薬剤師が転職をするとき、最も一般的な就職先として薬局があります。つまり、調剤薬局やドラッグストアの薬剤師として勤務するのです。
ただ、実際に薬剤師として調剤薬局(または、調剤併設ドラッグストア)で働いて数ヵ月から1年ほど頑張り、仕事に慣れてきたころに多くの人が考えることがあります。それは、「薬剤師の仕事はつまらないのでは」という思いです。
当然ながら、仕事にやりがいがないと続きません。忙しすぎる職場は大変なものの、単調なルーチンワークも苦痛です。「薬剤師として社会に貢献している」と感じることができず、薬剤師の仕事に魅力を感じなくなってしまう人はたくさんいます。
それでは、本当に調剤薬局で働く薬剤師はつまらないのでしょうか。実際のところ、薬局の中でも独自の取り組みを実践している会社は探せばたくさんあります。そこで、「薬剤師が何を目標にして、やりがいをもって仕事をすればいいのか」「単調なルーチンワークを魅力ある仕事に変えるコツ」について解説していきます。
もくじ
一般的な薬剤師の薬局求人だとルーチンワークになりがち
急性期病院や一般企業で働く薬剤師であると、そこまで単調なルーチンワークにはなりません。やることが日々変化していくため、常にやりがいをもって仕事に取り組むことができます。
一方で、調剤薬局で勤務する薬剤師であると、どうしても仕事内容が決まりきったものになってしまいます。処方せんをもとに調剤を行い、監査をして、投薬(服薬指導)をするのが薬局薬剤師の一連の流れです。
このとき、基本的には常に同じ仕事内容を繰り返すルーチンワークです。そのため、調剤薬局の仕事内容はやりがいがなく、魅力が薄いと考えるようになるのです。
患者さんのために必死に頑張っている薬局薬剤師には怒られてしまうかもしれませんが、実際のところ病院や一般企業に比べると刺激が少なく、つまらない仕事内容になりがちなのは確かです。
しかし、これについては会社によって方針が大きく異なります。普通の求人に勤務する薬剤師については確かにルーチンワークになるため、「やりがいがない」と感じがちです。ただ、やり方によっては患者さんに感謝され、大きな目標をもちながら魅力ある薬剤師業務を行うことも可能です。
地域密着で活躍する地元の中小薬局は魅力が大きい
それでは、どのような調剤薬局であれば魅力ある仕事を行えるようになるのでしょうか。
一部ではあるものの、他とは異なる取り組みを実践している薬局は存在します。例えば私の知り合い薬剤師には「薬局内で自己血糖を測定し、その場で指導を行う」という調剤薬局を経営している人がいます。
NHKに出演しているほど有名な名古屋にある個人薬局であり、その薬局ではOTCも完備して本当の意味で信頼関係を築きながら患者さんと接しています。
地域の祭りなどのイベントでブースを出し、血糖測定を行うと、主婦などあまり医療機関を受診しない方でHbA1cが9.0以上の方を発見したケースもあるそうです。当然、その場でどのように対処すればいいのかアドバイスします。
他には私の知り合い薬剤師の場合、地域での信頼を勝ち取るために、公民館などに掛け合って講演依頼を取ってくるように営業をしていると話してくれました。
このときの講演料は非常に少ないですが、それでも講演活動を行うのは「あの薬局に相談すれば間違いないというイメージを作るため」といいます。まさに、地域密着型の活動をしているのです。ちなみに、私も薬局薬剤師として地域の公民館で講師を何度も行い、貴重な体験をさせてもらったことがあります。
こうした独自の取り組みをしている薬局は「地域に根付いた中小の薬局」に多く見受けられます。大手だと、どうしても処方せん枚数をできるだけ多く、短時間でさばく経営方針になりがちだからです。
数は少ないながらも、根気強く探せば面白い取り組みを実施している調剤薬局は存在します。もちろんメインはいつもの調剤業務になるものの、地域住民を巻き込んだ魅力ある仕事も含めて実施できる薬局であればルーチンワークにはなりません。
さらには、これらの薬局では学校薬剤師を頼まれることもあります。より地域との関わりをもてる薬局で働けば、仕事が面白くなります。
在宅専門の薬局でスキルを磨く
また、一般的な調剤薬局ではない別の業務をしながらも、刺激のある薬剤師業務をしたい場合は在宅医療を専門で行う調剤薬局へ転職するという方法もあります。
処方せんに基づいて調剤するだけでなく、在宅では実際に家の中に入り込むことで患者さんに服薬指導します。また、薬局の中だけで完結することはほとんどなく、医師や看護師など他の医療従事者と組んでチーム医療を提供することになります。
そのため、薬局内だけで勤務する調剤薬局に比べて、仕事内容が大幅に変わってきます。
さらに、在宅メインの薬局によっては店舗内にクリーンベンチを設け、注射剤の調整をすることもあります。こうした薬局であれば、病院薬剤師と同じように高い専門性を身に着けられるようになります。
例えば、以下は大阪にある在宅専門の薬局から出された中途採用の求人であり、店舗内では無菌調剤も行えます。
在宅とはいっても、調剤薬局によって実施できることが大きく異なります。そのため、どのような薬局で活躍したいのか考えるといいです。
なお在宅薬局とはいっても、やりがいをもって薬剤師業務に取り組みたいのであれば施設在宅メインの薬局は避けなければいけません。施設在宅ばかりだと、無駄に一包化だけが多く一般的な薬局薬剤師よりも仕事内容がルーチン化して苦痛になりがちだからです。
在宅薬剤師を目指すことで、つまらない仕事から抜け出すことを考える場合、高度な在宅スキルを身に着けることが可能な薬局を探すといいです。
漢方薬局では特殊な知識習得が可能
他にも勉強が好きな薬剤師に向いており、患者さんごとに対応が大きく変わってくる薬局として漢方薬局があります。
もちろん漢方薬局とはいっても、漢方クリニックの隣にあり、ツムラの漢方薬を調剤するだけのつまらない薬局では意味がありません。そこで普通の医療用医薬品だけでなく、薬剤師主体で患者さんに独自の漢方薬を提供する漢方薬局だと魅力が大きくなります。
こうした漢方薬局では、個人薬局が非常に多くなります。また、特定の医療機関に処方せんを依存しているわけではなく、面対応薬局としてあらゆる病院・クリニックの処方せんを受け取ります。このとき、患者さんの健康相談に乗ることでオリジナルの漢方薬やハーブを含めて提供するのです。
当然、患者さんの悩みはその時々によって変わってきます。健康相談を受けるたびに提案内容が変わるため、やりがいをもって魅力ある仕事に取り組めるようになります。
在宅専門の薬局と同じように、こうした漢方薬局についても数は少ないです。ただ、煎じや刻みを含めて本格的な漢方を学ぶことが可能な求人募集は問題なく出されます。例えば、以下は福岡にある漢方薬局の求人です。
いつもと同じルーチンワークの薬剤師業務がつまらないと感じる場合、こうした刺激の多い漢方薬局へ転職しても問題ありません。
学会発表や研究活動が可能な薬局
同じように調剤薬局の薬剤師として活動するのであれば、単に処方せんをもとに患者さんへ服薬指導をするだけでなく、業務改善を積極的に実践することで研究活動をしても問題ありません。調剤薬局やドラッグストアによっては、研究活動を支援してくれて学会で発表させてくれる職場もあります。
研究とはいっても、大学のように試験管レベルで行うことだけが研究ではありません。薬剤師の世界では臨床研究も積極的に行われており、あなたが薬剤師として実践してきたことを発表してもいいのです。
薬局薬剤師として活動しながら研究を実現できるかどうかについては、当然ながら会社の方針が大きくかかわります。薬剤師業務だけに専念させる会社があれば、「通常業務に留まらず研究活動も積極的に行う薬剤師」がたくさん在籍している薬局もあります。
例えば、以下の調剤薬局では女性医療(婦人科領域)に特化していますが、学会などでも積極的に勉強できるようになっています。
また、調剤業務以外にも他の仕事に当たることができ、より幅広い研究活動や学会発表を行えるようになっています。こうした自ら成果を発表できたり、追加で学べたりする調剤薬局で業務をしても問題ありません。
薬剤師として上を目指しても問題ない
なお、同じ職場でいつもと変わらない業務をするのではなく、変化のある職場へ勤務する方法もあります。まだ薬剤師としての経験が浅いのであればダメですが、管理薬剤師を含めてある程度の経験がある場合、上級職の薬剤師として転職することも可能なのです。
例えば、こうした職種としてエリアマネージャーやラウンダーがあります。管理薬剤師としての経験があるのであれば、こうした薬剤師としても転職できます。
エリアマネージャーの場合、いくつかの店舗を管理することになります。それぞれの店舗で人事管理を行い、業務がうまく回っているか管理するのです。
また、複数店舗を常にヘルプ要因として勤務するラウンダーという働き方もあります。エリアマネージャーと同じように、ラウンダー薬剤師も高年収になります。管理薬剤師よりも、ラウンダー薬剤師の方が圧倒的に給料は優れています。
参考までに、エリアマネージャーとラウンダーを兼務する場合はより高い収入を実現できます。例えば、以下は愛知の薬局で出されたエリアマネージャー兼ラウンダーですが、年収1,000万円以上です。
エリアマネージャーやラウンダーであれば、いろんな店舗を含めて関わらなければいけません。常に同じ薬局で仕事をするわけではないため、ルーチンワークにはなりにくいです。また、経営に関わるようになるのでつまらない仕事ではありません。
薬剤師として勤務するとき、管理薬剤師が出世できる一番の最上級職ではありません。その他の職種もあります。しかも、これらは転職でも実現可能なのです。
薬剤師で達成したい目標を明確にするべき
当然ですが、普通に業務をしていてもルーチンワークになります。会社の方針次第にはなりますが、単なる調剤薬局で勤務しても仕事内容がつまらないと感じるのは仕方ありません。
そこで、ここで述べたような独自の取り組みをしたり、自由に業務内容を改善できたりする薬局で働くことを考えましょう。そうすれば、やりがいなしの状況を回避できるようになります。
ただ、このときは薬剤師として働くことで達成したい目標は何かを明確にするといいです。
- できるだけ上の役職に就き、出世したい
- 在宅や漢方など、これまでにない知識を得たい
- 学校薬剤師を含め、地域貢献できる薬局に勤めたい
こうした向上心がないのであれば、仕事がつまらないのは当然です。薬剤師として、やりがいをもって仕事をしたいのなら自ら優れた仕事に挑戦するように努力しなければいけません。自分独自のアイディアで薬剤師としての仕事内容を改善したり、自ら学び取ったりする姿勢を見せるのです。
自分から進んで行動を起こすからこそ、薬剤師としての仕事が面白くなるといえます。
私も地域住民を相手に公民館でセミナーを開催したときはそれなりに面白かったです。「非常に分かりやすかった」と言ってもらえ、口コミで他の公民館でも講演依頼がいくつも来るようになりました。薬剤師の時給から考えると講師の謝礼金は恐ろしく低かったですが、それ以上の喜びがありました。
単調作業を避けるため、薬剤師会に参加するのは必須
なお、薬剤師として魅力ある仕事をするときに必須となるのが「他の薬剤師がどのように業務内容を改善させ、医療に当たっているのかを知る」ことです。
自分一人だけのアイディアで実現できることは少ないです。ただ、他の人が実践していることを聞けば、その内容をあなたが働いている薬局へそのまま適用させることも可能です。他人がしていることを真似させてもらい、自分の薬局でさらに優れた仕事を行えるように改善していくのです。
薬剤師会へ出向けば、他の薬剤師がどのように仕事をしているのか聞くことができます。自社内だけで完結しているようでは、薬剤師の仕事にやりがいがないと感じて当然です。そこで、積極的に外から情報を取るようにしましょう。
業務時間外の活動にはなりますが、以下のような案内が必ず薬局に届いているはずなので積極的に出席するといいです。
調剤薬局の仕事を楽しいと感じている有能な薬剤師であるほど、他の薬剤師から積極的に話を聞いて自分の業務に応用しています。これと同じことをしましょう。
また、特殊な仕事が回ってくることもあります。例えば私の場合、看護学校の講師をする依頼が他の薬剤師経由で来たことがあります。いろんな薬剤師が交代で講師をするようであり、なぜか私に声がかかったわけです。
学校の先生という立場で半年ほど薬理学を教えることになったのですが、このときはとても楽しく講師業を体験することができました。
いろんな人とつながりがあれば、面白い情報がいろんなところから入ってくるようになります。そうなれば、薬剤師として大きな目標を立てながらやりがいをもって仕事に当たることができます。
転職サイトでやりがいのある調剤薬局を探す
もちろん、ここまで述べてきたことを実現するためには「薬剤師としてキャリアップ、スキルアップを支援してくれる薬局」「勉強できる環境を積極的に提供してくれる調剤薬局」で働く必要があります。そうでない限り、ルーチンワークになってやりがいのない仕事を毎日繰り返すようになります。
そのため、薬剤師として今よりも魅力ある仕事内容を経験できるように努力したいのであれば、転職を検討しても問題ありません。
このとき多くの薬剤師は転職サイトを利用しますが、転職エージェントへ登録することで「薬剤師としての役割が大きく、やる気をもって働ける職場」の求人募集を紹介してもらうといいです。
当然ですが、自分だけの力でここまで述べたような調剤薬局やドラッグストアを探すのは非常に難しいです。地域住民に貢献する薬局とはいっても、公式サイトにそのようなことが書かれていることはほとんどないからです。
他にも、在宅や漢方を学べる薬局は数が少なく、やはり転職サイトを利用しなければどこに優れた調剤薬局が存在するのか判断が付きません。
そこで、多くの求人が存在する転職サイトへ登録することで優れた求人を見つけ、中途採用の募集へ応募するといいです。単調作業ばかりの薬局を避け、常に刺激のある職場へ転職するといいです。
調剤薬局やドラッグストアで楽しい仕事をする
薬局で働くとき、仕事がルーチン化してしまって仕事内容がつまらないと感じてしまう薬剤師は多いです。仕事に飽きてしまうのです。
そうしたとき、調剤薬局やドラッグストアの中でも刺激のある職場を探すようにしましょう。もちろん、刺激があるとはいっても常に業務内容が変わるわけではありません。ただ、処方せんの内容をもとに調剤し、監査・投薬をするだけの薬剤師と比較すると、刺激ある職場で仕事できる薬局はそれなりにあります。
もちろん、基本は調剤や服薬指導がメイン業務になります。ただ、患者さんによって指導内容が異なったり、講師業として一般的な薬剤師とは違う経験ができたりする職場が存在するのです。
他の薬剤師とも交流を深め、自ら積極的に業務改善していくことができれば、仕事が楽しくなっていきます。
どうせ同じ薬剤師をするなら、楽しい仕事の方がいいに決まっています。そこで自らアイディアを出し、業務内容を改善させていきましょう。そうしたことを支援してくれる薬局で働けば、薬剤師としてより明確な目標をもち、楽しく魅力ある仕事ができるようになります。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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