薬剤師の中には、残業なしで定時に帰れる薬剤師求人を探している人もいます。仕事をバリバリ頑張るというよりも、自分のプライベートを重視するタイプの人は残業なしの職場への転職を好みます。

特にママ薬剤師など、事情によって残業なしの定時退社を希望する人は多いです。夕食を作ったり子供を迎えに行ったりなど、残業が長く続くと日常生活に支障をきたしてしまうのです。

ただ、何も考えずにそうした職場を探し、条件だけで転職しようとすると失敗します。本当の意味で転職を成功させるためには、「残業なしで定時に帰れる求人」の本質がどのようなものなのか確認しておく必要があります。

そこで、転職での失敗を避けるためにも、薬剤師として働くときに重要な「残業なしの求人の確認方法」について解説していきます。

薬剤師は定時退社の理由を申し出るべき

残業なしを希望するのであれば、求人募集へ応募するときに正当な理由もなしに定時退社を希望してはいけません。調剤薬局やドラッグストア、病院など雇い主にとってみれば「なぜ、残業なしなのか?」と疑問に思うからです。

正当な理由なしに定時退社を望んだとしても、通常は受け入れられません。例えば、若い独身男性が残業なしを希望したとしても、「こいつはやる気があるのか? 大丈夫か?」と思われてしまいます。面接前から、常識のない人間と捉えられてしまうのです。

そこで、定時退社の職場への転職を考えるのであれば、誰もが納得できる理由を考えておく必要があります。このとき、メインとなる理由としては以下のようなものがあげられます。

子供をもつ薬剤師

子供が小さい場合、その送り迎えを含めて子供の面倒を見るために定時退社を望む人はたくさんいます。また、残業なしどころか時短勤務を要望する人も多いです。

子育ての問題はそれほど大きいため、子供との時間を確保するために定時退社を希望するのは普通だといえます。子供がいると保育園の送り迎えや夕食の準備に限らず、急な発熱で病院・クリニックへ連れていかなければいけないことも頻繁にあります。

私も以下のように、薬剤師として働いているときに職場へ頼み込み、子供をクリニックへ連れて行った経験が何度もあります。

小さい子供がいる場合、残業なしだけでなく、子供が病気に罹ったときの欠勤も含めて柔軟に対応してくれる職場が適切になります。そのため、子供がいる場合は定時退社を転職理由にして問題ありません。

ただ、最初はいまの職場と相談するようにしましょう。しかし、定時退社の要望を現在の職場に打診しても受け入れてもらえない場合、転職を考えるといいです。育児に理解を示してくれる求人は存在するため、そのような薬局や病院などへ転職するのです。

親の介護、自分の病気による定時退社

また、親の介護が必要になったり、自分に新たな病気を発症してしまったりした場合も定時退社などを要求しても問題ない理由だといえます。

例えば親の介護をする場合、朝に出勤して残業し、夜遅くに帰ってくるわけにはいきません。ホームヘルパーさんに手伝ってもらうとはいっても、ずっと付き添いしてくれるわけではないのです。そのため限界があり、自分で親の面倒を見る必要があります。

この場合も同様に、職場によって認めてくれる場合とそうでない場合があります。現在の職場において、こうした状況で残業なしの定時退社がどうしても必要であるにもかかわらず、それを認めてくれていない場合に限り、転職を考えましょう。

時間の融通が利く求人募集とは

それでは、正社員やパート・アルバイトなどで薬局・病院に働き始めるとき、残業なし(定時退社)の求人をどのようにして探せばいいのでしょうか。

まず、定時退社可能な職場がどれくらいあるのか確認していきたいと思います。ここでは、東京都で出されている求人の中で「残業なし(月10時間以内で、ほぼなしを含む)」で検索することにしました。正社員で調べた結果は以下の通りです。

求人数(東京都)残業なし求人数割合
調剤薬局3,1271,481約47%
ドラッグストア1,410776約55%
病院314101約32%

※マイナビ薬剤師:東京都の薬剤師求人数から調査

このように、多くの薬局や病院で残業なしを実現できる求人が出されています。例えば、以下は東京都の調剤薬局から出されている求人です。

ただ、実際に私が薬剤師として働いているとき、別の会社で働く知り合いの薬剤師との話の中で、「残業なしで入社したものの、職場の『帰りにくい空気』に負けて結局のところ残業が発生している」というケースをいくつも聞きました。

定時退社となると、どうしてもパートや派遣の薬剤師が優先されます。当然、正社員よりもパートやアルバイト、派遣の方が時間的な融通が利きやすいのです。

そのため、特に定時退社を希望する場合は求人票だけで判断してはいけません。その募集が本当の意味で「定時退社を実現できるかどうか」は分からないのです。

正社員で残業なしを実現する求人の見方

それでは、正社員求人の中で「残業なし、定時退社を実現できる求人」を見つけるにはどうすればいいのでしょうか。一般的には、以下のような求人だと残業なしになりやすいです。

  • 中小薬局の求人
  • 一人薬剤師(または薬剤師2人)のゆったり求人

それぞれについて解説していきます。

・中小薬局の求人

病院や大手チェーン薬局の場合、組織が大きいので例外を認めにくいです。組織によって社風は異なるかもしれませんが、一つ事例を作ってしまうと「あの人は大丈夫なのに、なぜ自分はダメなのか」となってしまうため、なかなか要望を聞き入れてもらえません。

大手チェーン薬局ではマニュアルが整備されており、良い意味でも悪い意味でも全員の労働条件が公平なのです。また、大手チェーンの薬局であるとトップの人間(社長など)との距離が遠く、相談しても意見を聞き入れてもらえないケースがほとんどです。

一方で中小の調剤薬局であれば、社長と直に相談することで自分の要望を伝えることができます。「社長の頭が固くなく、柔軟に対応してくれる必要がある」という大前提はありますが、中小薬局では薬剤師を確保するために多少の希望は聞いてくれやすいのです。

私が以前にいた4店舗を展開する中小薬局でも、一人の女性薬剤師(正社員のママ薬剤師)については、土曜日を含めた勤務が可能であるものの、帰宅については「定時退社が原則」という決まりの人がいました。まだ患者さんがいても「お先に失礼します!」と帰る女性だったわけですが、わりとみんな仲の良い薬局だったので、その人が先に帰ることについては問題ありませんでした。

その薬局では非常に患者数が多かったものの、社長の判断によって特例を設けてもらっていたのです。

例えば、以下は大阪で2店舗を運営する小規模薬局ですが、こうした薬局だと社長との距離が近いために要望を聞いてくれやすいです。

病院は人気の職場であるため、勝手に薬剤師からの応募があります。また、大手チェーンだと薬剤師の替えが利きます。ただ、個人薬局や中小薬局の場合、薬剤師に辞められるとダメージが大きいです。そのため、正社員であっても定時退社の希望が通りやすいのです。

・一人薬剤師(または薬剤師2人)のゆったり求人

また、たとえ大手チェーン薬局や規模の大きいドラッグストア会社であったとしても、処方せん枚数が少ない薬局であれば残業なしを実現することができます。

こうした処方せんの少ない薬局の場合、多くは一人薬剤師(または薬剤師2人)です。

「門前のクリニックの患者数自体が少ない」「医療機関とは微妙に距離が離れた場所にあり、いろんな医療機関の処方せんを受けている調剤併設ドラッグストア」など、処方せん枚数が少ない理由はさまざまです。

ただ、こうした募集であれば予製の一包化はほぼないですし、大変な処方せんが一気にたくさん舞い込んでくる確率も少ないです。調剤に費やす時間は少ないため、空いた時間に薬歴処理を済ませることも可能です。その結果、定時退社が可能になるのです。

デメリットとしては、仕事を休めないことがあげられます。例えば、子供が急に発熱しても薬剤師の替えが利かないという問題点があります。ただ、それ以外の面については優れていて定時退社が可能です。

調剤未経験やブランクありの場合は無理ですが、薬局や病院で調剤経験がある場合は問題なく一人薬剤師での勤務ができます。

病院の求人で残業なしは可能なのか

このように調剤薬局や調剤併設ドラッグストアであれば、一定の条件を満たせば残業なしを実現することができます。それでは、病院への転職はどうなのでしょうか。

薬局やドラッグストアに比べると、病院で残業なしの求人はかなり少なくなります。ただ、まったくないわけではありません。こうした病院求人としては、以下のような特徴があります。

  • 療養型の病院
  • 整形外科や精神科などでの、当直がない病院

急性期病院の場合、高い確率で当直があります。また、患者さんの容態は変わっていくため、そのときに応じて処方が変わり、薬剤師による指導内容も異なるようになります。

一方で療養型の病院であったり、整形外科や精神科などで当直がない病院であったりする場合、基本的に仕事でバタバタすることがありません。よく言えば落ち着いてゆったりと仕事ができます。悪く言えばマンネリ化しやすく刺激の少ない求人になります。

ただ、処方せんの少ない薬局で定時退社が可能なのと同じように、病院でもそうしたゆったり働ける職場であれば、残業なしを実現することができるのです。

例えば、以下は東京都にある病院の求人です。

残業は月平均5時間とほぼなく、病院の科目は呼吸器や緩和医療、消化器外科です。科目からも、急患で慌ただしい急性期病院ではないことを予想できます。さらに、当直もありません。

こうした病院は少ないものの、いくつか求人は存在します。最先端の医療を経験できるわけではないですが、病院求人で定時退社も十分可能なのです。なお、病院の定時退社は求人数が少ないため、必ず2~3社以上の転職サイトの利用が必要になります。

企業求人も検討してみる

なお、場合によっては企業求人への応募も考えてみてください。企業の求人も残業なし・定時退社であることが多いからです。この場合は製薬会社、医薬品卸、化粧品会社など、「調剤業務などを行わない薬剤師」にはなりますが、薬剤師免許を活用しながらゆったりと働くことができます。

企業求人の場合、大々的に「残業なし!」と謳っている会社はほとんどありません。ただ、実際のところほぼ残業なしで帰ることができるのです。

かつて、私も医薬品卸の管理薬剤師として勤務したことがあり、そのときは18:00~18:30には帰っていました。当時、独身でしたがまったく問題なく定時退社が可能だったわけです。

例えば、以下は東京にある製薬企業のDI業務の求人です。

このように、残業ゼロの求人になっています。基本的に企業の募集は定時退社であり、さらには土日休みであることがほとんどです。なお、企業求人も同様に求人数が少ないため、2~3社以上の転職エージェントの利用が必要になります。

定時退社求人だと年収は下がる

残業なしで定時に帰れる求人の場合、プライベートの時間を確保できます。

ただ、もちろんデメリットもあります。当たり前ではありますが、年収(給料)が下がります。勤務時間がそれだけ短くなり、ワガママを受け入れてもらうので年収が減るのは普通だと考えてください。

最もダメなパターンとしては、「定時退社や休日を確保したいが、年収は下げたくない」という考えをする人です。こうした常識から外れた考え方をすると、確実に転職で失敗してしまいます。そうではなく、年収が下がっても問題ないことを受け入れましょう。

経営者にとってみれば、「残業ありでも問題ない」という薬剤師の方がありがたいです。当然、そうした薬剤師の給料を優遇します。そうしなければ不公平だからです。

・ブラック求人が存在することも考慮する

なお、残業なしの求人では必ず注意すべき点があります。それは、「残業なし=残業代込みの年収であり、そもそも残業という概念が存在しない」という解釈で求人を出している会社が存在するということです。

あまり良い求人とはいえませんが、実際にこうした調剤薬局やドラッグストアが存在するのも事実です。求人票に書かれた条件だけで転職すると失敗しやすいのは、こうした薬局がいくつも存在するからなのです。

転職エージェントを活用せず、自らの判断で転職しようとすると失敗しやすくなるのは、こうしたケースも含んでいます。転職サイトなど、プロの目を通さなければブラックな求人に申し込んでしまう可能性が高くなるのです。

パート薬剤師であっても残業に注意すべき

なお、中にはママ薬剤師としてパート勤務を考える人もいるでしょう。パートやアルバイトでは、派遣のように明確に労働時間が決められているわけではありません。そのため、転職したり復帰したりして働き始めるときは、求人側の会社と労働条件を決めておくようにしましょう。

パートやアルバイトであれば、残業なしにできる可能性が非常に高いです。例えば、以下は神奈川県横浜市の薬局求人です。

「子育てに理解のある薬局」であり、管理薬剤師も子育て経験者であることを推しています。そのため、問題なく定時退社を実現できることが分かります。

注意点としては、パート勤務は「現場の薬剤師に自分の勤務時間を伝える必要がある」ことがあげられます。転職して初めての勤務日に、管理薬剤師を含め現場の人たちに「自分は○時までの労働でパート勤務をすることになったのでよろしくお願いします」とあいさつをするのです。

たとえ本社で面接して勤務条件が決まったとしても、それが現場まで伝わっていないことはよくあります。こうした事態を避けなければ、実際のところ残業が発生してしまうことはよくあります。

パートやアルバイトであっても、転職でミスマッチを生じることがあります。定時退社についてのミスマッチの多くは、現場の薬局まで勤務形態の情報が伝わっていなかったことで生じるのです。

派遣薬剤師という形態も考えるべき

なお、より厳密に残業なしを実現したい場合、派遣薬剤師という働き方も検討してみてください。

薬剤師として働くとなると、正社員やパート・アルバイトがメインです。ただ、それと同じくらい派遣薬剤師として活躍している人もいます。派遣であると、明確に労働時間が決められています。そのため、決められた時間が来れば患者さんが待合室にいたとしても仕事を切り上げることができます。

もちろん、これには職場の雰囲気なども重要ですし、派遣として勤務するときに求人先の企業と労働条件について、よく確認しておく必要もあります。

ちなみに、定時退社の求人だけで考えると「派遣」が圧倒的に多いです。派遣薬剤師は契約による労働時間が決まっており、通常の求人募集であっても定時退社が基本となっているからです。正社員やパート・アルバイトだけで考えるのではなく、派遣薬剤師として働くことを考えると、残業なしを実現しやすくなります。

また、派遣であると時給が非常に高いため、たとえ残業なしであったとしても高年収を実現できるというメリットがあります。高い年収を維持しながら定時退社を実現したい場合、派遣が選択肢に入ります。

 

終業時間で帰れる薬局へ転職する

定時退社が必要な場合、まずは今の会社に相談してみるようにしましょう。大手チェーンや病院では無理なことがほとんどであるものの、中小薬局であれば聞き入れてくれる可能性があります。しかし、それでもダメだったときは転職を検討してみてください。

残業なしで終業時間ピッタリに帰れる職場としては、主に調剤薬局や調剤併設ドラッグストアで存在します。数は少ないですが、病院でも企業求人でも正社員で定時退社が可能です。

当然、パート薬剤師であれば時間の融通は利きやすくなりますし、派遣薬剤師なら基本的に残業なしが普通です。

ただ、一般的に定時退社を希望する場合は年収が下がります。派遣だと高年収を維持できますが、正社員でもパートでも、給料は減ることを認識するようにしましょう。

このような事実があることを認識したうえで、「残業なし・定時退社の求人」へ応募してみてください。事前の交渉は必要ですし、正社員やパート・アルバイト、派遣と勤務形態を考える必要はありますが、問題なく残業なしを実現することができます。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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派遣薬剤師は給料が正社員よりも高く、時給3,000円以上も普通です。さらには3ヵ月や半年だけでなく、1日などスポット派遣も可能です。「自由に働きたい」「多くの職場を経験したい」「今月、もう少し稼ぎたい」などのときにお勧めです。

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