薬剤師として病院勤務を考える場合、勉強のために働きたいと考える人がほとんどです。病院薬剤師は非常に給料が安く、さらに激務であることが有名です。それでも多くの薬剤師が病院を目指すのは、それだけ学べる機会が多いからです。

このとき、医師であれば大学卒業後は研修医として専門知識を磨くのが一般的です。研修医のことを英語でレジデントといいます。このとき、薬剤師版の研修医制度が薬剤師レジデントなのです。

病院によっては、薬剤師レジデントとして専門的な教育プログラムを用意しているケースがあります。研修医と同じように、高度な教育内容を施すようにするのです。

それでは、実際に薬剤師レジデントに応募して活躍する場合はどのようになるのでしょうか。ここでは、薬剤師レジデント制度に関するプログラム内容や年収・給料、その後のキャリアを含めて解説していきます。

薬剤師レジデントとは?常勤での就職とは異なる研修制度

病院で提供されている薬剤師向けの研修制度がレジデントになります。一般的な常勤薬剤師としての就職とは異なり、別枠での募集になります。

例えば、以下はある病院での薬剤師の採用情報になります。

このように、常勤(まはた非常勤)の薬剤師での採用情報とは別枠で薬剤師レジデント制度での応募が存在します。

研修医と同じような制度であるため、正社員(常勤薬剤師)ではなくあくまでも研修生としての立ち位置が薬剤師レジデントになります。そのため、研修生としての期間が終わった後は同じ病院に残ってもいいし、別の病院や調剤薬局などで働いても問題ありません。

あくまでも技能を高めるための研修制度が薬剤師レジデントです。一般的な就職とは異なり、知識を高めるためにレジデント制度へ応募すると考えましょう。

高度な研修プログラムの内容やメリット

このとき、大病院で経験を積むのであれば「普通に常勤や非常勤の薬剤師として就職すればいいのでは」と考えてしまいます。

これについては、考え方としては間違っていません。ただ、正社員での就職だと病院での一般業務をメインで行うようになります。「調剤室での業務をメインで行うようになる」などのようになり、必ずしも専門性の高い業務内容に従事するわけではありません。

一方で薬剤師レジデント制度を利用すれば、通常業務に限らず大学のような講義があったり、学会発表があったりします。希望すれば、専門薬剤師を目指すことも可能です。

そのため、専門薬剤師になりたい人には最適です。実際のところ、以下のような専門認定を受けている薬剤師が在籍する病院で薬剤師レジデント制度を採用しているケースがほとんどです。

  • がん専門薬剤師
  • 感染制御専門薬剤師
  • 精神科専門薬剤師
  • HIV感染症専門薬剤師

もちろん、他にも栄養サポートチーム(NST)や糖尿病など特定領域に詳しい薬剤師もいます。いずれにしても、これら専門性の高い薬剤師が指導者となってレジデントに対して教育していくようになるのです。

常勤として就職する場合、いきなり専門薬剤師を目指すほどの高度な知識を身に付け、そのために必要な教育を受けるのは現実的ではありません。しかし、レジデントであれば可能になるというメリットがあります。

このとき薬剤師レジデント制度によって高度な教育プログラムがあるとはいっても、具体的にどの病院で勉強したいのかを事前に明確にしておく必要があります。そうしないと、思ったような教育プログラムを受けられないからです。

例えば、がん医療センターでのレジデント制度は「がん領域に特化して学び、がん専門薬剤師まで目指せる制度」でもあります。もちろんがんなので感染症や疼痛なども関わるようになりますが、その他の領域を学ぶ機会はどうしても少なくなります。

一方で総合病院であれば、一般的にはジェネラリスト育成の目的でレジデント制度を提供しているケースが多くなります。このときはがんや感染症、糖尿病などあらゆる科目を経験し、学んでいきます。

「1ヵ月単位などで病院内の部署を回っていき、それぞれで課題や研究テーマを与えられ、広く知識を付けていく」と考えましょう。

なお希望者に対しては、専門薬剤師資格の取得を支援してくれます。どの専門薬剤師資格を取れるのかについては病院ごとに異なるため、より高い専門性を身に着けたいときに何を学べるのか事前に確認しておく必要があるのです。

このとき、薬剤師レジデント制度は200床未満の病院から1,000床以上の大病院を含め、幅広い病院が提供しています。大学病院に限らず民間病院でも存在する制度なので、何を勉強したいのかを最優先にして募集を選ばなければいけません。

レジデントで働く給料・年収はどうなっているのか

なお勉強するとはいっても学生ではなく、薬剤師資格を保有した状態で実際に病院へ勤務することになります。このときは調剤・混注作業を行うことになりますし、チーム医療に参画して患者さんの治療にあたることになります。

最前線の現場で実地経験を積みながらの勉強になります。そのため、薬学生のように大学へ学費を支払いながら学ぶのではなく、給料を支払われながら学んでいくことになります。

このとき気になるのは、「どれくらいの収入を得ることができるのか」という点です。勉強する立場ではあっても年収は気になります。これについては、新卒で就職する常勤薬剤師と同程度の給料だと考えましょう。

薬剤師向けのレジデント制度を導入している病院は規模の大きいケースが多く、こうした病院だと必然的に薬剤師の収入は非常に低くなります。月給20~22万円ほどは普通であり、薬剤師レジデントも同じような待遇になると考えましょう。

例えば、以下は大学病院から出された薬剤師レジデントの募集概要です。

ここには、月収21万円になると記載されています。基本的には、こうした低い給料になってしまうのです。

また年収ベースで考えると、年収300~340万円ほどになると考えましょう。時給換算で1,500~1,800円ほどになるのが妥当であり、時給1,500円換算でも特に驚かないようにしなければいけません。

例えば、以下は東京にある病院から出された薬剤師レジデントの募集内容です。

このように時給1,500円ほどであり、年収300万円前後になっています。

常勤のような正社員ではないため、特にボーナスが出されるわけではありません。もちろん待遇は病院ごとに異なりますが、収入面を期待してはいけません。それでいて勤務内容は激務であり、通常業務に加えて日々の勉強も必要です。

病院薬剤師はどうしても労働環境が劣悪になりやすいです。レジデントの場合はさらに課題や研究テーマをこなす必要があるため、想像以上に大変になりやすいです。そのため、「低い給料でもいいので必死に学び取りたい」と考える人だけが応募しなければいけません。

勉強できるメリットは多いものの、「業務内容が大変で収入が非常に低い」というデメリットも併せ持つのがレジデントです。

・宿舎を利用可能か確認するべき

なお、実家通いであれば関係ないですが、そうでない場合は病院宿舎を利用できるようになっているかどうか確認するようにしましょう。

現実的な話をすると、薬剤師レジデントだと給料が低すぎるのでその状態のままでは生活できません。たとえ独身であっても、月20万円ほどの収入だと手取りは約16万円です。ここで家賃が月4~5万円ほど別途かかると、その支払い費用だけで大変な日常生活を強いられることになります。

少なくともお金の心配をせず、勉強へ集中する環境を整えなければいけません。そこで、最低限の福利厚生については整えてくれている病院でのレジデントを考えるといいです。

勤務期間や求人募集対象者はどうなっているのか

それでは、薬剤師レジデントとして勤務する期間はどのようになっているのでしょうか。どれだけの期間、レジデントになれるのかについては病院によって異なります。

これについては、研修期間は一般的に2~3年になります。例えば、以下は実際の病院から出されている薬剤師レジデントの期間です。

このように前期・後期合わせて2年間にわたって勉強していくことになります。ただ、中には2年でなく3年間の研修プログラムを提供している病院も存在します。

・新卒者や社会人の既卒者が応募対象

なお、薬剤師レジデントに応募できる人としては「薬学部の大学を卒業後、新卒でレジデントになる」という人に限らず、既に調剤薬局や病院などで社会人薬剤師として活躍している人であっても問題なく申し込めるようになっています。

ただ、年齢制限を設けている病院は多いです。病院だと常勤や非常勤を含めて年齢制限があることは多いですが、これについてはレジデントの求人募集でも同様だと考えましょう。たとえ求人募集に年齢の記載がなくても、暗黙の了解で年齢制限が存在することは理解しなければいけません。

そのためレジデントを希望する場合、35歳までには応募するといいです。

筆記試験や小論文があり、倍率はそれなりに高い薬剤師レジデント

ただ、実際に薬剤師レジデントへ応募するとしても全員が受かるわけではありません。一般的な薬剤師の就職とは異なり、筆記試験や小論文などの試験を課せられるケースが多いです。面接があるのは当然ですが、それ以外の試験にクリアしなければいけません。

例えば、以下の病院ではレジデントの採用で筆記試験(専門・英語)と小論文が課せられるようになっています。

実際に応募するとき筆記試験や小論文とはいっても、どのような問題が出るのか事前に理解しておき、対策を講じておかなければ不採用になる可能性が高くなります。そのため事前にどのような出題だったのか、可能なら過去問を入手して対策を練っておくといいです。

もちろん、病院によって選考方法は異なります。小論文などを省いていることもあるため、これについては選考方法を確認するといいです。

ただ、薬剤師レジデントは意外と倍率が高いです。調剤薬局や病院への転職のように、誰でもすぐに受け入れてくれるわけではありません。例えば、以下は名古屋大学医学部附属病院での薬剤師レジデントの応募状況です。

このように、採用者よりも応募者のほうが圧倒的に多いことが分かります。採用者は7~8人ほどになっていますが、応募者は毎年20人以上などのようになっています。一般的な転職のように、応募すれば合格するわけではないことに注意が必要です。

普段の仕事が非常に大変で給料の低い薬剤師レジデントですが、勉強できるために倍率は高くなっているのです。

なお、試験を受けて採用されなかった場合でも、短期の臨時職員として内定をもらう方法もあります。その場合は正式な薬剤師レジデントではないものの、病院薬剤師として業務を経験できるようになっています。

その後のキャリア・進路はバラバラ

それでは実際に薬剤師レジデントとして2~3年の課程を修了した後、その後のキャリアはどのようになるのでしょうか。

最も分かりやすいのは、薬剤師レジデントとして勤務している病院へそのまま常勤または非常勤として就職するケースです。特に転職活動をする必要はなく、同じ病院で勤務し続けることができるので特に何も考える必要はありません。

ただ、同じ病院で勤務することはなく他の病院で働いたり、調剤薬局で勤務したりする人もいます。行政機関や一般企業への就職・転職を果たす人もいます。例えば、以下は国立がんセンターで薬剤師レジデントが修了した後の進路先になります。

参考:国立がんセンター薬剤部(一部改変)

国立がんセンターでの薬剤師レジデントなので、どうしてもその後の進路は国立がんセンターでの職員が多くなっています。ただ、同数程度その他の病院で働いている人もいます。さらにいうと、調剤薬局や行政機関(PMDA)へ転職している人もいます。

病院で最先端の知識を習得したのであれば、その技術はあらゆる場面で活きてくるようになります。薬剤師レジデントとして高度なプログラムを受けたからといって、必ずしも病院での勤務に留まる必要はありません。薬剤師といっても職種の幅は広いのです。

そのため、「レジデントを経験した後に、どのような薬剤師を目指したいのか」を考えたうえで、その後の進路を決めるといいです。

志望動機は「深く学びたい」ことがほとんど

このとき、どのような理由で薬剤師がレジデントへ応募するのかというと、ほぼ全員が「深く学びたいため」であると回答します。薬剤師レジデントには新卒薬剤師や社会人の既卒者が応募できるものの、いずれもより専門性の高い知識を身に着けるために申し込むのです。

病院薬剤師として働くにしても「調剤や混注ばかりしている」など、場合によっては「深い知識が身に付いた」と感じないことがあります。そうしたとき、最先端の現場でいろんな部署を見て回り、課題をこなしていくことで知識や技術を身に付けることは大きな意味があります。

調剤薬局やドラッグストアの薬剤師であっても、単調な作業をこなすのではなく病院で最新医療を勉強するため、レジデント制度へ応募する人もいます。

ただ、実際に面接の場で志望動機を述べる場合、「応募予定の病院に関するレジデント制度がどのようになっているのか」を理解したうえで自己PRするといいです。

例えば「将来は専門薬剤師を目指そうと考えている」と志望動機を述べるにしても、そうしたプログラムを提供していないジェネラリストの薬剤師を育成することに主眼をおいた病院への応募だと、病院側は「なぜ私たちのところに応募したのだろう?」と考えて不採用になります。

事前に病院がどのようなプログラムを用意しているのか理解することで、ようやく採用される志望動機を語れるようになります。事前の下調べは必須だと考えましょう。

レジデント求人募集のある医療機関はどこか

どのような病院で薬剤師レジデントの求人募集が出されているのかというと、全国各地の病院で存在します。数は少ないものの、研修プログラムを用意している病院があるのです。大学病院や国立病院機構などに限らず、民間病院でもレジデント制度があります。

これについては、各病院の公式サイトを確認することで薬剤師レジデントが存在するかどうか確認するといいです。また、「薬剤師レジデント 一覧」などでネット検索しても問題ありません。

その年によって募集内容やレジデントの採用がある医療機関は異なるため、そのつど確認する必要があります。

または、転職サイトを活用して情報を仕入れても問題ありません。転職エージェントは大学病院を含め、大病院ともつながりがあるからです。

例えば私の場合、薬剤師レジデントではなく派遣ですが、転職サイト経由によって大学病院で勤務をしたことがあります。以下は実際に大学病院での派遣が確定したとき、転職エージェントから送られてきたメールになります。

このように、転職サイトは大病院とも深くつながっています。そのため転職サイトを利用すれば、薬剤師レジデントに関する情報についても仕入れることができるのです。

実際のところ、レジデント制度を採用している病院の公式サイトを見たとしても具体的な研修プログラムの内容を把握できないことが多いです。以下は薬剤師レジデントの募集ページですが、このようにザックリとした研修内容しか記していないのです。

当然ながら、これではプログラムの全容が見えてこないため、転職サイト経由で交渉してもらえばどのような内容なのか教えてくれます。

また場合によっては、給料が低く大変になりがちな薬剤師レジデントではなく、期間限定の薬剤師として勤務したり、常勤薬剤師として大病院で働いたりしたほうがいいケースもあります。こうしたことについて、複数の転職サイトを利用しながら相談するといいです。

薬剤師レジデントのメリット・デメリットを理解して申し込む

高度な研修プログラムを実施しているものとして薬剤師レジデントがあげられます。医師が研修医としていろんな科を巡るのと同じように、薬剤師として1ヵ月おきなどでさまざまな病棟を経験しながら実地経験を積み上げていく制度が薬剤師レジデントです。

より高度な医療知識を身に付けることができるのはレジデント制度の大きなメリットだといえます。新卒薬剤師に限らず、社会人薬剤師を含めて広く学ぶことができます。

ただ、通常業務に加えて課題などや研究テーマを与えられることになり、想像以上に大変になりやすいです。また、収入は非常に低いので期待してはいけません。

また、意外と倍率は高く応募したからといって必ずしも採用されるとは限りません。通常の転職のように、簡単に内定をもらえるわけではないのです。

これらのメリットやデメリットを理解したうえで薬剤師レジデントへ応募しなければいけません。当然、このときはレジデント修了後のキャリア・進路を見据えるようにしましょう。転職サイトを利用しながら研修内容を聞き出し、どのような就職・転職を実現すればいいのか考えるといいです。


薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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