薬剤師の中でも、新卒就職や中途採用での転職を含めて国立病院を目指す人は多いです。大病院は人気の職場ですが、特に国立病院はどれも規模が大きいために多くの薬剤師が目指すのです。

国立病院は独立行政法人となっており、それぞれ独立して運営されています。このとき、独自に採用募集に申し込むことで試験を受けなければいけません。

ただ、気になるのは実際に働くときの評判や口コミです。また、年収などの勤務条件がどのようになっているのかについて事前に知っておくことも重要です。就職前に求人の内容を理解しておくことで、優れた転職を実現できます。

そこで、「国立病院機構の薬剤師を目指す人が事前に理解するべき内容」について解説していきます。

独立行政法人で公務員試験はないが、小論文は存在する

就職先を考えるとき、最初に認識しなければいけない点として「どのような形態の組織になっているのか」というものがあげられます。

国立病院機構については「独立行政法人」となっています。かつては国の機関であったものの、独立して運営されるようになった法人(会社組織)となります。そのため、国立病院の薬剤師として働いたとしても公務員ではありません。

公務員でない以上、保健所の薬剤師として就職するときのような公務員試験は課せられません。公務員試験では、一般教養試験など薬剤師国家試験とは別に勉強し、対策を練る必要があります。そのために非常に大変ですが、独立行政法人への就職だとこうした公務員試験は存在しないのです。

例えば、以下は中四国グループの国立病院機構に掲載されている薬剤師の選考過程です。

一次選考として履歴書などの書類選考があり、これについてはどの病院でも同じです。その後、二次選考として面接や小論文があります。試験内容に小論文があるので面倒ではあるものの、一般的な公務員試験は存在しません。

・公務員ではないので、副業しても問題ない

また、国立病院機構の職員は公務員でない以上、副業をしても問題ありません。病院の薬剤師のほとんどが土日や平日を含め休みの日に調剤薬局でバイトをします。これについては、国立病院の薬剤師も許されているのです。これは、公務員でない薬剤師の特権だといえます。

独立行政法人なので半分公務員の立場となります。この場合、面倒な試験による選考が存在しなかったり、副業が可能だったりなどのメリットがあります。

ブロックごとの採用で、転勤・異動ありの国立病院機構

それでは、実際に国立病院機構の採用へ応募するときはどのように行動するかというと、それぞれの地域グループの採用に申し込むことになります。

国立病院機構はそれぞれ、地域ごとに6つのブロックに分けられています。以下の通りです。

  • 北海道東北グループ
  • 関東信越グループ
  • 東海北陸グループ
  • 近畿グループ
  • 中国四国グループ
  • 九州グループ

例えば関東での就職を考えている場合、関東信越グループの国立病院機構の採用に申し込む必要があります。こうしたグループに属する病院の中から、どこかの国立病院の職員として働くことになるのです。

なお、それぞれのブロックごとでの採用になることから、薬剤師として一つの病院に採用されたとしても転勤・異動があります。このとき、それぞれのブロックは非常に広い範囲になっているため、転勤のときに都道府県が異なる地域に配属されるのは普通です。

例えば、以下は北海道東北グループに存在する国立病院の一覧です。

このように、非常に広い範囲に病院が点在していることが分かります。どの病院に配属されるのかは不明であり、基本的に勤務地は選べません。また、前述の通り転勤がそれなりに存在すると考えましょう。住む地域を選べないのが国立病院機構の薬剤師になります。

そのため事前に病院見学をしたり、説明会に参加したりしてもいいですが、基本的に当てになりません。見学した病院とは異なる病院で勤務する可能性が非常に高いからです。

場合によっては最初の勤務地を選べることもあります。ただ、常勤として就職するときは異動により、数年後に遠く離れた地で勤務するようになります。評判や口コミを確認しても、国立病院で転勤なしを実現することはできません。

多くの人にとって転勤はデメリットです。ただ、勉強のために国立病院で働こうと考える薬剤師がほとんどです。そのため、「多くの病院を経験してスキルアップしたい」と考えている薬剤師にとってはメリットだといえます。

中途採用での募集の採用時期は決められている

このときの採用時期については、国立病院だと一律に決められています。事前に採用選考を行い、4月頭になって正式入社となるケースがほとんどです。新卒就職であれば関係ないですが、中途でのキャリア採用だとこれは大きなデメリットです。

民間企業であれば、採用時期は柔軟です。どの時期でも問題なく受け入れてくれるため、中途で応募するにしても例えば「10月に就職する」などは普通です。いつ転職活動をしたとしても、求人募集へ応募して内定をもらえばすぐにでも就職できます。

ただ、独立行政法人は民間企業とは違って半分公務員です。そのため、キャリア採用されるにしても多くは4月採用となると考えましょう。このとき、ほとんどの募集要項では以下のような選考過程になります。

  • 5月までに応募
  • 6~7月:面接・小論文試験
  • 7~8月:内々定
  • 翌年4月:正式入社

このように、1年と非常に長い時間をかけて活動しなければいけません。一般的に転職では1ヵ月以内に内定をもらえるのが普通になるものの、国立病院機構では半公務員なので長期間に渡る面倒な順序が存在するのです。

倍率は高く、それなりに難易度がある

なお、新卒就職であればいろんな病院の採用試験を受け、内定をもらった病院の中から選ぶのが基本になります。

特に国立病院は公的病院の中でも最大規模であり、非常に多くの人が応募します。そのために全員が内定をもらえるわけではなく、倍率は高くそれなりに難易度があります。そこで、病院薬剤師を目指す薬学生の多くが国立病院機構以外の病院の採用試験も受けます。

そのため、中途採用の薬剤師が大病院を目指すにしても国立病院機構一つだけに絞るのは非常に危険です。転職するにしても倍率がそれなりに高く、さらには大病院だと新卒の若い人のほうが優遇されます。それだけ年齢が若く、夜勤を含め大変な環境にも耐えることができるからです。

さらには実際の就職までの道のりも長く、採用時期も決まっているケースが多いです。そのため、転職時は新卒学生と同じようにいくつもの病院を並行して受けることを考えるのが適切です。

病院で存在する年齢制限

ちなみに、病院薬剤師への就職を考える場合は年齢制限を考慮しなければいけません。中小病院や専門病院(精神科病院)を除き、大病院だとほぼ年齢制限があるからです。

病院薬剤師とはいっても、年齢が高いからといって特にやる仕事が変わるわけではありません。行う業務内容はほぼ同じです。しかし年齢が高いと夜勤を頼みにくいですし、非常に扱いづらくなります。これが、大病院で新卒薬剤師が優遇される理由となります。

これは、国立病院機構でも同様です。表向きでは、国立病院機構では年齢制限がないことになっています。ただ、非常に多くの薬剤師(卒業見込みの薬学生を含む)が応募し、そうした人たちの中から一律採用するため、年齢の高い薬剤師をわざわざ採用する理由がありません。

そのため新卒なら特に問題ないですが、高年齢者の中途採用だと選考で落とされると考えましょう。一般的には、「調剤未経験であれば30歳まで」「薬局での調剤経験者であれば35歳まで」が応募できる限度になります。

もちろん、病院ブロックごとに採用基準は異なります。ただ、中途での転職ではこのような年齢制限についても理解するようにしましょう。

離職率はそれなりに高い国立病院

それでは、離職率はどのようになっているのでしょうか。病院の中では、どうしても離職率が高くなるのが国立病院です。

これは、国立病院機構の待遇が悪いからではありません。勉強という意味では若いころから任せてくれますし、研修制度もあり転勤によっていろんな病院を経験することができます。スキルアップという意味では、かなり優れた職場だといえます。

ただ、国立病院の場合は以下のような問題点があります。

  • 激務のわりに給料が低い
  • 転勤・異動で勤務地が変わる

大病院で働く薬剤師の場合、病院から薬局へ転職する人は非常に多いです。特に妊娠・出産した女性であると、高確率で病院から薬局を目指します。これは、病院だとどうしても激務になりやすいからです。薬局のほうが時短勤務やパート労働を含め、勤務条件の柔軟性は圧倒的に優れています。

また、給料が非常に低くなりやすいので、男性薬剤師であっても結婚後は調剤薬局やドラッグストアを目指す人が多くなります。しかし、これら「激務のわりに収入が少ない」のはあらゆる大病院で共通しています。

ただ他の病院に比べて、国立病院で離職率が高くなっている原因には転勤の問題があります。前述の通り、地域ブロックごとの採用になるので勤務地は不明であり、異動のたびに都道府県をまたいで勤務地を変えるようになります。また、同じ県であっても離れた場所に病院があるので引越しは必須です。

いろんな地域への転勤がある職場だと、薬剤師が転職を決意するとき、いつも転職理由の上位を占めるのが「転勤なしを実現したい」です。国立病院機構だとこれが無理なので、いろんな病院を経験できて勉強できるという反面、転勤なしを実現できないので離職率が高めになっているのです。

年収・給料などの収入面は一律

それでは、国立病院機構の薬剤師で勤務するときの収入はどのようになっているのでしょうか。これについては、半公務員なので全員が一律だと考えるようにしましょう。既に給与体系は決まっており、規定に従って年収が決定されます。

基本的には国家公務員としての給料が反映されるようになると考えましょう。以下は国立病院機構の薬剤師に関する募集要項ですが、どの病院でも初任給(基本給)は20万7,800円となっています。

ただ、これに通勤手当や夜勤手当などが加わるようになります。そうした手当が加算されて給料が支払われますが、大病院なので待遇は非常に悪いと考えるようにしましょう。収入面で期待できるものはなく、あくまでも勉強のために多くの薬剤師が国立病院を目指します。

また準公務員なので昇給は毎年あります。このときは年4%ほど給料が上がり、基本給20万7,800円が基準だと月8,000円ほどの昇給となります。額は非常に少ないですが、毎年これくらいの昇給があります。

なお、実際のところどれくらいの平均年収なのかというと、これについては人事院が発表しているデータを見れば分かります。国家公務員に準ずる給料になるため、薬剤師で働いている国家公務員がどのような平均年収になっているのか確認できるのです。

このとき、人事院は薬剤師の平均月収を以下のように発表しています。

このうち、薬剤師が該当するのは「医療職俸給表(二)」になります。ここには、俸給(基本給)の平均が30万9,198円と記されています。ただ、各種手当が加わるので月収35万4,099円が平均的な給料になっています。

これにボーナスが加わるようになりますが、賞与まで加えると平均年収は約555万円になります。平均年齢46.1歳で年収555万円ほどなので、調剤薬局で働く薬剤師に比べると圧倒的に収入は低くなります。また、他の病院と比べても給料が優れているわけではありません。

ボーナス・賞与は約4.2か月分

なお、ボーナスはどれくらい支給されるのかというと、基本は4.2か月分になります。4.2か月分を夏と冬に分けて支給されると考えましょう。

例えば基本給が25万円だった場合、一年でのボーナス金額は105万円となります。

  • 25万円(基本給) × 4.2ヵ月 = 年間105万円

準公務員であるため、給与規定は既に決まっていて年収相場はわりと明確です。目標設定の達成度合いによって多少は賞与の額が異なることはあるものの、全員が一律の給料となるのが基本です。

特に薬剤師として活躍したからといって給与面で優遇されることはありません。そのため、給料を考慮してのモチベーションは期待できないと考えましょう。

退職金についても規定がある

なお、給料と同様に退職金についても国立病院機構では明確に決められています。このとき退職金の金額は普通です。例えば、基本給30万円で35年務めた場合の退職金は1431万円ほどになります(独立行政法人国立病院機構 職員退職手当規程より)。

参考までに、定年退職ではなく自己都合退職の場合だと退職金の金額は少なくなります。これは国立病院に限らず、民間企業を含めて共通だと考えましょう。

例えば勤続10年の場合、国立病院機構だと「自己都合では月給の5.22ヵ月分が退職金」と決められています。例えば基本給25万円の場合、退職金は130.5万円です。

  • 25万円(基本給) × 5.22ヵ月 = 130.5万円

一方で定年退職では勤続10年だと8.7ヵ月分の支給になります。自己都合での退職では、どうしても退職金が減ってしまうことは事前に理解しましょう。

評判・口コミを考慮して採用募集に申し込む

大病院の求人へ申し込み、働きたいと考える薬剤師は多いです。そうしたとき、非常に大きな病院グループとして国立病院機構が知られています。独立行政法人の国立病院で薬剤師を目指すのです。

このとき新卒での就職であれば、特に注意するべきことはありません。ただ、中途採用の場合は「採用募集の時期や日程は決められている」「若い薬剤師のほうが内定をもらいやすい」などの現実は把握しておくといいです。

また、いろんな地域への異動があるので大病院の中ではどうしても離職率が高くなりやすいです。独身・単身なら問題ないですが、将来も同じように勤務し続ける人は少なくなってしまうのです。

こうした評判・口コミがあることを理解して求人へ応募するようにしましょう。勉強できることは確かですが、国立病院機構だけを狙い撃ちして申し込む人はいませんし、転職サイトなどを利用していくつもの病院を見学するのは必須です。

これら一般的な就職・転職活動を進めることで、優れた国立病院の採用を見つけられるようになります。事前に国立病院の内容を確認したうえで申し込むようにしましょう。


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