薬剤師として働くとき、国内の薬局や病院などに限らず、海外で働きたいと考える人も多いです。アジアや北米、ヨーロッパなどで薬剤師として活躍するのです。

薬剤師国家資格の免許は日本で通じます。このときの免許は海外でも活用することができるのでしょうか。

海外で勤務することを考えるとき、薬剤師としてその国でも活躍できるのか考えなければいけません。また、どのような場所であれば働けるのかも知っておく必要があります。

ここでは、薬剤師が海外で活躍するための方法について解説していきます。

トランスファーは敷居が高く、海外で免許は使えない

まず、日本で取得した薬剤師国家資格は海外で通用するのでしょうか。これについては、北米やヨーロッパを含めてほとんど通用しません。日本の免許は日本でのみ活用できるのです。

アメリカやカナダ、イギリス、オーストラリアなど、こうした国で薬剤師として活躍することを考える場合、その国で薬剤師国家資格を取得しなければいけません。

これは、ある意味当然です。国によって薬剤師になるための難しさが異なります。教育レベルも違います。その中で、他の国で薬剤師をしていたからといって、その人が本当に薬剤師としての知識や技術を備えているかどうかは別問題なのです。

ただ、中にはトランスファーについて聞いたことがある人はいるかもしれません。その国の薬科大学(薬学部)を出ていなかったとしても、それまで薬剤師として活躍していたのであれば、トランスファー制度を利用することで目的の国で薬剤師ができるというものです。

例えばアメリカであれば、FPGEEという試験をパスし、TOEFLで点数を取り、インターンシップを終了することで問題なく薬剤師として働けるようになります。

しかし、このトランスファー制度は非常に難易度が高く、TOEFLの必要点数が厳しく設定されており、普通に勉強してこの試験にパスするためには5~10年以上の時間が平気でかかります。そのため、現地の大学の薬学部に入りなおした方が早く薬剤師として活躍できるようになります。

こうした現状があるため、トランスファーを受けようという人はほとんどいません。制度自体は存在するものの、ほとんど意味がないと考えた方がいいです。

・留学、インターンも同様に薬剤師免許を利用できない

薬剤師免許を海外で使えないのは、薬剤師が留学をしてワーキングホリデーで短期間だけ働くことについても同様です。現地で一般的なアルバイトをすることはできますが、留学やインターン中に薬剤師業務をすることはできません。

たとえワーキングホリデーによる留学であったとしても、北米やヨーロッパなどの先進国で薬剤師をすることは諦めなければいけません。

タイ、シンガポールなどアジアの一部は可能

アメリカやカナダ、オーストラリア、イギリスなど、北米やヨーロッパの国で薬剤師をしたいのであれば、諦めるか現地の大学に入り直すしか選択肢がありません。

それでは、完全に海外勤務を諦めるしかないのでしょうか。実は、一部のアジア諸国では例外的に日本で薬剤師の経験があれば問題なく働けることがあります。例えば、タイやシンガポールなどの国です。このときは現地人が通う病院ではなく、日系の病院・クリニックなどでの勤務になります。

例えば、以下はタイ・バンコクで出された求人です。

タイ・バンコクには日本人街があり、多くの日本人駐在員が働いています。そのため、日本人向けの病院(クリニック)での薬剤師勤務になります。また、現地の薬剤師資格は不要であり、英語やタイ語ができなくても問題ないとされています。これは、現地の日本人駐在員を相手にするからです。

また、タイに限らずシンガポールの日系病院から薬剤師の求人が出されることがあります。以下は実際にシンガポールの病院・クリニックから出された求人票です。

この求人では、「英語でコミュニケーションが取れる程度の人」から応募することができます。英語を話せて日本での薬剤師経験が3年以上あれば、誰でも応募することができると記載があります。

このように、稀ではありますがタイやシンガポールなどアジア圏で日系病院の求人が出されることがあります。その場合、問題なく薬剤師として海外勤務をすることができます。

薬剤師以外で海外勤務することも視野に入れる

なお、場合によっては現地で薬剤師以外の職種で海外勤務することも検討してみるといいです。要は、日本で薬剤師として働いた経験を活かして、現地の医療機関ではなく一般企業へ転職するのです。

薬剤師職以外であれば、かなり選択肢が広がるようになります。海外勤務をするとき、「薬剤師募集ではあるものの、医療機関ではなく一般企業で働く求人」が存在するのです。例えば、以下は台湾の企業から出された求人募集です。

OTC医薬品の申請業務がメインの仕事内容になります。

他にもあります。例えば、以下はタイ・バンコクにあるECサイトを運営している会社から出されている求人募集です。

日本では、「タイで売られている薬」の個人輸入代行をするECサイトがあります。完全合法であり、安全性に問題ない薬を取り扱うことになるので怪しい会社ではありません。

私も個人輸入代行を利用してシムビコート(ぜんそくの薬)を購入したことがあり、このときはタイ語で書かれていました。

つまり、タイの薬局で購入されたシムビコートが送られてきたというわけです。こうしたECサイトを運営するタイの会社での薬剤師募集です。そのため、薬剤師経験があって知識のある人を募集しています。

海外勤務を考えるとき、最も分かりやすいのは薬剤師としての経験を活かし、医療機関で働くことがあります。ただ、それ以外の方法でも実現できることがあります。

年収(給料)はどれくらいになるのか

海外の医療機関などで勤務するとなると、気になるのは年収です。実際のところ、どれくらいの給料になるのでしょうか。

これについて、先ほどのシンガポールでの日系病院で出された求人であれば、月の給料は約35万円と記されていました。シンガポールは物価が高いですが、移住して普通の生活ができるレベルの年収を実現することができます。

また、タイ・バンコクで出されたECサイト運営の会社であれば、月の給料は約36万円になります。タイの物価を考えれば、海外で働くにはかなり裕福な生活を実現することができます。

なお、海外ではボーナスの習慣がないため、日本企業のようにボーナスが出るのかどうかについては転職サイト経由で聞かなければいけません。

ちなみに、当然ですが給料の支払いは現地通貨です。そのため現地で銀行口座を開設するなど、職場で適切な手順を踏むようにするといいです。

海外ボランティアはどうなのか

なお、海外で活躍する薬剤師を考えたとき、海外ボランティアを検討する人もいます。最も有名なのはJICAの青年海外協力隊です。

青年海外協力隊は審査があり、語学力や薬剤師としての経験を含め、問題なければ審査に通過して発展途上国で活躍できるようになります。

ただ、このときはタイやシンガポールなど、ある程度発展している国で勤務することはありません。東南アジアやアフリカの非常に貧しい国での勤務になります。当然、首都など栄えている場所ではなく、地方になります。

そのためインフラは整備されておらず、停電は日常茶飯事であり、トイレットペーパーのないトイレで用を足せるようにならなければいけません。キレイに整備されていることはなく、以下のような場所での薬剤師勤務になります。

また、必要最低限のものが揃えられ、給料が出るとはいっても年収100~150万円ほどです。物価は安いので生活費はほとんどかかりませんが、薬剤師として働いていたころに比べるとお金を貯めることはできません。そのため、本当の意味で海外ボランティアを考えている人だけに向いています。

他にも注意すべき点があり、必ずしも英語を学べるとは限りません。むしろ、現地の言葉が英語ではない確率の方が高いです。例えば東南アジアでみれば、英語圏はフィリピンとシンガポールだけです。

マレーシアも英語を学べますが、マレーシアはわりと発展しているので青年海外協力隊の範囲に入りにくいです。当然、シンガポールはかなり発展しているのでボランティアは不要です。

そのため、あなたの英語力がいくら堪能だったとしても現地ではまったく役に立たないことが多いです。言語が違うからです。海外ボランティアを検討している場合、この事実を理解したうえで申し込みましょう。

日本企業に転職し、派遣で海外赴任は可能か

なお、最も良いのは日本企業の求人募集に応募して転職し、その会社から海外赴任を言い渡されて現地へ転勤することがあります。外国には多くの日本人駐在員がいます。これと同じように、海外勤務をすることは可能なのでしょうか。

これについては、薬剤師については残念ながら海外派遣はないと考えるようにしましょう。理由は単純であり、前述の通り薬剤師免許は日本国内で有効だからです。

もし、海外でも薬剤師国家資格を活用できるのであれば、調剤薬局やドラッグストアで海外展開している企業がいくつも表れているはずです。しかし、そのような会社は存在しません。どれだけの大手チェーンであったとしても、日本だけでビジネスをしているのです。

こうした事実を考えたとき、薬剤師を海外派遣する日本の会社は存在しないと考えましょう。

もちろん、一般企業に勤めていて薬剤師とは関係ない仕事に従事しているのであれば、海外赴任を言い渡されることがあります。ただ、そうではなく一般的な薬剤師として活躍している以上、日本の薬局やドラッグストア、病院、企業などで海外転勤は無理なのです。

・英語が必要な薬局は存在する

もちろん、数は少ないですが英語力が求められる薬局は存在します。外国人がたくさん訪れる薬局です。例えば、以下は東京都港区にある外資系企業がたくさん入っているオフィスビルの薬局からでた求人募集です。

日本で働きながら、英語を活用できる場所は存在します。観光客がたくさん訪れたり、空港にあったりする薬局がこれに該当します。ただ、海外派遣はないと考えましょう。

・一般企業であればチャンスがある

普通の薬局やドラッグストアでは無理ですが、一般企業であれば海外赴任のチャンスが巡ってくることがあります。

例えば、薬を売るためには海外でのマーケティングを考えなければいけません。また、薬事申請をするときは現地の国で行う必要があります。

一般的な薬剤師業務とは大きく離れてしまいますが、そうした一般企業へ転職して将来海外で活躍することを考えているのであれば、海外勤務できる可能性はあります。

海外研修のある薬局は存在する

日本の薬局や病院に働き、海外転勤が無理なことは理解できました。それでは、海外研修のある会社は存在するのでしょうか。これであれば、問題なく存在します。病院で薬剤師向けに海外研修を実施していることはほぼないですが、薬局やドラッグストアであれば海外研修を実施していることがあるのです。

例えば、以下は東京都にある調剤薬局の求人募集です。

年1回など、正社員に向けて海外研修を実施している薬局やドラッグストアが存在します。「パート・アルバイトも海外研修に参加できる薬局」になると非常に少ないですが、正社員の薬剤師ならこうした海外研修のある薬局へ転職してみるといいです。

海外研修の国はその年によって異なります。アメリカやカナダ、イギリス、オーストラリア、シンガポールなどいろんな国が海外研修の対象になります。

海外で薬剤師として活躍する

アメリカやカナダ、イギリス、オーストラリアなどの国で薬剤師として活躍するのは無理です。留学によるワーキングホリデーでも実現できません。必ず現地の大学へ入り直すようにしましょう。

ただ、アジアであれば例外的にいくつかの国で薬剤師勤務できるケースが存在します。日系病院・クリニックにはなりますが、そうした場所で活躍するのです。また、いわゆる薬剤師職ではなく一般企業でのマーケティング職などで求人が出ていることもあります。

タイヤシンガポール、マレーシア、中国、台湾など、アジアであれば薬剤師として活躍できるケースがあります。

しかし、こうした海外勤務を実現するにはできるだけ多くの求人の中から判断しなければいけません。また、小さい転職サイトでは海外求人に対応できないため、必ず大手の転職サイトを3社以上は活用するようにしましょう。

これは、海外研修のある薬局を探すときも同様です。そうした求人は非常に稀だからです。そこで、以下の3つの転職エージェントを含め、登録して求人を探すようにするといいです。

・薬キャリ

薬剤師の転職サイトの中で最も多くの求人を保有している転職エージェントが薬キャリです。当然、メインで存在するのは国内の求人です。そのため、求人票を確認しても意味がなく、薬キャリの担当者と相談しながら海外求人を探すようにしましょう。

英語が不得意であったりしても、アジアであれば問題なく勤務できる求人は存在します。そうした求人を含めて、かなりの求人数を保有する薬キャリの担当者に相談するようにしましょう。

・マイナビ薬剤師

大手の薬剤師転職サイトとして、マイナビ薬剤師が知られています。マイナビでは正社員求人を多数取り扱っていますが、薬剤師とは別に海外求人の案件を専門に取り扱う部署も存在します。

そのため、国内で海外研修のある薬局を探すときに限らず、アジアの海外求人を出している会社についてもアプローチできるようになります。海外赴任を考え、外国で薬剤師として活躍することを検討している場合は登録必須の転職サイトです。

・ファルマスタッフ

ものすごい大手の転職エージェントというわけではありませんが、派遣を基盤として多くの求人を保有しており、柔軟に対応してくれる転職サイトがファルマスタッフです。

もちろん薬局や病院だけでなく、一般企業の求人募集もたくさん取り扱っています。そのため海外研修のある薬局に限らず、一般企業へ転職して海外転勤を考えている人にも最適です。海外求人の発掘も可能なので、国外で働くことを考えている人も含めて登録するようにしましょう。


薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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