薬剤師の就職先は一般的に調剤薬局やドラッグストア、病院などです。ただ、製薬メーカーで働くことを考える薬剤師もたくさんいます。製薬企業でも広く薬剤師が必要とされているため、サラリーマンとして勤務するのです。
このとき製薬会社で働くにしても職種はそれぞれ異なりますし、それに応じて具体的な仕事内容は変わってきます。
製薬会社といっても、どのような働き方をするのかによって年収や待遇を含めてバラバラだと考えましょう。また、製薬会社の中でも未経験の状態から薬剤師として応募できる職種とそうでない職種があります。
そこで、「どのように考えて薬剤師が製薬メーカーの中途採用募集へ申し込めばいいのか」について解説していきます。
もくじ
薬剤師が未経験で応募できる製薬企業の採用は4職種
製薬会社ではいろんな職種があります。このうち、調剤薬局やドラッグストア、病院などで働いている薬剤師が未経験であっても応募できる職種は4つに限られています。それぞれ、以下のようになります。
- CRA(開発職)
- 薬事職
- 学術・DI
- 品質管理
製薬メーカーを目指す場合、これらのうちどの職種を目指すのかを最初に考えなければいけません。職業によって仕事内容が大幅に異なるからです。
それぞれの仕事内容や年収・給料の相場観は以下のようになっています。
CRA(開発職)は製薬メーカーで重要な役割
製薬会社で働くとき、花形と呼ばれる職業に開発職があります。治験業務に携わることにより、医薬品の臨床開発を実施するのが主な業務になります。薬の開発をしないと自社製品を世の中に出せないため、非常に重要な役割を担う職業となります。
治験を実施するとき、法令に従って患者さんに投与されていなければいけません。このとき、医療機関が正しく臨床試験を実施しているかどうかを確認し、チェックする作業をモニタリングといいます。モニタリング業務が開発職の主な業務です。
製薬会社側の治験をサポートするのがCRAです。あらゆる大学病院・総合病院を回るため、飛行機や新幹線などを使って日本全国を飛び回るようになります。
こうした開発職は未経験でも中途採用の求人が存在します。例えば、以下は東京や大阪などに支店をもつ会社から出された臨床開発職の募集です。
このように、MR経験または薬剤師経験(調剤薬局や病院など)がある場合、問題なく応募できることが分かります。こうしたCRAの募集は多いため、調剤以外の職種を目指したい場合は製薬会社の開発職を考えるといいです。
なおCRAについては、英語力が要求される職種でもあります。国際共同治験など、世界で統一された治験を実施するときは海外の人とやり取りをする機会が多くなります。そのため、マネージャー以上を目指す場合は英語を話せることが必須です。
もちろん、こうしたことを見据えてCRAでは英語の教育プログラムを受けることができます。転職すれば、製薬会社のお金を使って英語の勉強まで可能というメリットがあります。
薬事職は高収入で専門性が高い仕事内容
製薬メーカーの中でも、開発職は高年収になることで知られています。ただ、同じく高い収入になりやすい職種として薬事申請があります。薬事職とも呼ばれており、臨床開発された医薬品の承認申請を通すために行政とやり取りをするのが仕事になります。
法律について学ぶ必要があり、非常に専門性の高い職業となっています。そのため薬事職の人数は足りておらず、一度でも専門知識を身に付けてしまえばその後は優れた条件で別の会社へ転職するなども可能になっています。
意外と知られていませんが、CRAと同じように高い収入を実現でき、重宝されやすいのが薬事職です。
このとき、CRAは製薬会社からメインに求人が出されるものの、薬事申請の場合は医療機器メーカーや化粧品会社を含めて幅広く出されます。以下のような製品であっても、薬事申請をすることで承認を得なければいけないからです。
そのため、薬事職を考えるときは製薬会社だけでなく、医療機器メーカーや化粧品会社まで視野に入れるようにしましょう。そうしなければ転職活動で成功しにくいからです。
ただ、こうして薬事職の中途採用募集を探せば求人を見つけられるようになります。例えば、以下は大手メーカーから出された求人です。
薬剤師資格の保有者であることは必須であり、さらには「調剤薬局などでの勤務経験があれば歓迎する」と条件に記されています。つまり、臨床経験を含め薬剤師として活躍したことがあるなら問題なく転職できます。
薬事職は特に資格がなくても業務を遂行することができます。ただ、仕事内容は薬や法律が関わる専門的な内容のため、どうしても薬剤師経験者が優遇されるようになるのです。
また、開発職と同じように高度な英語力が要求される職業でもあります。海外の論文を読む機会がありますし、製品開発を海外で行うことも頻繁にあります。そうしたとき、英語を活用することが多くなるのです。そのため、英語能力の高い薬剤師だと転職に有利です。
学術・DIで内勤業務を行うメリット
内勤メインで業務をする製薬会社の薬剤師もあります。この代表例として学術・DIがあります。
薬を利用するとき、詳細な使い方や適用外使用、添付文章に記載されていない臨床データなどを含め、深く理解したいと考える医師や薬剤師は多いです。そうしたことを知ることで、ようやく患者さんへ応用できるようになるからです。
こうしたとき、コールセンターとして医師や薬剤師から問い合わせを受けて回答する部門が学術職になります。またDI業務だと自社の営業(MR)からも質問されるため、それに答えることも頻繁にあります。
製薬企業で学術職をするとき、求人先は新薬メーカーに限りません。動物用医薬品の会社であったり、ジェネリックメーカーだったりする会社からも募集が出されます。そのため学術で内勤業務の薬剤師を目指す場合、新薬メーカー以外も狙うようにしましょう。
これら製薬メーカーの学術担当については、主に東京や大阪などいろんな都市部で出されます。以下は大阪にある製薬会社から出されたDI求人です。
当然ながら土日休みであり、薬剤師としての経験があればすぐにでも学術職として活躍できるようになります。
ただ、CRAや薬事職などの職種に比べると収入はどうしても低くなってしまいます。コールセンター業務であり、医療知識は必要になるものの他の職種ほどの高度な専門知識が要求されるわけではないからです。
そうはいっても定時退社が可能であり、ものすごく忙しい仕事内容にはなりにくいことから女性薬剤師を中心にして人気の職種となっています。
品質管理として工場勤務で就職する
薬剤師の就職先としては工場もあります。工場では品質管理の職種が存在し、薬剤師が主に仕事をしています。
こうした医薬品の製造現場では、工場に必ず薬剤師を置かなければいけないと法令で定められています。薬剤師がいなければ法律違反になるため、必ず薬剤師を必要としているのです。そのため、製薬メーカーの工場からは管理薬剤師の募集が出されます。
製薬会社であれば、製品の品質が基準値内に収まっているかどうか把握するために以下のような分析機器を活用します。
ただ、こうした機器を利用するのは雇われ派遣の人たちであり、薬剤師はそれらを分析するなどより高度な仕事内容になると考えましょう。
また地味なように思われがちは工場での品質管理ですが、製薬会社の品質管理は薬事職としての側面も有しています。薬は臨床開発するときに限らず、実際に市場に出た後も重大な副作用が出現していないか注意深く観察する必要があるからです。そうしたとき、行政への報告を品質管理が行います。
例えば、以下は名古屋から出された品質管理の募集です。
このように、一般的な品質管理に限らず仕事内容として薬事申請についても記載されています。これは工場の品質管理だと、薬事までカバーしなければいけないからです。
なお、品質管理で薬剤師が必要になるのは製薬会社だけでなく、医療機器や化粧品関係の会社でも同様です。そのため、製薬メーカー以外に品質管理の中途採用募集が出ていないか確認するといいです。
研究職・MRの募集は存在しない
なお製薬会社に応募することを考えるとき、職種の観点で注意するべき点としては「研究職やMRの求人は存在しない」ことがあげられます。どれだけ薬剤師としての経験があったとしても、これらの職業に就くことはできません。
研究職というのは、「薬学部卒業後に新卒で就職する」「研究職の経験者が転職する」という方法以外になることはできません。
MRも同様に新卒就職であったり、MR経験があったりする人でないと採用を受け付けてくれません。そのため、製薬会社では研究職やMRの職種は花形となりますが、これらの職業に未経験で応募することは諦めなければいけません。
同じ製薬会社であっても、職種によって申し込めるケースとそうでないケースがあります。これらを正しく見極めるようにしましょう。
パート・アルバイトや派遣も期待できない
また製薬会社での転職を考える場合、パート・アルバイトや派遣についても求人はほぼ存在しないと考えましょう。
企業でもパート可能なことはありますが、多くは医薬品卸や倉庫など物流会社になります。こうした会社でも薬剤師が必要になり、法令で薬剤師を設置しなければいけないと明記されています。ただ、仕事内容はそこまで大変ではなく、覚えることも少ないので薬剤師のパート募集が出されるのです。
一方で製薬会社になると、たとえ内勤であっても業務はそれなりに高度になります。週に数回ほどのパート勤務で仕事ができるわけではないため、製薬メーカーでは正社員での転職が原則です。
ただ、工場での品質管理については例外的にパート求人が稀に出されます。例えば、以下は神奈川から出た品質管理のメーカー募集です。
前述の通り、工場では薬剤師がいないと法律違反になります。そのため、どうしても薬剤師を正社員で雇用できないときはこのようにパート求人が出されます。
こうした募集だと仕事内容は忙しくなく、ゆったり業務をこなすことができます。ただ、管理薬剤師としてのパート募集なのでフルタイムパートになることは理解しなければいけません。
調剤薬局・病院と違い、将来の年収・給料は高くなる
それでは、こうした製薬会社の薬剤師として働くメリットは何かというと、分かりやすいものとしては「収入が高くなる」ことがあげられます。土日休みになるのは当然として、専門性を磨くことで高年収を実現できる職場でもあるのです。
実際のところ、薬剤師だと調剤薬局で良くて年収600万円ほどです。ドラッグストアだと年収700万円なども可能ですが、土日祝日の出勤が普通で異常なほどの残業をこなしての収入です。病院については初任給ですら低く、昇給もほぼありません。
ただ、製薬会社であれば専門スキルを磨くことで年収1,000万円を達成することも問題なく可能です。実際、地味に思われやすい品質管理であっても高い給料となります。例えば、以下は中枢神経や糖尿病に強みをもつ外資系メーカーから出された品質管理の募集です。
年収1,000万円以上の中途採用となっていますが、このように年収面でのメリットについては製薬会社が最も大きいです。
初任給は調剤薬局やドラッグストアの薬剤師に比べるとどうしても劣ってしまいます。初任給は一般的なサラリーマンと同じであり、特に薬剤師手当が付くわけではありません。ただ、昇進や転職を重ねることでその後の昇給率が非常に高くなるという違いがあるのです。
製薬企業は転職サイトの利用が必須
ただ、こうした条件面で優れた製薬会社の募集を探す場合、大きな問題点があります。それは、「自分一人の力で求人を探すにしても、そもそも見つけ出すことができない」というものです。
薬剤師にとって一般企業の求人募集というのは、調剤薬局や病院と違い非常に珍しいです。求人は非常に少なく、募集を見つけることすら困難になりやすいのです。また、製薬会社だと大企業になるので不採用となる可能性があり、事前の対策も練らなければいけません。
そのため、必ず転職エージェントを活用するようにしましょう。転職サイトには多くの求人が存在するため、そうした中から募集を選べるようになっています。
しかし前述の通り、転職サイトを利用したとしても求人数は限られます。例えば、以下は求人数5万件以上をほこる転職エージェントで製薬会社を検索したときの結果です。
このように、全体で6件しか求人募集が存在しません。ゼロではないものの、非常に数は少ないと考えましょう。
そのため転職エージェントへ登録するとき、製薬会社を検討する人で一つだけの転職サイトを利用する人はいません。必ず2~3社以上の転職サイトを活用します。また、本気で製薬会社の内定を勝ち取りたいのであれば4~5社ほどの転職サイトを利用するのが適切です。
また転職に成功する秘訣として、他にも「製薬会社に限らず医療機器メーカーや化粧品会社も視野に入れる」ことがあげられます。こうした会社でも薬事職や品質管理などの薬剤師募集は出されますし、製薬会社と同様に年収面での待遇は優れています。
こうしたことを理解したうえで転職サイトを利用し、製薬会社の募集を見つけて応募するようにしましょう。
製薬会社で働く薬剤師の役割や必要性を理解する
多くの会社で薬剤師を欲するようになりますが、この代表的な会社として製薬企業があります。資格がなくても業務を行えるCRAや薬事などの職業であったとしても、臨床経験のある薬剤師を未経験で採用している会社は多いです。
これは、それだけ薬剤師としての知識があれば役割の大きな仕事を任すことができるからです。また、工場の品質管理ではそもそも薬剤師がいなければビジネスをすることができません。
薬剤師としての必要性は高いため、製薬会社で働くことについても視野に入れましょう。
ただ、製薬会社の求人数は非常に少ないという特徴があります。そのため、3~5社の転職サイトを利用しなければ転職できないというデメリットがあります。しかし、医療機器メーカーや化粧品会社まで視野に入れ、目的の職種を根気強く探せば問題なく転職成功できます。
土日休みが基本であり、残業が少なく年収も高い優れた職場が製薬会社です。そのため人気の転職先となっていますが、調剤以外での転職を実現したい人におすすめの就職先となります。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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