いろんな業界の中でも転職が活発な職種の一つに薬剤師があります。薬剤師として転職を考えている人は非常に多いのです。
ただ、転職をするときに迷ってしまう人も非常に多いです。就職先は人生を変えるほどでもあるため、当然ながら慎重に職場を選ばなければいけません。
そうしたとき、他の薬剤師はどのようなことが決め手となって転職するのでしょうか。こうしたことを理解しておけば、転職時に薬剤師として気をつけるべきポイントが見えてきます。
ここでは、どのような点に注意して薬剤師が転職すればいいのかのアドバイスを含めて解説していきます。
もくじ
転職で迷う薬剤師は何が決め手となっているのか
これから転職をするとき、明確な目標や条件が決まっているわけではなく「いまの職場でずっと単調な仕事をするのは考えられず、ひとまず転職したい」と考える人がいます。
ただ、こうしたザックリとした動機での希望条件のまま転職する場合、ほぼ確実に失敗してしまいます。以前よりも悪い条件で勤務することになったり、人間関係が良くない職場へ就職してしまったりするのです。そのため、どのような調剤薬局やドラッグストア、病院、企業へ就職したいのか明確な条件を挙げなければいけません。
しかし、転職での経験が少ないと「どのような条件を挙げ、就職すればいいのか」が判断できません。そうしたとき、他の薬剤師がどのような決め手で転職しているのか知っておくことは非常に重要です。
また既に希望条件が明確だったとしても、本当に転職するべきかどうか迷ってしまう薬剤師もたくさんいます。このときも同じように、「多くの薬剤師が転職するときの決め手」を理解しておくと転職に成功しやすくなります。
このとき、転職での主な決め手としては以下のようなものがあります。
- 希望の年収・給料を実現できた
- 勤務の曜日・時間や家からの距離など、希望通りの働き方が可能
- 自分の将来ビジョンを明確にできた
- 職場(調剤薬局など)の雰囲気や社長の人柄が優れていた
それぞれについて確認していきます。
希望の年収・給料を実現できた
転職に迷うとき、考えるべき点として「あなたの今の収入は適切か?」というものがあります。要は、いまの年収に満足できているかどうかです。
お金の話にはなってしまいますが、薬剤師という高度な資格をもって働いているため、経験が上がるにつれて高い年収を提示してくれるのは当然だといえます。薬局や病院は年収が上がりにくいことで知られているものの、それでも入社時とほとんど給料が変わらない状態は微妙です。
年収というのは、その人の評価の度合いだといえます。いまの職場で高い年収を支払ってくれる場合、あなたは評価されているので正直転職するべきではありません。しかし、給料が低いのであればあなたは適切に評価されていないといえます。
新人・後輩の指導をするようになったり、店舗運営に関わるようになったりしたとき、周囲の薬剤師に比べて高い収入を実現できているかどうかは転職に迷うときの一つの判断材料になります。実際、まったく同じ仕事内容で人間関係の問題も同じ条件であれば、高い給料の職場へ転職するはずです。
なお、給料で特に問題になりやすいのが大手チェーン薬局です。東京や大阪などの都市部でも、中小薬局やドラッグストアであれば年収450万円以上が基本です。しかし、大手チェーン薬局の場合は年収400万円未満となり、病院薬剤師並みの収入になるケースが多いです。
つまり、非常に安い給料で使われるようになります。こうした状況を含め、低い給料は適切な状態とはいえません。実際、30店舗以上の薬局だと3年離職率が42%と非常に高いことが知られており、これには年収が非常に低いことも関わっています。
特に転職理由が明確に思い浮かばない場合、給料の額を最優先事項に考えるといいです。年収アップは多くの薬剤師が掲げるため、収入を転職条件に挙げること自体は普通です。
・本心に従って年収額を決めることは重要
そこで、どれくらいの収入を希望するのか明確に決定するようにしましょう。このとき、できるだけ自分の本心に従う方がいいです。
薬剤師の場合、真面目な人が多くたとえ転職サイトを利用するにしても、希望より低めの年収を伝える人は非常に多いです。ただ、これでは本当の意味で優れた条件での転職は実現できません。そのため、できるだけ本心に従って年収額を決め、率直な意見を伝える方が結果的に転職で成功できます。
勤務の曜日・時間や家からの距離など、希望通りの働き方が可能
また、自分が希望する条件を実現できる薬局を探すことができた場合も転職の決め手になります。
「土日休み」「週3日のパート勤務」「午前だけ働く」「17:00退社」「家から近い」など、明確な勤務条件を掲げる人は多いです。特に子育て中のママ薬剤師に多いですが、これらの勤務方法が可能な薬局を探すのです。
調剤薬局やドラッグストアであっても、育児に理解のある職場は少ないです。ただ、数は少ないながらも子育て環境が整っている薬局は存在するため、そうした薬局を目指す人がたくさんいます。
例えば以下の東京にある調剤併設ドラッグストアでは、「育休を子供が1歳半になるまで可能」「子供が小学校6年生まで時短勤務できる」などの特例があり、子育てしやすい環境であることが分かります。
こうした調剤薬局やドラッグストアを目指すことにより、希望する勤務方法を実現できます。もちろん、これらの勤務方法の選択により自分のわがままを通す結果になるので年収は下がります。しかし、希望した働き方を重視する人にとっては転職での決め手となります。
また、中には「夜間バイトをしたい」「日曜日にダブルワークで勤務したい」と考える人もいます。こうしたときも同様に、希望の勤務方法を実現できたとき、働く先を決定する傾向が強いです。
自分の将来ビジョンを明確にできた
他にも、キャリアアップを含めた将来ビジョンも重要です。特に男性の場合、将来のキャリアアップがどうなるのかを考える必要があります。
どれだけ頑張っても管理薬剤師で止まる人は非常に多いです。また、病院薬剤師であっても上の役職が詰まっていて課長職に到達できない人はたくさんいます。そうしたとき、同じ職場で留まるのではなく早めに転職し、自分の目指す将来の姿を実現できる職場へ就職するのです。
このとき、既に薬局や病院を含め何年も薬剤師として働いているのであれば、管理職を目指しても問題ありません。エリアマネージャーや幹部候補、病院の薬剤部長を含めてこれらの求人が出されるのは普通です。
例えば、以下は東京にある調剤薬局から出されたエリアマネージャー求人です。
まずは1年の現場配属として管理薬剤師を経験し、その後にエリアマネージャーへ昇進できるかどうか決まりますが、現場で頑張ることによってそれ以上の待遇を実現できる求人になっています。
こうした上級職の求人は調剤薬局やドラッグストア、病院でも存在するため、薬剤師経験が長い人は「こうした求人で採用される」ことが転職での決め手となります。
・スキルアップできる環境は適切
また、こうした管理職を目指すだけの経験年数を積んでいなかったとしても、スキルアップできる環境の職場を選ぶことも重要なポイントになります。例えば、地域住民を相手に薬の指導ができたり、学会参加ができたりする職場へ就職するのです。
私も調剤薬局の薬剤師として、公民館で地域住民を相手にセミナーを開催した経験があります。そのときの様子が以下になります。
職場で単調な作業をするだけでなく、こうした活動まで行えば自分にとっても刺激になります。また、会社側がそうした活動を評価してくれる場合、薬剤師としてやる気をもって取り組めるようになります。
同じ業務ばかり繰り返していたり、昇進が望めなかったりすることで「同じ職場で働き続けることは考えられない」と思ってしまうのです。そうしたとき、年収に加えて「将来はどのようなステップアップが可能なのか」「薬剤師として学べる環境はそろっているか」まで含めて転職の判断材料に据えるといいです。
職場(調剤薬局など)の雰囲気や社長の人柄が優れていた
なお、転職しようかどうか迷うとき、意外と就職先の決め手になりやすいものとして職場の雰囲気や社長の人柄があげられます。
薬剤師の転職理由に年収や労働環境などはありますが、他にも転職理由の上位になりやすいものとして人間関係があります。人間関係が優れている職場であれば、多少は年収が低かったとしても満足できます。しかし、どれだけ希望条件に満足したとしても、人間関係が悪いと転職に失敗したと考えてしまいます。
そのため、職場の雰囲気は非常に重要です。面接後は薬局や病院で職場見学を実施することは多いですが、「年収が希望に見合う」「希望の働き方を実現できる」のは当然として、この見学時に会話を交わした薬剤師たちの人柄が良ければ、それが決め手となって転職する薬剤師はたくさんいます。
同様に社長の人柄も決め手の一つになります。大手チェーン薬局やドラッグストアだと関係ないですが、中小薬局だと社長との仕事上での距離が近く、社長の人柄は非常に重要だといえます。
職場の雰囲気は良くても社長がダメなために転職する薬剤師も多いため、中小薬局へ転職する場合は社長の人柄も重視するようにしましょう(病院の場合、薬剤部長の人柄が重要になります)。
就職先で気をつけることのアドバイス
それでは転職時、実際にどういう点に気をつければいいのでしょうか。薬剤師が転職するときに重視するべきことや決め手については理解しましたが、転職時は必ず実施するべきことがあります。
転職するときのアドバイスとしては、ここまで述べてきたことに加えて以下の点についても注意するようにしましょう。
- ブラックな職場は避ける
- 店舗見学は必ず行う
- 福利厚生まで確認する
当たり前のようではありますが、意外と多くの人で行えていない内容になります。そこで、こうしたポイントを必ず事前に確認しなければいけません。
ブラックな職場は避け、ホワイトの薬局・病院へ就職する
調剤薬局やドラッグストア、病院を含めてブラックな職場はそれなりにたくさん存在します。そのため、転職時はこうした店舗を避けなければいけません。
このとき、特に分かりやすいブラックな職場として「違法行為が横行している薬局」があげられます。職場によっては、以下のような違法行為が普通に行われています。
- 資格のない事務員がピッキング含めた調剤をしている
- 管理薬剤師が他店舗のヘルプをしている
- 一人の薬剤師が常に1日40枚を超えて調剤している
どれだけ年収額が高かったとしても、こうしたブラックな職場で働いてはいけません。仕事によるストレスが大きくなり、結果として働くこと自体が辛くなってしまうからです。
社長の人柄が転職の決め手になることを紹介しました。これは、ホワイトな職場かどうかに関係するという理由があります。社長の性格がダメだと、当然ながら仕事内容がきつくなって職場の雰囲気は悪くなります。そのため求人票の条件だけで就職先を決めるのではなく、職場の雰囲気や実情まで考慮する必要があります。
店舗見学は必ず行い、転職サイトを利用して直接応募を避ける
そのため、このときは必ず店舗見学を実施するようにしましょう。病院であれば、面接場所と職場が同じ場所になるため、面接後は病院見学を実施する可能性が高いです。
ただ、調剤薬局やドラッグストアであると、面接場所と勤務場所が離れているのは普通です。面接は薬局の本社で行うからです。そうしたとき、店舗見学を面倒に思う人がいます。
ただ、必ず職場見学を実施しましょう。店舗見学をすれば将来一緒に働く人の様子を理解できるようなり、さらには薬局内の事情を含めて現場の薬剤師から聞くことができます。さらには、違法行為が日常的に行われているブラック薬局かどうかまで含めて判断できます。
面接後に職場見学をしない場合、転職において得られる情報が少なく、結果として失敗しやすくなります。店舗見学は必ず行いましょう。
・転職サイトの利用は必須
当然、このときは直接応募を避ける必要があります。直接応募であると、年収や勤務条件の交渉を自分で行う必要があり、さらには店舗見学の設定まで自分でやらなければいけません。自分で勤務条件の交渉をすることすら不可能に近いのに、その後の見学のセッティングまで自分だけでするとなると骨が折れます。
一方で転職サイトを利用すれば、面接のセッティングだけでなく勤務条件の調節までしてくれて、さらに転職エージェントによっては職場見学まで同行してくれます。
転職サイトには面接同行のサービスがあり、求職先での面接後は電車やタクシーなどによって実際に働く職場まで一緒に来てくれるのです。「17:00までの勤務条件で就職を考えている」など、希望する働き方については転職サイトの担当者から現場の管理薬剤師に対してその場で伝えてくれるため、転職後のミスマッチも少なくなります。
自分で直接応募することも転職で失敗する理由の一つなので、必ず転職サイトは活用しましょう。
さらにアドバイスをすると、2~3社以上の複数サイトを利用するといいです。担当者によって腕が異なるため、複数サイトを利用していくつもの転職エージェントに求人を出させ、優れた求人募集を提案してくれる担当者から転職先を決めるのが適切です。
福利厚生(手当の内容)まで確認し、手取り年収を増やす
ここまでの内容に加えて、福利厚生の内容も気をつけることの一つです。多くの会社で福利厚生が導入されていますが、福利厚生は会社ごとに内容がバラバラなので、どのような福利厚生を受けられるのか内容を確認するのです。
福利厚生によって手取り額は大きく異なってくるため、求人票に記載されていない福利厚生の情報を転職サイト経由で聞くようにしましょう。
例えば、以下の薬局では「福利厚生として薬剤師に対して一律5万円の住宅手当が支給される」となっています。
月5万円であるため、家賃補助のない薬局や病院に比べて年間60万円も手取り額が異なることになります。さらにいうと、この薬局では1日1,200円(月24,000円)の食事手当も付くため、食事手当だけでも年間28万8,000円のプラスになります。
たとえ年収450万円であっても、福利厚生まで含めると実質的に年収500万円を軽く超えます。福利厚生のない職場へ就職するのではなく、こうした会社を検討するといいです。
当然、福利厚生の条件まで細かく確認するのは必須です。例えば、「会社命令による異動でなければ、家賃補助が出ない」「独身者にしか住宅手当がない」などの条件を設けている会社は非常に多いため、単に福利厚生が存在するだけでなく、その内容が「自分にとって意味あるものかどうか」まで聞くのです。
直接応募では難しいですが、転職サイト経由であれば担当者から手当の内容や金額を含めて聞くことができます。ここまでを考えたうえで転職先を検討するといいです。
転職に迷うとき、基準を設けるべき
薬剤師の転職で失敗しやすい人の特徴として、希望条件なしに何となく転職することがあげられます。しかし、これではダメな職場へ就職してしまい、結果として転職を繰り返すようになります。
そこで、長く働ける優れた職場を目指すようにしましょう。このとき、人によっては年収アップを第一条件に置くかもしれませんし、働くときの勤務条件を優先するかもしれません。キャリアアップの度合いを重視する人もいます。
ただ、このとき職場の雰囲気や社長の人柄なども転職時の決め手となる薬剤師が多いため、こうしたことまで含めて職場を探すといいです。
さらにアドバイスをするとすれば、気をつけることに「違法行為のある職場は避ける」「店舗見学を必ず行う」「福利厚生まで確認する」というポイントがあります。ここまで認識したうえで転職活動している薬剤師は意外と少ないため、事前に確認するといいです。
そうしたうえで複数の転職サイトを利用すれば、優れた条件で転職しやすくなります。転職で迷うとき、ここまでの内容を把握したうえで優先順位を決め、求人を探すようにしましょう。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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