薬剤師として転職するとき、多くは一般薬剤師として調剤薬局やドラッグストアの求人に応募するのが一般的です。ただ、中には管理職として薬剤師転職することがあります。例えば新規店舗であれば、管理薬剤師(店長)の求人が出されることがあります。
そのほかにも、管理職であればエリアマネージャーとして転職することもあります。数は少ないですが、転職によってエリアマネージャーとして活躍することも可能なのです。
既に管理薬剤師としての経験があったり、エリアマネージャーとして経歴があったりする場合、エリアマネージャーの求人募集へ応募することが可能になります。
それでは、調剤薬局やドラッグストアのエリアマネージャーとして活躍するときの年収や仕事内容はどのようになるのでしょうか。これについて解説していきます。
もくじ
薬剤師のエリアマネージャーとは何か
まず、エリアマネージャーとはどのようなことをする仕事なのでしょうか。中小薬局や病院でエリアマネージャーは存在しませんが、調剤薬局やドラッグストアを多数展開しているチェーン薬局であればエリアマネージャーがあります。
大手チェーン薬局であると、50以上の店舗を運営しています。この場合、本社の人間がすべての店舗を管理するのは現実的ではありません。
そこで、8~15の薬局をエリアマネージャーが管理するようにするのです。1人の人間が50店舗以上を統括するのは現実的ではありませんが、10店舗ほどであれば何とか管理することができます。
例えば、以下は兵庫県神戸市の調剤薬局から出されたエリアマネージャーの募集です。
このように、8~10店舗の薬局を管理・統括するようになるとあります。
管理薬剤師は店長として一つの店を管理します。一方でエリアマネージャーは管理薬剤師よりも立場が上であり、何店舗もの薬局を管理することになるのです。一般企業であれば、課長などに当たる管理職がエリアマネージャーです。
エリアマネージャーの仕事内容は何か
それでは、エリアマネージャーは何をする仕事なのでしょうか。前述の通り、何店舗もの調剤薬局やドラッグストアをマネジメントすることになるのですが、店舗ごとに売り上げ管理をしたり従業員のケアをしたりすることが主な仕事内容になります。
要は、中小薬局の社長と似た仕事を行います。
中小薬局の社長であれば、薬局に在籍する薬剤師や事務員と密にコミュニケーションを取ることによって、それぞれの社員の要望を吸い上げたり地域社会に貢献するための方策を考えたりします。これと同じように、エリアマネージャーは社員の声を拾って対策を考えます。
もちろん、社員の要望を聞くだけが仕事ではなく、店舗の売上を拡大させたり、在庫をどのように管理したりすればいいのかを考えなければいけません。そのため、場合によっては利益や効率を求めなければいけないことがあります。
管理職は成果を求められる
自分が薬剤師として現場で活躍するとなると、患者さんへ丁寧な指導をして満足してもらうことを多くの人が考えます。
ただ、一人ひとりに対して丁寧すぎる指導をしていると、薬局での回転が悪くなって他の患者さんを長時間待たせてしまったり、薬剤師一人あたりの労働時間が長くなったりしてしまいます。これはつまり、薬局の収益性(利益)が低くなることを意味します。
本当の意味で医療へ貢献するためには、患者さんへの服薬指導を丁寧にしなければいけません。ただ、エリアマネージャーである以上は成果を求められるため、ある程度の効率化は必要です。
こうしたことを理解したうえで、「医療への貢献」「現場で働く薬剤師の考え方」「薬局の利益増大」などを考慮しながら、店舗のマネジメントを行う必要があるのです。
・店舗ごとに形態は大きく異なる
さらにいえば、薬局は店舗ごとにその形態が大きく異なります。「1店舗に何人もの薬剤師が在籍しており、1日100枚以上の処方せんを受ける調剤薬局」があれば、「一人薬剤師の薬局」も存在します。
こうした規模や在籍人数がまったく異なる薬局をそれぞれ管理するのがエリアマネージャーです。しかも、薬局には新人からベテランまで幅広く在籍しています。薬剤師ごとに考え方が異なるため、それぞれの意見を聞きながら薬局を良い方向へと導くのです。
薬剤師のエリアマネージャーは求人募集があるのか
なお、このとき気になるのが「実際のところエリアマネージャーの求人募集は存在するのか」という点です。これについては、どうなのでしょうか。
薬剤師の求人では当然ながら、一般薬剤師や管理薬剤師の募集がほとんどです。ただ、中にはエリアマネージャーの募集も存在します。
先ほど、エリアマネージャーの求人を提示しましたが、こうした求人は少ないながらもいくつかあるのです。このとき、募集形態としては以下のようなものがあります。
- 管理薬剤師を1~2年ほど経験し、その後にエリアマネージャーになる
- 最初からエリアマネージャーとして就職する
転職するとはいっても、会社ごとに社内ルールが異なります。これらを何も分からないまま転職してしまうと、どのように対応すればいいのか勝手が分からず困り果ててしまいます。そのため、最も分かりやすいのは「エリアマネージャー候補として入社し、管理薬剤師を経験した後に昇格する」ことです。
例えば、以下は東京の薬局のエリアマネージャー求人ですが、まずは1年間の現場配属があると明記されています。
当然ですが、希望すれば全員がエリアマネージャーになれるわけではありません。その人の能力や適性を見ながら、エリアマネージャーとして活躍できるかどうか見極められるのです。これが、一般的なエリアマネージャーへの転職方法です。
ただ、中には最初からエリアマネージャーの募集が出されることがあります。例えば、以下のような求人です。
東京の薬局ですが、特定エリアのエリアマネージャーを担当することが決まった状態で求人が出されています。このように、管理薬剤師ではなく最初からエリアマネージャーとして転職することも可能です。
・多様なエリアマネージャーが存在する
なお、エリアマネージャーといっても調剤薬局や調剤併設ドラッグストアがすべてではありません。OTCドラッグストアでもエリアマネージャーの求人がありますし、在宅薬局のエリアマネージャーも存在します。
例えば、以下は調剤薬局の在宅部門に関わるエリアマネージャーの募集です。
応募条件にある通り、それまでに在宅部門での管理薬剤師(店長)の経験が2年以上なければいけません。ただ、そうした経験やスキルがあるのであれば、問題なくエリアマネージャーとして活躍できるようになります。
他にも、ドラッグストアでSV(スーパーバイザー)として店舗管理業務を2年以上している人であれば、OTCドラッグストアのエリアマネージャーへ転職可能です。
調剤部門に限らず、いろんな形態でエリアマネージャーが存在します。そのため、あなたのスキルを活かせば転職によって問題なく出世できるようになることは多いのです。
エリアマネージャー未経験でも問題ない理由
なお、これまで管理薬剤師しか経験したことがなく、エリアマネージャーとして活躍したことのない人は多いです。そのため、エリアマネージャー未経験であることに不安を感じることがほとんどです。
しかし、実際のところ問題ありません。管理薬剤師として活躍している人であっても、問題なくエリアマネージャーになれる可能性は高いです。これは、「エリアマネージャー兼ヘルプ要因」になれるからです。
例えば、以下は神奈川県横浜市の薬局から出された求人です。
このように、エリアマネージャーの募集としておきながらも「現場を経験しながら」とあります。これはつまり、管轄している調剤薬局でヘルプが必要になったとき、薬剤師要因として出向いて手伝うことを意味しています。
エリアマネージャーというと、本社や支店などオフィスでの勤務を想像している人がいます。ただ、実際は違います。店舗を訪れるのが普通であり、このときは単に店舗を訪問するだけでなく、会社によっては薬剤師要因としてヘルプを兼任することもあるのです。
単に薬局を訪問するよりも、当然ながら一緒に働いた方が内情をよく理解できます。そのため、よりエリアマネージャーとして的確な仕事ができるようになるのです。
こうした薬剤師業務が発生するエリアマネージャーの場合、直前まで最前線で働いていた管理薬剤師の方がエリアマネージャーとして適任です。そのため、エリアマネージャー未経験であることを後ろめたく思う必要はなく、むしろいま現時点で管理薬剤師をしていることを強みにすれば問題ありません。
・中規模薬局でもエリアマネージャーとして活躍できる
なお、エリアマネージャーというと大手チェーンの調剤薬局やドラッグストアを思い浮かべます。例えば、以下のような薬局チェーンです。
- 日本調剤
- マツモトキヨシ
- スギ薬局
- イオン
- ウエルシア
- サンドラッグ
- ツルハ
ただ、こうした大手でなくても、40~50店舗ほどを運営する薬局であっても問題なくエリアマネージャーの求人が出されます。社長や役員だけでこれらの薬局を束ねるのは不可能だからです。
そのため、東京や大阪、名古屋、福岡などの都市部に限らず、地方であってもエリアマネージャーの募集は存在します。管理薬剤師やエリアマネージャーの経験者が転職でステップアップすることを考えるとき、どこに住んでいたとしてもこうした求人へ応募可能です。
人材マネジメントがエリアマネージャーで重要になる
なお、エリアマネージャーとして「店舗のマネジメントを行う」とはいっても、実際に経験したことのない人であれば、どのような仕事内容になるのかあまり想像できません。
これについては、多くの場合でエリアマネージャーの仕事内容は人材マネジメントになります。つまり、人の管理をすることが主な業務内容になります。
具体的にいうと、薬剤師の管理になります。薬局を経営するうえで一番難しいのは、「いかに現場で働く薬剤師に気持ちよく働いてもらい、長く勤めてもらうか」にあります。
薬剤師が足りないために潰れる薬局があるほどですが、逆にいえば薬剤師さえ確保できれば誰でも薬局運営を行うことができます。患者さんの集客は隣の病院やクリニックが行ってくれるため、あとは調剤・監査・投薬ができる薬剤師を確保できるかどうかが、薬局ビジネスを続けるうえで重要になります。
成果を出すエリアマネージャーは現場薬剤師へ貢献する
このように、エリアマネージャーでは人材マネジメント(薬剤師に長く勤めてもらうこと)をどれだけ考えられるかが重要になります。
いくら効率化を目指して利益向上を頑張ったとしても、現場にいる薬剤師の反感を食らって辞められてしまえば意味がありません。薬剤師がいなければ薬局のビジネスは成り立たないため、効率化よりも薬剤師に満足して勤務してもらうことを考える方が重要なのです。
そのため、エリアマネージャーは前述の通り中小薬局の社長と似た仕事を行います。各店舗に出向いて現場の薬剤師や事務員と顔を合わせて意見を吸い上げ、それを実現させて社員満足度を高めるように努力しなければいえません。
また、前述の通りヘルプ要因として薬局を助ければ喜ばれますし、午前中だけでもいいので一緒に勤務すれば薬局・ドラッグストアの現状や改善点が浮かび上がるようになります。そこから、どのような対策を打てばいいのか把握できるようになります。
即効性はないものの、これが結果として薬局を長く存続させて大きな結果を出すエリアマネージャーの共通点です。
なお、現場に足を運ばないエリアマネージャーは正直なところ「ほぼ仕事をしていない」といえます。人材マネジメントがエリアマネージャーの主な仕事であることを考えると、定期的に薬局に出向いて現場の声を吸い上げるのは必須の仕事です。
こうして現場を見ていれば、それぞれの調剤薬局や調剤併設ドラッグストアごとの特徴が見えてきます。エリアマネージャーは人の異動など人事権をもつこともあるため、「この薬剤師は、あの薬局の方が相性はいいのでは」などと提案することも仕事です。
エリアマネージャーは中間管理職である
なお、覚えておかないといけないのは、エリアマネージャーは中間管理職であるということです。
役員や部長など、上の人間からは「もっと効率化を求めて、それぞれの薬局の売上を伸ばせ」といわれます。ただ、現場の薬剤師からは「給料を上げてほしい」「有給休暇をもっと自由に取得したい」「効率化ではなく、もっと患者さんに丁寧な説明をしたい」などと、上層部とは真逆の意見をいわれます。
売上や利益において上層部から文句をいわれ、現場の人間からも労働環境や年収について改善してほしいといわれるため、上と下から挟まれることになります。
そうはいっても、現場にいる薬剤師の意見を尊重するエリアマネージャーであるほど結果を出せます。
「年収を上げる」などの要求には簡単に応えられなくても、「有給を取りやすくする代わりに、他の薬剤師が有給を申し出たときは嫌がらずに代打を申し出るように制度化する」「ママ薬剤師に長く働いてもらうため、時短勤務を認めながらも、自らヘルプを兼任しながらシフトを組む」など、現場の労働環境についてはいくらでも改善できます。
こうして現場の意見を取りいれつつ、職場環境が良くなるように改善させていくことがエリアマネージャーに求められます。常に「人」のことをエリアマネージャーは考えなければいけません。
エリアマネージャーの年収・給料はどれくらいか
それでは、エリアマネージャーとして働くときはどれくらいの給料をもらうことができるのでしょうか。
一般的に薬剤師は大手チェーン薬局になるほど給料が少なくなります。都市部の一般薬剤師であると、年収400~450万円からのスタートが基本です。
ただ、エリアマネージャー候補として入社するとなると年収600万円ほどになります。実際にエリアマネージャーになって頑張れば、年収700万円や年収800万円になることもあります。まずは現場を経験した後にエリアマネージャーへ昇進する場合であっても、幹部候補として入社するので募集時から高めの給料が設定されています。
この中でも、東京や大阪などの都市部であれば年収600万円になり、地方になると年収がさらに高くなる傾向になります。
ちなみに、私が働いたころの小規模薬局は4店舗を運営する薬局でした。社長はMR出身で薬剤師でないため、薬剤師業務はしません。ただ、それでも社長としての給料をもらっていたわけです。そのため、それ以上の店舗を管理するエリアマネージャーであれば、問題なく高めの給料をもらえることが分かります。
・場合によっては年収1,000万円も可能
また、既にエリアマネージャーとして経験を積んでいる場合、求人によっては年収1,000万円を実現できることもあります。非常にレアな求人ではありますが、管理職として高い給料を実現可能なのです。
例えば、以下は愛知県の調剤薬局から出された求人です。
年収1,000~1,200万円であるため、問題なく年収1,000万円を達成できることが分かります。このときはエリアマネージャー兼ラウンダーの求人なので、薬剤師としていろんな店舗のヘルプとして働きながらもエリアマネージャーの仕事を行うようになります。
そのため仕事は大変になり、勤務時間もかなり長くなります。ただ、それだけの対価として年収1,000万円を実現できるようになります。
求人数は少なく、転職サイトからの応募が必要
ただ、実際にエリアマネージャーを目指すときに大きな問題があります。それは、一般的にエリアマネージャーの求人が出回っていないことです。一般薬剤師の募集であればハローワークであっても存在するものの、エリアマネージャーのような特殊案件の求人が外に出ることはありません。
そこで、転職サイト(転職エージェント)の利用が必須になります。自ら求人を発掘するのは現実的に不可能だからです。
このとき、ほぼ世の中に存在しない特殊案件であるほど、複数の転職サイトへ早めに登録しなければいけません。求人はみずものであり、良い求人であるほど募集がかかったときにすぐに他の人に取られてしまいます。これはエリアマネージャー候補の求人も同様であり、こうした求人は高年収が提示されやすいのですぐに埋まってしまいます。
また、求人数も非常に少ないです。例えば、薬剤師専門の大手転職サイトでエリアマネージャーの求人を検索すると、日本全国で50件でした。
当然、あなたの住んでいるエリアや希望年収、勤務条件などが合致した求人でなければいけません。そうなると、応募できる求人数は非常に少ないです。そのためエリアマネージャーを目指すとき、転職サイトに1社だけ登録する人はいません。必ず2~3社以上の転職エージェントを利用します。
こうした状況を考えたうえで、エリアマネージャーに興味があるのであれば先に転職サイトに登録しなければいけません。その後、「エリアマネージャー候補の求人が出たときに転職サイトのコンサルタントから教えてもらう」ようにするのです。複数の転職サイトを利用することで、その分だけ選べる求人数は多くなります。
通常の薬剤師で経験できないことをエリアマネージャーで学ぶ
エリアマネージャーとして組織の上で働くようになれば、現場で働く薬剤師とは違った視点で世の中を見られるようになります。患者さんのことだけを考えていればよかった状況から、会社の経営や売上まで把握した上で医療にも貢献しなければいけなくなるのです。
さらには、薬剤師の心のケアを含めた人材マネジメントも必要です。そのためエリアマネージャーは、単に現場で働く薬剤師よりも高度なスキルが要求されます。
現場で学んだ薬の知識だけでなく、エリアマネージャーは経営の勉強までしなければいけません。人の心を把握する技術も必要です。こうしてエリアマネージャーとして成果を出せるようになれば、一般薬剤師よりも人間的に大きく成長できるようになります。
多くの人と関わり、力を合わせて大きな仕事をやり遂げ、人間としてもスキルアップできることにエリアマネージャーの魅力があります。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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