薬剤師の就職先としては、調剤薬局やドラッグストア、病院、一般企業がほとんどです。中には公務員など公官庁で働く薬剤師はいるものの、基本的にはこれらの会社へ就職して働くのが一般的です。

ただ、中には少数ながらもクリニック(診療所)の薬剤師として働いている人がいます。クリニックなので病院ほど規模は大きくなく、基本的には1~2人の薬剤師で勤務することになります。

希少な求人ではありますが、クリニックで勤務する正社員やパート・アルバイトとして転職することも可能です。

それでは、診療所で働く薬剤師はどのような仕事内容になるのでしょうか。また、クリニックへ転職して働くことは可能なのでしょうか。この点について確認していきます。

クリニックには薬剤師の配置基準がある

病院であれば、必ず薬剤師を1人以上は置かなければいけません。ここでの病院とは、「患者20人以上の入院施設を有するもの」を指します。こうした配置基準があるため、病院で薬剤師がいないことはあり得ないのです。

そして同じように、診療所(クリニック)についても薬剤師の配置基準が存在します。これについては、医療法に明記されています。

医療法第十八条

病院又は医師が常時3人以上勤務する診療所にあっては、開設者は専属の薬剤師をおかなければならない

ここに「常時3人以上勤務する診療所」とあるように、3人以上の医師が勤務しているクリニックであれば薬剤師を置かなければいけないという配置基準があります。こうした診療所で薬剤師が不在であると医療法違反であり、違法行為をしていることになります。

薬剤師であっても、クリニックに配置基準があることを知っている人は少ないです。ただ、診療所であっても医師の在籍数によっては法律の関係上、薬剤師を雇わなければいけないことがあるのです。

そのため、少数ながらクリニックでも薬剤師の求人が存在します。なぜ、クリニックで薬剤師の募集が出るのかというと、こうした事情があるからなのです。

本来、院内処方をしている診療所はすべて薬剤師が必要

なお、処方せんを外に出さず院内処方している診療所はまだたくさんあります。こうしたクリニックでは、薬剤師は基本的に不在です。看護師や事務員が調剤を行い、患者さんに薬を出しているのが現状です。

こうしたことが常態化しているため、一見すると院内処方をしている診療所では薬剤師が不要のように思えます。それでは、本当に薬剤師は不要なのでしょうか。また、薬剤師が不在でも問題ないのでしょうか。

薬剤師法によると、以下のように定められています。

薬剤師法 第十九条

薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。ただし、医師若しくは歯科医師が次に掲げる場合において自己の処方せんにより自ら調剤するとき、又は獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない。

このように、たとえ診療所に薬剤師がいなかったとしても、医師が自ら調剤する場合は問題ありません。

しかし、実際のところどうなっているかというと、医師ではなく看護師や事務員が調剤しているのが現状です。看護師や事務員に調剤権はありません。院外処方をしている場合は問題ありませんが、院内処方で薬剤師が不在であり、看護師や事務員が調剤している診療所は違法行為をしているといえます。

つまり、世の中に存在する院内処方のクリニックはほとんどが違法です。

ただ、個人の診療所で専任の薬剤師がいなかったとしても取り締まられることはいまのところありません。違法ではあるが、逮捕・指導はされないということです。

クリニックの薬剤師による点数・診療報酬

それでは、診療所側としては薬剤師を置くことによってメリットはあるのでしょうか。もっといえば、クリニックに薬剤師を常駐させることによって、診療報酬として点数を取ることができるのでしょうか。

クリニックに在籍する薬剤師の場合、病院薬剤師の診療報酬に準じます。日本病院薬剤師会が発表している資料にも「病院・診療所薬剤師関係」という文言があり、病院薬剤師が行っているのと同じように点数を取ることができるのです。

例えば、以下は日本病院薬剤師会の資料ですが、ここには「診療所」という言葉が明確にでてきます。

そのため、入院患者がいる場合は退院時服薬指導加算、無菌製剤処理加算などを取ることができます。クリニックでの薬剤師は、病院薬剤師とほぼ同じことをすることになります。

また、入院施設や無菌調剤設備のない診療所であったとしても薬剤服用歴管理指導料を算定することができます。

薬剤師を募集しているクリニックと仕事内容

それでは、薬剤師の求人を出している診療所としてはどのようなものがあるのでしょうか。こうした診療所としては「有床クリニック」「美容外科・美容皮膚科」「企業内診療所」などがあります。

仕事内容はクリニックによって大幅に異なるため、それぞれについて確認していきます。

内科、外科をもつ有床クリニック

院内に内科や外科をもつ有床クリニックの場合、薬剤師の求人を出すことがあります。クリニックの中でも規模が大きく、さらには入院患者まで有しているため、薬剤師として入院患者へ服薬指導をしたり退院時の指導をしたりします。

有床クリニックの中身はさまざまです。循環器科や小児科、脳神経外科、整形外科、産婦人科、透析内科、肛門科と科目は異なります。

例えば、以下は有床クリニックから出されている薬剤師の求人です。

東京で出された総合科目の有床クリニックですが、正社員の薬剤師を募集しています。

ちなみに、こうした有床クリニックの求人へ応募すると、中には老人保健施設で働くようになることもあります。薬剤師を募集しているクリニックは大きな施設であることが多いため、老人保健施設も併せ持つことがあるのです。

また、専門性の高い有床クリニックについても求人が出るようになります。例えば、不妊治療を専門で取り扱う診療所であったり、透析クリニックだったりします。

例えば、以下は愛知県名古屋市にある不妊治療を目的としたクリニックでの求人募集です。

ちなみに、私は過去にスポーツ時にアキレス腱断裂を起こして入院したことがあります。このときは地元で有名な整形外科クリニック(有床クリニック)にかかったのですが、服薬指導のときは薬剤師が行ってくれました。院内処方であり、医師の数も多かったので薬剤師を雇っていたのだと思います。

転職では病院や調剤経験があるとなお良い

正社員やパート・アルバイトの診療所求人を確認したとき、「未経験でも可能」という文字を見ることがあります。こうしたクリニックであると、正社員やパートの薬剤師が他に1~2名在籍しているため、そうした人に指導をしてもらいながらクリニックでの経験を積むことができます。

たとえ有床クリニックであったとしても、必ずしも病院経験が必要なわけではないのです。無菌調剤施設のあるクリニックは存在するものの、問題なく業務を行うことができれば大丈夫です。

ただ、中には「病院経験がある人を募集」「調剤経験者を歓迎」としている求人募集もあります。こうした正社員やパート・アルバイトの募集であると、診療所は経験のある人を求めるようになります。例えば、以下のような求人になります。

東京にあるクリニックでの募集になります。正社員またはパート・アルバイトの求人ですが、「オープニングのため調剤の経験者を歓迎」とあります。

実際のところ、こういう診療所では1人で勤務することになります。そうした中で仕事をする必要があるため、調剤経験のない薬剤師が誰からも調剤や投薬の指導をされずに業務をこなしていくのは現実的ではありません。そのため、調剤薬局や調剤併設ドラッグストア、病院などで経験を積んだ後に診療所へ転職として働くのが現実的です。

また、「病院経験ありの人を募集」としている求人である場合、無菌調剤や病棟指導などさらに病院薬剤師に寄った業務内容になります。このような求人であると、病院薬剤師の経験がある人だけチャンスがあります。

美容外科(美容皮膚科)の求人と仕事内容

美容外科・美容皮膚科のクリニックで薬剤師の募集が出ることもあります。美容外科では保険診療ではなく、基本的に自費治療になります。そのため、診療報酬や保険点数などは関係ありません。

入院施設があるわけではないため、この場合は調剤業務や患者さんへの服薬指導がメインです。

ただ、調剤薬局の薬剤師と同じように仕事をしますが、単に薬の説明をするだけでは不十分です。自由診療の関係上、サプリメントや化粧品を患者さんの要望に応じて勧めることによって、売上を伸ばさなければいけません。薬だけでなく美容知識やサプリメント、化粧品に詳しくなる必要があるのです。

また、院内製剤を作成したりオリジナル薬の企画を行ったりします。漢方薬局で働く薬剤師がオリジナルの漢方製剤を作っているのと同じように、自分のアイディアで薬を調合することも実施します。そのため処方せん通りに調剤する薬剤師に比べて自由度が高く、アイディア次第では大きな成果を出すことができます。

オリジナル薬とはいっても、何を行うのかというと多くの場合で漢方薬の調合です。漢方薬はアトピーや肌荒れに活用されますし、肥満・ダイエットにも使用されます。そのため、美容外科や美容皮膚科のクリニックで必要とされるのです。

なお、以下に実際の美容外科(美容皮膚科)のクリニックで出されている求人を載せます。必要とする薬剤師数は多くないため、時期によって募集があるかどうかは異なりますが、次のような募集条件になっています。

「美容クリニックの経営」とあることから、美容外科や美容皮膚科の診療所から出された求人であることが分かります。

ちなみに美容クリニックの場合、ノルマを課せられることがあります。ただ、ドラッグストアのように給料にほぼ反映されないノルマではなく、ノルマを達成すると給料に反映されることが多いです。

これについては求人先の美容外科によって異なりますが、頑張れば頑張るほど成果として表れます。こうしたことに対してやる気になれる人にとっては、非常に向いているといえます。

・主な業務は漢方薬が関わる

なお、先ほどの求人では「漢方の仕事に特化した」という記載があります。基本的には、美容クリニックから出される薬剤師の求人は漢方薬に関わるものだと考えてください。西洋医薬品ではなく、漢方メインになるのです。

美容外科は自由診療ですが、漢方薬についても自由診療の中で行える範囲が広いです。

自由診療なので薬剤師でない無資格の人が行っても問題ありません。ただ、実際のところ薬剤師でない人が患者さんの指導に当たっても信頼されることはないため、薬剤師の人が対応に当たり、漢方薬の指導をすることになるのです。

薬学部で漢方薬や生薬について学ぶ機会は少なく、調剤薬局や病院でも勉強できる機会はほぼありません。そのため学ぶことは多いですが、新たな領域にチャレンジしたい人はお勧めです。

企業内診療所の仕事内容

非常に珍しい求人ですが、企業内診療所の薬剤師として働くという方法もあります。

企業内診療所とは、会社の中に存在する医務室のようなものだと考えてください。企業の中にあるクリニックを受診した後、その処方せんを薬剤師が調剤するのです。当然、企業内診療所をもっている会社は大企業になり、会社の従業員として「診療所内での調剤業務・薬剤管理」「社員の健康管理」を行います。

企業内診療所で働くメリットとしては、1日の処方せん枚数が少ないためそこまで忙しくなく、業務は17:30までなど早く帰れることにあります。

例えば、以下は東京に本社を置く総合商社内での診療所求人です。

土日休みであり、福利厚生も充実しています。業務内容は調剤薬局の薬剤師とほぼ同じです。年収が特別に高いというわけではありませんが、待遇はかなり優れています。ただ、企業内診療所は求人数が非常に少ないことがデメリットです。

診療所で働くときの年収はどうなのか

調剤薬局やドラッグストア以外であると、薬剤師の給料は非常に低いです。例えば、病院薬剤師の給料が少ないのは知っての通りです。

これと同じことは診療所でもいえます。有床クリニックでも無床のクリニックでも、こうした施設での薬剤師の年収は低いです。基本的には診療所で働くとき、病院と準ずる年収を提示されると考えてください。

もちろん、企業内診療所で働く薬剤師は大企業での給与体系なので、福利厚生を含めてかなり待遇が良いことがあります(契約社員での契約など、一概にはいえません)。ただ、企業内診療所の求人は非常に珍しいため、一般的に診療所で働く場合は基本的に年収が低めになってしまいます。

一方で自費治療が基本となる美容外科・美容皮膚科はどうなのでしょうか。この場合、あなたのやる気次第によって年収が高くなる可能性があります。例えば、先ほどの美容クリニックの場合、以下のように未経験者であっても年収480万円からになります。

それだけノルマをこなす必要はありますが、成果を出せばその分だけ給料に反映されます。自由度の高い職場で成果を出し、高年収を目指したいのであれば、こうした自由診療を行っているクリニックを目指してみましょう。

パート・アルバイトや派遣など、さまざまな働き方を考える

そして、これら診療所で勤務するときは正社員だけでなく、パートや派遣など多くの働き方が存在します。また、期間限定での勤務もあります。

例えば、「1年限定で薬剤師を募集する」などのような期間限定の求人が出されることがあります。有床クリニックや美容外科、企業内診療所など、ありとあらゆる求人で期間限定の求人があるのは普通です。

診療所では、薬剤師の必要人数は1~2人など非常に少ないです。このとき、例えば正社員の女性薬剤師が妊娠・出産のために抜けてしまうと、期間限定でその穴埋めをしなければいけません。

正社員として雇うと、1年後に休んでいた人が復帰したときに無駄に人員が増えて人件費がかさみ、経営を圧迫してしまいます。そこで、パートや派遣など期間限定の求人を出すのです。例えば、以下は神奈川県横浜市の有床クリニックから出されたパート・アルバイトの募集です。

薬剤師はさまざまな働き方を選択できるため、診療所で働くことを検討している場合はパートや派遣、さらには期間限定の求人まで視野に入れましょう。

診療所に転職し、薬剤師として活躍する

ここまでを理解したうえで、クリニックで働くことに興味がある場合は転職活動を考えてみてください。診療所の薬剤師は珍しいものの、クリニックによっては求人を出しているため、そこに応募することができます。

ただ、診療所の求人は非常に少なく、特殊案件であるために自らの力で募集を見つけるのは非常に難しいです。そこで3社以上の転職サイトを活用し、プロの手を借りながら求人を探すようにしてください。

病院薬剤師としての経験がなかったとしても、診療所によっては問題なくクリニックで働くことができます。

有床クリニックや自由診療の美容外科・美容皮膚科、企業内診療所など、診療所の薬剤師はいろんな選択肢があるため、自分に合った働き方を検討してみるといいです。


薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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