健施設の募集では、正社員はほとんどありません。多くがパート・アルバイトの募集であり、時給2,000円などで働くことになります。

また、調剤薬局についても当然ながらパート・アルバイトの募集があります。施設在宅のパート求人だと服薬指導がほぼなくなり、調剤ばかりになります。ただ、こうした調剤薬局でも時給2,000円を問題なく確保できます。

例えば、以下は大阪にある施設在宅の多い調剤薬局から出された求人募集です。

パート・アルバイトなので勤務時間は要相談ですが、こうした薬局で調剤メインの仕事をしながら活躍することを考えても問題ありません。

老健など、介護施設に関わる募集で派遣薬剤師をする

なお、老人ホームなどの施設に関わる薬剤師としては、正社員やパート・アルバイトだけではありません。派遣として働く方法もあります。

派遣薬剤師は非常に時給が高いことで知られています。時給3,000円以上になることも珍しくなく、正社員よりも高い収入を実現できるのが派遣です。当然、施設在宅をメインで行う調剤薬局からも派遣求人は出されます。

例えば、以下は東京の調剤薬局から出された募集です。

このように、同じように施設在宅をするにしても派遣薬剤師というだけで時給3,000円以上を実現できるようになります。

なお、一般的な調剤薬局や調剤併設ドラッグストアで派遣をする場合、主な業務内容は服薬指導になります。ただ、施設在宅の薬局では患者さんへの投薬がほぼなく、調剤・監査が主な仕事です。そのため、派遣としてこれらの薬局へ勤務する場合は調剤ばかり担当することになると考えましょう。

実際に薬を届ける作業は管理薬剤師など他の人が行います。そのため、調剤業務に専念できる派遣薬剤師となります。

ちなみに、派遣薬剤師の場合は正社員やパート・アルバイトとは違い、職場見学を実施することはしません。そのため、こうした求人へ派遣で働くことを考える場合、事前に調剤設備がどうなっているのか転職サイトを通じて入念に確認するといいです。

転職サイトで老人ホームの中途採用求人を見つける

なお、実際にこうした老人ホームの中途採用求人を見つけて応募するとなると、どのようにすればいいのでしょうか。

前述の通り、老人保健施設(老健)では求人募集がほぼないため、どの施設で転職できるのか把握するのは非常に難しいです。また、施設在宅をメインで行う調剤薬局を探すにしてもどこにあるのか分かりにくいです。

そのため、介護施設に関わる施設在宅の仕事をしたいのであれば、転職エージェントに登録して中途採用求人を見つけるのが一般的です。

「老健での常駐」や「全自動分包機ありの施設在宅メイン調剤薬局」は非常に珍しいです。これを自分で一つずつ電話して確認するのは現実的ではないため、転職サイトに登録して担当者に求人を見つけてもらうのが基本です。

当然、求人が非常に珍しいことから一つだけではなく、3つ以上の転職サイトを利用するのが基本になります。いくつもの転職エージェントを利用することで、ようやく応募できる老人施設や施設在宅の求人が増えるようになるのです。

介護施設の薬剤師として活躍する

老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)、有料老人ホーム、グループホーム、ケアハウスなど老人施設は非常にたくさんの種類があります。こうした施設に入居している老人たちは、ほぼ全員が薬を必要としています。ただ、自分自身の力では医療機関を受診するのが難しいケースがほとんどです。

そうしたとき、こうした施設で在宅指導する薬剤師が重宝されます。介護施設に薬剤師が常駐することは実際のところほぼないため、多くは施設在宅の調剤薬局で求人が出されるようになります。

老人施設の在宅業務をメインとする薬局の場合、仕事内容はそこまで大変ではなく、やることや患者数は決まっているので残業なしを実現できます。そのため、落ち着いて仕事をしたい薬剤師にとって最適の募集です。仕事は単調であるものの、大きい役割を担うのが介護施設に関わる薬剤師です。

もちろん、一般業務の片手間で施設在宅をする薬局だと一包化の作業が非常に大変です。ただ、施設在宅メインの中でも全自動分包機を備えている薬局であれば、一包化の時間を大幅に短縮できるようになります。

こうした老人施設で活躍することを考える場合、稀な求人になるのでいくつもの転職サイトを利用するといいです。多くの中から求人を発掘することで、優れた求人募集を見つけやすくなります。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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