薬学部で学び、薬剤師になるためには当然ながらお金が必要です。特に私立大学の薬学部で6年間学ぶとなると、その費用は非常に高額になります。このときの学費を奨学金でまかなうとなると、私立大学だと合計で1,000万円を超えることはよくあります。

奨学金には、返済義務のない「給付型」と返済しなければいけない「貸与型」の2つがあります。多くは貸与型なので、お金を返さなければいけません。

さらに、そこから実習代や薬剤師国家試験の予備校代など、学校の費用では他にもお金がかかってきます。

そうして無事に薬剤師になって就職し、働いたとしても毎月の奨学金の返済が苦しくて生活が厳しくなることがよくあります。別にブランド物が欲しいなどのぜいたくを考えなくても、なぜかお金がないのです。

そうしたとき、奨学金返済を支援してくれたり、高年収を得られる職場で働いたりして、素早く奨学金返済ができる環境の会社へ就職することを考えなければいけません。中途採用での転職に限らず、新卒薬剤師も奨学金補助で就職先を選ぶのは重要です。

そこで、どのようにして薬剤師がそのような会社を探せばいいのかについて確認していきます。大学の学費は高いため、奨学金返済サポートでの新卒就職や中途転職を考えるようにしましょう。

1,000万円で奨学金の返済シミュレーションを行う

まず、私立大学に通っていて奨学金返済が1,000万円残っていると仮定しましょう。そこから、毎月5万円を返していくとなると、1年間で60万円を返済することになります。そうなると、1,000万円を返すためには16年7ヵ月ほど返済が続きます。

薬剤師は最短でも24歳で社会に出ることになるため、奨学金1,000万円を返済するとなると、40歳になってしまいます。この間には結婚があって家庭をもったり、たまには遊びのために旅行へ行ったりと、お金が必要な場面が出てきます。

長い年月で見れば返せないわけではないですが、結婚など将来のイベントまで考えると、現実では「返せない」という状況に陥りやすいです。

それでは、実際のところ新卒薬剤師が働きながら奨学金を返済するとなると、どのような生活になるのでしょうか。

調剤薬局やドラッグストアなど、初任給が月30万円と高めに見積もって計算してみましょう。この場合、手取り額は月25万円ほどです。奨学金の返済があるため、5万円を引いて残るのは20万円です。

ここから、毎月の家賃や食費、交際費、携帯代などを捻出していかなければいけません。一般的に、一人暮らしを始めたときの支出は社会人で月15万円ほどです。少し贅沢すればすぐに支出が増えるため、ほぼお金がたまらない状態になってしまいます。

なお、薬剤師の初任給は一般的に以下のようになっています。

職種初任給
調剤薬局24~30万円
病院20~24万円
ドラッグストア28~30万円
一般企業(製薬会社など)22~26万円

このように見ると、月30万円でのシミュレーションは非常に良い条件です。そのため多くの薬学生が目指す病院に就職するとなると、さらに状況が悪くなります。特に大病院になるほど年収は少なくなり、月20万円の給料であると返済によって生活すらできなくなります。

奨学金返済サポートをしてくれる調剤薬局・病院を狙う

そこで、いまの職場で働くことに将来の不安を感じる場合、奨学金の返済を肩代わりしてくれる薬局や病院を狙うようにしましょう。基本は給料が高めの調剤薬局・ドラッグストアを考え、どうしても病院で経験を積みたい場合のみ病院を目指すといいです。

薬局や病院によっては、奨学金の返済サポートを行っていることがあります。会社ごとに異なりますが、300~600万円などを上限に奨学金の支援をしてくれるのです。

このとき、奨学金のサポートには以下の2つの形式があります。

  • 公的・私的機関(育英会など、一般的な奨学金)への返済を肩代わりしてもらう
  • 薬局、病院などの会社から学生のときに支援してもらう

ちなみに、薬学生のときから薬局などに支援してもらうとき、「その薬局・病院で3~5年ほど働けば返済免除になる」ことになっているケースがほとんどです。会社の規定によって奨学金の支援額や働かなければいけない期間などは異なるため、これについては確認しなければいけません。

なお調剤薬局によっては、公的・私的機関(一般的な奨学金)から支給された奨学金返済の肩代わりでも、薬学生への直接支援でも、1,000万円以上を支援してくれる薬局もあります。

いずれにしても、こうした奨学金返済サポートの制度があることを知っておくと非常に効果的です。

これら奨学金の支援制度では、どちらかというと、「薬学生のときから奨学金のサポートをしてもらう」ことが一般的です。ただ、既に薬剤師として働いている新人薬剤師であっても、こうした薬局や病院と交渉することで中途で転職すれば、奨学金のサポートをしてくれることが多いです。

薬学生を支援したとしても、国家試験に合格しなければ意味がありません。一方、既に国試に合格している人であれば、確実に薬剤師として働いてくれることが分かっています。さらにいえば、既に薬剤師資格をもった状態での転職であり、いますぐ活躍してくれるので中途採用だと非常に価値が高いです。

そのため、奨学金返済サポートは「薬学生だけを対象にした制度」と考えてはいけません。中途での転職であっても奨学金支援制度を設けている薬局や病院へアプローチするといいです。ちなみに、奨学金サポート制度は給料とは別であり、年収と分けて支給されるので安心して問題ありません。

例えば、以下はある転職サイトに掲載されている、「卒業後の奨学金返済サポートのある企業」の求人一覧です。

「給料へ上乗せして支給する」「賞与(ボーナス)として出す」などの違いはありますが、いずれにしてもこのような転職エージェントを通すことにより、問題なく奨学金を返せるようになります。

薬学生の場合、返済免除に向けた早めの対処が必要

また、薬剤師国家試験にはまだ合格していないものの、将来は薬剤師として活躍したい意欲があって奨学金返済に悩んでいる場合、いまから奨学金返済のサポートをしてくれる薬局や病院の求人を探すといいです。

そうすれば、就職先が先に決まることになるので国試の勉強に専念できます。また、奨学金による補助(給付)が学生のときから始まるので、早めに負担を軽減することができ、アルバイトの時間を減らして勉強に専念できます。

育英会などの公的・私的機関からの奨学金を打ち切り、薬局や病院からの奨学金へ切り替えることは何も問題ありません。

  • 奨学金の返済期間を短くしたい
  • 金利付の奨学金だけでも早めに減らしたい
  • 一気にまとめて奨学金を返済したい

上記のように考えている人の場合、薬学生であっても、薬剤師として働いている人であっても、転職サイトを通じて奨学金の返済サポートに積極的な薬局や病院を探すといいです。多くの場合、3年など一定期間だけ働けば奨学金の返済免除を受けられます。

例えば、以下は大学薬学部の5~6年生を対象にした奨学金制度であり、月8~10万円の補助が出ます。薬学生でこれだけの給付が出れば、非常に助かります。

無利子での返済規定はあるものの、重要なのは返済免除の項目が存在することです。この調剤薬局の場合、店舗で勤務した期間分については返済が免除されます。そのため、問題なく奨学金を返せるのです。

・予備校(学校)に通っていても問題ない

なお、中には既に卒業はしているものの、薬剤師国家試験に落ち、国試に受かるために予備校へ通っている人もいます。そのような場合であっても、問題なく奨学金給付を受けることができます。

大学の学費に限らず、予備校の費用も大きいため、勉強に専念するためには返済免除付きの奨学金補助を活用することがコツになります。

病院でも奨学金返済の肩代わりが可能

薬局では奨学金の返済支援を受けられるケースは多いです。ただ、病院であってもサポート制度を整えていることがあります。

これは、中規模病院や大病院であっても同様です。例えば、以下は徳洲会病院から出されている奨学金の内容です。

薬学生を対象にしているので、既卒の人では申し込みできません。ただ、月5万円の補助が出た後に徳洲会病院へ勤務することで、全額を返済免除されます。

また、民医連(複数の医療機関で構成された団体)についても奨学金を設けていることが多いです。例えば、以下は兵庫県の民医連から出されている奨学金です。

卒業後、民医連に加盟する病院(または調剤薬局)に勤務するという条件はありますが、大学1年生のときから奨学金による補助があります。また、病院へ勤務することによる返済免除の規定もあります。

他にも、厚生病院など大きな病院であっても就職を条件に奨学金を設けている病院は多いです。

・既卒の薬剤師も病院で返済サポートを受けられる

なお、既卒の薬剤師で奨学金の返済が始まっている人も問題なく病院で働き、奨学金返済サポートを受けることができます。

例えば、以下は転職エージェントに掲載されている「奨学金返済サポートの企業一覧(中途採用による転職での奨学金の返済補助)」です。

このように、民間病院から市民病院まで幅広く「中途採用の薬剤師が転職したとき、奨学金返済をサポートできる病院」を取り揃えていることがわかります。もちろん大病院であり、急性期病院なので薬について幅広く学ぶことができます。

このように、既に薬剤師として働いている人が病院へ転職して入社する場合であっても、問題なく肩代わりしてくれるケースが多いのです。

奨学金の額が多い場合、そのままでは返せないので通常だと「年収が低くなってしまう病院薬剤師になる」こと自体を諦めなければいけません。ただ、こうした補助制度のある病院を選べば、たとえ調剤薬局やドラッグストア並みに給料が高くなかったとしても、問題なくお金(借金)を返せるようになるのです。

新卒時から高年収を提示してくれる薬局を選ぶ

また、最初から高年収を提示してくれる調剤薬局やドラッグストアの求人を選ぶという方法もあります。どのようにすればいいのかというと、田舎僻地の薬局へ応募するのです。こうした薬局であれば、例外なく高年収を提示してくれます。

例えば、私は新卒薬剤師として働くことになったとき、島根県の中でもさらに田舎の街(島根県浜田市)で勤務することになりました。高年収を狙ったわけではなく、会社命令による勤務です。以下のような、人口6万人未満の何もないド田舎の街でした。

多くの県に支店を展開している会社であり、給料は会社一律なので年収はそこまで高くなかったです。ただ、「その地域に根付いた薬局(その島根県だけで展開している薬局)で働いている薬剤師」は新卒であっても年収600万円からのスタートでした。

さらに、住宅手当によって家賃はほぼ全額、薬局側が面倒を見てくれます。田舎なので家賃は低いものの、それでも月5万円ほどかかります。この他にもさまざまな手当てがあるため、実質の年収は700万円ほどになります。

また、島根県に限らず北海道や沖縄の離島など田舎の薬局の中には最初から年収700~800万円を提示してくれる薬局があります。これであれば、奨学金をすぐに返済できます。例えば、以下は北海道の調剤チェーン薬局から出された求人です。

新卒であっても問題なく応募でき、それなりの田舎ですが最初から高年収を実現できます。

新卒薬剤師のとき、カラオケや映画館がなく、「何でそんなところに?」というような自然の緑あふれる田舎で私は生活するようになったわけですが、意外と悪くないです。

人が温かいだけでなく、仕事をしていると野菜をくれたり肉を譲ってくれたりすることが多いです。知り合いからイノシシの肉をもらったこともありました。食費が浮くだけでなく、こうした田舎ならではの触れ合いを楽しむことができます。

個人的なわがままは視野を狭める

このように奨学金の返済の面倒を見てくれたり、高年収を提示してくれたりする求人は存在します。ただ、こうした募集を確認するときは注意点があります。それは、現実的に物事を考えるべきという点です。

薬剤師として働くとき、個人的なわがままを押し通そうとする人がいます。現実的に物事をとらえず、甘い価値観の中で生きているのです。

例えば、「東京、大阪、名古屋などの都市部で働きたいが、奨学金返済のため年収600万円がいい」などを考える人です。

前述の通り、田舎の薬局であれば最初から年収600万円以上が提示されます。ただ、都市部であればキャリアを積んだエリート薬剤師であっても年収600万円は難しいです。こうした現状を考えず、世間を分かっていない状態で何とかしようとする人は意外と多いです。

薬剤師という職業は患者さんの命を預かる仕事でもあります。そのため厳しくいうと、そのようなゆるい考え方をしているようでは、いつまで経っても一人前にはなれません。常識的な考えをもって自分の将来を見つめなおす必要があります。

奨学金のある薬局や病院とはいっても、そこで一生働く必要はありません。田舎の薬局ではありますが、3~5年ほど働けばほとんどの奨学金を肩代わりしてもらえるのですぐに返済できます。15年以上も奨学金返済に苦しみ続けるのと、数年だけ我慢して後の人生を楽にするのと、どちらが良いのかを冷静に考え、常識的な判断ができるようにする必要があります。

必ず転職サイト(転職エージェント)を活用する

ただ、奨学金の返済サポートをしてくれたり、新卒の段階から高年収を提示してくれたりする薬局や病院を自らの力で探すのは不可能に近いです。

そこで、奨学金を支援してくれる会社へ就職したり転職したりする場合、全員が転職サイト(転職エージェント)を活用します。転職サイトにはあらゆる薬局や病院の情報が入ってくるため、そこから奨学金の面倒を見てくれる会社を多くの求人の中から探すことができます。

また、転職サイトによって保有している求人情報が異なります。そこで2~3社以上の転職エージェントを活用し、どの薬局や病院の奨学金支援制度が優れているのかについて調べなければいけません。

特に奨学金の問題はお金が絡むため、こうした問題を一人で解決しようとするほど失敗します。既卒の薬剤師であっても、これから国試を迎える薬学生(卒業見込みの場合)であっても、必ず転職サイトを活用するようにしてください。

なお、おすすめのポイントとして「たくさんの求人を保有しており、その中から紹介する転職エージェント」ではなく、「調剤薬局やドラッグストア、病院などへ電話確認し、新卒や中途採用でも問題なく奨学金返済の補助をしてくれるかどうか」を確かめることにより、新たに求人を発掘してくれる転職サイトを選ぶようにするといいです。

奨学金が絡む就職・転職の場合、考えるべきことが多いです。

  • 残っている奨学金(借金)の額
  • 希望する勤務地:どこまでの田舎なら勤務できるか
  • 薬局か病院か
  • 勤務条件をどうするのか

奨学金返済サポートがあり、さらにはあなた個人の要望にあった募集へ応募しなければいけません。世の中にある既存の求人だと、奨学金返済について触れている求人募集はほぼ存在しないため、「返済補助をしてくれる企業(薬局やドラッグストア、病院)の求人」をゼロから発掘してくれる転職サイトが適切です。

薬剤師だからこそ、お金と真剣に向き合うべき

日本人であると、お金の話をすることを避けようとします。特に薬剤師などの医療関係者となると、金銭的な話を嫌います。

ただ、実際のところ世の中きれいごとだけでは生きていけません。家が裕福でない薬学生の場合、私立大学に通うと奨学金が6年間で1,000万円以上に膨れ上がることは珍しくないです。本気で自分の将来を見つめなおさなければ「奨学金返済に苦しむだけの人生」になってしまいます。

そこで、奨学金の返済計画を立てるようにしましょう。このときは奨学金を肩代わりしてくれる薬局や病院へ就職したり、高年収を提示してくれる田舎の求人へ応募して数年間頑張ったりしましょう。

「勤務先は都市部でないとダメ」「友達と離れるのはいや」などのように自分勝手なわがままを押し通すのではなく、常識的な考えをもって世の中の現状と照らし合わせなければいけません。

奨学金として何百万ものお金を返す(大きな借金を返済する)となると、それなりの痛み(代償)を支払う覚悟をもつ必要があります。そうした代償の支払いなしに奨学金を返済しようとするのであれば、そもそも考え方が甘く薬剤師として向いていないといえます。

ただ、素早く借金を返済した方が薬剤師として気持ちが楽になりますし、結婚を含め将来プランを立てやすくなります。そこで、新たな就職・転職を検討して働く会社を本気で考えるようにしましょう。

このとき、先に述べた通り「奨学金を肩代わりしてくれる薬局やドラッグストア、病院の求人をゼロから発掘してくれる転職サイト」を利用するようにしましょう。

一般的に大手の転職サイトになるほど、多くの求人を保有しているものの、求人を紹介するだけの機械的なサービスになりがちです。そこで、中小の転職エージェントの中でも、個人ごとに求人を掘り起こしてくれる転職サイトを2~3社ほど利用するのがいいです。

こうした転職エージェントとしては、主に以下があります。

・お仕事ラボ

中堅の転職サイトとして、お仕事ラボが知られています。派遣に強いことで知られている転職エージェントですが、正社員の求人も当然ながらたくさん保有しています。

また、事前に面談やテレビ電話をすることも可能なため、どのような借金(奨学金)の状況であり、どういう勤務条件を希望しているのか細かく伝えることができます。

もちろん、先ほど掲載したような北海道の「新卒でも応募できる年収750万円の薬局求人」などの求人もあります。こうした薬局を狙ったり、奨学金返済のある病院を考えたりするとき、お仕事ラボを活用しましょう。

・ファーマキャリア

自社では求人票を一切保有していないという、珍しい転職エージェントがファーマキャリアです。求人票がないため、求人票を最初から提示されることはありません。

そこで薬剤師へヒアリングし、細かい条件を聞き取った後に新たに求人を発掘することに特化しています。奨学金の返済額や希望条件を聞いた後、該当する薬局や病院へ電話をかけて、求人を見つけてもらうのです。

面談はなく電話のみ(希望する場合はメールだけ)の対応になりますが、あなたの希望条件に合う薬局・病院の求人を発掘することに優れた転職エージェントになります。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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