薬剤師が転職を考えて求人を探そうとするとき、さまざまな転職理由があります。このとき、「自分は薬剤師に向いていないのでは」と考える人がいます。
「職場の人間関係が悪い」「休日取得など、労働環境があまり良くない」「忙しすぎる」などのような職場であると、ミスが多くなるなどして薬剤師としての自信をなくしてしまったり、しんどい環境に耐えられなくなってしまったりするのです。
ただ、新たな職場で働くにしても薬剤師の免許自体は活かした方がいいです。
しかし、ネガティブな理由で転職を考えて求人を探したり、いまの職を辞めようとしたりするときは慎重に判断しないと失敗する可能性が高くなります。ここでは、職場を辞めたいときに薬剤師が考えるべきポイントについて解説していきます。
もくじ
仕事をしんどいと考え、薬剤師を辞めたいと思う理由
「いまの仕事が自分に向いていないのでは」と、悩むことはよくあります。このように思うケースとしては、例えば以下のようなものがあります。
- 仕事でのミス
- 人間関係
- 接客や薬の勉強が苦手
それぞれについて解説していきます。
調剤を含めた、仕事でのミス
職場でのルールや仕事をなかなか覚えられなかったり、ミスが続いたりしてしまうと上司や同僚から怒られることがあります。
特に調剤薬局や病院であれば、調剤ミスや監査ミスは患者さんの命に関わるので責任重大です。もちろんOTCドラッグストアであってもお客様のクレームを受けることになりますし、企業の薬剤師でも重荷がのしかかります。
仕事のミスが原因で薬剤師を辞めたいと考えるのは、新人薬剤師や未経験の薬剤師が主です。最初から仕事のできる人は存在しません。ミスを怒る先輩薬剤師も最初から仕事ができたわけではないものの、新人でミスを連発してしまうと「自分は薬剤師に向いていないかも」と考えてしまうのです。
このとき、勉強が嫌いな人では調剤の仕事は確かに向いていないかもしれません。ただ、そうでないのであれば、ミスが続いたとしても「薬剤師が向いていないのではなく、まだ経験が足りていないだけ」と考えるようにするといいです。先に述べた通り、初めから完璧な人はいないからです。
人間関係により、精神的なストレスが大きい
また、「薬剤師に向いていないかも」と考える人については、職場の人間関係も深く関わっています。職場の人間関係によるいじめやパワハラなどによって、職場を退職したいと考える薬剤師も多いのです。これは新人に限らず、経験豊富な薬剤師であっても同様です。
薬剤師を経験していると、職場でさまざまな同僚に出会います。「高圧的な態度を取る薬剤師」「知識がなくダメな薬剤師」「変な要求ばかりしてくる上司」「冷たい態度をとる事務の人」などです。
完璧な職場は存在しないため、少なからずあなたと合わない人はいます。このとき、いじめやパワハラを含め、人間関係で悩むと薬剤師を辞めたいと考えるのは自然です。精神的なストレスが重なり、仕事でのミスが増えて良いことが一つもないからです。
仕事でのミスは自分が気を付ければいいものの、その根本的な原因が人間関係にある場合、どうしようもありません。職場の人間をあなたの権限で入れ替えるわけにはいかないからです。そのため、辞めたいと考えるようになるのです。
接客または薬の勉強が苦手だと、根本的に向いていない
また、接客がどうしても無理だったり、薬剤師ではあるが薬を勉強するのが嫌いであったりするとき、「自分は薬剤師に向いてないかも」と思うことが非常に多くなります。
調剤薬局やドラッグストア、病院を含めてほとんどの職場で接客スキルが要求されます。患者さんに対して、薬の説明や健康指導を実施する必要があるからです。
ただ、薬剤師の中には口下手で接客が非常に苦痛な人もいます。薬局内でピッキングをしているだけならいいですが、実際に服薬指導をするとなると非常に緊張してしまうのです。その場合、仕事が辛くなります。
または、薬の勉強があまり好きではない場合も同様に、薬剤師に向いていない人だといえます。薬剤師では常に勉強が必要であり、調剤薬局やドラッグストア、病院を含めて常に学び直す必要があります。
どうしても薬に興味をもてない場合、当然ながらミスが増えるようになります。そうして、仕事をしんどいと考えるようになって辞めたいと思うのです。
働きたくないとき、薬剤師が職場を変える重要性
これらの理由により、薬剤師が向いていないと考える人は意外とたくさんいます。しかし大前提として、薬剤師自体を辞めるのは考えないようにしましょう。
調剤でミスをしたり、仕事であまりやりがいを感じられなかったりすることはあるかもしれません。人間関係で苦労し、辛いと感じることも多いでしょう。しかし冷静に周囲を見渡してみれば、薬剤師を含め医療職の資格は非常に優遇されています。
無資格の人では就職すら難しくても、薬剤師資格さえあれば比較的簡単に採用してもらえます。また、労働条件では融通を利かせやすく、優れた職場へ転職しやすいです。
新人であれベテランであれ、いまの職場を退職したいと考えるときがあるのは普通です。ただ、薬剤師だけは続けるようにしてください。
重要なのは、いまの職場で耐えながら頑張ることではありません。「職場を変える方法もある」という選択肢をもつことにあります。実際、薬剤師で何度も転職している人は多いです。薬剤師としてあなたが向いていないわけではなく、最適な職場でなかっただけになります。
薬剤師として活躍できる仕事は意外と多いです。そこで、どのような中途採用の求人募集があるのか理解しておかなければいけません。
忙しくない調剤薬局は多い
薬剤師として働くとき、最も一般的なのは調剤薬局への就職です。調剤薬局は大手チェーンや中小薬局を含め全国に無数に存在しています。コンビニよりも調剤薬局の数の方が多く、当然ながらその分だけ調剤薬局ごとに特徴が違います。
このときミスが続いたり薬の勉強が苦手だったりする場合、思い切って仕事が楽な職場へ転職してしまっても問題ありません。取り扱う科目が限られていて、さらには処方せん枚数が少なく忙しくない職場であれば、心にゆとりをもって働けるようになります。
例えば、眼科の隣にある薬局だと一般的に処方せん枚数が少なくなりやすいです。眼科を訪れる患者さんは眼鏡・コンタクトレンズや検査などで処方せんを必要としない人が多く、眼科クリニックは忙しくても薬局にはそこまで処方せんが来ないからです。また、点眼薬がメインなので取り扱う薬の種類も少ないです。
点眼薬を袋に詰める作業は面倒ですが、それ以外は非常に楽です。また、内科のように何種類もの薬を説明する必要はありません。新薬も非常に少ないです。
例えば、以下は東京にある調剤薬局の求人ですが、眼科メインの薬局です。
今回は眼科メインの調剤薬局を例に出しましたが、当然ながら内科であっても処方せんが少なくあまり忙しくない薬局は存在します。そうした薬局であれば、仕事でのストレスは大幅に少なくなります。
規模や仕事内容を含め、調剤薬局は仕事が同じように見えて、薬局ごとにすべてバラバラだと考えてください。調剤薬局は種類と数が非常に多いため、その中のどれか一つをあなたに合う求人として見つけることができます。
楽な病院(病棟)は存在する
また、仕事を辛いと感じて「働きたくない」と思うのは病院薬剤師も同様です。特に急性期の総合病院は非常に忙しいものの、給料が低くて残業が多く、割に合わないことで有名です。
ただ調剤薬局と同じように、病院にも種類があります。急性期病院に限らず、慢性期病院・療養型病院や回復期リハなども存在します。
慢性期病院であれば、症状の安定した患者さんばかりです。処方内容はそこまで変わらず、いわゆるDo処方(いつもと同じ処方)が基本です。急性期病院に比べると落ち着いて仕事を続けることが可能です。外来患者も非常に少なく、病棟業務はそこまで大変ではありません。
より大きなやりがいを感じ、スキルアップしたい人であれば急性期病院が適切です。ただ、忙しすぎてミスが連発してしまう場合、ゆったり働くために慢性期病院を検討するなど、急性期病院以外の病棟が良いです。これについては、その人の状況や性格によって合う病院が異なります。
パート・アルバイトや派遣はOTCドラッグストアも検討する
なお、正社員で働く場合は在庫管理やシフト調節、ノルマ、残業を含めて業務内容が非常に大変であるものの、パート・アルバイトや派遣で働く場合はそこまで辛い作業になりにくいのがOTCドラッグストアです。
ドラッグストアとはいっても、調剤併設ドラッグストアは調剤薬局とほぼ同じです。そのため、一日の処方せん枚数やメインの科目が重要になります。一方、OTCドラッグストアの場合は正社員やパートなど、勤務形態によってストレスが大きいかそうでないかが違ってきます。
パートや派遣であれば勤務時間が決まっています。また、第一類医薬品を販売したりサプリメントの説明をしたりする機会は実際のところ少なく、レジ打ちがメインになります。接客するのがメインではありませんし、がんばって薬を勉強しなければいけないわけでもありません。
それでいて、時給は高いです。パート・アルバイトなら時給2,000円を確保できますし、派遣なら時給2,700~3,000円は問題なく達成できます。例えば、以下は東京のOTCドラッグストアから出された派遣求人です。
正社員だと大変になりがちなドラッグストアですが、パート・アルバイトや派遣によってそこまで忙しくない職場で働きたい場合、OTCドラッグストアまで視野に入れても問題ありません。
もちろん、調剤薬局と同じようにドラッグストアも店舗がたくさん存在します。会社によって方針が大きく異なるため、しっかり探せば自分に合ったぴったりの求人を見つけることができます。
企業という、調剤以外の選択肢も考慮する
調剤薬局、ドラッグストア、病院は薬剤師の就職先として一般的です。ここに、一般企業への転職も視野に入れてみてください。薬剤師の資格を活かしながらも調剤以外の仕事をすることができ、人と接するのが苦手な人であっても接客なしを実現できるからです。
もちろん、求人によっては薬の勉強をする必要のないケースもあります。
医薬品卸、化粧品メーカー、化学メーカーなど、薬剤師を必要としている会社(企業)は意外とたくさん存在します。例えば医薬印卸であれば、「支店ごとに薬剤師を置かなければいけない」と法律で定められているため、欠員が出たときはこうした会社から求人募集がでます。
調剤を行うことはないため、調剤や監査ミスの連発などに悩んでいた人であれば非常に優れた求人です。例えば、以下は医薬品卸から出された中途採用の求人です。
このように、たとえ企業であったとしても薬剤師の求人が出されるのです。
または、品質管理や物流センターの薬剤師として働く方法も存在します。こうした企業求人であれば、薬の勉強は完全に不要ですし、接客もゼロです。もちろん法令については勉強する必要があるものの、最低限の勉強で問題ありません。
例えば、以下は大阪にある物流センター(大阪南部にある会社)から出された求人募集になります。
ここではいくつか企業薬剤師の例について紹介しましたが、この他にも企業薬剤師は存在します。調剤とは離れてしまいますが、こうした企業の案件も存在することを認識するといいです。
実際のところ、どうしても接客が無理だったり薬の勉強が苦手だったりする場合、調剤薬局やドラッグストア、病院を含めてあらゆる職場に不向きです。ただ、これら薬剤師業務に向いていない人であっても、問題なく勤務できるのが企業求人になります。
退職を考えたときに考えるべきポイント
このように、薬剤師の職場にはそれぞれ特徴があります。調剤をしたり、服薬指導を行ったりすることだけが薬剤師ではありません。一般企業であっても薬剤師資格を活用できるため、求人を探せば薬剤師を辞めずに能力を活かせる職場を見つけられます。
ただ、中にはいまの職場を退職しない方が良い薬剤師も存在します。このとき、どのように考えて行動すればいいのでしょうか。退職を考えたとき、考慮しなければいけないポイントが存在します。これには、以下のものがあります。
・自分に向いている職場はどこかを考える
薬剤師とはいっても、働く場所は非常に幅広いことを理解できたのではないでしょうか。実際に求人を探せば、一般企業を含めいろんな職種の薬剤師を選択できます。
例えば、企業のDI・学術としてコールセンター業務をメインで行う求人が存在します。こうした求人であれば、デスクワークで仕事をできるようになります。
また、接客がほぼ存在せず老人施設での調剤や分包がメインとなる求人も存在します。看護師や介護士などが患者さんの相手をするため、薬剤師は施設の中で落ち着いて仕事をすることになります。例えば、以下のような求人募集です。
また、調剤薬局から出された求人ではあるものの、新卒採用部門の人事職として活躍できる求人もあります。例えば、以下は兵庫にある薬局から出された採用担当の求人です。
この場合の調剤は不要ですし、接客とはいっても薬学生を相手に会話をしたり薬局説明をしたりするのが仕事になるため、いわゆる気難しい患者さんを相手に服薬指導するわけではなくなります。
薬剤師として活躍できる場は非常に広いからこそ、これらの選択肢の中からどの職種が適切なのか、自分が本当にやりたいことや性格を考慮したうえで決めるといいです。
転職サイトを利用するのが基本
なお、こうしたことを考えるとき最初は、いまの勤務先の中で異動できないかどうかを検討しましょう。異動・転勤などによって他の店舗に移ったり、違う部署で働いたりするのです。例えば大手チェーン薬局であればいろんな部署が存在するため、調剤以外の仕事を任せてもらえることがあります。
ただ、異動・転勤を受け入れてもらえなかったり、個人薬局や中小病院で働いていたりするなど、現実的に他の仕事に就くのが難しいケースも存在します。そうしたとき、転職という選択肢を考えるようにしましょう。
それでは、どのようにして転職すればいいのかというと、ほとんどの薬剤師が転職サイトを活用します。実際にこれまでいくつかの求人例を提示しましたが、すべて転職エージェントに掲載されている求人になります。
個人が頑張って「処方せん枚数の少ない、ゆったり求人を探す」「慢性期病院の薬剤師募集を探す」「接客なしの企業求人を見つけて応募する」などを、自ら求人を開拓するのは現実的ではありません。そのため、これらの求人をたくさん保有する転職サイトを活用するのです。
例えば私の知り合いの中には、転職サイトを活用して化学メーカーへ転職し、薬剤師として本社勤務を実現している人がいます。転職サイトによっては、こういう求人を取り扱っていることが頻繁にあるのです。
これらを理解したうえで、どのような求人が自分に最適なのかをじっくりと確認するといいです。
辛い職場を避け、性格にあった職場へ転職する
新卒でも経験者でも、「自分は薬剤師が向いていないのでは」と考える人はたくさんいます。しかし、これはあなた自身に問題があるのではなく、「最適な職場を選ぶことができていなかっただけだ」といえます。
例えば、「落ち着いているときであれば問題ないが、仕事が忙しくなるとミスが非常に多くなってしまう」という悩みを抱えているのであれば、「大量の処方せんを受ける薬局ではなく、落ち着いた薬局」へ転職するようにしましょう。そうすれば、ミスすることなく本来の自分の力を発揮できるようになります。
また薬に興味を持てず勉強が好きでないのであれば、薬の勉強をしなくても問題ない企業薬剤師の求人へ応募すれば問題ありません。
こうした自己分析をしたうえで転職サイトを活用するなどして求人を探せば、転職での失敗を防げるようになります。そうして自分に合った良い求人先へ就職すれば、薬剤師を辞めずに自分の力を最大限発揮できるようになります。
薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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