薬剤師が転職するとき、ドラッグストアを目指す人はたくさんいます。こうしたドラッグストアとして、大手となる企業にスギ薬局があります。スギ薬局でも多くの薬剤師を雇っており、当然ながら中途採用での転職先の候補となります。
ただ、転職先の会社がどのような内情なのか理解していないと、本当に就職してもいいのか悩んでしまいます。
実際のところ、スギ薬局の薬剤師として勤務するときの年収や福利厚生、残業などの待遇や実態はどのようになっているのでしょうか。ここでは、スギ薬局で薬剤師が働くときの注意点について解説していきます。
もくじ
年収・給料が高いドラッグストアのスギ薬局
高収入を実現できる薬剤師の職場としては、代表的なものにドラッグストアがあります。スギ薬局ではどうかというと、やはり高めの給料を実現できます。
スギ薬局の場合、求人票だけを見ると給料は少ないです。以下のように、新卒就職や未経験だと年収(初任給)は450万円ほどです。
ただ、勤務3年ほどあれば年収550万円以上は当然として、さらにプラス数年ほどで年収600万円は十分に可能です。調剤薬局よりも高年収を実現でき、同業のドラッグストアに比べても高めの収入を実現できるのがスギ薬局になります。
そのため、給料の面だけを考えるのであれば特に不満なく働くことができます。順調に出世を重ねていけば、年収1,000万円を超えるのも夢ではない会社です。
・昇給・昇進は試験になるが、評価制度は不透明
そのとき、昇給・昇進は試験となります。3年目くらいまでなら、試験にパスすることで順調に昇給していくようになります。ただ、あるときから面接が入ることになるため昇進が難しくなります。
また評価のとき、薬剤師資格をもたない人からの評価も入ります。さらに評価は自店舗だけでなく、エリアでの売上も含まれることがあり、自分の頑張りだけではどうしようもない面があります。また、売上の少ない店舗で必死に頑張ったとしても、結果が悪い(元々の売上が少ない)ために評価が低くなることは多いです。
スギ薬局では、評価制度が不透明だったり正しく評価されなかったりするため、これについては不満を覚える人が多くなります。
・管理薬剤師などでも手当はない
また、高年収が可能なスギ薬局ですが管理薬剤師(店長)などに就いたとしても特に手当が支給されることはありません。
一般的には管理薬剤師手当がどの薬局にも存在します。ただ、スギ薬局の場合は職種の位が上がったとしても手当については変化がありません。
総合職だと土日(日曜)出勤や転勤があり、勤務時間は長い
このとき、ドラッグストアなのでスギ薬局では非常に開局時間が長くなっています。目の前のクリニックに合わせて19:00や20:00などに閉店する店舗であればいいですが、必ずしもそうした店だけではありません。調剤併設店であっても、22:00まで開局しているのは普通です。
そのため、総合職としてスギ薬局に勤務することになった場合、朝から晩まで働くようになると考えましょう。特に総合職だと遅番に入ることは多く、22:00まで毎日勤務するのは珍しくありません。
このとき、当然のように土日出勤があります。日曜日や祝日でも開局している店舗が多いため、そうしたシフトを組まれるようになると考えましょう。
さらにいうと、日曜日や祝日などでは「事務なしの一人薬剤師」で調剤をするケースが多くなります。スギ薬局の場合、一人薬剤師をすることは普通だと思った方がいいです。当然、一人薬剤師だと休憩時間はなく、開店から閉店まで仕事をし続ける必要があります。
また、スギ薬局は常に人手不足になっているものの、新規出店を積極的に展開しています。そのため薬剤師の不足はより深刻になり、出勤の半分以上がヘルプになることもあります。
当然、総合職だと転勤も頻繁に起こるようになり、患者さんと信頼関係を構築できる前に異動を繰り返していきます。さらにシフトが前月末などに提示され、土曜日や日曜日でも平気でシフトを組まれるので予定を立てにくいというデメリットがあります。
給料は高く、人手不足なので簡単に管理薬剤師を経験できますが、こうした弊害があることは理解しましょう。
収入・ボーナスは低くなるが、調剤職でワークライフバランスを取るのは可能
しかし遅番で22:00の帰宅になったり、土日(日曜日や祝日を含む)の出勤が嫌だったりする人もいます。この場合、総合職ではなく調剤職を選ぶことができます。調剤職であれば、土日祝日が完全休みであり、9:00~19:00の中でのシフト勤務になります。遅番が回ってくることはなく、日曜日出勤もありません。
当然、その分だけ給料やボーナス(賞与)は少なくなります。ただ、総合職よりも収入が少なかったとしても、他の調剤薬局より高年収を実現できます。
ただ、調剤職であっても他店舗へのヘルプは当然のように存在すると考えましょう。
・エリア社員も可能
これに加えて、エリア限定社員を選ぶことができます。この場合は遠くへの転勤はなくなります。ただ、同様に総合職に比べると給料やボーナスは低くなります。
スギ薬局は狭い地域に多店舗展開するドミナント戦略を採用しており、転勤があるにしても関東や関西、中部の都市部です。地方に飛ばされることは少ないです。ただ、転勤なしで特定の地域に留まりたい場合はエリア社員としての勤務も可能になっています。
ドラッグストアなので残業は多く、勤務時間は長くなる
ドラッグストアで営業時間が長いことから、スギ薬局で働く場合は必然的に勤務時間も長くなります。ドラッグストアの場合、仕事内容は調剤に限らずOTCやサプリメントを含めすべてに対応しなければいけません。そのため仕事量は多く、閉店するにしてもかなり遅くなってしまうことがあるのです。
特に小さい店舗だと一人で何でも担当する必要があり、「調剤によって処方せんをさばきながらも、第一類薬品の説明を行う」などを効率よくこなさなければいけません。
OTCも含めて業務を行うので勉強になりますが、忙しい店舗だと一人の患者さんと密に接する感じではなく、効率よく患者さんをさばくことに集中しがちになります。
また、前述の通り一人薬剤師になる機会も非常に多いのがスギ薬局です。経験が浅いうちから「事務なし一人薬剤師」をすることもあり、休憩なしでずっと一人で頑張る必要があります。
さらには薬剤師が不足しているため、どの店舗であっても基本的に薬剤師の人数は少なめです。また無駄な社内ルールもあり、業務が非効率となる現状も残業が多い理由につながっています。ドラッグストアは一般的に営業時間が長く残業は多いですが、これはスギ薬局でも同様なのです。
研修としての福利厚生は優れている
なお、スギ薬局で口コミや評判が優れているものとして研修があります。研修制度が優れているため、たとえ新卒就職や未経験の中途採用であったとしても、半年もあれば問題なく一人前の薬剤師として活躍できるようになります。
課題を習得するとき、人によっては家に持ち帰って頑張ってこなすケースはあるものの、調剤スキルの向上に関する研修が既に組み込まれているのは、スギ薬局へ転職する大きなメリットだといえます。
ただ、調剤以外のマネジメント能力に関する研修はほぼ存在しません。あくまでも、薬剤師としての技能を向上させる研修が充実していると考えましょう。
・家賃補助が8割
また、スギ薬局には社宅制度があります。家賃は非常に大きな出費になりますが、スギ薬局の正社員であれば社宅制度の適用があり、住宅手当を受け取れるようになります。
このときの住宅手当(家賃補助)は家賃の8割です。例えば家賃5万円であれば、住宅手当として4万円ほどを補助してもらえます。福利厚生という意味では、スギ薬局は優れています。
・産休・育休の取得や時短勤務は可能
また、福利厚生という意味では女性薬剤師は働きやすくなっています。スギ薬局の場合、産休や育休の取得は問題なく可能です。
他にもスギ薬局では、育児休暇を2年まで取得することができます。また、時短勤務を子供が小学校6年生になるころまで認めてくれます。そのため、問題なく働きながら勤務することができます。看護休暇も用意されており、子供の急な発熱などにも対応できます。
ただ、育児中の女性薬剤師が働きやすくなっている反面、他の薬剤師へのヘルプ要請や遅番勤務が多くなっているという実態もあります。
人手不足で有給休暇は取得できない
ただ、有給休暇についてはスギ薬局でほとんど取得できないと考えましょう。常にヘルプが必要であるほど人手不足であるにも関わらず、新規出店を展開している会社であるため、有給休暇の申請をしている暇などないからです。
女性が子育てをするために産休・育休を取るのであれば問題なく取得できますが、有給休暇については付与されたとしても実質的に利用できません。
スギ薬局を含めドラッグストアは非常に忙しく、さらには新規出店をしている会社がほとんどなので、人材不足に陥って有給休暇の取得どころではないのです。
平均勤続年数は長く、離職率は低め
それでは、スギ薬局での平均勤続年数や離職率はどのようになっているのでしょうか。これについては、薬局の中では優れていると考えましょう。
厚生労働省の発表では、薬剤師の平均勤続年数は6.7年です。スギ薬局では高収入を実現でき、さらには女性にとっては育児をしやすい環境なので離職率は低めになっているのです。また、調剤職を選べば遅番をする必要もありません。
ただ、総合職の薬剤師として活躍している人だと事情が違ってきます。調剤職へと転向してもいいですが、自らの転勤願いですら聞き入れてもらえないのに、妊娠・出産などの特別な理由なく「総合職から調剤職へと転向する」とは言いにくいです。
そのため総合職のうち、大変な仕事や遅番、休日出勤、一人薬剤師での業務などに耐えられない人は、退職して他の会社を目指す傾向が強いです。また、頻繁な転勤が嫌になって辞める人もたくさんいます。高年収なのでそれでも留まる人もいますが、体力的な問題で退職する人は多いです。
薬剤師以外に教育、営業、人事などあらゆる選択肢がある
ただ、スギ薬局の場合は薬剤師以外にも多くのキャリアステップが用意されています。そのため、ただ調剤業務だけを担当するのではなく、より多くの仕事を精力的にこなしたいと考えている人であれば、このキャリアステップは最適です。
このときは教育や営業、人事とあらゆる選択肢があります。こうしたキャリアステップを踏み、昇給・昇進していくことを目指すのであればスギ薬局は優れているといえます。
一方で総合職として薬剤師だけを考えている場合、遅番やヘルプの連続で疲れるので長くは続けることができない人が多くなります。
もちろん女性薬剤師として調剤職を希望したり、エリア社員の土日休みで勤務したりすることを最初から検討している場合、それでも問題ありません。ただ、総合職の場合で最初から上を目指す人は、多くのキャリアステップを検討するといいです。
もちろん、エリアマネージャーなどになっても休みの出勤などは普通であり、残業は多いため、総合職だと常に精力的に働かなければいけません。
パートやアルバイトで勤務するときの時給相場はどうか
ただ、スギ薬局で働くときは正社員だけではありません。パートやアルバイトとして勤務するケースも多いです。このとき、どのような待遇になるのでしょうか。
もちろん、正社員に限らずパートやアルバイトであっても、調剤だけでなくOTCの対応をすることがあります。ただ、正社員のように長時間の残業をすることはありませんし、他店舗のヘルプをすることもありません。転勤はなしで同じ店舗で働き続けることになります。
このとき、一般的にスギ薬局では時給が高めに設定されており、最初から時給2,200円で働くことができるようになっています。以下は実際のパートでの中途採用です。
ドラッグストアであっても、一般的には時給2,000円からです。ただ、スギ薬局ではパートやアルバイトでも高めの時給を実現できるようになっています。そのため、パート勤務をするときにスギ薬局を考えても問題ありません。
ただ、パート・アルバイトで働くにしても店舗ごとに営業時間は異なりますし、薬剤師の人数も違います。スギ薬局は薬剤師が不足しているからこそ、どのような店舗で働くのかは事前にしっかりと吟味するようにしましょう。
スギ薬局で夜間パートや休日バイトも可能
なお、遅番によって夜に働くことであったり、休みの日に勤務したりすることを積極的に選択する人は少ないです。そのため、スギ薬局では「夜だけのパート勤務」「日曜、祝日まで含めた休みの日に入れるアルバイト」の求人も存在します。
普通に探しても見つけることはできませんが、転職サイトへ登録すれば珍しい夜間や休日バイトを見つけられるようになります。
スギ薬局では22:00や23:00などまで営業時間になっているケースは多く、さらには日曜日や祝日でも開局しているのは普通です。そうしたとき、ダブルワークを含めこれらの求人募集へ応募すれば高めの時給で勤務できるようになります。
「何時まで働くようになるのか」「週のうち勤務日数はどれくらいか」「時給はどれだけ高くなるのか」などの条件・待遇については交渉次第ですが、営業時間の長いスギ薬局であればこうした働き方も可能になります。
転職サイトを利用し、面談後は職場見学をするべき
こうした特徴を理解したうえでスギ薬局の中途採用に応募する必要があります。ただ、スギ薬局で働くにしても「勤務する店舗や条件」は詳しく確認するようにしましょう。
総合職や調剤職、エリア社員を含め、最初は働く店舗を決めた状態で勤務するのが基本です。社内システムに慣れていないときから業務が大変な店舗で働くようにならないため、転職サイトを通じて最初にどの店舗で勤務するようになるのか事前に確認するといいです。
当然、このときは勤務後の条件を聞いておくことも重要です。
- ヘルプ勤務はどれくらいの頻度で発生するのか
- 遅番はどれだけ入るのか
- 妊娠を考えており、総合職からエリア社員に移るのは問題ないか
- 転勤がある場合、頻度はどうか
一般的な正社員で働く場合は残業や転勤が多く、遅番まで入るようになるため、就職するときの条件交渉は非常に重要です。さらには年収交渉までしなければいけませんが、転職サイトの担当者を通じて行うといいです。
すべてを自分で行うのは難しいですが、転職エージェントであればこうしたことを代行してくれるようになります。
また、転職時は必ず店舗見学を実施するようにしましょう。ドラッグストアだと本社(または支店)での面接になりますが、これから働くようになる職場を面接後に見学をすることで、ようやく職場の状況が分かります。さらには現場の薬剤師に質問を投げかけることで、実際に働いたときの姿を想像できるようになります。
中途採用の募集でスギ薬局を検討する
ドラッグストアの中でもスギ薬局は年収が高く、調剤部門だけの遅番なしであっても高めの収入を得られるという特徴があります。また、研修を含めた福利厚生に関する口コミ・評判は優れています。
さらには、キャリアパスは薬剤師関連だけではありません。教育や営業、人事を含めその他の経験まで積むことができます。そのため、薬剤師だけに留まらず企業内で昇進し、活躍していきたい人にとっては最適な会社だといえます。
ただ仕事内容は大変で残業は多めですし、遅番や転勤ありの場合は体力的にきついのです。もちろん、そうしたことが嫌な場合は調剤だけのエリア社員として活躍することを考えても問題ありません。この場合でもスギ薬局なら高年収が可能です。
実際にスギ薬局へ転職するとき、こうした実情があることを理解したうえで勤務条件などを細かく調整するようにしましょう。転職サイトの担当者を通して、条件面や働くときの様子、残業の度合いなど細かく聞き出すことで、転職で成功できるようになります。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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