高額な収入を実現し、さらには自由な働き方をするために派遣薬剤師を選択する人は多いです。ただ、正社員ではないので派遣薬剤師をすることに対して不安を抱く人がいるのも事実です。「これからも派遣の仕事はあるのだろうか」「将来性は大丈夫か」と考えてしまうのです。
派遣での採用だと、正社員に比べるとスキルは見につきません。重要な仕事を任されることはないからです。
「エリアマネージャーを目指す」など重要なポストを目指すことを重視しているのであれば、派遣では実現できません。ただ、これから将来にわたって派遣の仕事がなくなることはあり得ないので、ずっと派遣であったとしても薬剤師である以上は今後困ることは少ないです。
また、派遣としての職歴が続いたとしても正社員などに転向することは問題なく可能ですし、派遣であることを特に気にする必要はありません。ただ、注意点はあります。そこで、派遣薬剤師として働くときの将来性について確認していきます。
もくじ
薬剤師の派遣需要が今後なくなるのはあり得ない
薬剤師は転職しやすい職業だといわれています。これは、それだけ薬剤師の需要が高いからです。
厚生労働省が出している統計データでも、薬剤師の求人は非常に多いことが記されています。以下は実際のデータですが、2013年の有効求人倍率は10.05となっています。
好景気の日本でも一般的な有効求人倍率が1.5であることを考えると、薬剤師を中途採用したい会社が非常にたくさんあることを理解できます。
これまでも「薬剤師は将来性がない」「薬剤師は余る」と言われてきました。実際、2006年に薬学部が4年制から6年制に移行されたあたりから薬学部が乱立されるようになり、薬剤師はこれから余るといわれてきました。
しかし、実際はどうでしょうか。それ以上に調剤薬局が増え、薬剤師は余るどころかむしろ足りていません。実際、先ほどの統計データもで「2006年の有効求人倍率は7.28」となっており、2013年ではむしろ有効求人倍率は上がっています。
医療者の中で、余っているのは歯科医師くらいです。医師や薬剤師、看護師などの職種はいつの時代も慢性的な人手不足に陥っているのです。
・派遣を含め薬剤師の仕事はなくならない
薬剤師の足りない状態がさらに加速することはあっても、充足してくることはありません。そのため、当然ながら派遣の求人は常に出され続けるようになります。
「派遣の求人は今後も出続けるのだろうか?」と心配する必要はありません。仮に薬剤師の人数がいまの倍ほどに増えたとしても、それでも有効求人倍率は5以上です。
また、派遣の仕事をずっと続けて60歳ごろになったとしても、そこからパート・アルバイトへ転職することは可能です。場合によっては、「薬剤師を欲する企業求人でかなり楽な仕事をしながら働く」という選択肢もあります。
例えば、以下は企業の物流センターから出された企業求人です。
このように、70歳までであっても働くことが可能な求人となっています。そう考えると、いま派遣を続けていたとしても、薬剤師としてこれから仕事がなくなることはあり得ないと考えたほうがいいです。
ピンポイントの派遣もなくならない
なお、薬剤師が足りなくて困ったときに中途採用が出されるようになる派遣ですが、ピンポイントで薬剤師を欲する薬局はいつの時代も存在します。
- 特定の日だけスポット的にヘルプが欲しい
- 夕方以降の薬剤師だけ足りない
- 日曜だけ薬剤師に勤務してほしい
パート・アルバイトであると、ずっと同じ職場で働くようになります。そのため、上記のような特殊な勤務方法に納得してくれる人は少ないです。しかし調剤薬局やドラッグストア側としては、こうした要望をもっていることが非常に多いです。
薬剤師は一般的にゆるい働き方を希望するため、土日休みが必須だったり、17:00までの時短勤務を要望したりする人が多いです。そうなると、土日や17:00以降に薬剤師が足りなくなるのです。その結果、1日の勤務だけでなく「週末のみ」「夕方や夜間のみ」の派遣求人も出されます。
例えば、以下は夜21時まで勤務可能な派遣求人です。
遅番21:00まで勤務できる人を探している神奈川の調剤併設ドラッグストアから出された採用募集です。
たとえ薬剤師の在籍人数の多い店舗であったとしても、特定の曜日や時間だけ薬剤師が足りなくなることは頻繁に起こります。そうした調剤薬局やドラッグストアから派遣求人が出されるため、こうした点からも派遣求人が無くなることはないのです。
スキルの点では将来にわたり身に付かない
ただ、派遣で働く場合は考えなければいけない点があります。それは、薬剤師としてのスキルです。派遣社員の場合、特に重要な業務を任されることはありません。そのため、スキル面で身に付くものはないのです。
例えば調剤薬局で派遣勤務する場合、投薬ばかりになります。患者さんへ服薬指導ばかり担当することにより、多くの処方せんをこなすことになります。
当然、派遣社員が薬局内のシフト調整や在庫管理、従業員とのやり取りをすることなどあり得ません。店舗管理は必ず正社員が行います。派遣社員が管理薬剤師としての業務を担当することはないのです。
同様に病院で派遣をするときもスキルは特に身に付きません。病院薬剤師の場合、調剤ばかりになるのが基本だからです。病棟業務は常勤薬剤師が行い、派遣薬剤師はピッキングや粉薬の調剤などの仕事がメインになります。
薬剤師は人手が足りないため、派遣として薬局や病院のヘルプを担当することで非常にありがたいと思ってもらえます。ただ、スキルアップという意味では期待できないと考えなければいけません。
・スキルレベルはパート薬剤師と同程度
そのため、派遣で働くときの知識やスキルはパート・アルバイトで働く薬剤師と同レベルになると考えるといいです。
ブラックな「調剤薬局やドラッグストア、病院」でない限り、パート薬剤師が重要な仕事を任されることはありません。在庫管理やシフト調節を含め、店舗管理業務は必ず正社員が行います。
そのため正社員であれば、調剤・監査・投薬に限らないマネジメント知識がつくようになります。ただ、パートでも派遣でもそうした知識を身に付けることはできません。これが、一般的にパートと派遣では技術レベルが同じくらいになりやすい理由です。
これから管理薬剤師以上の役職を目指すときは注意
男性だと将来は管理薬剤師以上の昇進を考えている人もいます。その場合、派遣での職歴はキャリアにつながらない以上、派遣でのキャリアアップは難しくなると考えるようにしましょう。
仮に薬局薬剤師の正社員に戻るにしても、勤務薬剤師としての転職になります(一人薬剤師の店舗への転職は除く)。薬剤師としてキャリアを磨き、昇進することでエリアマネージャーや管理職を含めて上の役職を考えている人にとって、派遣薬剤師は向いていないといえます。
ただ女性薬剤師をはじめとして、特に昇進を考えていない人も多いです。そうした人であれば、派遣をすることで店舗管理能力を身に着けることができなかったとしても特に問題はありません。
・給料を考えると派遣薬剤師の圧勝
なお年収面だけで考えると、正社員の薬剤師として働き続けて上を目指すよりも、派遣薬剤師を選択した方が生涯年収は圧倒的に上になります。
例えば東京や大阪で薬剤師をする場合、中小薬局でも年収450万円となります。大手チェーン薬局や病院だと、さらに収入は低くなります。
一方で派遣薬剤師の場合、東京や大阪などの都市部でも時給3,000円以上が普通です。どれだけ低くても時給2,800円以上が適切であり、以下のような時給3,000円求人はたくさんあります。
東京の調剤薬局から出された求人ですが、時給3,000円です。仮にこの求人で週5日働く場合、月の収入は以下のようになります(休憩1時間だと仮定)。
- 時給3,000円 × 1日9時間 × 月20日 = 54万円(年収648万円)
そのため、正社員として頑張って働いて昇進を目指すよりも派遣で働くほうが高収入になります。
仮に正社員で退職金が出されるにしても、月3~4万円ほど積み立てられる計算です。退職金を考慮しても、派遣をするほうが最終的な年収額は圧倒的に多くなります。
いろんな求人に採用され、職場を変わるのが派遣
男性でも女性でもそこまで昇進にこだわりがなく、単純に効率よく稼ぎたい場合は派遣薬剤師が優れています。
下手に昇進しても、無駄に残業が多く疲れるだけのケースはよくあります。それよりも好きな時間だけ働き、長期休暇をいつでも取得でき、さらには簡単な仕事をしながら高年収を実現できる派遣薬剤師は魅力的です。
このとき、派遣薬剤師は正社員を雇うためのつなぎとして考えている経営者が多いです。派遣薬剤師を雇うのは非常に高額になるからです。
例えば、時給3,200円で派遣薬剤師を雇うとします。この場合、派遣会社(転職サイト)へ仲介料を支払わなければいけないため、こうした費用を加えると総額で時給5,000円になります。もし、このケースで1日9時間フルタイムの勤務をするとなると、年間1,000万円以上の経費になります。
年収500万円の薬剤師を2人雇えることになるため、かなり大きな負担になります。そのため、ほとんどのケースで派遣社員は「正社員やパート・アルバイトを正式に雇用できるまでのつなぎ」となるのです。
実際のところ薬剤師が足りておらず、正式に薬剤師を雇うのは難しいです。そのため長期派遣は可能になっていますが、薬局が薬剤師を雇用できた場合、次回の派遣更新が打ち切られることは理解しておきましょう。
ただ、既に述べた通り派遣求人が無くなることはなく、いくらでも求人が存在します。そのため、次の求人へ申し込んで別の職場で働けば問題ありません。いろんな職場を渡り歩くのが派遣薬剤師の働き方だと考えましょう。
いろんな場所で働いても職歴に傷はつかない
このとき多くの職場を転々と変わったとしても、派遣薬剤師であれば職歴に傷が付くことはありません。
正社員やパート・アルバイトを含め、転職を繰り返していろんな職場を経験していると、それだけでマイナス評価になります。転職回数が多いとデメリットしかありません。
一方で派遣であれば、「同じ職場で3年までしか勤務できない」と法律で定められていますし、いろんな職場で派遣勤務することが前提となっています。
また派遣社員の場合、就職先は派遣先の薬局や病院ではなく、派遣会社に在籍していることになっています。派遣会社という同じ会社に在籍し、派遣されることになるため、いろんな職場を経験しているとはいっても転職を繰り返しているわけではありません。そのため、当然ながら今後の職歴に傷が付くことはないのです。
・正社員雇用で良い職場を見つけるためのつなぎも多い
職歴に傷が付かないため、薬剤師によっては「正社員勤務を考えているが、優れた職場を探したいので、良い中途採用の募集が見つかるまでのつなぎとして派遣社員をしたい」という人もいます。
派遣薬剤師というのは、あらゆる場面で活用できます。今後の職歴に影響がなく、勤務地や働く時間を含めて自由度の高い働き方が派遣なのです。
・長期派遣で長く働くことは可能
なお、いろんな職場を転々とすることが前提の派遣ではありますが、長期派遣が可能な求人はたくさんあります。正社員やパート・アルバイトを新規で雇用するまでのつなぎとはいっても、実際のところ正社員の薬剤師を雇うことができない調剤薬局やドラッグストアはたくさんあるからです。
例えば、以下は横浜(神奈川)の調剤薬局から出された長期歓迎の派遣求人です。
転職サイトを利用すれば、こうした長期可能な求人を紹介してもらうことが可能です。
短期であれば投薬ばかりになる派遣ですが、長期派遣であれば調剤・監査・投薬(服薬指導)を含めすべての業務を任されるようになります。もちろん店舗管理業務はないですが、一般的な薬剤師と同じ作業をこなして経験を積みながら勤務できるようになります。
転職サイトを利用して派遣勤務する
このとき、派遣勤務する場合に必ず必須になる過程が「派遣会社(転職サイト)へ登録」です。転職エージェントを利用しないと派遣薬剤師として活躍することは不可能です。そのため、派遣を考える場合は必ず転職サイトを利用しましょう。
転職エージェントには、いろんな種類の派遣求人が存在します。時給の違いがあるのは当然として、以下のように異なるのです。
- 週4日以上の勤務を必要としている中途採用
- 夕方以降の派遣
- 午前だけでも問題ない派遣社員
- 1ヵ月だけの短期派遣
こうした求人の中から希望条件に合うものを選び、高時給の案件を紹介してもらうようにしましょう。スキルが身に付かないのはどの派遣求人も同様ですが、条件面は異なるので優れた中途採用へ応募するのです。
ただ、派遣の転職サイトは2つ以上を活用するのを基本にしましょう。これから派遣求人へ応募するといっても、転職サイトごとに保有求人が異なりますし、担当者によっておすすめしてくる募集が変わるからです。
また派遣で勤めている会社の契約が切れたとき、2つの派遣会社を並行して利用していれば、次回の派遣求人についても素早く提示してくれるようになり、さらには比較検討しながら選べるようになります。そのため、複数の転職サイトを活用するのは必須です。
派遣薬剤師の将来性を考え、派遣勤務をする
将来性という意味では、今後派遣がなくなることはありません。また、薬剤師不足はより加速することから、派遣薬剤師の時給が下がることも考えにくいです。そのため、派遣の仕事がなくなることを心配する必要はありません。
ただ、将来にわたってスキルが身に付かないのはデメリットです。薬剤師として管理薬剤師以上を目指す場合は正社員である必要があり、正社員だからこそ店舗管理を任せてもらいます。そのため、派遣薬剤師のスキルはパート・アルバイトと同程度で留まります。
しかし、そうした店舗管理業務に興味がなかったり、管理職を目指さなかったりする場合は派遣薬剤師が最適です。退職金を考慮しても生涯年収では派遣の方が圧勝であり、さらには自由にいつでも働ける派遣は魅力的だといえます。
こうした派遣の将来性に関するメリットやデメリットを理解したうえで、派遣勤務をしましょう。このとき、おすすめの転職サイトは以下の2つです。
・薬キャリAGENT
薬剤師の転職サイトで最大手の一角を占めるのが薬キャリAGENTです。求人数が圧倒的であり、派遣求人についてもたくさん取り扱っていることで有名な転職エージェントです。
薬キャリAGENTではサイトとの電話でのやり取りがメインになりますが、高額求人をたくさん保有しており、ヒアリングをしたその日のうちから派遣求人を紹介してもらえます。派遣を希望するとき、まずは薬キャリAGENTを利用しましょう。
・お仕事ラボ
同じく転職サイトの大手としてお仕事ラボが知られています。転職エージェントでは珍しく、派遣に大きな強みをもった転職サイトになります。
面談にこだわりのある会社なので、派遣であっても面談で薬剤師の要望をヒアリングしながら要望を吸い取ってくれます。薬キャリAGENTとはスタイルが異なるため、両方へ登録することで求人を比較すれば、優れた募集をさらに見つけやすくなります。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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派遣薬剤師は給料が正社員よりも高く、時給3,000円以上も普通です。さらには3ヵ月や半年だけでなく、1日などスポット派遣も可能です。「自由に働きたい」「多くの職場を経験したい」「今月、もう少し稼ぎたい」などのときにお勧めです。
インタビュー記事:薬剤師の転職サイト
・ファーマキャリア
薬剤師求人の中でも、「どこにも載っていない難しい案件」を探すことに特化した、オーダーメイド求人の発掘を行っているファーマキャリアさまへ取材しました。