転職を考えるとき、一つの選択肢として企業内診療所の薬剤師があります。大企業では自社内に診療所を保有しており、福利厚生の一環としてそうしたクリニックを受診し、薬を受け取れるようにしているのです。

こうしたクリニックの求人は非常に少ないですが、稀に転職サイトなどで企業内診療所の募集が出されることがあります。

それでは、どのようにして数少ない企業内診療所の求人を見つけ、転職すればいいのでしょうか。転職時の条件はあるのでしょうか。

転職では仕事内容や年収、募集地域を含めて考えなければいけません。そこで、企業内クリニックへ転職する方法について解説していきます。

福利厚生で大企業は企業内診療所を運営している

世の中には非常に多くの企業が存在します。その中でも、大企業になると何万人もの社員を雇っていることになります。このとき、本社のビルは非常に大きいです。そのため東京、神奈川などの関東に限らず、大阪、名古屋、福岡の会社を含め、企業内診療所を運営していることがあるのです。

このときのクリニックは福利厚生の一環として運営されています。

いわゆる会社の医務室や保健室のような感じであり、医師や看護師が勤務していることになります。そして同時に薬剤師も企業内診療所の一員として活躍しているのです。

大企業のための診療所とはいっても、実際に本社などで勤務しているスタッフの数は当然ながら何万人というわけではありません。しかし、オフィスビルの多くにクリニックや調剤薬局があることから分かる通り、大企業の本社に何百人もの社員が働いていれば、企業内診療所はそれなりに需要があることを理解できます。

また、工場の中に企業内診療所が存在することも多いです。工場には多くの人が働いているため、そこにクリニックを設けるのです。

求人募集はどのように出されるのか

それでは、どのようにして企業内診療所の薬剤師求人が出されるのでしょうか。これについては、必ず転職サイトに登録しておく必要があります。どれも非公開求人であるため、表に出てくる案件ではないからです。

このとき大企業の診療所で欠員が出た場合、例えば以下のような求人が示されるようになります。

東京での企業内診療所の薬剤師募集です。契約社員での募集になります。当然、調剤薬局での勤務になりますが、処方せん枚数が1日50~60枚であり、これを2人の薬剤師でさばくことになります。

企業内診療所の場合、必ずしも正社員というわけではありません。パート・アルバイトや派遣、契約社員での勤務になることも多いです。ただ、それでも非常に人気の企業内薬剤師の求人なので、すぐに埋まるようになります。

なお、こうした企業内診療所の求人は都市部で出されます。関東(東京、神奈川、埼玉、千葉)、関西(大阪、京都、神戸)、名古屋、福岡がメインになります。それだけ大規模な会社が多いからです。

例えば、以下は大阪で出された企業内薬剤師の募集です。

派遣薬剤師での募集ですが、「直接雇用の可能性もあり」とあるため、正社員として管理薬剤師を担当する可能性もある求人になります。

ほとんど求人が出回らないため、「本当に企業内診療所の転職案件は存在するのか?」と考えてしまいがちです。ただ、このように少ないながらも求人自体は問題なく存在することが分かります。

・どのタイミングで企業内診療所の募集が出るのか

東京や大阪、名古屋、福岡、神奈川(横浜)を含めて都市部に住んでいる人であれば、企業内診療所の求人へ応募できる可能性があります。

こうしたクリニックがどのようなタイミングで求人を出すかというと、当たり前ですが欠員が出た段階になります。例えば、「勤務していた薬剤師が定年で退職する」「薬剤師の女性が産休に入るため、代わりの補充が欲しい」などです。

パートや派遣での募集が多い企業内診療所

なお、管理薬剤師などの正社員というよりも、パート・アルバイト(または派遣)で企業内診療所の求人が出されることが多いです。

例えば、以下は神奈川県の企業内診療所のパート求人です。

珍しく診療所名が公開されていますが、JFEスチールの鉄工所(工場)内に存在する企業内クリニックになります。ここでパート薬剤師の求人が出されているのです。

時給は2,000円と普通ですが、企業内診療所なので優れた環境の中で勤務することができます。

企業内診療所で働く薬剤師の仕事内容

それでは、実際に企業内診療所で勤務する場合はどのような業務内容になるのでしょうか。これについては、一般的な調剤薬局とほとんど変わらないと考えてください。

企業内診療所であると、医師が外部から来診してくることになります。主に内科医になりますが、診察をした後は処方せんを出します。このときの処方せんを薬局で調剤し、患者さんに服薬指導するのがメインの仕事内容になります。

企業内での勤務のため、そこまで難しい処方せんが出ることはありません。「一般的な風邪」「胃痛などの消化器症状」「便秘症状」など、普通の内科で出される医薬品がメインになります。

・一包化や粉薬など、面倒な作業は少ない

一般的な調剤薬局や調剤併設ドラッグストアであると、いろんな患者さんが訪れるようになります。例えば、高齢者であると自分での判断が付きにくいため、一包化をすることがあります。また、小児科の処方せんであると、粉薬や水剤が多くなります。

一包化や粉薬の調剤をするときに比べて、調剤・監査のあとに服薬指導をするだけの場合は圧倒的に労力が少なくなります。薬剤師として調剤経験のある人であれば、全員が納得してくれると思います。

そういう意味では、企業内診療所の薬剤師はこうした一包化や粉薬、水剤、塗り薬の調整を含めて面倒な作業が圧倒的に少なくなります。

実際、予製(事前の一包化)が必要になる患者さんはほぼいません。企業内で勤務している社員である以上、全員が判断力ある大人だからです。一般的な調剤薬局と仕事内容は同じであるものの、業務負担は非常に軽く、処方せんの内容も重くないものばかりだと考えてください。

衛生管理や社員の健康管理も主な業務内容

なお、企業内薬剤師の特徴として、「社員の健康管理や指導を行う」というものがあります。産業保健業務として働くことになるため、これについては一般的な調剤薬局にはない仕事内容になります。

産業保健業務としての衛生管理として、分かりやすいものに消毒薬があります。

オフィスでも工場でも、冬になるとインフルエンザが流行します。そうしたとき、どのような消毒薬が適切なのか指導するのは企業内薬剤師の役目です。インフルエンザウイルスに対しては、一般的な消毒薬では効果が薄いです。アルコール系の消毒薬でなければいけません。

上の図で「中型サイズのウイルス」がインフルエンザウイルスになります。そのため、管理薬剤師(または一般薬剤師)として企業内診療所に従事しているのであれば、会社内の消毒薬をアルコール系に取り換えるよう、指導する必要があります。

また、これがノロウイルスだと次亜塩素酸ナトリウム系の消毒薬を使用する必要が出てきます。次亜塩素酸ナトリウムであると、アルコール系消毒薬とは異なり、ハイターなど家庭用用品として売られているものを消毒剤として利用できます。

こうしたことを啓もうしていくのは企業内薬剤師の役目です。衛生管理は薬剤師が担う大切な業務だといえます。

また、社員の健康管理も業務内容に入ります。健康管理とはいっても、調剤室で薬を管理し、服薬指導を行っていれば社員の健康状態はある程度わかります。こうした情報を管理することになりますが、これについては一般的な調剤薬局と業務内容は同じです。

土日休みであり、定時退社が可能

企業内診療所の薬剤師がなぜ人気になりやすいかというと、勤務条件が良いことにあります。まず、企業求人なので確実に土日休みです。会社が土日休みである以上、土曜日や日曜日にクリニックを開ける意味がないのです。

また、勤務時間が比較的短く、早めに終われることも魅力です。しかも企業内診療所の場合、処方せん枚数がそこまで多くないことがあり、残業なしによる定時退社が可能です。

例えば、以下は先ほどのJFEスチール内(神奈川県)にある工場内クリニックの診察時間です。

この診療所の場合、土日休みは当然として、午前だけの診療が多いです。しかも11:30に診察終了するため、遅くても12:30には企業内の食堂で格安の昼食を食べ、そのまま帰宅できます。また、午後診療がある日でも16:30には診察が終わるため、早めに家に帰ることができます。

この求人に限らず、企業内薬剤師では16:00や17:00など早めに終わることが多いです。そのため、例えば17:00に診療所が閉まる場合、残業なしで帰ると17:30には調剤薬局を出て帰宅できるようになります。

このように就業時間が早く、残業なしの定時退社が可能という大きな特徴があります。処方せん枚数が少ない求人への転職であるため、ゆったりと仕事ができて残業なしを実現できるのです。

年収・時給はそこまで高くない

大企業での勤務であるため、土日休みがあったり、福利厚生が充実していたりすることは優れています。ただ、メリットばかりというわけではありません。デメリットもあります。

企業内診療所に勤務する一番のデメリットは年収(時給)です。正社員での管理薬剤師であったとしても、そこまで給料は高くないのです。例えば、以下は冒頭に示した「東京から出された企業内診療所の求人(派遣社員での募集)」です。

ここにある通り、年収336~384万円となっています。調剤薬局や調剤併設ドラッグストアの場合、調剤経験のある薬剤師であれば、東京や大阪でも年収450万円以上は当然のように達成できます。さらに、ここに残業代が加わります。

ただ、企業内診療所の求人だとそのようにはなりません。パート・アルバイトの募集であったとしても時給2,000円です。

これについては当然であり、そもそも勤務時間が短くて土日休みであり、さらには定時退社です。非常に条件が良いため、給料についてはそこまで高くならないのです。そのため、調剤薬局やドラッグストアに現在勤務している人の場合、転職によって給料は下がります。高い年収ではなくゆったりした働き方を望む人に適しています。

薬剤師の人数は少ない

なお、企業内診療所では薬剤師の数が少ないという特徴もあります。一人薬剤師(管理薬剤師)として勤務することになるのは珍しくありませんし、人数が多くても3人となります。基本は1~2人での調剤業務になります。

ただ、調剤薬局で一人薬剤師は普通です。そのような薬局はたくさんありますし、企業内薬剤師で働くときの処方せん枚数自体は少ないので日常業務は問題ありません。

ちなみに、先ほどの「東京から出された企業内診療所の求人(派遣社員での募集)」の一部を再び掲載したものが以下になります。

ここにある通り、薬剤師2人での仕事になります。一人薬剤師ではない職場ですが、それでも2人体制での勤務です。

なお、勤務している薬剤師数が少ないため、あなたが病気に罹ったときは大変です。中小薬局であったとしても、数店舗を運営している場合はヘルプとして薬剤師が出向くことができます。ただ、企業内診療所であると替えの薬剤師がいません。そのため、休むことはできません。

正社員に限らず、パート・アルバイトや派遣であっても有給休暇は存在します。ただ、勤務している人の数が限られており、どう考えても休めない状況になるため、有給休暇は意味のないものになります。自由に休むことができないのはデメリットの一つになります。

転職には調剤経験が必要となる

一般的には、ほとんどの調剤薬局で未経験者やブランクありの人を歓迎しています。薬剤師免許さえあれば、あらゆる薬局やドラッグストアで仕事をすることができるのです。

一方で企業内診療所であると、そのようにはいきません。調剤経験のある薬剤師でなければ受け入れてもらえないのです。調剤未経験者の場合、そもそも企業内診療所の薬剤師募集には応募できないケースが多いと考えてください。

例えば、以下のように条件が記されるようになります。

東京の企業内診療所から出た薬剤師求人ですが、実務経験5年以上とあります。つまり、調剤薬局や調剤併設ドラッグストア、病院などで5年以上の調剤経験がなければこうした募集に応募する資格がありません。

このように、3年や5年などの調剤経験を必須としていることが多いです。企業内診療所の薬剤師は非常に人気ではありますが、調剤未経験の人が応募できる案件ではないのです。一般的には、3年以上の調剤経験が要求されます。

・転職サイトの複数利用は必須

また、非常に珍しい求人であることから、必ず転職サイトは3社以上に登録して活用する必要があります。1社だけで企業内診療所の薬剤師に巡り合う確率は低く、どれだけ少なくても3社以上の登録は必須なのです。また、本当に企業内薬剤師を目指したいのであれば、通常は5社ほどの転職エージェントを利用する必要があります。

求人数が少ないといわれているクリニック(診療所)や企業(製薬会社、医薬品卸など)の求人募集であったとしても、あらゆる転職サイトで求人案件を保有しています。そのため、条件や勤務地が合えば問題なく働くことができます。求人がゼロということはないのです。

一方で企業内診療所であると、たとえ東京や大阪などの都市部であったとしても、通常時の求人数はゼロです。そしてあるとき(欠員など)、求人が出されるようになります。さらには人気求人であるため、すぐに募集が埋まってしまいます。

こうした状況のため、企業内診療所での薬剤師を考えている場合、ほとんどの人が5社などできるだけ多くの転職サイトを利用するのです。珍しい求人であるからこそ、早い者勝ちになります。そのため、多くの転職サイトを活用して、求人が出たらすぐに知らせてもらうようにしましょう。

勤務条件の優れた企業内診療所の薬剤師を狙う

稀ではあるものの、いくつもの転職サイトに登録していると定期的に出現する求人募集が企業内診療所の薬剤師です。

年収・時給はそこまで高くなく、給料の良さを期待することはできないものの、社員食堂を利用することができ、処方せん枚数は少なく、風邪や胃薬など非常に簡単な処方せんをメインで取り扱うのが企業内診療所で働く薬剤師の仕事になります。

土日休みであり、残業なしを実現することができます。17:30までには定時退社できるため、多くの人にとって魅力的な求人になります。さらに、大企業に準じる福利厚生です。

かなり条件がいいため、すぐに募集はいっぱいになります。そのため、調剤経験のある人で企業内診療所を目指す場合、いますぐ3~5社の転職サイトに登録し、求人募集が出るのを待つようにしましょう。


薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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