薬剤師の仕事は非常に幅広く、単に薬局や病院で調剤をするだけではありません。場合によっては、スポーツに関わる薬剤師として活躍している人もいます。
当然ながら、薬剤師の中にはスポーツに興味をもっている人がいます。その人がずっと活動し続けてきたスポーツがあるため、その分野で貢献するために薬剤師資格を活かしながらもスポーツ分野に携わるようになるのです。
このとき、薬剤師として一般的な資格としてスポーツファーマシストがあります。これについては、求人があるのでしょうか。
また、スポーツトレーナーなどより専門性の高い仕事へ転職することは可能なのでしょうか。ここでは、スポーツに関わる薬剤師としてどのように活躍すればいいのかについて解説していきます。
もくじ
アンチドーピングの仕事・役割は非常に大きい
スポーツ選手にとってドーピングの問題は非常に大きいです。ドーピングに引っかかると何年も大会に出場することができず、選手生命に関わります。実際、ドーピングによって大きく報道され、出場資格をはく奪される選手は毎年のように出ています。
わざとでなかったとしても、引っかかると選手生命が絶たれてしまうほどの大きな衝撃をもたらすのがドーピングになります。
出展:朝日新聞
多くの場合、意図的なドーピングではなく無意識に禁止薬物を摂取してしまう「うっかりドーピング」です。これが医療用医薬品や市販薬(一般用医薬品)であれば分かりやすいですが、サプリメントに禁止薬物の成分が含まれていて、うっかり摂取してしまう選手も多いです。
そうした選手に対して指導し、アンチドーピングをなくすのはスポーツファーマシストの役割です。そのため、スポーツファーマシストとして活躍するときの意義は大きいといえます。
資格だけのスポーツファーマシストは多い
認定資格の中でも、非常に多くの薬剤師に知られている資格がスポーツファーマシストです。アンチドーピングに関わる資格であり、認知度が高いことからたくさんの薬剤師が受講して資格を保有しています。
ただ、スポーツファーマシストの中で実際に活動している人はほとんどいません。有名な資格であり、スポーツと身近なので何となく取得を考える薬剤師が大半なのです。そのため、資格はあっても実際のところアンチドーピングについてあまりよく理解していない人は多いです。
当然ながら、資格だけを保有している状態だけでは活躍することはできません。薬剤師免許を保有していても、調剤や服薬指導ができないのと同じです。
そのため、実際のところアンチドーピングに関わるスポーツファーマシストとして活躍できる人は非常に少ないのが現状です。資格保有者は多くても、活動人数は非常に限られるのでスポーツ関係の薬剤師として本気で活躍することを考えた場合、意外と簡単にスポーツファーマシストの上層部に食い込めるようになります。
スポーツファーマシストの求人は存在するのか
ただ、気になるものとして「そもそもスポーツファーマシストの薬剤師として有利な条件で転職できるのか」というものがあります。これについてはどうなのでしょうか。
調剤薬局の中では、スポーツファーマシストの取得を推奨している薬局があります。しかし、実際のところ単に資格取得を促しているだけであり、特に優遇されないケースが多いです。また、スポーツファーマシストを保有していたとしても、資格自体が転職で有利になることはありません。
私も薬剤師として転職活動をしたとき、薬キャリAGENTやマイナビ薬剤師などの担当者にスポーツファーマシスト資格が転職に有利になるかどうか聞きましたが、「参考程度ですね」と言われました。要は、特に転職で有利になることはないのです。
これは、単純にアンチドーピングだけに特化した仕事が存在しないためです。オリンピックやスポーツ大会などで重要なドーピングですが、こうした検査員や相談員として活躍するにしてもボランティアが基本です。そのため、スポーツファーマシストの資格自体は優遇されないと考えて問題ありません。
・スポーツに関わる仕事なら稀に存在する
ただ、スポーツに関わる薬剤師の仕事であれば存在します。スポーツファーマシストの認定資格自体は有利にならなくても、スポーツ関係の薬剤師として活躍したいのであれば、どのような職場で活躍するのが適切なのか考えなければいけません。
このとき、考えられるものとして以下のような職種が存在します。
- スポーツ整形の専門病院
- スポーツ整形の門前薬局
- スポーツトレーナー
それぞれについて解説していきます。
スポーツ整形外科の病院薬剤師の中途採用求人へ応募する
一般的な整形外科ではなく、スポーツ関係に特化した病院が存在します。こうした病院の薬剤師であれば、スポーツ選手とばかり関わるようになります。
東京や大阪にスポーツ整形外科の病院があるのは理解できますが、こうしたスポーツ専門の病院は都市部だけではありません。地方にも存在するため、そうした病院へ就職することでスポーツ専門の薬剤師として活躍することは可能です。
例えば、以下は長野の病院から出されたスポーツ整形外科病院の中途採用求人です。
長野であることから分かる通り、ウィンタースポーツが盛んです。そうした選手が病院を受診するため、トップ選手を含めて関われるようになります。
求人票の詳細でも、多くのプロスポーツ選手の治療に携わっていることが記載されています。それどころか、病院にはスポーツ選手が医療スタッフとして勤務をしているため、選手として活躍しながら働くことを考えている薬剤師であっても広く受け入れてくれます。実際の記載は以下の通りです。
こうした病院であれば、薬剤師として病棟で活躍しながらも医薬品やアンチドーピングの知識を活かしながら活躍できるようになります。
東京や大阪に限らずこうしたスポーツ整形外科の専門病院は存在します。総合病院にあるスポーツ整形に限らず、スポーツ整形に関わる専門病院もあるので、こうした病院の薬剤師として仕事をすることを考えても問題ありません。
調剤薬局やドラッグストアでもスポーツに関われる
場合によっては、薬局で働くことを考えても大丈夫です。調剤薬局やドラッグストアとはいっても、一般的な科目を取り扱う薬局ではありません。スポーツ整形外科を専門にしている病院やクリニックの門前薬局で働くのです。
病院薬剤師に比べると、どうしても薬局薬剤師ではスポーツに関われる機会は少なくなるかもしれません。処方せんい基づいて薬を調剤するのがメインの仕事内容になってしまうからです。
ただ、スポーツ整形外科を受診する人はスポーツ選手がメインです。当然、その中にはトップアスリートもいます。
そうした人が薬を服用することになるため、アンチドーピングに引っかからないように対処することは非常に重要です。また、投薬時はサプリメントのことまで聞くことによってドーピングの問題が起こらないように調査し、選手として活躍できるように対策する仕事内容になります。
スポーツ整形外科の病院薬剤師求人が存在するということは、当然ながらそれらの処方せんをメインで受け付ける調剤薬局も存在します。例えば、以下はスポーツ整形外科の専門病院の門前薬局から出された求人です。
あらゆる薬局の中でも、こうした調剤薬局であればスポーツ選手に関われるようになります。また、リハビリについても詳しくなれます。当然、単に患者さんをさばくだけの仕事ではありません。例えばプロスポーツ選手が相手であれば、ドーピングに引っかからないようにより詳しくヒアリングをしての投薬になります。
スポーツファーマシストとしてアンチドーピングの知識が活きてくる機会は多いです。単なる飲み合わせではなく、アンチドーピングの観点での疑義紹介も増えるのがこうした薬局の薬剤師です。
イベント参加がメインの場合は融通の利く薬局が最適
なお、こうした薬局薬剤師としての活動ではなく、中には「スポーツファーマシストとしてアンチドーピングのイベントへ積極的に参加し、啓もう活動をしていきたい」と考える人もいます。この場合、柔軟な働き方に対応できる調剤薬局やドラッグストアへ勤務するのが適切です。
一般的にスポーツファーマシストとして活動するイベントは平日に開かれることが多いです。また、2~3ヵ月前になって急にイベントが開催決定されることもあるため、そうしたときに参加できるようにすぐ対応しなければいけません。こうなると、一般的な調剤薬局で正社員のフルタイムであるとイベント参加が現実的に無理です。
そのため、薬剤師としての働き方を考えなければいけません。具体的には、パート・アルバイトや派遣として柔軟な勤務が可能な調剤薬局で働くことを考えるのです。または、正社員であったとしても「スポーツファーマシストとして積極的に関われる薬局」での勤務をします。
例えば、以下のようになります。
- フルタイム勤務でも問題ないが、イベント時は優先して休める
- ヘルプ勤務要因として働きながらも、それ以外は薬局本社でスポーツファーマシストの企画をする
数は少ないですが、スポーツファーマシストのイベント開催に積極的な薬局は存在します。そうした薬局を探せば、たとえ正社員であってもスポーツやドーピングに関われる薬剤師として活躍できるようになります。
なお、特定の薬局で勤務するアルバイトではなく、派遣薬剤師も意外とおすすめです。私の知り合いにも、スポーツファーマシストとしてイベントへ積極的に参加している若い女性薬剤師がいるのですが、彼女は派遣勤務として好きな時間だけ高時給で働き、空いた時間はアンチドーピングの活動を精力的にしています。
スポーツトレーナーとしてプロスポーツ選手と関わるのは可能?
なお、薬剤師として活躍するだけでなく、インストラクターとしてスポーツトレーナーで働くことを考える人もいます。一般的な薬剤師のフィールドを外れて、さらに専門的にスポーツ選手と関わるようにするのです。
これについては、残念ながら実現させることはできません。もちろん、ジムやスポーツ施設などで一般的なスポーツインストラクターの求人は出されます。世の中にはスポーツ施設がいくらでもあるため、当然ながら転職自体は可能です。
薬剤師の資格をまったく活かさず、年収は大幅に下がっても問題ないのでスポーツトレーナーとしての道を歩みたいのであれば問題ありません。ただ、そうではなく薬剤師の資格を活かしながらも転職先を探したい場合、スポーツインストラクターは無理だと考えましょう。
どうしても薬剤師だと薬局や病院で働くことが基本になります。一般企業にしても、製薬会社や化粧品メーカーなど薬品成分が関わる分野となります。ここから外れてしまうと、薬剤師免許を優遇してくれる職場はないと考えましょう。
転職サイトを利用してスポーツ薬剤師になる
基本的には、薬剤師免許を活かしてのスポーツトレーナーは無理です。ただ、病院や薬局などの医療機関であればスポーツファーマシストの認定資格を活用しながら、ドーピングの知識を活かして活動できます。
場合によってはプロスポーツチームと契約して、選手に対して薬やサプリメントの相談・指導をすることもあります。ただ、その仕事をメインですることは現実的ではなく、病院や薬局などに勤務しながらスポーツ選手と関わっていくのが最も一般的な薬剤師になります。
実際、スポーツファーマシストの活動に積極的な薬局は存在します。週3日はいろんな薬局のヘルプで勤務しつつも、残った日はスポーツファーマシストの活動イベントの企画運営をさせてくれる正社員の薬剤師求人は現実にあります。
大手チェーン薬局では無理ですが、スポーツに熱心な中小薬局の社長であれば、あなたをスポーツ薬剤師として受け入れてくれるのです。
しかし、そうした理解のある薬局はほぼ存在しません。当然ながら、スポーツ整形の専門病院についても数が少ないです。そのため、自分自身の力だけで「アンチドーピングに関われる薬剤師として、真の力を発揮できる職場」を探すのは不可能に近いです。
そこで、スポーツ専門の薬剤師を目指す人は全員が転職サイトを活用します。ただ、たとえ転職サイトを利用したとしても優れた求人を見つけられるかどうかは分かりません。実際、以下は5万件以上の求人数を誇る転職サイトを利用し、「スポーツ」と検索したときの結果です。
このように、日本全国で16件です。ここからも、スポーツに関われる薬局や病院は圧倒的な希少求人であることが分かります。
そのため、必ず2~3社以上の転職エージェントを並行して利用するようにしましょう。それだけで選択できる求人数は多くなりますし、優れた転職サイトの担当者であればスポーツに関われる募集が存在するかどうかゼロから求人を発掘してくれます。
一つだけの転職サイト利用では、スポーツに関われる薬剤師として転職できる可能性は非常に低いです。必ず複数の転職エージェントを利用するようにしましょう。
貢献するスポーツは決めるべき
なお、このときは事前に貢献するスポーツを何にするのか決めるようにしましょう。スポーツとはいっても、全種類を対象する薬剤師ではなく、特定分野を決めたうえで活動していくのが基本です。例えば、以下のようにさまざまな種類のスポーツがあります。
- 野球
- サッカー
- 水泳
- バスケットボール
- テニス
これ以外にも、スポーツは数多くあります。私の知り合いでも、水泳連盟に所属してスポーツファーマシストの活動を精力的に頑張っている女性薬剤師がいます。彼女の場合、それまで水泳でずっと活動してきたことから水泳に絞っているのです。
活動するスポーツについては、それまであなたが関わってきたスポーツに限定するのが鉄則です。そのため決めやすいはずです。
例えば私の場合、中学校から大学までずっと部活でバドミントンをしていました。社会人になった今でも続けています。
スポーツに関わる薬剤師としての転職を考えている場合、まずはどの分野のスポーツに貢献するのか考えるようにしましょう。スポーツファーマシストの認定資格に合格し、専門知識を磨くだけでなく、特定のスポーツ連盟に所属することで活動するのが基本です。
数は少ないながらも、既にスポーツファーマシストとして活躍している人は存在します。ただ、特定のスポーツに特化して活動している薬剤師(スポーツファーマシスト)になると、あなただけしかおらず希少な存在になることは多いです。そのため、一つのスポーツ分野に絞ったうえで活動することで特定のスポーツ連盟から認めてもらうようにしましょう。
これに加えて、スポーツ薬剤師として活動しやすい薬局や病院の中途採用求人で採用されるようになれば、スポーツに貢献できる薬剤師の幅が広がるようになります。
薬剤師としてスポーツに貢献する
多くの人が資格取得しているスポーツファーマシストですが、実際のところ認定資格を持っているだけであり、活用していない人が大多数です。そうした中、アンチドーピングの活動を精力的にすればすぐに認めてもらえるようになります。
注意点として、スポーツファーマシストの資格自体が転職時に評価されることはありません。ただ、スポーツに関わる薬剤師を考えているのであれば、アンチドーピングの知識は必須になります。
これらの知識を普通の薬局や病院で活かすのは無理です。ただ、スポーツ整形に関わる薬局や病院であったり、スポーツファーマシストの活動に積極的な調剤薬局だったりすれば、スポーツイベントへの参画を含めてドーピング知識を活かせるようになります。
スポーツトレーナー(インストラクター)での薬剤師転職は無理ですが、医療関係であればドーピング分野で問題なくスポーツに関われるのです。
しかし、こうした求人はほぼ出回っていないからこそ、2~3社以上の転職サイトは必ず利用しましょう。このときは求人数が非常に多かったり、ゼロから求人を発掘できたりする転職エージェントを選ぶといいです。特におすすめの転職サイトは以下です。
・ファーマキャリア
特殊な求人の発掘に大きな強みを発揮する転職サイトとしてファーマキャリアがあります。最大の特徴は、自社で求人を保有していないことにあります。そうではなく、薬剤師に要望をヒアリングした後に求人をゼロから構築する形式の転職エージェントです。
世の中に存在しない求人でも対応できるのは、既存の求人ではなく新たに担当者が薬局や病院へ電話して求人を作ってくれるからになります。そのため、スポーツ薬剤師という非常に難しい案件であっても問題なく対応できる転職サイトになります。
・お仕事ラボ
転職サイトの中でも、お仕事ラボについても薬剤師に合わせた求人を発掘し、既存求人では不可能な転職を実現させることができます。
また、事前に担当者が求人先と会うことで詳細や経営状況を確認することもしてくれます。さらに薬局や病院とのつながりが非常に強いため、どの会社であれば薬剤師としてスポーツに関われるのか内情を熟知しているのがお仕事ラボです。
・薬キャリAGENT
数ある転職サイトの中でトップクラスの求人数を誇る転職サイトが薬キャリAGENTです。単純に求人の数が多いため、その分だけスポーツ整形に関われる薬局や病院を探せるようになります。
スポーツ関係の医療求人は少ないからこそ、できるだけ多くの求人を保有する転職エージェントの利用を第一に考えなければいけません。そうしたとき、第一候補に挙がるのが薬キャリAGENTです。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
注目の人気記事
・私が経験した転職サイト体験談
実際に私は転職サイトを活用して調剤薬局へ就職したことがあります。私が行った転職体験の様子や注意点なども含め、ありのままに公開したいと思います。
・転職サイトを活用し、転職での失敗を防ぐ
転職を成功させるためには、転職サイト(紹介会社)をフル活用しなければいけません。そこで、具体的にどのように利用すればいいのかを解説します。
・派遣登録し、高時給で働く
派遣薬剤師は給料が正社員よりも高く、時給3,000円以上も普通です。さらには3ヵ月や半年だけでなく、1日などスポット派遣も可能です。「自由に働きたい」「多くの職場を経験したい」「今月、もう少し稼ぎたい」などのときにお勧めです。
インタビュー記事:薬剤師の転職サイト
・ファーマキャリア
薬剤師求人の中でも、「どこにも載っていない難しい案件」を探すことに特化した、オーダーメイド求人の発掘を行っているファーマキャリアさまへ取材しました。