英語能力を鍛えるため、中には海外留学を考える薬剤師がいます。珍しい存在ではあるものの、語学留学やワーホリ(ワーキングホリデー)を経験することによって日本語以外の言語を操れるようになることを考えるのです。

ただ、薬剤師が留学をするときは事前に戦略を練らなければいけません。何も考えずに留学しても薬剤師としてのキャリアにまったく役立ちませんし、どのように留学を実現すればいいのか不明な点も多いからです。

実際のところ、単に留学するだけでは意味がありません。そのため、実際に留学した後のことまで見据えておく必要があります。

そこで、「薬剤師が留学をするときに、何を考えて実現すればいいのか」について確認していきます。

薬剤師資格はアメリカやカナダ、イギリス、オーストラリアで使えない

薬剤師が留学をするとき、最初に思い浮かぶものがワーホリです。ワーキングホリデーとして現地で働きながら語学留学を目指すのです。

このとき、ほとんどの薬剤師は英語圏での留学を考えます。そのため、以下のような国へ留学しようとします。

  • アメリカ
  • カナダ
  • イギリス
  • オーストラリア
  • ニュージーランド

場合によっては、ドイツなどへの留学を考える人もいます。ただ、いずれにしても先進国に留学するように思うのです。

しかし、ここで大きな問題があります。薬剤師免許は日本国内でしか使えません。命に関わる薬剤師職を現地で行うことはできないようになっているのです。海外の薬剤師免許を日本で使えないのと同じように、日本の薬剤師資格は外国で無意味なのです。

社会人薬剤師のトランスファー制度は非常にレベルが高い

このとき、薬剤師としての留学を考えている人であればトランスファーという制度を聞いたことがあるかもしれません。「日本で薬剤師としての経験がある場合、トランスファー制度を利用すれば留学先の国で薬剤師をすることができる」というものです。

ただ、トランスファーは異常なほど難関です。例えばアメリカで薬剤師をする場合、FPGEEという試験に合格し、TOEFLで基準点を取り、さらにはインターンシップによって学ばなければいけません。試験に合格するための勉強だけでも何年もかかり、さらには数年ほどのインターンシップが待ち受けているのです。

そのため、アメリカやカナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなど現地の薬科大学に入り直して勉強し、薬剤師になったほうが早いのが現状です。

もちろん中には実際にインターンシップを経て薬剤師として現地で活動し、医療者として活躍している人もいます。しかし、そうした人は異常なほど努力をしたうえでの結果であり、かなり希少な存在だと考えましょう。

アジアなら稀に求人募集が出される

薬剤師免許を日本でしか利用できない以上、実際に留学をする場合、留学生やワーホリとして普通の語学留学をするのが一般的です。薬剤師としてではなく一般人として留学し、現地で大学生となったり就労したりするのです。

それでは、どのようなケースであっても絶対に海外で薬剤師をすることはできないのでしょうか。これについては、確実に無理なわけではありません。アジアであれば、薬剤師の中途採用募集を出していることがあります。

もちろん、タイ(タイ語)やベトナム(ベトナム語)など現地語がメインの国に限らず、シンガポールやマレーシアなど英語をメインとしている国から薬剤師の求人が出されます。例えば、以下はシンガポールのクリニックから出された募集です。

薬剤師経験が3年以上ある場合、問題なく勤務できます。アジアでは日本人街がいくつも存在し、現地の駐在員向けに日本人クリニックがいくつも存在するのです。そうしたとき、英語力に自信がなかったとしても臨床経験が豊富な薬剤師が採用されます。

アメリカやカナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどでこうした募集は存在しません。ただ、アジアなら日本人がたくさんいるので求人があるのです。そのため、先進国にこだわらないのであれば薬剤師資格を活かしながらの勤務が可能です。

実際のところ、留学するとはいっても通常は年間200~300万円以上のお金が必要になります。こうした費用なしに、むしろ宿を用意してもらって働きながら(=お金を稼ぎながら)の語学留学が可能なので条件は非常に優れています。

留学生として英語を学ぶときは目標を明確にするべき

なお、実際に留学生として海外に出向くときは英語を学んだあと、何を実現したいのか考えるようにしましょう。要は、留学後の転職・就職まで見据えるのです。こうした目標がない限り、留学をしてもあまり意味がないです。

一般的に調剤薬局やドラッグストア、病院を含めて薬剤師に英語力は要求されません。患者さんのほとんどは日本人であり、英語を話す場面がないからです。

もちろん、中には「米軍の駐屯地」「オフィスビルのほとんどが外資系企業」など、外国人がたくさん受診する立地にある場合、薬局や病院に海外の人が訪れることがあります。稀にではありますが、以下のように英語力のある薬剤師を欲している求人が存在します。

東京にある調剤併設ドラッグストアの中途採用募集ですが、外国人の多いビルクリニック内の薬局なのでこうした求人になっています。

しかし、英語を話せる薬剤師に関する募集のほうが圧倒的に珍しいです。こうした現状を理解したうえで留学しなければいけません。もちろん英語能力を高めるために語学留学し、経験を積むことは素晴らしいです。ただ、社会人として英語能力を伸ばしたとしても、一般企業のように優遇されることはほとんどありません。

薬局・病院以外に一般企業も見据える

そこで薬剤師として目標を見据えましょう。英語を学び、何をしたいのか考えるのです。よくある留学での失敗は「まずは留学する」と思って決心する人たちです。社会人留学を体験すること自体が目的になっており、結局のところ何も得ることなく帰国します。

こうした失敗を減らすため、帰国後に目指すことを明確にするのです。このとき、留学後の就職先として薬局や病院に絞るのではなく一般企業を見据えても問題ありません。製薬会社を含め、薬剤師の中で英語を話せる人を優遇する募集は企業でたくさん存在するからです。

例えば、以下は大手の電機メーカーから出された薬事職の募集です。

ここにある通り、薬剤師資格の保有者であることが必須条件になっています。また薬事申請の経験者に限らず、調剤薬局や病院での調剤経験者も歓迎しています。さらには、TOEICスコアを明記していて英語能力のある人を優遇していることも分かります。

製薬会社や医療機器メーカーを含め、CRA(開発職)や薬事職は高度な英語力を要求されることで知られています。そのため、語学留学の経験がある場合はこうした職場へ転職すると重宝されます。

また医療者として働くにしても、数少ない「英語能力を要求される調剤薬局やドラッグストア」へ転職することを視野に入れても問題ありません。大多数の薬局では英語が不要であり、病院でも英語を扱う機会はほぼないですが、先に紹介した通り英語でのコミュニケーションを必要とする求人は少ないながらも存在するのです。

目的なく単に社会人留学するのは、遊びに行ったのと同じです。そのためワーホリを含め、留学後に何をしたいのかを含めて計画を練るといいです。

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海外研修のある調剤薬局を選ぶのも問題ない

なお、場合によっては海外研修を実施している調剤薬局への転職を考えても問題ありません。これであれば、薬剤師として活躍しながらも海外の状況を理解できるようになります。

数は少ないものの、問題なく海外研修を実施している調剤薬局やドラッグストアは存在します。どちらかというと中小の調剤薬局で海外研修を取り入れていることが多く、例えば以下の横浜(神奈川)から出された求人が該当します。

注意点として、海外研修があるとはいっても調剤薬局が実施するのは1週間ほどの海外視察になります。語学留学やワーキングホリデーのように、数年間ほど海外に滞在して生活させてくれるわけではありません。

ただ、日本の薬剤師資格を海外で使えない以上、普通の留学をしても現地の医療を学ぶことはできません。現地で薬剤師をするにしても何年もの事前勉強を行う必要があります。その後も数年のインターンを経験し、このときは年間200~300万円以上の留学費用に耐えなければいけません。

自分の力で留学しても現地の医療を学ぶことが非常に難しい以上、こうした調剤薬局の海外研修プログラムを利用したほうが、現地の調剤薬局・病院でどのような医療を提供しているのか学べるようになります。会社側がすべての交渉をしてくれるため、生の現場を観察できるからです。

当然、海外研修が可能な薬局へ転職する必要はありますが、こうした選択肢があることも視野に入れるといいです。

転職サイトを利用して求人を探すのがおすすめ

薬剤師が海外への語学留学・ワーキングホリデーを行うとき、日本の薬剤師免許を利用することはできません。医療者として資格を活かしながら活躍するのは無理であり、トランスファー制度などを活用するにしてもハードルが非常に高いのが現状です。

そこで留学するとき、以下の2つの考え方があります。

  • 薬剤師資格は活かさずに自力で留学する
  • 転職サイトを利用し、海外の医療を学べる環境に身を置く

おすすめなのは、「転職エージェントを利用して転職することで、英語や現地の医療を勉強する」ことです。自力で留学してもいいですがデメリットが大きいからです。

前述の通り自費で留学するには、アメリカやカナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドでは学費などの費用だけで200~300万円が必要です。これに生活費が追加されます。

一方で転職サイトを利用する場合、海外勤務であればアジアなら稀に薬剤師の募集が出されます。英語圏で働き、語学能力を磨きながら給料までもらえるという好条件です。そのため、英語力を鍛えながら薬剤師としての能力を発揮できます。

または先進国の医療を学びたいのであれば、海外研修のある調剤薬局を転職サイト経由で探すようにしましょう。薬剤師の資格を海外の先進国で使えない以上、欧米の医療を留学で学ぶことはできません。それよりも、海外研修のある薬局で働くことのほうが学べるようになります。

「留学によって本気で語学力を高めたい」「現地の医療を勉強したい」など人によって目的は異なります。このうち、優先したい目標を明確にしたうえで転職サイトを利用し、求人を探すようにしましょう。

また、こうした中途採用の募集を自ら見つけるのは不可能に近いため、転職エージェントを利用する必要があります。当然、条件を満たす募集は圧倒的に少ないため、3社以上の転職エージェントを活用しながら転職活動を進めていくといいです。

社会人留学で成功するコツを理解する

これから社会人留学を検討する人の中でも、困りやすい人として薬剤師があります。アメリカやカナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどの英語圏に限らず、ドイツを含めた先進国で薬剤師として働くのはほぼ不可能だからです。絶対に無理ではないですが非常に難しい試験があり、何年ものインターンを体験しなければいけません。

そこで、別の戦略を取るようにしましょう。一つは単なる留学であり、資格とは完全に切り離して留学を実現します。この場合、留学後は英語力を活かせる職場を探すといいです。最もいいのは一般企業ですが、数は少ないものの英語を使いながら活躍できる薬局(前述のような外国人が多く訪れる国内の調剤薬局やドラッグストア)が存在します。

そしてもう一つは転職を行い、海外での経験を積める職場を探す方法です。アジアであれば薬剤師経験を活かして勤務できますし、日本の調剤薬局の中には海外研修を実施している職場もあります。

薬剤師が留学をするとき、何を実現したいのか事前に考えるようにしましょう。外国で免許が通用せず、日本で働く薬剤師の多くで英語力を要求されない以上、留学したとはいっても「ただ遊びに行っただけ」と思われてしまいます。そのため、事前に目指したい薬剤師像を確認したうえで最適な留学方法を検討するといいです。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

オススメの転職サイトと特徴の違い

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転職サイトを有効活用するには

・派遣登録し、高時給で働く

派遣薬剤師は給料が正社員よりも高く、時給3,000円以上も普通です。さらには3ヵ月や半年だけでなく、1日などスポット派遣も可能です。「自由に働きたい」「多くの職場を経験したい」「今月、もう少し稼ぎたい」などのときにお勧めです。

派遣薬剤師の転職サイトランキング

インタビュー記事:薬剤師の転職サイト

・ファーマキャリア

薬剤師求人の中でも、「どこにも載っていない難しい案件」を探すことに特化した、オーダーメイド求人の発掘を行っているファーマキャリアさまへ取材しました。

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・ファーネットキャリア

「全国どこでも面談を行う」「事前に企業へも訪問して様子を確認する」「転職後のフォローまで行う」など、アナログな部分にこだわり続け、ミスマッチ(転職での失敗)を極限まで低くしているファーネットキャリアさまへ取材しました。

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