実際に薬剤師が働くとき、科目を考えることは非常に重要です。どのような科目で勤務するのかによって忙しさは異なりますが、メインの患者さんも違ってきます。

そうしたとき、小児科の門前薬局を考える薬剤師もいます。子供を相手にすることになりますが、小さい子供たちの健康を守るために薬剤師として活躍するのです。

それでは、こうした小児科の中途採用募集へ申し込むときはどのように求人を見ればいいのでしょうか。また、小児科の職場では仕事の大変さや年収はどのようになっているのでしょうか。

一般的に小児科で働く薬剤師の役割は大きく、仕事内容は大変になりがちです。そのため好んで小児科を選ぶ薬剤師は少ないですが、それだけやりがいも大きいのが小児科です。そこで、小児科の求人へ転職して働くときの注意点について解説していきます。

小児科病院・病棟の求人はなく調剤薬局となる

まず、どのような会社から小児科の求人募集が出されるのでしょうか。これについては、ほぼ100%の確率で調剤薬局やドラッグストア(調剤併設ドラッグストア)になると考えましょう。

小児科だけの病院はほぼ存在せず、小児科病棟があったとしても基本は総合病院になります。そのため、病院薬剤師で活躍するときに「小児科だけ」の求人は基本的に存在しないと考えましょう。

そうではなく、小児科に関わる薬剤師だと調剤薬局がメインです。小児科門前の調剤薬局やドラッグストアで勤務することにより、小児科クリニックの処方せんを受け付けるのが基本になると考えましょう。

小児科病棟の求人はほぼゼロであるものの、調剤薬局であれば非常に多くの求人募集が出されるようになるのです。

小児科は大変で役割が大きい

なお調剤薬局で勤務するとき、非常に大変になりやすい科目の一つが小児科です。単純に調剤の手間がかかり、服薬指導も難しくなるからです。

小児科だと粉薬や水剤が多くなります。単に棚から薬を取れば問題ないピッキング作業ではなく、薬の量を測って粉薬を作らなければいけません。当然、監査では薬の数を数えればいいだけではなく、電卓を叩いて計算する必要があります。

また、水剤も一つずつ薬を測って調剤しなければいけないので大変面倒です。単にピッキング作業によって調剤をするよりも、明らかに面倒で時間がかかるようになるのが粉薬や水剤です。

さらには勉強するべきことも多いです。子供の年齢によって服用量が変わるのは普通ですし、薬によっては体重で服用量を決めるのも一般的です。大人のように服用量が一律で決められていることはないため、投薬する子供に応じて用法用量が問題ないかチェックしなければいけません。

季節性もあり、特に冬の時期では異常なほど忙しくなります。待合室は風邪やインフルエンザの子供であふれかえるようになるのです。18:00に終業だったとしても、冬だと薬局を閉めるのが19:00以降になるのは普通であり、20:00くらいになることもあります。

勤務時間はこのように不規則になりがちですが、早朝や夜にクリニックへ患者さんが駆け込むこともあり、門前クリニックの方針にもよりますが朝早くや深夜に呼び出されることもあります。そのため、自分の時間を患者さんに捧げる覚悟がなければいけません。

しかも服薬指導は難しいです。投薬するとき、例えば子供に吸入薬の説明をするにしても簡単には理解してくれません。製薬会社のMRからもらった練習用の製剤見本を活用する必要があるなど、服薬指導での工夫が必要になります。

親に説明するにしても、子供の具合が悪いので非常に心配になっており、同じことを何度も聞いてきます。どれだけ忙しかったとしても、このときは丁寧に対応する心構えが必要です。

こうしたこともあり、小児科では調剤が面倒なだけでなく服薬指導の注意点も多くなり、その結果仕事が大変になるのです。薬剤師として勉強することは多く役割が大きいとはいっても、忙しくなりやすいのが小児科です。

服薬指導では工夫が必要になる

それでは、投薬時はどのような工夫が必要になるのでしょうか。例えば、薬嫌いの子供は多いです。少しでも薬の成分が苦いと吐き出してしまいます。

大人であれば「我慢して飲んでください」と言えますが、子供を諭すことはできません。そこで服薬指導のときは薬剤師ならではの工夫が必要になり、より多くの労力が必要になります。

薬嫌いの子供に対しては、例えば服薬ゼリーを使うという方法があります。また、オブラートに包むという対処法があり、これであれば漢方薬のような苦い薬であっても飲み込めるようになります。

他にも乳児であれば、ペースト状にして薬を飲ませる方法を母親に指導しなければいけません。また、牛乳嫌い・ミルク嫌いになるのを防ぐため、「牛乳やミルクに薬を混ぜて飲ませてはいけない」ことを親に教えることも重要です。

子供が対象になると、薬の服用方法を指導するだけでも大変になります。

年収・給料は普通になりやすい

業務内容が多くて大変なため、当然ながら高い年収の提示を期待したいのですが、小児科の調剤薬局で働いたとしても提示される収入は他の科目と同じくらいになるのが一般的です。

確かに、粉薬や水剤など面倒な薬を調剤する場合はその分だけ加算が付きます。ただ、手間をかけた以上に処方せんの単価が上がるかというと必ずしもそういうわけではありません。一包化と同じように、手間のわりにはそこまで処方せんの単価は上がりません。

実際のところ、内科の処方せんばかりを調剤して効率的に患者さんへ投薬したほうが効率的です。粉薬など面倒な処方せんがないほど、薬局としてはありがたいのが実情です。

こうした現状があるため、たとえ小児科で働いたとしても給料は普通だと考えるようにしましょう。例えば、以下は東京にある小児科門前の調剤薬局から出された求人募集です。

年収450万円からスタートの求人であり、給料は普通の内容になっています。東京や大阪の中小薬局であると未経験者は一般的に年収450万円からとなりますが、内科などで勤務する薬剤師に比べて業務内容が大変だからといって、特に収入が増えるわけではないと認識しましょう。

そもそも、小児科は利益が非常に出にくい構造となっています。

  • 処方日数が短い(薬剤費が少ない)
  • 容器代が必要
  • 新患が多く投薬に時間がかかる
  • それでいて粉薬や水剤を調剤したときの加算は少ない

こうした現状があるため、小児科では高年収を期待しにくいです。それよりも小児医療に携わりたいと考える、使命感ある薬剤師が転職するほうが適しています。

管理薬剤師での転職はしやすい

科目の中でも大変で忙しくなりやすいことから、敢えて小児科門前の調剤薬局を目指そうと考える人は非常に少ないです。どちらかというと、薬剤師は楽な働き方を望む人が多いです。そのため、面倒な調剤や投薬を率先して実施しようと考える人の数は少なくなります。

また勉強することは多くても、新薬という意味では小児科はほとんど出ないので、新薬を学ぶ機会は少なくなります。こうした事情も小児科を希望する人が少なくなる理由となっています。

その一方で小児科クリニックの数は多いです。珍しい管理薬剤師の求人数が多くなりがちになるのです。そのため、管理薬剤師としての珍しい求人であっても転職しやすいという特徴があります。

例えば、以下は神奈川にある小児科門前の調剤薬局から出された募集です。

このように管理薬剤師の募集をしています。提示されている年収額は最低でも580万円ですが、他の科目の薬局と年収が同じとはいっても、管理薬剤師として転職することで高年収を実現することは十分に可能です。

小児薬物療法認定薬剤師で専門性を高める

なお、小児科門前の薬局で勤務するのであれば専門性を高めることを考えても問題ありません。内科メインの薬局だと、どのようなスキルを学ぶか悩んでしまいますが、小児科であれば認定資格が存在します。小児科の認定資格としては小児薬物療法認定薬剤師があります。

小児科領域では、専門薬剤師の資格はありません。ただ、小児科領域に対して高い知識をもつ薬剤師として認定資格が存在するのです。

ただ小児薬物療法認定薬剤師になるには、特に小児医療に関わっている必要はありません。保険薬局や病院に3年以上の勤務があり、所定の研修を受けた後、試験に合格さえすれば小児薬物療法認定薬剤師になることができます。

調剤薬局や病院で働いている薬剤師なら誰でも取得できる資格ですが、小児科門前の薬局へ転職することを考えているのであれば、こうした認定資格を取得してさらに高い専門知識を身に着けることを考えてもいいです。

パートを含め、楽な仕事を考える人は向いていない

ここまでのことを理解できれば、薬局薬剤師として転職するときに「できるだけ楽な職場で働きたい」と考えている薬剤師の場合、小児科門前の調剤薬局・ドラッグストアで働くのはおすすめできません。楽どころか、業務内容が大変になりやすいからです。

薬剤師にとって、楽な科目としては眼科や整形外科が知られています。こうした科目がメインな薬局であれば、ゆったりと働けるようになります。

一方で小児科となると、薬剤師としての役割が大きくなって忙しくなります。特に冬の時期では毎日が慌ただしくなります。そのため、薬剤師として忙しすぎる職場を避けたいと考えている場合、小児科を避けるのが基本です。

もちろん、例えば小児科のパート薬剤師として働くときに以下のような条件で勤務することは可能です。

  • 週2~3日ほどで勤務したい
  • 定時退社を実現したい
  • 土日休みを考えている

パート・アルバイトで働くときに、こうした一般的な条件のもとで働くことはできるものの、実際の勤務で「ゆったりと薬局内で働く」などは実現できないと考えましょう。それなりに大きなやりがいを持ちながら、勉強もしながら小児医療に取り組むのが小児科門前の薬剤師です。

妊娠希望の女性薬剤師は小児科を避けるべき

これら小児科門前の薬剤師として転職するとき、楽な職場を希望する薬剤師だけでなく、妊娠希望の女性薬剤師についても小児科門前の薬局で勤務するのはおすすめできません。

小児科であると粉薬の調剤がどうしても多くなります。当然、粉薬を調剤すると空気中に粉が舞うようになります。

私もこれまで何度も粉薬の調剤をしてきましたが、抗生物質のドライシロップを調剤するとき、粉が少しだけ舞って空気中に甘い匂い(ドライシロップの甘い味)が漂うようになるのは普通でした。

そうした環境で調剤することになるため、妊娠希望の女性は当然ながら避けなければいけません。もちろん胎児への影響は少ないですし、マスクをしていれば多少は粉を吸うのを防ぐことができます。ただ、影響がゼロではないので粉の調剤をするたびにストレスに感じる妊婦さんは多いです。

ストレスがかかる環境で働き続けるのは良くありません。薬剤師の中でも、妊娠希望の女性は小児科メインの調剤薬局を避けましょう。

派遣で高時給を目指すのは問題ない

なお、小児科門前の薬局で働くときに派遣を目指すのであれば特に大きな問題はありません。

正社員やパート・アルバイトの場合、非常に忙しくて大変なのにも関わらず、給料は他の科目の薬局で働くのと同程度となります。一方で派遣であれば非常に高い給料になります。もちろん小児科であることには変わりないので投薬は大変ですが、東京や大阪でも時給3,000円以上を問題なく達成できます。

例えば、以下は東京にある小児科メインの調剤薬局から出された派遣求人です。

このように時給3,000円以上となっています。服薬指導が大変なのは変わりないですが、派遣の場合は定時退社が可能ですし、こうした求人で効率的に稼ぐのは問題ありません。

小児科の調剤薬局・ドラッグストアへ転職するときの志望動機

それでは、実際に小児科の処方せんをメインで受け付ける調剤薬局・ドラッグストアへの求人へ転職することを考えたとき、履歴書や面接での志望動機はどのように考えればいいのでしょうか。

小児医療に関わることになるため、これについては単純に「小児科での経験を積みたい」ことをメインの志望動機にするとスムーズです。

例えば、以下のようになります。

将来ある子供の医療に携わりたいと考え、志望しました。

単純に子供が好きということもありますが、小児科メインの店舗であることに加え、貴社は転勤のない地域密着の企業なので長く働くことができます。

また、小児医療では有名なクリニックであるため、臓器疾患や小児てんかんを含め高い専門性を学べることにも魅力を感じています。

このように、できるだけ端的に伝えるようにしましょう。特に履歴書は志望動機のスペースが少ないため、短くまとめる必要があります。

なお、当然ながら小児科門前なので子供の相手をするのが問題ない人だけが応募するようにしましょう。そうでなければ毎日が苦痛になるだけです。求人票にある条件面だけで転職してはいけません。

転職サイトを活用しての小児科転職がスムーズ

これら小児科門前の調剤薬局やドラッグストアの求人を探すとき、全体的な求人数が多いとはいってもどこで小児科の募集が出されているのか見当が付きません。自ら中途採用の募集を探すのは現実的ではないのです。

しかも、小児科とはいってもそれぞれ特徴は大きく異なります。

  • 小児科だけを受け付ける調剤薬局
  • 小児科に加え、内科やアレルギー科もある薬局
  • 管理薬剤師を募集している小児科メインの薬局
  • 午前だけパート勤務する小児科門前薬局

もちろん他にも薬局ごとに種類が異なります。これに「家のからの近さ」「薬剤師の在籍人数」「1日の処方せん枚数」「年収」などの条件も加わってきます。

そうしたことを総合的に検討するため、たくさんの求人を保有している転職サイトに登録することで小児科門前の薬局求人を見つけるようにしましょう。

一つだけの転職サイトに限らず、2~3社以上の転職エージェントを利用すれば、より多くの選択肢の中から求人を選ぶことができます。転職サイトによって保有求人は違いますし、おすすめされる募集も異なります。そこで複数の転職サイトを活用しながら、「優れた提案をしてくれる転職エージェントを残す」のが失敗しないコツです。

小児科医療に携わる薬剤師として活躍する

薬剤師として活躍できる科目の中でも、特に大変になりやすいのが小児科です。ピッキング作業をすればいいわけではなく、粉薬や水剤など面倒な調剤が多くなるからです。こうした処方せんでは、「薬を集めればいいだけの処方せん」の倍以上の時間がかかります。

それでは、処方せんの単価がそれだけ優れているかというと、必ずしもそういうわけではありません。処方日数が少ないので薬剤費は高くないですし、容器代などその他の費用が余計にかかるので利益が出にくくなっています。

そのため忙しさのわりには儲かりにくく、提示される年収額は他の科目で働く薬剤師と同程度です。

こうした理由から、楽して仕事をしたい人にとって小児科は向いていません。ただ、やる気をもって医療に取り組みたいと考えている薬剤師にとっては向いているといえます。

もちろん小児科メインの薬局とはいっても、忙しさや働きやすさは調剤薬局・ドラッグストアごとにバラバラです。そうした中から、あなたにとって最適の求人を選んで転職を実現するようにしましょう。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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