薬剤師の中には、自分の英語力を仕事に活かしたいと考える人がいます。場合によっては、海外で活躍したいと思っているかもしれません。
こうした場合、どのような求人へ申し込めば英語を活用できる職場へ就職することができるのでしょうか。
このときは英語が必要な調剤薬局で勤務するのが一般的です。また、人によっては外資系企業を考えたり、海外派遣のある会社を考えたりすることもあります。
それでは、どのようにすれば英語力を活かした求人を見つけることができるのでしょうか。ここでは、薬剤師が転職することで英語を活かせる求人について確認していきます。
もくじ
薬剤師で英語を活かせる求人とは
薬剤師として働くときに英語を活用できる求人としては何があるのでしょうか。
薬剤師であると、一般的には調剤薬局や病院、ドラッグストアなどで働くことがほとんどです。
ただ、英語を活かせる職場を考えた場合、たとえ薬剤師であっても、一般企業や病院の求人数は少ないです。一方で薬局や調剤併設ドラッグストアであれば、多くの求人が存在することになります。
都市部・観光地・空港の薬局求人が多い
調剤薬局やドラッグストアで英語を使うとなると、一般的な薬局では必要になるような場面はほぼありません。大都市圏であっても、薬剤師が英語を活用する場面はほとんどないのです。
しかし中には、外国人が比較的多く訪れる東京や大阪の一部(六本木、大手町、新宿、梅田など)の薬局では英語力が求められます。また、国際空港近くの薬局も同様に英語を使う場面が多くなります。
そこで、以下で実際の調剤薬局やドラッグストア、調剤併設ドラッグストアについて確認していきます。
・都市部、観光地の近くにある薬局
東京や大阪を含め、都市部や観光地には多くの外国人が訪れます。そうした場所に立地する薬局では、当然ながら外国人の数が多くなります。そのため、求人でも英語を話すことができる薬剤師を求めるようになります。
例えば、以下は調剤併設ドラッグストアでの求人になります。
東京都港区での正社員求人です。ビル内にあるクリニックの門前薬局ですが、外資系企業の多いビルの中にある薬局です。そのため、英語でのコミュニケーションが求められるようになるのです。
・空港の近く
また、空港に隣接する薬局だと当然ながら非常に多くの外国人が訪れるようになります。そのため、英語を話すことができれば服薬指導はスムーズです。
実際に調べれば、国際空港の近くにある薬局で求人が出ていることが分かります。例えば、以下は東京・羽田空港にある調剤併設ドラッグストアの求人になります。
この求人にも、「外国語を習得されている方は語学力を活かして働くことができます」と明記されています。これは、薬局に多くの外国人が訪れるからです。空港であると、日本への外国人観光客を含め、さまざまな人が薬局を訪れるようになります。
空港近くに在住している人は少数です。そのため都市部や観光地にある薬局とは異なり、空港まで通勤しなければいけないというデメリットはありますが、通常の薬局では出会えないさまざまな外国人を相手に服薬指導することができます。
例えば、以下は羽田空港に存在する調剤併設ドラッグストアになります。
なお、羽田空港以外にも成田空港や関西国際空港、中部国際空港など多くの空港で英語能力のある薬剤師を求める求人が存在します。
派遣やパート・バイトでも求人がある
なお、英語が必要な調剤薬局で勤務することを考えるとき、求人は正社員だけではありません。派遣やパート・アルバイトであっても問題なく募集しています。こうした薬局だと、土日祝日であっても稼働していることが多いからです。
例として、先ほどの東京都港区の求人(オフィスビルの中にある薬局)をもう一度下に記します。
ここにある通り、平日だけでなく土日祝日も稼働していることが分かります。そのため求人は正社員となっていますが、実際に求人へ問い合わせてみると「派遣やパートでも問題ない」ことは多いです。こうした不規則な勤務形態の薬局では薬剤師が足りなくなりやすいため、正社員以外も求めているのです。
実際、先ほど示した空港内の薬局も同じように土日祝日も稼働しています。しかも空港であるため、年中無休です。
また、以下は東京都台東区にあるドラッグストアのパート薬剤師の求人です。
観光地(浅草)にある薬局なので多くの外国人が訪れます。そのため、英語力があると有利な求人になります。ただ、募集はパート・アルバイトです。
このように、正社員だけでなく派遣やパート・アルバイトであっても、英語が必要になる薬局で問題なく勤務できると考えてください。
中学英語を扱えれば大丈夫
なお、このときは流暢な英語を話せる必要はなく、中学英語ほどの語学力で問題ありません。詳しい薬効を説明しなくても、どのタイミングで何錠の薬を飲めばいいのか伝えることができれば問題ないからです。
例えば、カタコトの英語で「After breakfast. Two tablet. (朝食後、2錠)」「After dinner. One capsule. (夕食後、1カプセル)」などのように、錠剤やカプセルを見せながら飲み方を教えれば問題ありません。
また、薬を説明するときの紙が日本語表記で分かりにくいと感じた場合、その場で簡単な英語でメモを書いてもいいです。
そういう意味では、服薬指導のとき外国人へ説明することに対して緊張する必要はありません。実際にやってみればわかりますが、吸入薬の服薬指導であってもジェスチャーで何とか通じます。
なお、国際空港にあるドラッグストアでは特に英語を活用する場面が多いものの、「外国人顧客が求めている商品が店内のどこにあるのか案内するときの言い回し」「商品の値段を回答するときの表現」など、ある程度の決まり文句を覚えておけば問題ないです。
・英語を話せれば高年収を引き出しやすい
既に薬局や病院などで調剤経験があるという前提はありますが、服薬指導を問題なく行うことができ、さらには英語を扱えるのであれば、調剤薬局やドラッグストアで高い給料を引き出すための交渉をしやすくなります。
薬剤師の場合、いってしまえば調剤スキルは人によってそこまで違いはありません。また、売上は隣にあるクリニックや病院の処方せん枚数に依存することになります。「優れた服薬指導ができる」ことにより、売上が上がるわけではないのです。そのため、調剤や服薬指導以外のプラスアルファの能力がなければ高年収を実現することはできません。
ただ、知っての通り日本人は英語が下手であり、英語力のある薬剤師はほとんどいません。そうした中、英語を話せる薬剤師だと「英語を話す機会の多い求人」では重宝されるようになります。その場合、外国人は「あの薬剤師がいる薬局なら安心だ」と考えて処方せん枚数を増やすことができます。
そうしたことから、調剤ができることに加えて英語能力がある場合、年収を含めた条件交渉がスムーズになりやすいです。
病院で英語は必要なのか
ここまで、一般的な調剤薬局やドラッグストアで英語が必要ないことは述べましたが、これは病院薬剤師であっても同様です。
また、仮に外人が病院へ来院したとしても、薬の服薬指導をするとき、そこまで高度な英語力が求められるわけではありません。中学英語であっても、薬の飲み方を伝えることは十分に可能です。
また、日常的に英語が必要になるわけではなく、基本は一般的な病院薬剤師として勤務します。観光地や空港のように、頻繁に外国人客が来ることはないのです。
また、病院で英語が必要になる求人案件は基本的に出てきません。そのため、英語を仕事に活かしたいとき、転職で病院薬剤師は向いていません。
会社では製薬会社、医療機器メーカーが一般的
なお、一般企業で働く薬剤師についても英語力が必要になることがあります。
製薬会社、医薬品メーカーなどの会社の中でも、学術(DI業務)、薬事申請、CRA(臨床開発モニター)などの職種で活躍するときは英語が必要になることがあります。
薬局やドラッグストアの求人とは異なり、企業では「英語を話せることで年収が高くなる」ことはありません。英語を扱えるのは当然という前提であり、このステージで求人を争うことになります。そのため、企業の英語求人はかなりハードルが高くなります。
そもそも、企業の求人は非常に珍しいです。しかも英語が必要になると、さらに求人数は少なくなります。ただ、以下のような求人が出されることがあります。
・学術(DI業務)で必要となる英語
製薬会社のMRが医師に薬の説明をしたり文献(論文)を取り寄せたりするとき、論文は英語で書かれているのでその説明をしなければいけません。このとき、学術(DI業務)の人が活躍します。
MRからの質問に対しては、学術職の人が英語で書かれた論文を読解し、日本語でMRに対してフィードバックします。そうして、営業活動を行いやすいように支援するのです。
こうした仕事は国内企業であっても外資系企業であっても、関係なく必要です。そのため、学術職では英語での読解力が求められます。例えば、以下は外資系医療機器メーカーでの学術担当の求人になります。
このように、薬剤師で学術・DIの求人が存在します。
ただ、ネイティブの外国人と話す機会があるわけではないため、あくまでも専門用語の英語(医療英語)を読み解く力があれば仕事を行うことができます。
・薬事申請
医薬品や医療機器、医薬部外品などを製造したり輸入したりするとき、必ず厚生労働省へ申請しなければいけません。このとき、公的書類を作ったり申請したりする仕事のことを薬事申請といいます。
薬事申請を行うとき、英語が必須です。仕事で話す相手は日本人だけでなく、海外にいる外資系メーカーの人と会議することがあります。また、原薬を輸入するときは海外メーカーと英語で話したり、メールのやり取りをしたりします。
こうしたことから、薬事申請では日常業務で英語を活用すると考えてください。
もちろん、メーカーによって働くときの環境は異なります。例えば、会議のときは必ず通訳がつく場合があります。この場合、会話に関しては心配しなくてもいいです。ただ、その場合であってもメールのやり取りは英語です。
こうした薬事申請業務を行っている会社としては製薬会社や医療機器メーカーがあります。これらの会社で英語を活用しながら薬事申請を行っていきます。
例えば、以下の求人は薬事申請に関するものになります。
このように、「社内でも英語を使用する機会が多い」と明記されています。企業の求人案件は少ないですが、薬剤師であればこうした求人へ応募することも可能です。
求人への必須となる応募条件としては、「TOEIC800点ほどのビジネス英語能力」「医薬品の薬事申請業務の経験」「薬剤師資格」があります。品質管理や薬事申請の求人では、薬剤師資格を必須としている会社は多いです。
年収は800~1000万円なので、即戦力を求めています。未経験の人が応募するのは難しいですが、薬事申請やGMPなどの経験があり、英語を日常的に活用したいと考えている人にとっては優れた求人案件です。
・CRA(臨床開発モニター)
薬事申請は医薬品を世の中に出すために必要な仕事ですが、同じように医薬品を育てる職種として臨床開発職があります。要は、治験(臨床試験)でのモニタリングを行う人のことです。
プロトコル(治験実施計画書)に従って治験が行われているかを確認するのが臨床開発の仕事ですが、単に病院やクリニックを回ってモニタリング業務を行う場合、そこまで英語は必要とされません。ただ、プロジェクトリーダーなどマネジメントを行う側の立場であると英語が必要になってきます。
一般的には、治験を行うときはアメリカなど「先に海外で臨床試験を実施して、そのときのデータを活用しながら日本で治験を実施する」のが基本です。このとき、海外症例の文献は当然ながら英語です。
また、国際共同治験など複数の国で臨床試験を実施する場合は英語でやり取りをしなければいけません。さらに、一般的な治験であっても現地の外資系メーカーと共同でプロジェクトを進めることが多いため、英語で会議をしたりメールを交わしたりすることが多くなります。
例えば、以下は大阪でのCRA(臨床開発モニター)の求人になりますが、歓迎要件に「TOEIC700点以上」とあります。
薬剤師としての調剤経験やMR経験が3年以上あれば、未経験でも応募できる中途採用の募集です。ただ、CRAでは日常的に英語が必要なため、このようにTOEICの点数が高いと有利になります。
なお、薬事申請と同様、臨床開発でも製薬会社や医療機器メーカーが主な就職先です。
TOEICは必要?英語力を活かして働くには
それでは、どれくらいの英語力が必要なのでしょうか。一般的には、TOEICが英語力を図る指標として知られており、求人票にも求められるTOEICの点数が書かれてあります。
ただ、実際のところ転職時の面接でTOEICが重要視されるかというと、薬局の場合は重視されません。たとえTOEICの点数が高かったとしても実践で使える英語力を身につけていない人が多いからです。つまり、外人との英会話ができないのです。
TOEICが900点を超えていたとしても、ネイティブとの英会話やメールがまったくできない人は多いです。一方でTOEICの点数が500点台であったとしても、海外の人と会話してメールのやり取りがスムーズな人は実際にいます。
こうした実情を求人側の会社は知っているため、TOEICは参考程度にしかならないのです。薬剤師の転職についても、特に薬局の面接ではTOEICが重視されることはありません。もちろん、英検なども重視はされません。
一方で企業の求人ではTOEICが重視されます。先ほどの企業求人でも、TOEIC700点や800点ほどの能力が推奨されていました。
医療英語を勉強する必要がある
なお、TOEICで高得点でもネイティブと会話やメールができない原因として、医療英語を理解していないことがあげられます。単語や医療英語独特の言い回しが分からなければ、内容を理解することはできません。
このとき、英語を身につける前にまずは日本語で専門知識を勉強し、身につける必要があります。例えば服薬指導であれば、医療英語に必要な言い回しを覚えておく必要があります。これが企業の薬事申請であれば、薬事業務に関わる仕事を把握するようにしましょう。
専門英語は簡単といわれますが、これは半分正解であり、半分ウソです。
私も過去に英語論文を読んで仕事をしていた時期がありましたが、このときは書いてある内容がまったく分かりませんでした。この理由は単純であり、そもそも「その英文の日本語訳を読んでも内容が分からなかった」のです。
日本語を理解できないのに、英文を理解できるわけがありません。そこで、日本語で専門分野について必死に理解した後、単語を調べながら英語論文を読むと、ようやく理解できるようになりました。そうして論文を読み進めていくと、決まったパターンや言い回しがあることに気づくため、ようやく辞書なしで内容が分かってくるようになるのです。
医療英語を含め、最初に理解すべきは日本語での内容です。その後、自分の専門知識を高めた後に英語を読み解く必要があります。
ただ、薬剤師であれば、薬や医療に関することについては既に知識があるため、一般人に比べると医療英語を活用できるようになるスピードは速いはずです。
履歴書は日本語で問題ない
なお、薬局へ応募するときの履歴書は普通の履歴書で問題ありません。特に注意することはなく、市販の履歴書を購入して記載し、求人へ応募するようにしましょう。
このときの志望動機はそこまで難しくなく、「自分の英語力を活かせる職場で貢献したいと考え、貴社を志望した」という内容の履歴書に仕上げれば問題ありません。派遣やパート・アルバイトでも同様の履歴書になります。
面接の場についても、すべて日本語になります。薬局やドラッグストアの面接では、日本語での履歴書を持参して普通に面接に臨めば問題ありません。
これは、企業の求人でも同様です。薬局に比べると非常にハードルは高くなりますが、履歴書については特別なことを考慮する必要はありません。
英語を活かせる求人は調剤薬局・ドラッグストアが基本
調剤薬局やドラッグストアなどで薬剤師を行う場合、薬剤師免許さえあれば多くの求人が存在します。病院であっても、多少の年齢制限はありますが歓迎してもらえることが多いです。
このとき、英語を活かして働きたいと考える場合、病院の求人はほぼ存在しないので諦めるようにしましょう。薬局の求人がメインになり、主に都市部や観光地、空港にある薬局で英語力のある薬剤師が求められるようになります。
もちろん、中には英語力を活かせる企業の求人も存在します。ただ、薬事申請やCRAとして未経験で応募できる求人は存在するものの、その数は非常に少なくなります。
どうしても企業にこだわるのであればそれでも問題ないです。ただ、英語力を活用できる職場へスムーズに転職し、年収や勤務内容を含めて良い条件で転職したい場合は調剤薬局やドラッグストアでの勤務を考えるようにしましょう。
こうした薬局では正社員に限らず、派遣やパート・アルバイトでも受け入れています。土日祝日でも開いているなど、一般的な薬局とは異なる勤務形態になることはありますが、その分だけ高年収を引き出しやすくなります。また、英語力がある場合は優遇されるため、良い条件で働けるチャンスでもあります。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
注目の人気記事
・私が経験した転職サイト体験談
実際に私は転職サイトを活用して調剤薬局へ就職したことがあります。私が行った転職体験の様子や注意点なども含め、ありのままに公開したいと思います。
・転職サイトを活用し、転職での失敗を防ぐ
転職を成功させるためには、転職サイト(紹介会社)をフル活用しなければいけません。そこで、具体的にどのように利用すればいいのかを解説します。
・派遣登録し、高時給で働く
派遣薬剤師は給料が正社員よりも高く、時給3,000円以上も普通です。さらには3ヵ月や半年だけでなく、1日などスポット派遣も可能です。「自由に働きたい」「多くの職場を経験したい」「今月、もう少し稼ぎたい」などのときにお勧めです。
インタビュー記事:薬剤師の転職サイト
・ファーマキャリア
薬剤師求人の中でも、「どこにも載っていない難しい案件」を探すことに特化した、オーダーメイド求人の発掘を行っているファーマキャリアさまへ取材しました。