一般企業に比べると、薬剤師は転職する人が多い職種です。それでは、どのような理由で薬剤師がいまの会社を離職し、転職を決断するのでしょうか。

転職するときの理由としては、大きく分けて「年収アップ」「人間関係」「労働環境」の3つがあげられます。他の薬剤師が転職する理由を知っておけば、「どのような求人であれば転職で失敗しないのか」を理解できるようになります。

ただ、転職するときはいまの職場を辞める必要があります。このとき、転職理由をそのまま伝えると強い引き止めにあってしまう可能性が高くなります。

「実際の転職理由」と「伝えるべき退職理由」は異なることを理解したうえで、どのように考えて転職活動を進めるべきなのかについて解説していきます。

薬剤師が離職するきっかけ・動機のランキング

他の業種を目指すための薬剤師転職であるなら、特に誰も疑問に思いません。例えば、それまで調剤経験のなかった企業の薬剤師が薬局を目指したり、薬局薬剤師がスキルアップのために病院を目指したりすることはよくあります。

スポーツファーマシストとして活躍したい人であれば、一般用医薬品の知識を身につけるためにドラッグストアの求人を探して転職するかもしれません。

ただ、実際のところ同じ業態への転職がかなり多いです。「調剤薬局から他の調剤薬局へ」「病院から他の病院へ」などのように、同じ業種・業態ではあるが会社だけを変えようとするのです。

それでは、なぜ同じ職場でずっと働かず、転職という選択をするのでしょうか。女性のママ薬剤師に限らず、男性薬剤師であっても転職のためにいまの職場を辞めることがあります。

こうした転職理由として多いのは、以下の4つがあります。

  • 年収アップ
  • 人間関係
  • 労働環境
  • スキルアップ、キャリアアップ

特にランキング形式にはしていませんが、これらを理由が転職するきっかけのメインだと考えてください。それぞれの動機について確認していきます。

年収アップによる薬剤師転職

薬剤師が転職を決意するとき、親の介護や子育てなど理由はいろいろです。ただ、そうした転職理由の中でも年収アップは常に上位に入ります。

薬局であれ病院であれ、薬剤師として働く以上は誰もが年収を上げたいと考えます。特に病院薬剤師は大病院になるほど年収が少ないため、今後のことを考えて調剤薬局などに転職するケースは多いです。

家族を養わないといけないという理由から、病院から調剤薬局・ドラッグストアへ転職する男性薬剤師はかなり多いです。もちろん、年収を上げるために今の薬局から他の薬局へ転職することも頻繁に行われています。

例えば、以下は東京都新宿区にある調剤併設ドラッグストアの求人募集です。

東京や大阪、名古屋、福岡など都市部で年収の高い求人はほとんど存在しません。年収600万円でも非常に厳しいです。ただ、この求人では年収600万円は無理ながら、たとえ調剤未経験であったとしても年収517万円を最初から提示してくれています。

病院薬剤師からの転職であれば、ほぼ確実に年収アップを実現できます。

また、既に調剤薬局で管理薬剤師の経験がある場合、管理職として転職しても問題ありません。例えば、以下は大阪で出された管理薬剤師の募集です。

管理薬剤師の求人であるため、他よりも年収は高めに設定されています。管理薬剤師や在宅経験を含め、あなたのスキルを引き出したうえで年収交渉したり求人を探したりすることで給料を上げることができます。

このとき注意すべきは、「なぜ転職するのか」という明確な理由をもつことが重要となります。目的をもって転職することが転職での成功の秘訣になります。

例えば、年収を上げる目的で転職を考えている人であれば、「家を建てて住宅ローンがあるため、いまよりも年収を100万円上げたい」などの明確な理由がなければいけません。漠然と年収アップを望むのではなく、適切な理由が必要になります。

先ほどの例であれば、住宅ローンの支払いで必要な毎月のお金を計算して、将来に必要になるであろう出費まで含めたうえで、転職先を吟味する必要があります。

明確な目的があれば、あなたが就職すべき薬局の形態がわかってきます。

例えば年収アップを実現するために働くのであれば、調剤薬局へ転職だけでいいかもしれませんし、人によっては残業が発生するOTCドラッグストアや調剤併設ドラッグストアが良いかもしれません。そうしたうえで年収アップを実現するために転職活動をする必要があるのです。

特に病院薬剤師は年収格差による転職が多い

なお、既に述べましたが病院薬剤師は非常に給料が低いことで有名です。月収22~24万円であるのは珍しくなく、手取りにすると20万円を切るのは普通です。場合によっては、手取りではなく基本給が20万円ほどのケースもあります。

急性期病院で働くとなると、多くのことを勉強することができます。ただ、その代わりとして月収を非常に低く抑えられるのです。

例えば、以下は東京の大学病院から出されている求人です。

新卒にはなりますが、このように基本給は月に約22万円と非常に低く、手取り額は20万円を切ります。また、病院薬剤師はほとんど給料が上がらないため、こうした人の多くが高い年収を求めて調剤薬局やドラッグストアへ転職するのです。

人間関係の悪化による転職動機

年収アップと同じくらい多い薬剤師の転職理由として、職場環境の悪化があげられます。薬剤師は薬局や病院調剤部など、狭い世界の中で仕事をすることになります。そのため、その中で人間関係が悪いと転職を考えてしまうのです。

人間関係の悪化では、「たての関係」と「横の関係」があります。この中でも、「たての関係」による転職理由は特に多いです。たてというのは、あなたの上司との関係のことを指します。例えば調剤薬局であれば、「管理薬剤師と合わない」などの転職理由があります。

よこの関係であれば、他の一般薬剤師や事務員との仲が悪かったり、同僚からいじめを受けたりすることが転職理由になります。

他にも病院であれば、薬剤部長との意思疎通の悪化や、看護師との仲が悪くて転職を検討することがあります。

労働環境が悪いことが退職理由になる

なお、職場環境では人間関係の他にも、労働環境による転職理由もあります。つまり、人が足りないために忙しすぎたり、夜遅くまで残って働かなければいけなかったりと労働条件が悪いことによる転職理由が多いのです。

働き始めたときは労働環境が良かったとしても、一気に労働環境が悪化することはよくあります。例えば調剤薬局の中で仕事のできる人が1ヵ月で2人も辞めてしまい、急に仕事の量が増えるなどの事態に遭遇するのは珍しいことではありません。

他にも例えば女性薬剤師であれば、単純に結婚・出産を理由にした退社も多いです。子育てなどに理解のない職場であれば、転職を検討するのが一般的です。

特に育児中は子供の定期検診があったり、急な病気にかかったりします。こうしたとき、急な休みにも対応でき、早退や時短勤務を含め柔軟に対応してくれたりする職場が望ましいです。

例えば、以下は東京の調剤併設ドラッグストアから提示された求人募集になります。

この薬局の場合、小学生3年生が終了するまで時短勤務が許されています。法律的には3歳までの時短勤務で問題ありませんが、このような制度を設けることによって問題なく長く勤務できるようにしているのです。

店舗によっては育児に関して無関心であったり、申し出を認められなかったりすることはよくあります。そこで、柔軟に意見を取りいれてくれる職場に転職したりするのです。

このように、職場での労働環境が退職動機となる人は非常にたくさんいます。

スキルアップ、キャリアアップを目指す

他にも当然ながら転職理由は存在します。例えばスキルアップやキャリアアップとしての転職があります。例えば慢性期病院であれば、基本は同じ薬の処方(Do処方)になります。良く言えば落ち着いて仕事に従事することができるものの、悪くいえば毎日決まりきった仕事なので新たな知識は磨かれにくいです。

そこで、急病を患う患者さんが毎日押し寄せてくる急性期病院へ転職すればどうでしょうか。これであれば、患者さんの容態は日によって変わっていき、それに伴って薬の内容も変化します。

こうした急性期病院では非常に忙しく働くことになるものの、知識や技術という面では大きくスキルアップできます。

これと同じように、「調剤薬局から調剤薬局へ」「ドラッグストアからドラッグストアへ」という転職であってもスキルアップ可能です。

「在宅を本気で勉強できる調剤薬局の求人を探す」「一般用医薬品を学べるドラッグストアが望ましい」「調剤技術を学びながら、あらゆる患者さんを受け入れる面薬局がいい」など、さまざまなスキルアップが考えられます。

在宅とはいっても、本気で取り組んでいる薬局は実際のところ少ないです。多くは家で薬を渡すだけの在宅になっています。そこで、以下のようなきちんとした在宅を行える調剤薬局で経験を積むのです。

また、中にはキャリアアップの一環として転職する薬剤師もいます。「いまの職場ではポストの空きがなく、昇給・昇進がほぼないので他の職場で上を目指す」というのがキャリアアップによる退職理由です。

管理職を目指すほど、そのポストは少なくなります。いくらスキルアップして技術を磨いたとしても、ポストに空きがなければ昇進できません。そこで、いまの技術や知識を活かして他の職場で上位のポストに入り、キャリアアップ転職を目指すのは珍しくありません。

会社を辞めるときに伝えなければいけない退職理由

このように薬剤師であれば、本音の転職理由が存在します。ただ、実際に働いている会社を退社するとき、「本音の転職理由」を伝える人がいれば、「建前の転職理由」を伝える人もいます。

退職を伝えるときは緊張するものです。私も薬剤師として勤めている会社を辞めるとき、薬事部長にドキドキしながら意思表示の電話をしたのを覚えています。

退職を告げることについて、その伝え方を失敗してしまうと、なかなかスムーズに円満退社とはいきません。そのため、退社の際も慎重に進めなければいけません。

・退社するに当たって考えるべきこと

これまでお世話になった職場を辞めてしまうため、職場に迷惑をかけず、他の社員の方に対しても良い関係のままで退社したいと多くの人が考えます。

ただ、実際のところ退社するとき、引き止めに遭う人は多いです。薬剤師の人数が足りていないため、退社するときの交渉に手間取ってしまうのです。例えば、以下のような場面に遭遇することは意外と多いです。

  • 強い引き止めに遭い、転職を止めようか悩んでしまう
  • 退社の話が他の多くの社員に伝わってしまい、辞めづらい雰囲気になった
  • いまの職場から「薬剤師が足りていない」ことを熱心に説かれる

そこで、他の人がどのように退社理由を伝えているのかについて確認していこうと思います。退職理由を伝えるときに、前述の通り「本音で伝える人」と「建前で伝える人」の2種類の方がいます。

それぞれのパターンに分けて、他の薬剤師が職場を辞めるときに伝えている退職理由を確認していきます。正解はないですが、参考程度になればと思います。まずは、本音で退職理由を伝える場合についてです。

本音で退職理由を伝える

いま働いている職場を辞めるとき、「なぜ退職を考えているのか」「なぜ転職しようと思っているのか」を正直に伝える人がいます。

本音の退職理由を伝える場合、次のような理由を伝える人が多いです。

・勤務地、労働時間、人間関係などの悩み

本音の退職理由であれば、以下のことを素直に伝えます。

  • 現在の勤務地が遠く、通うまで時間がかかるので家の近くが良い
  • 残業が多く、収入が少なくなっても良いのでゆとりのある会社が望ましい
  • 人間関係が悪化しているため、これ以上は働けない

いまの勤め先や従業員の不満・問題点を経営者や上司に伝え、他の職場で心機一転頑張ることを伝える方法です。本音で話し合うため、双方にとって理解が進みやすくなります。

ただ、経営者からすると薬剤師が辞めたら困るため、あなたが本音で話すことで、条件緩和を提示されることがあります。例えば、年収が低いために転職を考えているのであれば、給料を引き上げるように調節しようとするのです。

しかし、実際のところ口約束だけで何も変わらないことがほとんどなので、結局のところ再び転職を検討する人が大多数という実情があります。引き止めに応じると結局のところ悔しい思いをする人が多いため、「本音の交渉では引き止めに遭いやすい」というデメリットを考慮しなければいけません。

退職理由を伝えるときに失敗しやすいのは、本音を伝えてしまうケースがほとんどです。これを事前に理解しておくといいです。

・結婚、出産、家庭の事情

女性の場合、結婚や出産などのイベントがあります。旦那さんの転勤がきっかけで辞めることもあります。また、親の介護をしなければいけないなどの家庭の事情もあると思います。

このような理由が動機の場合、経営者はその薬剤師が辞めることを認めざるをえません。本音の理由ではあっても、結婚や出産、家庭の事情であれば退職・再就職を行う場合もスムーズです。

それでは次に、本音ではなく建前で退職理由を話す理由を見ていきます。

建前で離職動機を伝える薬剤師の理由

本音で退職理由を伝える人がいる一方で、濁した離職の動機を伝えることで、何とかその場を乗り切ろうと考える人は非常に多いです。

このとき、以下のような理由で建前での退職理由を伝えます。

・本音で言うと、引き止めにあってしまう

既に述べましたが、本当の理由を話すと条件緩和などが提示されて引き止めにあうことが多いです。押しに弱い人であれば、なかなか条件緩和を突っぱねることができず、転職を諦めてしまう方もいます。

ただ、条件緩和をのんだとしても、自分だけが特別扱いになるために若干の居心地の悪さを感じながら働くことになります。また、前述の通り口約束だけで終わることも多いです。

これを回避するため、本音ではなくて建前の退職理由を述べて何とか乗り切ろうとします。

・関係性を悪くせずに穏便に退職したい

また、人間関係や労働条件の不満を正直に伝えてしまうと、職場での環境が悪くなってしまう人も中にはいます。これを回避して穏便に退職するため、建前で話すのです。

例えば、「薬局での残業が長くこれ以上は働けない」ではなく、「薬剤師会の勉強会などへ積極的に参加したい。しかし、現状では残業が多く勉強時間も取れない」などのようになります。

その後、2~3ヵ月などある程度の期間を設けて薬剤師をやめるようにしましょう。ちなみに私も最初の会社を辞めるとき、新卒薬剤師が入社してすべての引継ぎを終えた後に退社しました。そのため、わりと穏便に離職できました。

どのような建前を伝えればいいのか

それでは、どのようにして「建前での退職理由」を伝えればいいのでしょうか。建前の退職理由を伝えるコツとしては、本音を少し変えることがあげられます。

例えば年収アップが目的なのであれば、「他の職場で新たな経験を積み、キャリアアップを目指す」という理由がいいかもしれません。女性薬剤師であれば、「これから子供に付きっきりになるため、いったん退職したい」という理由になるかもしれません。

本音の退職理由を述べる場合、後ろ向きな理由が多いです。そこで、前向きな転職理由に変えて建前を伝えるといいです。

本音とはまったく異なる退職理由を述べてもいいですが、ウソの退職理由ではボロが出て見抜かれてしまう可能性があります。そのため、本音を前向きな転職理由に変えて伝えるのが正しい手順です。

例えば、「スキルアップできない」ではなく、「在宅スキルを身に着けたいので、在宅メインの薬局で働きたい」などのようになります。

建前の伝え方についていくつか例を挙げましたが、どれも共通しているのは理由を述べていることです。

  • 家のローン返済があるため、100万円の年収アップが必要
  • 在宅スキルを磨き、スキルアップしたい
  • 子供のスポーツ活動が毎週土曜日にあるため、土日休みが必須

何でもいいので、きちんとした理由を述べられるようにしましょう。本音は隠しても問題なく、建前の理由でもいいので納得できる理由が必要です。そうすれば、問題なく退社できるようになります。

転職のきっかけはさまざまだが、離職理由は考えるべき

薬剤師の転職理由は人によって異なります。転職のきっかけのランキングとしては、「年収アップ」「人間関係」「労働環境」「スキルアップ、キャリアアップ」の4つがあります。

しかし、実際のところ本音の理由でいまの職場に離職動機を伝える人は少ないです。多くの場合で妥協案を提示されるなど、引き留めに合うからです。そのため、本音ではなく建て前での退職理由を述べるようにします。

どのような離職理由を述べればいいのかについては、前向きなきっかけで退社することを述べれば問題ありません。誰もが納得できる理由を事前に考え、2~3ヵ月前などある程度の期間を設けたうえで正式に退職するといいです。

多くの薬剤師は「会社に入るよりも、退職する方が大変」といいます。そこで、ここまで解説したことを理解したうえでスムーズに転職できるように段取りを考えましょう。


薬剤師転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!

薬剤師が転職するとき、求人を探すときにほとんどの人は転職サイトを活用します。自分一人では、頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉までしなければいけません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や薬局、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって「電話だけの対応を行う ⇔ 必ず薬剤師と面談を行い、面接同行も行う」「大手企業に強みがある ⇔ 地方の中小薬局とのつながりが強い」「スピード重視で多くの求人を紹介できる ⇔ 薬剤師へのヒアリングを重視して、最適な条件を個別に案内する」などの違いがあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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派遣薬剤師は給料が正社員よりも高く、時給3,000円以上も普通です。さらには3ヵ月や半年だけでなく、1日などスポット派遣も可能です。「自由に働きたい」「多くの職場を経験したい」「今月、もう少し稼ぎたい」などのときにお勧めです。

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