薬剤師は転職が活発な業界だといわれています。資格職であるため、比較的簡単に他の職場へ転職することができるからです。もちろん新しい職場が総合病院や一般企業の場合だと転職は難しくなりますが、調剤薬局やドラッグストアであるとわりとすぐに薬剤師として受け入れてくれます。

このとき、一般的に薬剤師の平均勤続年数や離職率はどのようになっているのでしょうか。

他の薬剤師がどれくらい同じ薬局や病院で勤務し、離職していくのかを知るのは一つの目安になります。一般的な勤続年数以上の勤務があれば早期退職には当たりません。

そこで、他の薬剤師ではどれくらいの勤続年数があり、離職率はどれくらいなのかについて統計データをもとにして確認していきます。ここから、どのタイミングでの転職が最適なのか理解できるようになります。

薬剤師の1年での離職率は10%ほど

新卒の社会人として入社後、3年以内に離職する人の割合は一般的に約3割といわれています。3年での離職率が約30%(1年あたり約10%)であることから、多くの人が転職していることが分かります。

これに比べて、薬剤師はどうなのでしょうか。薬剤師の場合、全体でみると1年間の離職率は約10%です。そのため、ものすごく離職率が高いわけではありません。薬剤師の離職率は新卒社会人と同じ程度だと考えればいいです。

より詳しく見ると、1年での離職率は以下のようになっています。

  • 管理薬剤師:離職率9%
  • 勤務薬剤師:離職率9%
  • パート薬剤師:離職率21%
  • 全体(薬剤師):離職率10%

出典:薬局経営者・経営幹部アンケート・MMPRを一部改変

転職は年齢が若いほど有利なので、新卒のように若いほど転職市場が活発になり、年齢を重ねると転職は少なくなっていきます。ただ、薬剤師の場合は年齢が高めでも調剤薬局やドラッグストアへ転職することができ、薬剤師全体で転職する人が多いので「薬剤師は転職が活発」と捉えられているだけだといえます。

店舗規模が大きいと離職率が高くなる

それでは、店舗ごとの離職率についてはどうなっているのでしょうか。これについては、薬局の規模が小さくなるほど離職率は低くなり、大手チェーン薬局になるほど離職率が高くなる傾向になります。

実際のデータは以下の通りです。

  • 5店舗以下:離職率6%
  • 6~10店舗:離職率14%
  • 11~20店舗:離職率11%
  • 21~30店舗:離職率8%
  • 31店舗以上:離職率16%
  • 全体:離職率10%

出典:薬局経営者・経営幹部アンケート・MMPRを一部改変

このように5店舗以下の薬局だと1年での離職率は6%ほどであるものの、これが31店舗以上のチェーン薬局になると1年の離職率が16%にものぼります。

薬剤師の場合、大手チェーン薬局で規模が大きくなるほど待遇が悪くなります。収入額は低くなり、転勤命令も普通に存在します。そのため薬剤師は大手チェーン薬局を避ける傾向にありますが、こうしたデータからもその傾向を読み取れます。

3年以内に辞める人は全体の32%

また、「3年以上の勤務年数のある薬剤師がどれくらいいるのか」については、以下のような調査結果となっています。

  • 5店舗以下:70%(3年以内に辞める人は30%)
  • 6~10店舗:67%(3年以内に辞める人は33%)
  • 11~20店舗:73%(3年以内に辞める人は27%)
  • 21~30店舗:76%(3年以内に辞める人は24%)
  • 31店舗以上:58%(3年以内に辞める人は42%)
  • 全体:68%(3年以内に辞める人は32%)

出典:薬局経営者・経営幹部アンケート・MMPRを一部改変

大手チェーン薬局の場合、3年以上の勤続年数のある人は全体の58%です。つまり、3年以内に会社を辞める薬剤師が42%もいることを示しています。これも、大手チェーン薬局になるほど平均勤続年数が短く、離職率が高くなっていることが分かります。

参考までに、上場企業だと平均勤続年数が公表されるようになりますが、上場企業の平均勤続年数(2017年)は以下のようになっています。

  • 日本調剤:5.8年
  • アイン薬局:4.6年
  • 総合メディカル:7.0年
  • クオール:5.6年

このように、平均勤続年数は4~5年ほどです。大手調剤薬局チェーンだと3年以内に辞める人の割合が42%であるため、これらは妥当な数字だといえます。

参考までに、薬剤師の勤続平均年数は6.7年です(厚生労働省:2016年、実労働時間数と月間給与額より)。そのため、薬局規模が大きくなると平均勤続年数が2年ほど短くなると考えて問題ありません。

待遇面の不満が離職につながる

それでは、どのような不満がこうした勤続年収の違いを生み出すようになるのでしょうか。

離職率の高い職場は当然ながら理由があります。そのため優れた職場環境を整えた、平均勤続年数の長い職場で働くことによって、薬剤師として活躍しなければいけません。

このとき、以下のような理由で退職する人が多いです。

  • 年収が低い
  • 残業や勤務地など、勤務形態に問題がある
  • 人間関係が悪い
  • 昇進できない
  • ライフステージが変化した

それぞれの理由について確認していきます。

年収・給料の不満で転職する人は多い

病院薬剤師に限らず、大手調剤薬局チェーンは薬剤師の収入が低いことで知られています。薬局薬剤師だからとって高い給料になるわけではないのです。病院薬剤師の場合、年収400万円未満が普通です。ただ、これは大手調剤薬局チェーンの薬剤師でも同様です。大手チェーン薬局の場合、最初は年収400万円を切ります。

例えば、以下は大手チェーン薬局での求人募集です。

東京や大阪などの都市部で就職するにしても、中小薬局だと未経験でも年収450万円以上です。ただ、そうした収入に比べると大幅に低くなるのが複数店舗を展開するチェーン薬局なのです。

中小薬局に比べて、大手になると平均勤続年数が短くなって離職率が高くなるのは給料の問題もあります。薬剤師なのに低い年収で我慢することになるため、中小薬局へ転職するだけで大幅な年収アップを期待できます。

例えば、以下は新規オープン店舗という理由付きの薬局ですが、横浜(神奈川)の調剤薬局で最初から年収520万円です。

管理薬剤師でなくても、中小薬局であればこうした年収を提示してくれる職場が存在します。そのため、薬剤師なのに低い給料で我慢しなければいけない職場であるほど離職率が高くなっています。

残業や勤務地など、勤務形態の不満は多い

また、単純に薬局や病院などで働くときの勤務形態に対して不満をもつ人も多いです。病院薬剤師だとサービス残業が多くなることは知られていますが、薬局についても大手になるほど薬剤師業務以外の無駄な書類作業が多くなりやすいです。そのため、サービス残業が多くなりやすいです。

そもそも、薬剤師の残業時間は看護師よりも多いです。以下は厚生労働省(2017年賃金構造基本統計調査)で発表された月の残業時間です。

  • 薬剤師:月10時間
  • 医師:月14時間
  • 看護師:月7時間
  • 歯科医師:月1時間

医師ほどではないにしても、このように薬剤師は残業の多い職種であることが分かります。

特に「年収が低い職場にも関わらず、残業時間が多い環境」だと、当然ながら不満が溜まります。大手薬局だとこうした傾向が強いため、平均勤続年数が短くなりやすいのです。

・勤務地の問題も大きい

また、薬剤師では転勤の問題も大きいです。当然ながら働く場所は非常に重要ですが、会社規模の大きい薬局であるほど自分が望む場所で働くことができません。

特に大手だと転勤で知らない土地で働くようになることは頻繁に起こります。転勤によって通勤時間が2時間以上になるのは普通ですし、それまで住んだことのない都道府県で働くようになることもあります。勤務地の面でいえば、大手では自由度が少なくなります。

中小薬局では小さい地域に展開しているため、たとえ勤務地の異動があったとしても10~20分ほど勤務時間が延びる程度のことが多いです。これも、薬局規模が大きくなるほど離職率が高くなる理由の一つです。

人間関係の問題はすべての薬局・病院で共通

また、薬剤師の転職理由の代表的なものに人間関係があります。当然、一緒に働く人との人間関係が悪いと退職したくなります。

ただ、人間関係の問題についてはどの職場でも存在します。これについては、薬局や病院の規模は関係ありません。一緒に働く人たちが問題ないかどうか入職時に判断するようにしましょう。

特に重要なのは、転職活動時の職場見学です。病院ならまだしも、調剤薬局やドラッグストアでは本社で面接になります。このとき本社と実際に働く店舗が離れていることは多いため、面接後は必ず店舗見学を実施しなければいけません。

もちろん、5~10分ほどの店舗見学で職場の実態すべてを把握するのは無理です。ただ、どのような人たちが働いているのか職場見学によって理解できるため、微妙な人が働いている職場を避けやすくなります。

店舗見学では同時に、「この会社で何年働いているのか」をそれぞれ聞いてみてもいいです。正社員薬剤師の平均勤続年数は前述の通り6.7年ほどなので、どれくらいの年数を働いているのか聞けばその会社での働きやすさや人間関係の良さを把握できるようになります。

昇進など、キャリアアップの問題もある

中には、どれだけ頑張って働いたとしても昇進の見込みがないために転職する人もいます。キャリアアップを理由とした転職は男性薬剤師に多いですが、どれだけのポストが存在するのかも離職率に関係しています。

例えば病院薬剤師の場合、上のポストが年齢の近い薬剤師で埋まっており、キャリアアップを期待できないことがあります。薬局にしても、どれだけ頑張っても管理薬剤師止まりの調剤薬局やドラッグストアは多いです。

こうしたとき、エリアマネージャーや将来の幹部候補などで迎えてくれる求人へ応募するのです。

例えば、以下は大阪の調剤薬局から出された中途採用の求人ですが、将来の幹部候補としての募集となっています。

こうした求人は少ないですが、転職サイトを通せば問題なく発見できます。同じ職場でずっと頑張ったとしても成果が評価されないことは多いため、そうしたときに転職を考えるのです。

パートはライフステージの変化での転職が多い

なお、既に示した通りパート・アルバイトでの薬剤師だと離職率が非常に高くなります。1年での離職率が21%ほどなので、3年も経過すれば半分以上の薬剤師がパートを辞めて他の職場へ転職していることが分かります。

パート・アルバイトを選択する人は女性に多いです。正社員ではなくパート勤務を希望する女性の場合、多くは育児のために正社員ではなくパートを選んでいます。「土日休みは必須」「週3日ほど働きたい」「午前だけの勤務がいい」など人によって要望は異なりますが、そうした働き方を希望するのです。

このとき、ライフステージごとに求める働き方が違ってきます。

例えば子供が小さい場合、「早めの時間に帰れる薬局」「子供の急な発熱があっても休みを取れる薬局」などがパート勤務する条件として重要になります。ただ、子供が成長してくれば学費が必要になるため、そのときは「多少は勤務時間が伸びてもいいので、時給の良い職場」が適切になります。

子供の成長は早く、数年ごとにパートのママ薬剤師が求める働き方は変わっていきます。パート薬剤師で離職率が高いのは、こうした理由があります。

新卒でも2~3年以上の経験があれば転職可能

最適な転職のタイミングは人によって異なります。ただ、薬剤師の場合は新卒であっても2~3年以上を同じ職場で働いていれば問題なく転職先に受け入れてもらえます。さすがに1年での離職だと早いですが、2~3年の経験があれば問題ないのです。

実際、大手チェーン薬局であれば3年以内に辞める人が42%になることを説明しました。薬剤師全体だと3年以内の離職は32%ですが、それでも多くの人が3年ほどで転職しているのです。

このとき、転職時は「平均勤続年数の長い優れた会社で働く」ことを考えるのが基本です。

ある程度の給料があり、長時間の残業や無理な転勤などがなく、人間関係が良好であれば会社の平均勤続年数は長くなります。男性であればこうした条件に加えて「昇進時のポストがあるか」が重視されますし、女性パートでは「柔軟な働き方が可能か」も大切になります。

人によって求める要望や条件は変わりますが、転職時は「あなたが望むことを叶えられるかどうか」を考えたうえで求人を選ぶといいです。

転職サイトを利用し、定着率の高い職場を探す

ただ、どのようにして「平均勤続年数が長く、離職率の低い職場」を探せばいいのでしょうか。これを自ら調べるのは無理です。気になる職場へ連絡して、離職率を調査しても具体的な数字を知ることはできません。

そこで、多くの人が転職サイトを活用します。転職エージェントには非常に多くの求人案件が存在し、その中にはブラック薬局があれば、離職率の低い優れた募集も存在します。

離職率が低く、定着率の優れた職場であるほど求人数は少なくなります。定着率の高い会社の求人であるほど、その会社から求人が出されるのは稀になるため、「どの求人募集で勤続年数が長いのか」について、当然ながら転職サイト側は把握しています。

ただ、定着率の高い職場の求人がどの転職エージェントで出されるのかは分かりません。そのため、2~3社以上の転職サイトを活用して優れた薬剤師の中途採用募集を探すのが一般的です。

また転職サイトを利用するとき、面接時は同時に店舗見学の実施を申し出るようにしましょう。職場見学は転職での失敗を避けるコツの一つであるため、面接後に店舗見学したいことを事前に伝えるといいです。

紹介予定派遣でのお試し勤務も可能

なお、定着率が高く平均勤続年数の優れた職場を探す場合、紹介予定派遣という方法を活用しても問題ありません。紹介予定派遣の場合、お試し勤務をすることができます。

紹介予定派遣とは、入社することを前提にして派遣勤務することを指します。ただ派遣契約が切れた後は、入社に対して双方の合意が成立しなければいけないため、職場の状況や人間関係が悪いければ断ることができます。

断ること自体は特に問題なく、その場合は次の紹介予定派遣の求人へ応募すれば問題ありません。こうしたお試し勤務の制度を利用すれば、次の転職では確実に優れた職場へ転職できるようになります。当然、正社員に限らずパート・アルバイトでも紹介予定派遣の案件があります。

例えば、以下は神奈川の薬局から出された紹介予定派遣の求人になります。

転居を伴う異動はなく、定着率の高さを打ち出した求人になっています。年収はそれなりに優れており、勤務時間については普通です。正社員でもパート・アルバイトでも、応募可能な求人となっています。

これに加えて通勤時間や残業の有無、薬局内の人間関係などを確認する必要はありますが、こうした求人でお試し勤務を経験してみるのは問題ありません。薬局に限らず病院の紹介予定派遣もあるため、あらゆる職場でお試し勤務できます。

注意点として、派遣求人を取り扱っている職場でなければ紹介予定派遣の募集はありません。派遣薬剤師として活躍できる転職エージェントには薬キャリAGENTやお仕事ラボが有名ですが、こうした転職サイトを利用する必要があります。

平均勤続年数や離職率を指標に転職活動する

できることなら、同じ職場で長く働き続けるほうがいいです。無駄に転職回数を増やすわけにはいきません。ただ、薬剤師の場合は資格職なので転職しやすく、3年間以内に転職する人の割合は全体で32%にものぼります。

もちろん薬剤師だから特別に離職率が高いわけではなく、この数字は新卒で入社後に転職する一般人の割合とほぼ同じです。ただ、一般的には年齢が高くなるほど転職が難しくなるものの、薬剤師ではどの年齢であっても調剤薬局やドラッグストアで受け入れてくれるため、薬剤師全体で3年離職率が3割ほどになっているのです。

特に大手チェーン薬局であるほど平均勤続年数は低くなりますが、これは年収や勤務地などの問題が存在するためです。

そこで、平均勤続年数が長く離職率の低い求人を選択するようにしましょう。転職サイトであれば「稀に出される薬局」の求人を把握しており、こうした薬局や病院であれば離職率が低くなります。複数の転職サイトを利用すれば、こうした求人を見つけやすくなります。

さらには職場見学を実施するなど、転職での失敗を避けるための手はずを整えるようにしましょう。そうして優れた求人を見つける努力をすれば、定着率の高い職場を発見できるようになります。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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