薬剤師として就職・転職を考えるとき、どうしても給料の額面だけで求人を判断してしまいます。つまり、「年収600万円の募集!」などの言葉に惑わされてしまうのです。

ただ、実際のところ提示される年収の額面だけで考えてはいけません。たとえ見た目の給料が安かったとしても、福利厚生など全体で考えると「実はかなり条件の良い求人だった」ということはよくあります。

その中でも、特に持ち家をもっていない薬剤師の場合は住宅手当(家賃補助)があるかどうかを確認するようにしましょう。家賃は非常に大きな支出になるため、住居費用をどこまで面倒みてくれるのかによって、あなたの手元に残るお金は大きく変わってきます。

福利厚生で一番に確認するべき項目が住居費用の個人負担金額です。そこで、ここでは薬剤師求人の賃貸マンション・アパートの補助に関して確認していきます。

住宅手当(家賃補助)による年収の変化

例えば、勤務地や人間関係を含めてほぼ同じ環境の職場があったとき、「年収500万円」と「年収450万」であればどちらが良いでしょうか。

普通に考えると、年収500万円のほうだと考えてしまいがちです。ただ、提示される給料や年収の額だけで優劣を決めるのはやめましょう。必ず福利厚生まで考えるようにしてください。

例えば住宅手当であると、「住宅手当がない」「家賃の半分を会社が負担してくれる」「住んでいる家賃のうちのほとんどを出してくる」では、その違いは大きいです。

「年収500万円で住宅手当がない求人」と「年収450万円で家賃のほとんどを負担してくれる求人」であれば、よく考えれば後者の方が良い条件を提示してくれていることになります。

例えば家賃を月5万円ほど肩代わりしてくれる会社だとすれば、「5万円(家賃) × 12ヵ月 = 60万円」になります。ここに年収450万円を足すと、実質上の年収は510万円です。そうなると、実際には年収450万円の求人の方が条件は良くなります。

重要なのは給料の額ではありません。本当に考えるべきは実質的な手取りの額です。つまり、どれだけ福利厚生によって住居費用の負担が軽減するかどうかが焦点になるのです。

どれだけの家賃補助があるかは求人によって異なる

薬剤師の住宅手当というのは、病院、調剤薬局、ドラッグストア、一般企業とあらゆる求人で設定されています。ただ、病院や薬局によって住宅手当の支給額が異なるため、これらはあらかじめ確認する必要があります。

住宅手当では「家賃の50%負担」としている求人があれば、「家賃全額のうち、上限4万円分を負担」としている求人もあります。もちろん、住宅手当によって個人の家賃支払いがほぼ発生しないケースもあります。いずれにしても、条件が異なるのです。

例えば、以下の会社(調剤薬局)の場合は「一律で2万円を家賃補助する」という記載があります。

2万円の支給であるため、薬剤師として働くときの福利厚生としては弱いです。新たに引越しをする場合、敷金・礼金をすべて補助してくれるのは非常に助かりますが、できればもっと住宅手当が欲しいです。

一方で以下の会社であれば、5万円までは家賃負担をしてくれます。それ以上の家賃である場合、家賃金額に応じて一部(5万円以上)が支給されるようになります。

このとき、月の会社負担額が2万円と5万円では、1年で「3万円 × 12ヵ月 = 36万円」もの違いになります。

ちなみに、以下の求人だと住宅手当は非常に少なく、一律5,000円になります。

求人票に「住宅手当あり」と記載している会社は多いですが、一体どれくらいの家賃補助になるのか必ず確認するようにしましょう。家賃補助があるとはいっても、その額は会社ごとに大きく異なるのです。

なお、会計上の制約により、会社は住宅手当によって「家賃の全額を負担する」ことはできません。そのため、あなたは家賃の一部を必ず支払わなければいけません。このとき支払う家賃のうち、どれだけの部分をあなたが負担すればいいのかが重要になるのです。

・一般的な相場はあるのか

なお、薬剤師に関する家賃補助の一般的な相場はあるのでしょうか。企業ごとにバラバラなので一概にはいえませんが、一般的には2~3万円の家賃補助の会社が多いです。

この金額を相場と考え、「求人先の会社が負担する家賃補助の額が2~3万円と比べ多いか少ないか」で福利厚生の度合いを測るようにしましょう。

ただ、福利厚生には他にも通勤手当などもあるため、これらを含め総合的に考える必要があります。

住宅手当(家賃補助)の注意点

当たり前ではありますが、住宅手当が有効なのは持ち家をもっていない場合に限られます。住宅を購入していたり、実家に住んだりしている場合は関係ありません。そのため、このときは住宅手当を考慮せずに年収や他の福利厚生を見比べるようにしましょう。

また、たとえ住宅手当が手厚いように見えても、それをどこまで補助してくれるのかまで含めて確認する必要があります。場合によっては、家賃補助がゼロになることもあるからです。

家賃補助の制度を確認すべき理由

例えば私が新卒のときに薬剤師として勤めていた会社では、「全体の家賃のうち6,000円だけを自己負担すればよい」というかなり条件の良いものでした。当時住んでいたマンションは家賃7万円ほどでしたが、そのうちのほとんどを会社側が負担してくれたのです。

このときは会社がマンションの賃貸契約を結び、私の給料から個人負担分を天引きされるという形でした。いわゆる、借り上げ社宅というものです。

そのときは「住む賃貸マンション(借り上げ社宅)」を会社が指定してきたため、自分で住む場所を選ぶことはできなかったものの、家賃のほとんどを負担してくれたのでかなり助かりました。また、敷金・礼金などの費用はすべて会社が肩代わりしてくれました。引っ越し費用についても上限10万円を出してくれました。

ただ、「結婚すると住宅補助がなくなる」「たとえ一人暮らしであっても、実家がすぐ近くにある場合は適用されない」などの条件がありました。

そのため、当時私が勤めていた会社の同僚で、結婚した人は住宅手当が消えるために「家賃の全額自己負担によって一気に支払うお金が増え、手取りが少なくなってしまった」とつぶやいていました。

例えば、以下は大阪にある調剤薬局の求人に当たりますが、まさにこれが「結婚を含め、自己都合の引越しでは家賃手当を出さない案件」に該当します。

ここには、借り上げ社宅については「会社都合による転居に限る」とあります。

つまり、会社命令によって転勤する必要があったり、その会社へ転職するために新たに賃貸マンション借りる必要があったりする場合、借り上げ社宅制度が適用されるというものです。その他の事例については、借り上げ社宅の適用とはなりません。

・結婚予定(結婚済み)の人は住宅手当の規定を見るべき

このように考えると、住宅手当の内容が良かったとしても、それがどの範囲まで適用されるのかを確認することも重要になります。例えば、結婚が近い薬剤師が「結婚による引越によって住宅手当がなくなる求人先」に就職すると、後で後悔することになります。

病院、調剤薬局、ドラッグストア、企業と住宅補助制度を設けている求人は多いです。ただ、実際に転職する際は「住宅手当をどの程度の金額まで補助してくれるのか」「結婚したとき、さらには実家からの距離など、住宅手当を支給されなくなるケースはあるのか」まで確認するようにしましょう。

私が新卒で働いた会社では、たまたま「結婚後の引越しによって家賃補助がなくなる(会社命令による引越なら、結婚後でも家賃補助がある)」という制度でした。ただ、薬局やドラッグストアを含め別の求人であれば、たとえ結婚後であっても問題なく住宅手当が支給されるケースがあります。要は、求人先の会社の方針によるのです。

大病院では職員宿舎がメインになる

調剤薬局やドラッグストア、一般企業の求人であれば借り上げ社宅を活用した福利厚生を利用し、住宅手当が出されるのが一般的です。一方で大きな病院であると職員宿舎が基本です。病院が職員用の宿舎を敷地に建て、そこに従業員を格安で住まわせるのです。

病院の職員宿舎は非常に家賃が安く、東京都内であっても一人暮らしで1~3万円程度を支払えば、わりといい部屋へ入居できます。これが地方であれば、数千円である場合もあります。

例えば、以下は東京都足立区にある大病院(441床)の求人になります。

ここにある通り、寮であればわずか月21,000円で入居することができます。非常に優れた条件で住むことができます。

一方で寮を使用しない場合は通勤手当と住宅手当が付くようになります。手当の額は調剤薬局やドラッグストアに比べると低いですが、それでもきちんと手当が付くのです。

ただ、やはり借り上げ社宅の場合と同じように求人の細かい内容を確認する必要はあります。病院によっては、職員宿舎を看護師用に限定していることがあります。これでは薬剤師は入居できないため、看護師以外の職種の人も利用できるかどうかを確認するようにしましょう。

また、職員宿舎は基本的に独身の人が利用することを基本としています。そのため、既に結婚しているなど家庭をもっている人は職員宿舎に入れないことが多いです。

しかしながら、これも求人によって異なります。病院によっては、2LDKや3LDKなど結婚している人や何人も子供のいる家族を対象にした職員宿舎を保有していることがあります。こうした病院の場合、結婚後であっても問題なく職員宿舎を利用できます。

また、家族でも入れる職員宿舎を用意している病院であると、高確率で院内に託児所があります。病院薬剤師として、家賃の心配だけでなく子育てまでサポートしてくれます。

中小病院の家賃補助はどうなるのか

それでは、職員宿舎のない中小病院の場合はどのように考えればいいのでしょうか。このときは調剤薬局やドラッグストアと同じように、住宅手当として借り上げ社宅制度を活用することになります。

一般の賃貸マンションと契約し、そのうち家賃補助として何万円かを毎月補助してもらえるのです。例えば以下は東京都中野区にある中小病院の求人ですが、ここには寮に関する記載はありません。あくまでも「住宅手当20,000円」とだけ記載があります。

このように、住居は借り上げ社宅になります。寮はないため、家賃補助が20,000円だけ出ると考えれば問題ありません。

もちろん、中小病院での薬剤師として転職する場合、病院によってどれだけの住宅手当が出るのかは異なります。そのため、必ず求人内容を確認するようにしましょう。

パート・アルバイトでも住居の福利厚生がある

薬剤師の転職先としては、調剤薬局やドラッグストアがメインになります。このとき、パートやアルバイトで勤務する場合であっても問題なく住宅手当が適用されます。

例えば、以下は調剤併設ドラッグストアでの薬剤師求人です。

ここにある通り、雇用形態は「パート・アルバイト」だけとなっていますが、住宅手当として30,000円が支給されると記されています。こうした求人はたくさんあり、パートやアルバイトでの勤務であったとしても問題なく福利厚生で家賃補助があると考えてください。

もちろん、パートやアルバイトだと正社員のように毎日フルタイムで働くようになるわけではありません。そのため、どれくらいの勤務があれば住居費用を負担してくれるようになるのかを事前に確認するようにしましょう。さすがに週1回の勤務で住宅手当が出るわけではないからです。

このとき、社員旅行や忘年会などの福利厚生については、週1回勤務のアルバイトであっても声がかかることになります。ただ、住宅手当についてはある程度の勤務日数が必要になるため、確認が必要になるのです。

ちなみに一般的には、週4日以上のパート・アルバイト勤務で家賃補助が出やすくなります。ただ、福利厚生をどのように扱うのかは会社ごとに違うため、事前に確かめるようにしましょう。

薬局・ドラッグストアでも派遣は家賃補助を期待できない

パートやアルバイトであっても、問題なく住居費用を負担してくれることが分かりました。それでは、派遣の場合はどうなるのでしょうか。

派遣薬剤師として働く場合、家賃補助を出してくれる求人は存在します。ただ、その数は非常に少なくなります。正社員やパート・アルバイトに比べて、派遣では家賃補助のある求人が激減するのです。

この理由は単純であり、雇用主が違うからです。正社員やパート・アルバイトの場合、働き先の会社に雇用されることになります。調剤薬局やドラッグストア、病院、企業と違いはありますが、いずれにしても「働いているところ=雇用先」となります。

しかし、派遣薬剤師の場合は雇用主が派遣会社になります。派遣会社から派遣され、薬局や病院などで働くようになるのです。雇用主が派遣会社であることから、勤務先(派遣先)の会社が家賃負担してくれる確率が少なくなります。

また、正社員やパート・アルバイトだと基本的に何年も働いてくれるようになります。一方で派遣薬剤師の場合、3ヵ月や6ヵ月など期限があります。この短い間だけ、派遣会社に支払うお金とは別に家賃補助をするのは現実的ではありません。派遣費用だけでも高額なのに、さらに上乗せされるようになります。

派遣薬剤師も福利厚生はありますが、社会保険や有給休暇など一般的な福利厚生に限られます。正社員やパート・アルバイトなどに支給されるような、住宅手当までは実際のところ期待できないのが派遣薬剤師なのです。

家賃補助を求人先に問い合わせて転職する

薬剤師が転職するときの求人について、住宅手当に焦点を当てて確認してきました。賃貸マンションやアパートの住居費用は非常に高額であるため、福利厚生としてどれだけ会社負担してくれるのかは非常に重要になります。

しかし、住宅手当とはいっても「毎月2万円だけ家賃補助がある」という求人と、私が新卒で働いた会社のように「毎月の負担は6,000円だけでいい」という求人では、結果的に実質的な年収が大きく異なることになります。

また、独身で独り暮らしをする人であれば話は単純ですが、既に結婚していたり家族が増える可能性があったりする人の場合、「住宅手当が支給されるのか」「将来、どれくらいの範囲まで家賃補助があるのか」まで含めて検討しなければいけません。

そして、週にそれなりの日数を働くのであれば、パートやアルバイトであっても問題なく住居に対する補助があります。ただ、派遣については家賃補助を期待することはできません。

ここまで理解したうえで家賃補助の内容を吟味すれば、就職・転職で失敗することが少なくなります。単純に年収や給与額で求人を比べるのではなく、住宅補助を含めた福利厚生まで確認することでようやく、良い求人や転職先を見極められるようになります。


薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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